六色の呪術使いアリス   作:ナチュラル7l72

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投稿遅れて申し訳ございません。
夏休みと前期末試験と秋休みを満喫していたおかげでまったく筆を握っていませんでした。電車登校が増えるのでまた近いうちに登校します。


第7話

憂太が海外に行って数週間。

時々任務を受け、それ以外は外に繰り出し裁縫の技術やその作業を効率化するための機械について造詣を深める。

まだまだ慣れない所は沢山あるものの私は段々と人間界の生活にも馴染み始め箸も上手く扱えるようになってきてた。

 

しかし闇の魔力を扱えるようには未だなれずにいた。

悟や七海さん、なんなら生徒であるパンダや棘にも指南を乞いてみたもののやはり習得できなかった。

 

端的に言って彼らとは見えている景色が違うような気がしてならない。

彼らの中に当たり前に点在している何か。それを私は読み取れず闇の魔力を捻出しようとしても失敗してしまう。

そもそも何故彼らは異常とも言える量の闇を内に内包しているのか。今までは生物としての特徴かなんかだろうと無視してきていた事だが原因である何かが闇の魔力捻出の鍵になるとしたら?

 

私になくて彼らにあるもの。その中で一番に怪しいのがそれだ。疑わない方が不自然だろう。だから目下の目的闇の魔力製造機であるその何かを私も身に着けること…

 

(まあ…その何かがまったくわからないのだけれど)

 

いくら考察した所で肝心な何かがまったくもってわからない以上延々と脳内に流れてきていたその話題を無駄と断じ頭から追い払う。

先行き見えない未来に対し憂鬱な気分のまま針と糸を裁縫箱から取り出し暇つぶしに蓬莱人形を作ろうと布に針を掛けようとしたその時。

 

「失礼します。アリス先生はいらっしゃいますか」

 

ガラリと扉が開き畏まった言葉で私の在室を確認するツンツン頭の恵がそこに立っていた。

 

「いるわよ。どうしたの?悪いけれど質問なんかされても私答えられないわよ。魔法には明るいけれど呪術はからっきしだから」

 

「呪術高専の教師としてどうなんですかそれは」

 

私としてはどうしろとと言いたいところではあるのだけれど。私を雇った張本人の悟に言ってほしい。闇の魔力だけがピンポイントで使えない私も悪いのかもしれないれど。

 

「五条先生から特級呪物である宿儺の指回収の依頼を回されたんですが

その任務の重要度を鑑みて俺一人で遂行するには不安要素が大きいので、よければアリス先生も同行してくださらないでしょうか」

 

「構わないわ。任務全然回ってこないから最近暇なのよね」

 

だというのに何に使うか未だによくわかってない紙幣を給料と称され渡されたとて食料を買う以外に使う事がなくバッグの中に積み重なるばかり。最近は紙幣がどんどん硬貨になっていきバッグが重くて仕方がない。

職員室の扉を通り抜け校庭に出る。校門の外に止まっている黒塗りの車が今回の補助監督の乗っている車だろう。

 

「…いや、任務が回ってこないって、アリス先生結構強いはずですよね?たしか一級術師に認定されていたはずでは?」

 

「よくわからないけれど私悟経由で渡される任務しか受けてないのよ。なんか上層部から回される任務は悟が全部はじいてるとかで。だから詳しくは悟に聞いてほしいわ」

 

そういうと恵は「あの人まさかアリス先生を私用してる…?」とかなんとかつぶやいているが私には何の話かわからない。これでも上海達が耳になってくれているからこの校舎一帯の情報に私は強いはずなのだけど。だから悟が七海さんの買ってきたカスクートを許可なく貪っていることも知っているしそれを知った七海さんがブちぎれようにも実力行使できないからストレスを呪霊にぶつけてることも知っている。

 

「それで、宿儺の指回収と言うけれど具体的にはどんな流れでそれを回収するの?」

 

「その特級呪物は宮城県仙台市に設立された高校に保管されてるんですが、元々の呪物としての強さも相まって段々とその封印が解けてきてるんです。だから封印が解けきって呪霊が寄り集まる前にさっさと回収しようってことで俺が派遣されたんです」

 

「つまり学校に行って物を回収しようって話よね。恵一人でも十分ではないの?」

 

「アリス先生、凄まじい練度の呪力操作を持っておきながら変な所で世間知らずですね。」

 

失礼な。というかなにが。…まあ、何か認識してない時点で自認したも同然なのだけど。

 

「宿儺の指と言ったら数あるものの中でも最悪最強の呪物です。封印された状態ならまだしも解けかけているそれの呪力に寄ってくる呪霊の数と質は半端じゃありませんよ。だというのにあの人は…」

 

最初は呪いに関する知識の話だったがだんだんとだれかさんの愚痴になってきている気がするのは私だけかしら。

 

「俺がたとえ寄ってきた呪霊を全て祓ったとしても呪詛師がいる可能性もあります。宿儺の指にはそのくらいの勝ちがあります。だからアリス先生にはいざという時の護衛としてついてきてもらいます」

 

「了解よ」

 

任務の話が終わると恵は目を閉じ睡眠の体勢に入る。都合よく、いや想定していたのか白いアイマスクも身に着け熟睡しようとしていた。もしかして宮城ってここ東京からそんなに遠いの?

 

特段私から話しておきたいこともない。睡眠の邪魔をするのも悪いので大きな音の出ない作業をしようと心がけながら人形作りに励むとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恵。ついたわよ」

 

四時間かけて車で宮城に走り着く。既に夜は更け辺りは街灯が無ければなにも見えていないであろう闇に包まれていた。

 

しかしこの辺りに蔓延る魔界基準でもかなり大きい魔力の気配。言われなくともここが件の呪物が保管されている場所なのだろう。

 

「…」

 

声をかければ錆びついたような動きでアイマスクを外し目をしばたたせるまだ眠気が覚めていないよう。

 

「眠いのなら水かけてあげるわよ?」

 

「やめてください。服びしょ濡れにするつもりですか」

 

扉を開け黒い車から外に出る。やはり辺りは暗く何故こんな時間帯に任務を遂行しなければいけないのかがまったくわからないくらいだ。

 

「逢魔が時ではないけれど、まともに前も見えないのは大丈夫なの?」

 

「今回は一般の学校に半ば不法侵入の形で入るので夜でないと回収が難しいんです。封印が解けかけているとはいえ完全に解けるまでは呪霊は関知しずらいし非術師にバレるリスクは背負いたくありません」

 

扉をばたんと閉め恵はポケットからスマホを取り出す。この前それの携帯を勧められたが何分機能が多すぎて何がなんやらわからなくなってしまい今は荷物の肥やしになっている。無駄に機能が多すぎるというのは逆に機能美を損ねるものなんだとその時知ったわ。

 

「…んんっ。では任務の概要について説明します」

 

バインダーを片手に車から降りた補助監督…たしか伊地知潔高とか言ったかしら?潔高が軽く咳払いをし私たちに向けて話す。

 

「といってもこれは正式な任務ではありません。五条さんが独断で、より厳密にいうなら上の方々には内密な任務です」

 

とそこまで話してちらりと私を見る潔高。何を意図しているのかわからず首を傾けると再度咳払いし折った話の腰を逆に折り直す。

 

「…まあ、いいでしょう。アリスさんには恵くんのサポートを、恵くんは"誰にも"呪物を渡すことなく五条さんの元へ届けてください」

 

「わかりました」

 

夜の帳の暗さにようやく目が慣れ車が停まった建物の造形が目に入る。

 

看板には「杉沢第三高校」と書かれ白い壁面の校舎と校門から見てもわかる広い庭が鉄条網越しに見える。

 

「では、健闘を祈ります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「といってもこれただの窃盗よね。健闘する要素が見当たらないわ」

 

「…まあそうですね」

 

一応裏口とはいえ堂々と門から入る私たち。だがここら辺は人の行きかいが乏しいこともありまったくもってバレる気がしない。校舎内も闇に包まれているらしく一切の光が漏れ出ていなかった。

 

「その件の指とやらはどこにあるの?」

 

「…五条先生が『これちょー機密だから現地に着いた時教えてあげる』と言っていたのでまだ知りません。なにやら上がきな臭いとか言ってましたが…」

 

明らかに切れ気味にそう言う恵に少し同情する。だって悟ならこの後「今ゲーム中だから後でかけ直して~」とか言いそうだもの。機密っていうのも今までの行いからただの言い訳にしか聞こえないわ。

 

ぴりぴりぴりと自然界じゃ決してならないような音を小さく鳴らして電話をかける。3コール目でその音は止まり携帯から声が聞こえてきた

 

「はーいGTGの五条悟でーす。なんか用?」

 

「…現地に着いたんですが」

 

「あ、もう任務中か。そういえば時刻もいい感じだったね。いやー僕としたことが時間にルーズに、」

 

「早く要件を話してちょうだい。恵の顔がすごいわよ」

 

横から顔を出し電話口に顔を近づけ口出しする。その途端恵が顔をのけぞり携帯が動かされるが恵の手ごと固定し近づけた。

 

「…ん?アリス、恵と一緒にいるの?」

 

「そうだけど?」

 

「…」

 

そして沈黙が場を支配する。電波とやらを利用して長距離通話を可能にしているらしいので、もしかしたらそれが壊れたのかとも思ったが右上のUIはしっかり点灯している。

 

恵と顔を向けてみるが顔を横に振りよく分かっていないようだ。

 

「…ま、いいか。恵この声聞こえてるー?」

 

電話を恵に返すと恵は悟に応答しようと口を開ける。

 

「はあ、聞こえてますけど」

 

「じゃあ絶対!他人に盗られないで呪物持ち帰ること!でももし誰かに盗られたらナルハヤで伝えてよ?そいつ殺しに行くからさ」

 

濁してはいるが私の事なんだろうなと半ば気づいているがそんな意識の混濁の中でも話は続いていく。

 

「とりあえずどこに保管してあるかだけ先に言ってもらえませんか」

 

「百葉箱の中」

 

「百葉箱?!」

 

ここまで人に見つからぬよう声を潜めていた恵だが流石に耐え切れず草木が生い茂っている校舎の端の方にて叫びながらオウム返しをする。

 

百葉箱…牛の胃の箱?と思いつつ指示された場所まで恵を筆頭に歩いていく。一応は護衛なので身構えていたが結局その百葉箱なる白い箱が見えてなお校庭辺りにひとつ気配があるのみでここら一帯には自然の気配しかしていなかった。

 

「そんな所に特級呪物保管するとか馬鹿過ぎるでしょ」

 

「アハハ。でもおかげで回収も楽でしょ」

 

「元々回収する予定だったの?」

 

「そそ。それさあ、ほんとはもっと早く回収する予定だったんだけどね。でかい呪いで雑魚呪霊を抑制しよう!とか馬鹿すぎるからね」

 

その箱の側面にはひだのような溝が並んでおりそれが百葉の由来かとひとり納得している最中恵は鍵がついているはずのそれをこじ開け中を確認する。

 

中には何もなかった。

 

「……ないですよ」

 

「ないわね」

 

「え?」

 

「百葉箱の中空っぽです」

 

「マジで?ウケるね(笑)」

 

「ぶん殴りますよ」

 

「それ回収するまえ帰ってきちゃダメだから」

 

「…」

 

「はあ…後は私が聞いとくわ」

 

精神汚染が酷そうな恵から携帯を取り上げ電話が恵に聞こえない程度の位置まで歩く。その間恵は木を蹴り飛ばし木の葉を散らしていた。これは相当キてるわね。

 

「回収できなかった場合はどうするの?まさか本当に帰さないわけじゃないわよね?」

 

「うーん、指のある場所僕しか知らなかったはずだからそれって偶発的なことじゃない?たぶん調査していくうちに間違って盗っちゃった子、見つかるでしょ」

 

要は呪術とか魔法とかに関係ない一般人が興味本位に取ってったと可能性を悟は見ているわけね。悟って割と社外秘とか気軽に口出しそうだから正直信用ならないけれど。

 

「…ということは」

 

「うん。明日もよろっ」

 

こうして初の任務連勤及び外泊が決まったのであった。こんなに長丁場になるなら恵の頼み断っておけばよかったわ…。手を出した以上遂行はするつもりだけど。それにしてもこれからどうするべきかしら。地道に声をかけるくらいしか思いつかないわね…




次回
「ドキ!恵とアリスのホテルでの一夜!男女一つの部屋で何も起こらないはずもなく…?」
をお送りいたします。でもたぶんこのふたりの性格上それぞれ別部屋になるのでなにも起こりません。
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