そしてその中で闇以外を修めているアリスは対呪霊ではクソ強いです。
怖いおじさんに話しかけられた。
私と同じような金色の髪で瓶底眼鏡をかけた私よりずっと背の高い男の人。
片手に黒い斑点模様の布でぐるぐる巻きにされた、微弱だけど闇の魔法の加護を与っている鉈を持っていたので新手かと警戒していたがどうやらこの世界でいう魔術師のような立ち位置の人らしい。じゅじゅつし、というのは何なのかはよくわからないけれど。もしかしたら異常にため込まれた闇に親和性のある魔力が関係しているのかも。
「少し私についてきていただけますか。貴方を一般人として扱うには流石に無理があるので」
要するに事情聴取をしたいらしい。なるほどたしかにここの人間達蔓延る世界だと私のような六色の魔法を使いこなす人形使いというのはとても珍しいでしょうからね…(どやありす)
外に出していた人形達を一体残して収納し金髪おじさんについていく。
「私は七海建人といいます。貴方は?」
「アリス・マーガトロイドよ。それとこれは上海。よろしくお願いするわ七海おじさん」シャンハーイ
「お兄さんです。まだおじさんという歳ではありません」
そして幾言か呟くと空を覆っていた結界が崩れ本来の空の黒さが辺りを照らす。私としたことが化け物を殺すのに夢中なってて結界が張られた事を見落としていた。見た所人払いの効果しかなさそうだけど…変な結界ね。
「お疲れ様です!七海さんその人は?」
当初私が寝泊まりに使おうとしていた公園を出て背の高い建物が並ぶ住宅地を抜けると普段使いに向かなそうな黒い服を着た男の人が大きい鉄塊から出てきてそう七海さんに尋ねる。
こういう場合、自己紹介でもしたほうがいいのかしら。でも私に尋ねてるわけでもないしここは無言の方がいいのかも。
そう思案していると七海さんが口を開き、
「…規定に則れば恐らく特級呪詛師と認定される人物です」
と言った。
その瞬間男は糸が張るように緊張感を顕にし顔面蒼白。面白いくらいに顔色が変わるその姿を眺めつつとりあえず自己紹介しようと名前を告げる。
「アリス・マーガトロイドよ」
「は、はい。伊地知潔高です」
「伊地知さん。今すぐ五条さんに連絡をとってください。アリスさん、悪いのですが我々と呪術高専へ来てもらえませんか?」
「宿泊先を提供してもらえるのなら構わないわ」
ガチャリと接合部が外れるような音と共に鉄塊の側面が開き中の空洞部分に座るよう促される。
どうやらこれは乗り物のようで空を飛ぶことは出来ないようだが地を高速で走りだす。
エネルギーはどこから取ってきているのか気になるわね。さっきから伊地知さんがずっと体調悪そうに運転してるから運転手の魔力かなんかで動いてるのかもしれないわ。こんな重そうな鉄塊を器に私達を運んでいるからとんでもなくエネルギー効率悪そうね…だから老けてみえるのかもしれないわね。可哀そう...
「自然豊かな場所ね」
ノブを押し出し扉を開く。だんだんと勝手がわかってきた人間界の乗り物を降りて私が連れてこられたのはなんとも古風な感じの建物だった。木製でできており少なくとも道中アモルファス状態の透明の板から見えていた直方体の建物群とは違って機能性が薄そうに感じる。わざわざ今ある技術力以下で作れる建物にするのはなにか理由があるのだろうか。とアリスはそう疑問に思う。
それにしても、ここは闇の気配が濃くて陰気臭いわね。局所的なものなのかと思ったら街中のどこもかしこも薄暗いように見えるわ。光なんてみじんもないし。母さんが唯一闇の魔法を使えない私をここへ送ったのも意図したものだったのかしら?
「汚らわしいわね」
ぽつりと吐いた言葉。私の前を歩く七海さんに聞こえていたかはわからないがなんの反応も見せずそのまま建物に入る。
私もそれに倣って建物へ入ろうとしたとき、
「七海ぃ?僕のTHE・幸せタイムを邪魔してまで伊地知に呼び出させたけどなんか用?THE・HAPPYTIME邪魔したから後でマジビンタね。伊地知に」
「マジビンタ...!?」
青空から闇の魔法を展開しながら長身白髪の二枚目の男が長い脚で着地する。
黒い目隠しをしているので私たちの事を視認できないはずだが何故か私の後ろに立っている伊地知さんにびしっと指をさしおちょくれている。気配とかで察知しているのかしら?それにしても大の大人同士が揶揄い揶揄われるってちょっと、なんていうか...
「ん?君...」
「初めまして。アリス・マーガトロイドよ」
少し目隠しをずらしじろじろと随分とよく見えそうな碧眼で私を上から下まで見つめる。それほどまでに見つめられる云われはないはずなのだが、もしかしたらダイアの様に完璧な造形の私に惚れてしまったとか、かしら?(どやありす)
だが実際それ以外に見られるような理由はないはずなのだけど。
この長身の男の人も異常に膨大な闇に馴染んでいる魔力を大量に保持してるし、人間ってそんなに闇に生きるような生物だったかしら?
「もしかして人外だったりする?」
そう至極当たり前なことを訊いてくる男の人。私が人間に見えているのなら流石に目が悪すぎだと思うのだけど...もしかして目隠しを付けているのは目が役に立たな過ぎて視覚の意味が無いからとかかしら?
「貴方には私が人間に見えるのかしら?」
「…あ、そう…。まいっか。僕は五条悟。ここ呪術高専で教鞭をとってるから気軽に"ごじょせん"って呼んでね」
上海と共に首を傾げてみせる。すると謎に少々の沈黙、そして人を小ばかにするような笑みをみせて男は私に名前を告げた。
一瞬されど見逃せない程の殺気と左手に収束し始めていた「何か」にはいったん目をつむり、笑みを浮かべて歓迎してくれている五条さんに私も同じく笑みを浮かべる。一応宿泊施設を提供してもらう立場なのだ。礼儀は必要でしょうからね。
「ええ。よろしくお願いするわ五条さん」
「僕さあ。伊地知から野良の呪術師だって聞いたはずなんだけど」
少女が術式でもって操っているであろう人形と共に伊地知さんと高専校舎内部に入っていく。空き部屋何ていくらでもあるのでそこで寝泊りしてもらう事になるだろう。七海と五条は一足先に校舎へ入っていく彼女を見ながら双方の見解をすり合わせていた。
「実際そうでは?まあ、規定道理なら呪詛詩扱いではありますが」
七海は上の人間ではないが規定に即した通りに動くべきだと考えている。故に少女に関して言えば上から死刑宣告されたとて仕方がないとも半ば考えていた。もちろん、少女がそれを望まないのなら全力で手助けしようとも大人の立場から考えていたが。
「僕の目からはどちらかというと特級呪霊に見えたけどね」
その言葉におもわず目を見開いて五条の方を見返す七海。しかし五条の口調にも表情にも冗談めかしたものは何処にもなかった。
追記:サブタイが...