六色の呪術使いアリス   作:ナチュラル7l72

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前話の誤字脱字を直しました。夜中だとぼーっとして何が何だか分からなくなる


第5話

「真希の任務についってってくれない?」

 

昨日の授業にて適当に指導した私は悟から10万円を貰っていた。「本来は月給だから給与されるのは年末なんだけど、アリスって手持ち今ゼロでしょ?しなさそうだけど飢え死にしちゃう前に初の仕事祝いってことで渡しとくよ」と言われ渡されはしたものの、万の単位が魔界で言うどの程度なのかよくわからないわね。けれどコンビニでおにぎり一個買う時一万円紙幣を出したら店員にあんまり人前で出したらダメな類の表情をされたのでおにぎり一個に支払うには多すぎるという事なのでしょうね。おかげで財布が重くなってしょうがないわ。

 

そんな私だけど、魔界から魔術研究に関する魔術書やらを一式を持ってこれなかったのでここ人間界では人形の自立化について勉学に励むことができなくなっている。古本屋さんにて魔術書を探しそれっぽいものを買って職員室で読んではいるもののむちゃくちゃな魔力の記述、意味不明な原理。

 

アリスは溜息一つ、そして買ってから一時間も経っていないその本を焼却しゴミ箱に放り込む。そんな所に五条悟は声をかけた。

 

「何故?真希は見る限りその辺のには負けないと思うけれど」

 

「真希は二級くらいの力量は持ってるんだけど四級術師ってことにされちゃってるからねー。単独任務ができないんだよ。けどそれは本題じゃなくてアリスには教師だけじゃなくて呪術師としても働いてもらうつもりだからさ。というか本来は呪術師から教師へ転向するものだから順序は逆なんだけど」

 

だから真希のお守りってよりはアリス用の研修だね。そう続ける。

 

確かに人間界で言う呪術師になったものの一度も任務を受けてなかったわね。やることもないし暇つぶしにはなるかしら。上海にokマークを作らせて私は席を立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで私も貴方の任務についていくわ。足手まといにならないようにせいぜい頑張るつもりだからよろしくね」

 

「…いや、まあ、たぶん私より強いと思うからその辺は心配してねえけど」

 

車にてそう会話を交わしながら任務について花を咲かせる。

 

場所は廃れた神社に現れた呪霊。

堕ちた神。などではなくなんとなく怖いイメージから生まれた負の化生が住み着いているだけらしい。幸いその神社自体の知名度が低いおかげでそれ程強くもないらしく四級術師である真希にお鉢が回ってきたようだ。

 

「しかし、いつどこでも例外というのはあり得るものです。ですので自分の身の丈に合わない強さだと感じたらすぐに逃げてください」

 

補助監督がそう釘を打ち、そして闇の魔法を展開する。

 

「闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え」

 

天より黒い結界が構築され始め地面に到達する。どうやら外から内への視覚を妨害する効果と中の呪霊を炙りだす効果があるみたいね。なんで即効性のある、例えば中に閉じ込めた生命体を焼き払う等の効果が付与された結界にしないのかはまったくもってわからないけれど、これが呪術界のしきたりなのかもしれない。口出しせず黙って任務についていった方がいいのでしょうね。

 

「それでは、お気を付けください」

 

その言葉を背に受けながら私たちは結界の中へと身を躍らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真希は見た所その魔導具で戦うのよね?なら私は遠距離からサポートするわ」

 

悟はああ言ってはいたものの、何割かは真希の補助の意味合いもあると思う。聞く限りによると真希は実家から相当嫌われている。そして最悪な事にかなりの権力も持っているというらしいのだ。だから上から指名される任務に茶々を入れられていてもおかしくないでしょうね。

 

「わかった。なら私が前衛を務める。後ろから不意打ちしてくる奴もいるから気をつけろよ」

 

けれど真希の技量を無視して全てを私が破壊してしまっては真希のためにはならないものね。だからあくまで私は補助。右斜め後ろ20mから殺気を放ってくる塵と同等の呪霊やちょっかいかけたそうにこっちを嗜虐心に満ちた目で見てくるうっとおしい蠅頭なんかを上海に処理させつつ自然の魔法で本命の気配を探っていく。

 

…いたわね。強さはパンダが2人、いや2匹いれば余裕で勝てるくらいかしら?固有の能力があるならその限りじゃないけれど。

 

「…いたな。神社の、屋根裏辺りか?たぶんそこらへんに居座ってるな」

 

「なんの魔法も使っていないのによくわかったわね」

 

そして私が察知したのと同じくらいに真希もその気配を探知していたことに、私は驚きを隠せずにいた。境内にすら入っていないこの距離から察知するには生身ではかなり厳しいはず。それこそ魔力が枯渇した状態の私じゃ絶対に無理ね。

 

「感覚みたいなのは感じんだよ」

 

魔力ゼロを代償にした身体能力というのはそこまで凄まじいものなのね。五感だけで気配を感じとる人なんて初めて見たわ。

 

そんな私の思いを傍らに真希は肩にかけられてた呪具をブンと振り構える。そしてそれに呼応するように神社の屋根が破壊されそこに居座っていた化生が顔を出した。

 

手に長い錫杖を持ち黒い袈裟を被った修行僧のような姿。だがそれは上半身だけでありアラクネのように複数の足を持つ巨大な下半身が袈裟の中でうごめき粟だっている。

 

A̙̟̱͍̗̥͎̙̎̀̀͐̓̃ḁ̖̦̞̠͌̑̆̈́͛ͅa̮̣̪̮̙͐̋́̆̋̀ Ả͍̦̣̙̊̊̐̋̿̌͌̚A̬͔̯̟̲̮͍͖̣͛̒̅̎́ͅͅA̮̘͎̗͖̥̥͇͛͐̃͛̇́̆̂͐͊̅A͓̩̙̫̟͙̩͎͈͌̓͊́̊̔̃̈͌͂̃̚ A͕̦͒͌͐̄͆̐͐̽͒͒͛̀a̠͎̫̙͉̦̥̬͙̱̠͛͐̎̓̎̋̃̉̋a̰̦̦̗̋̀̔̃̉͆̓́å̝̟͕̰̂͊͒̄̄͊̈́̇́̓̋ a̜͇̣̿͂͐̅ͅ

 

喘ぎ声の様な恫喝の様なよくわからないドスの効いた叫びをあげる。がそんな無駄なものに付きあう私たちではない。大地の魔法が記されているページまで捲る、間に真希は既に呪霊の元へ駆け出していた。

 

「ッ…!」

 

薙刀を振りかざし、その攻撃を防ごうと伸ばしてきた黒い腕に袈裟ごと切りつける。斬りつけられた傷からだらだらとタールのような粘り気のある体液が流れ出てきていた。

 

「真希。貴方に大地の加護を与えたわ。車と衝突するくらいの衝撃なら吸収してくれるけど魔術には無抵抗だから気を付けて」

 

「ありがと…!」

 

呪霊が錫杖を振るう。すると射線上に黒い波動が地を走り林を抉っていく。

真希の体にも少し掠るが事象を引き起こす根源こそ魔力によるものだが事象そのものは物理的なものだったようで無傷で切り抜けた。

 

うーん…あの攻撃が物理的なものだと見定めた上で避けなかったのか、それとも避けきれなかったのか。注意すべきか悩むわね。まあ喰らってしまったとて支障が出るわけではなさそうだけど…

 

そんなことを考えているうちに戦いも佳境に入る。薙刀を勢いよくを振りかざし、しかしリカバリーも考えてかすぐに構え直せるよう小さく切りつける。

だがその程度の小細工に構える余裕がある程弱い呪霊ではない。下半身にある無数の手足をうごめかせ素早く這いまわる。人間では難しい挙動、故に人である真希は予測不可能な動きに翻弄され接近を許してしまった。

 

「ッぐ…!」

 

呪霊は錫杖を振りかぶり人外染みた力で殴りつける。側腕部に叩きつけられた錫杖自体は魔法で作られたものらしく大地の魔法むなしく貫通し真希は殴り飛ばされた。傍目でも真希の腕は使い物にならないくらいに毀され痛々しい。ゴミ袋のように吹き飛んできた真希を受け止めつつ光の魔法のページを上海に捲らせた。

 

容態は…上腕骨、尺骨、橈骨、そして肋骨の一部を破壊されているようね。まだ命に別状はないしこの程度なら簡単に癒すことができるけれど、次喰らったら私が治療できないくらいぐちゃぐちゃにされてしまう可能性もあるわ。

 

…ここが際かしらね。

 

「真希。貴方のダメージは大した事はないわ。私ならすぐに治療できるしそうじゃなくとも貴方の自然治癒力なら二週間ほどでたぶん治る。けれど次攻撃を受けたら治療困難な容態になってもおかしくないわ」

 

グリモワールの光の魔法のページを開き治療の魔法を展開する。その光に当たった腕と胴はみるみるうちに血色良く再生し始めた。

 

「私なら一撃であの呪霊を殺害できる。真希はここで待って…」

 

「いや、私がやる」

 

待ってて、と言おうとしたところを真希は遮ってくる。…真希の性格ならまさか、と考えていたが本当に言ってくるとは思わなかったわ。

 

論理的に誰がどう見てもここは私が出張った方が良い。

けれど真希の方を見た時、その思いは消え失せていた。

 

「この任務は上が…もしかしたら禪院の奴らが私に投げてきたものかもしれねえ。だから私が達成しなきゃいけないんだ。他の誰でもない私が」

 

決意と闘志に満ちた炎を宿した眼。その瞳は私がどれだけ干渉しようとも止める事が出来ないと見切りをつけるには十分すぎた。

 

「はあ…死にそうになったらその戯言無視して私があの呪霊を倒すから」

 

溜息を一つ付き、私は諦観の念を込めてそう言う。

それを見て真希は申し訳なさとそれを上回るやる気を見せ武器を構え直す。既に傷は癒えきっていた。

 

「…ありがとな」

 

その言葉と共に真希は駆け出し呪霊へ肉薄する。当然遠距離攻撃の手段を持っている呪霊はそれを許すはずがなく長く伸ばした錫杖を目にもとまらぬ速さ、魔法を使っていない私なら確実に見えない速度で振りぬく。

 

だが一度受けたことのあるそれに対応し真希は紙一枚分の隙間で避けきった。そして薙刀を一閃。

 

呪霊の頂頭部から臍にかけて刃は容易く通り抜け、呪霊は塵となって消え失せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真希。貴方なんで命を張ってまで自ら戦ったの?」

 

「…いや、悪かったとは思ってるよ」

 

「別に怒ってるわけじゃないけれど」

 

推定二級相当の呪霊。当然私の敵ではない。だが真希にとってはややもすると死ぬかもしれない状況だったはず。なにが真希にそこまで駆り立たせたのか。私はそれが気になった。

 

「私が実家の奴らに馬鹿にされて、蔑まれてることは知ってるよな」

 

「ええ。魔力が全くないから魔法至上主義の人たちにはいい的だったでしょうね」

 

「ああ。私には術師の才能は一ミリもない。術式もなければ呪力もない。だからこの眼鏡がねぇと呪いも見えねぇ」

 

私の私見では別に戦闘の才能がないわけではない。身体能力に加え反射神経や戦闘センスも十分。

 

けれどそれだけ。搦め手を使う相手にはなすすべなく殺されてしまうだろう。今回は突破したが次負けない保証何てどこにもない。

 

「なら何故…」

 

「嫌がらせだよ。見下されてた私が大物術師になってみろ。家の連中どんな面すっかな」

 

きっと私には想像もつかないほどの辛いこと、人生を投げ捨て墓に埋まりに行くような真似ができるほどの事柄が起きたのだろう。

 

そう予想していた私に悪童のようなクソガキチックな笑みをみせる真希。思わず足の力が抜けガクンとつまずいてしまった。

 

そんな事によく人生捧げられるわね…。そう共感を捨てた感情を持ちそうになった私。けれど寸でのところで気が付いた。

 

「大概私と同じ…ね」

 

「ん?」

 

傍から見ればきっと私の夢も、きっとどうでもいいこと。私と真希は共にどうでもいいことに全てを賭けていた。

 

「きっと叶うわ。死ぬかもしれない状況にためらいなく飛び込める真希なら」

 

「…あっそ」

 

「けど貴方はもう少し人を頼った方がいいわ。危なくて見てられないもの。それと後で然るべき所にちゃんと顔を出すようにしなさい。脳に異常があってもおかしくないから」

 

「いや、それは悪かったって!あと脳に異常は言い過ぎだっての!」

 

「だったら人に頼りなさい。貴方の夢のためなら私も手を貸すわ」

 

「わーったよ。だからさっさと帰ろうぜ。風呂入りてえ」

 

神社が造営がされていた森を抜け補助監督が待つ車へと向かう。その途中に私もアリスの夢に手を貸すからよ。とぽつりとつぶやかれたその言葉に私はニコリと笑みだけ返し、了承も否定もしなかった。

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