六色の呪術使いアリス   作:ナチュラル7l72

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第8話

「というわけで。外泊するわよ」

 

学外に出て補助監督の潔高が運転する車に乗り込む。至極当然の発言をしたけだというのに何故か恵は稲妻が走ったような顔をして黙りこくっている。ついでに潔高も静寂を守っていた。

 

「どうかしたの?」

 

「…いえ、なんでもありません。すごい失礼な事を考えていました」

 

ばつが悪そうに顔ををそらしながら恵はそう言う。

隣でハンドルを握り運転している潔高を見ても何も言わずに固唾をのむのみ。

まさか私の最良とも言えるこの案になにか不服でもあるのだろうか。そう思い、いかにこの案が優れているのかを説明すべくさらに言葉を連ねる。

 

「私達が探す呪物が放っている魔力の量が莫大過ぎてまったく場所が捕捉できないけど、元は校舎内にあったものなのよね?なら学校の部外者に持ち帰られたというのは考えにくいわ。まあそれでも部外者に持ち去られている可能性もあり得なくはないから、悟か七海か誰かに知らせる必要はあると思うけれど。だから今日は寮に帰らずこの辺りで泊まって明日の昼、生徒や教諭に聞いてみるのが一番効率的よ」

 

というわけで勝手にカーナビを弄くり適当に近場のホテルを探させた、はずだったが潔高が「ここはダメです。色々と」と言い場所を変える。宿泊施設に良いも悪いもあるのかしら?私は別に泊まれる場所さえあればそれで十分なのだけど…

 

けどまあ私の完璧な案は無事可決されたということで車で近場のホテルに宿泊しようと移動すること10分前後。

 

暇になった私は心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく頭に巡らせる。それにしても本当に凄い魔力ね。それなりの距離を移動したのにもかかわらず未だにその呪物から放たれる魔力の気配が私達を包んでいる。魔界でも類を見ないほど高い魔力。*1あんなに魔力を孕んでいるなら動力源にでもすればいいのにと思うのは私だけかしら?

徒然なるままに考えを広げていると視界の端で未だに物憂げに顔を垂らす恵。まだなにか不安があるのかしら。恵みの方に顔を向け傾ける。その意図に気がついた恵は口を開きよしなしごとを呟いた。

 

「…まさかその服装で聞き込みするつもりですか?」

 

「なにか不都合でもある?」

 

腕を広げて今一度自分の容姿を見つめ直す。恵と同等ぐらいの背丈。可愛らしい人形のような顔。この容姿なら学生と偽ってもバレることはないだろう。本当はお母さんの様にもっと凛々しい顔立ちになりたかったけど。まあお母さんにかあいいって言われるのは嫌いじゃないけどね。むしろ好き。だいぶ好き。大好き。

 

「というか、私コレしか服持ってないから」

 

「マジすか…」

 

高専からここまで遥々来たというのに、また帰ってそこで寝て、そして朝また来るというのは流石に非効率が過ぎる。ここらのホテルで一泊すれば時間的な問題は解決だ。

 

「とりあえず、最寄りの宿泊施設に到着しましたが…」

 

「ありがとう。今日はここで寝泊まりするから迎えは任務帰りでいいわ」

 

「は、はあ。あの、いいんですか?本当に」

 

「?別に私たちだけで解決できそうだし、大丈夫だと思うわ。不安なら悟に応援を頼めるかしら?たぶん忙しいのとめんどくさくて来ないと思うけど」

 

「いえそうではなく…まあ、伏黒君なら大丈夫でしょうが…」

 

何故か謎の心配をしている潔高。そんな彼が運転している車もじきにブレーキが踏まれ大きい縦長の建物の前で止まった。

もはや手慣れた動作でノブを押し車から降りる。夜の帳は既に落ち切り丑三つ刻を過ぎようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の夢は自分の意志を持つ完全自立型の人形を創ること。そのためなら私の長い人生全てを掛けてもいいとも思っている。

 

だがもしかしたら。心の奥底では醜悪な何かが巣食っていたのかもしれない。

 

その辺に居る魔獣を捕縛し糸を括り付ける。その姿はまるで傀儡(かいらい)の様。

 

『傀儡を操作する能力』

 

魔力を流し、判明する。これが私の身に刻まれていた能力だったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…はあ

アリス 私の大事なアリス

貴方は私の子供たちの中でも群を抜いて聡明なのに 変な所で心得ちがいするわね

アリス 貴方はもっと世間を知るべきよ

その勘違いはあなた自身が認識しないといけないものだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリス先生?」

 

「…いえ、大丈夫よ」

 

突然立ち止まる私に訝し気な視線を向ける恵に言葉を返す。飛びかけていた意識を暗闇から掬い出し目を現に向けた。そうだ。私たちは宿泊するためにホテルに入ったんだった。

 

「とりあえず受付しなければ…ね」

 

カウンターに足を運び一声かけると座っていた20後半に見える女性は私の容姿を見て驚いたような表情をしたが、すぐに平静へと戻し対応してくれる。

 

「すいません。残っている部屋が一つしかないんですが…」

 

「一部屋貸してくれるだけでも結構よ」

 

「…は?」

 

手早くお金を払い鍵を貰ってカウンターを立ち去る。その場には何故か呆然としている恵だけが取り残されていた。

 

 

 

 

 

 

 

「あの、」

 

「ええわかっているわ。とりあえず明日の予定の確認ね」

 

荷物を部屋の隅に片しベッドに腰掛ける。ふわりとした触感。けれどその体が完全に沈みこまない絶妙な弾力。これは良く眠れそうね。

 

「聞くところによると学生諸子はだいたい九時ごろに授業が始まるのでしょう?ならその前に上海達を学校中に置いて監視しましょう。上海達は私の目と耳と成るだけでなく簡単な命令も聞いてくれる。だから近づいた人間の魔力量が急に高まったらその人間が黒だとわかるわ」

 

座る私に対して何故か立ちっぱの恵。さっきからずっと立ってるけど、疲れないのかしら?そんな疑問が湧いて出るが眠気に誘われ疑問は沸いて蒸散していった。

 

「じゃあ私は先に眠らせてもらうわ。おやすみなさい」

 

「は、はあ。…おやすみなさい」

 

薄暗い部屋の中、瞳を閉じ闇に身を置く。散らかった思考は段々と静まっていく。

 

未だに何故か恵は寝ようとせず立ち尽くしているが、私は悟と違いしっかり空気を読める。だから一つしかないベッドを全部占領せずの端に寄り恵も寝れるスペースを作り出した。

 

ふふ…私ったらやっぱり聡明ね。お母さんにそう言われてたんだから間違いない…zzz

 

「俺は一体どうすれば…」

 

そんなかすかな声が聞こえた気がしたが、その時すでに私は夢に漂い一瞬で忘れてしまっていた。

*1
お母さんを除いてね!




ここで、新しい伏線を出すことで、まだエラッタしてない事をつたえていくううううううう!
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