【伝記】ドラゴンクエストⅤ ~天空の花嫁~   作:和成ソウイチ

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131.二人の戦士

 

 敵の動きは遅い。アランとスライムナイトは懐に飛び込むと、ほぼ同時に横薙ぎに剣を振る。アランの剣で『くさったしたい』が、スライムナイトの剣で『まどうし』が、それぞれ悲鳴を上げた。

 

「土に還るのです。我々は貴方たちとは違う」

 

 崩れ落ちるモンスターを前に、スライムナイトは告げた。

 アランはくさったしたいに第二撃を加えるべく鋼の剣を振り上げる。だが、四つん這いになったくさったしたいの顔を見て思いとどまる。くさったしたいはそのまま動かなくなった。

 

 スライムナイトが視線を前に向けたままアランを賞賛した。

 

「会心の一撃でしたね。さすがです」

 

 ありがとう、と言いかけて気付く。

 

「君、気をつけて。敵はまだ戦う意志がある」

 

 アランの警告と同時に、膝を突いたまどうしがスライムナイトに掌を向けた。骨と皮だけの顔を歪め、呪文を詠唱する。

 

「――、ギラ!」

 

 火炎魔法。うねりを上げて炎の帯がスライムナイトに直撃する。

 しかし、彼は盾を一振りしてその炎を振り払った。目立った傷も火傷もない。驚愕するまどうしに向け、スライムナイトは再度剣を振り上げた。

 

「往生際が」

 

 剣閃。

 

「悪いです」

 

 脳天から一直線に切り裂く。

 呻き声を残し、まどうしは身につけていたローブごと消えてなくなった。

 

「アラン」

「わかってる」

 

 短く声を掛け合い、二人は残ったガメゴンに相対した。仲間があっさりとやられたことに動揺を隠せないガメゴンに対し、アランは右に、スライムナイトは左に散った。敵が硬い甲羅の中に身を隠す前に、その首元目がけて剣の切っ先を突き立てる。

 吹き飛ばされ、壁に激突したガメゴンは、やがて光の粒子となって消えた。

 

 しばらく周囲を警戒していたスライムナイトは、剣についた汚れを払う仕草をした。

 

「終わりました。先に進みましょう」

「……いともあっさりやってくれるなあ。俺たちの援護いらねえじゃん」

 

 ヘンリーが感心半分、呆れ半分に言い、歩き出す。すぐに後ろを振り返った。

 

「おい、どうしたアラン。先に行くぞ」

「ちょっと待って。この子が」

 

 跪くアランの前には、あのくさったしたいがあった。俯せに倒れる姿はまさにモンスターの名前通りである。嫌な連想をしたヘンリーは顔をしかめるが、アランはまったく気にした様子はなかった。

 

「――、ホイミ」

 

 回復呪文をかけると、くさったしたいはゆっくりと顔を上げた。

 

「立てるかい」

「う、あ」

「あの中で、君だけが強い敵意を持っていなかった。もし無理矢理戦いに引き出されたのなら、このままここを出て元の住処に戻った方がいい」

「おで……わがらない、(みぢ)

「そうか。どうしようヘンリー。帰り道がわからないんだって」

「結論が出てることを俺に聞くなよ」

 

 今度は完全に呆れた様子でヘンリーが肩をすくめた。

 

 するとスライムナイトが寄ってきて、くさったしたいに剣を突きつけた。アランは眉間に皺を寄せる。

 

「何をするんだい?」

「落ち着きなさい。あの集団の中にいたということは、この者の住処もまた好戦的な連中の集まり。戻っても再びここへ連れ出されるでしょう」

「その繰り返しなら、いっそこの場でとどめを刺した方がこの子のためだ、と?」

「そうです」

 

 断言するスライムナイト。兜の奥の表情は見えないが、その口調はまったく揺るぎない。アランは彼の剣に手を添え、剣先を下げさせた。スライムナイトが問う。

 

「良いのですか」

「うん。僕はこの子を連れて行く。戦いには参加できなくても、この子の居場所には心当たりがあるんだ」

「そうですか」

 

 そう言って魔物の騎士は剣を引いた。意外と簡単に矛を収めてくれたことに、アランは首を傾げる。

 

「君ならてっきり、『そんな甘いことを言うな』とでも注意するかと思ってた」

「心外です」

 

 一言言ったきり、スライムナイトはドラゴンキッズを連れ先に進んで行った。

 

 苦笑を浮かべたアランは、くさったしたいに向き直った。落ちかけた目がこちらをじっと見つめている。

 脳裏に浮かんだ言葉のままに、アランは言った。

 

「僕たちと一緒に行こう。君の名前は――スミスだ」

 

 

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