【伝記】ドラゴンクエストⅤ ~天空の花嫁~   作:和成ソウイチ

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227.幼馴染の実力

 

 隊列を組みながら、慎重に奥へと進む。

 洞窟の広さは探索を進めても変わらない。戦闘も退却もしやすそうだなとアランは思った。

 

「レヌール城も広かったけど、ここもすごく広いね。しかも明るいし」

「天然にできた洞窟……ってわけじゃないんだろう。きっと」

「そっか。――ねえねえアラン」

「ん?」

「ばぁ! おばけだぞぅ!」

「……ビアンカ」

「さすがにもうびっくりしないか。あはは、ごめんごめん」

「僕は覚えてるよ。レヌール城で怖がってたの、ビアンカじゃないか。お姉さんに任せなさいって顔してたのに」

「も、もう! そんなことまで覚えてないでよっ。だって仕方ないじゃない。あんなに雰囲気があるとは思ってもなかったんだもの。……まあ、でも。すぐにアランが助けに来てくれたし、一緒だったから怖いのもなくなったけどね」

「……ふふ。そうだね。一緒だったから『おやぶんゴースト』も退治できたし、レヌール城の皆も解放できた」

「うん。あ、そだ。今から思えば、『おやぶんゴースト』が大人しく立ち去ったのって、あのときからアランのチカラが発揮されてたのかも。最初はびっくりしたよ。あんなに悪いことしてたモンスターを許すのかって」

「ああ……そう、なのかな。確かにあのとき、『おやぶんゴースト』の目を見て、彼はもう大丈夫って思えたんだ」

「へー、やっぱりそうだったんだねー。あ、それからね――」

 

 道中、楽しそうに昔話をするアランとビアンカ。

 彼らの後ろ姿を、仲間モンスターたちは神妙な顔で見つめていた。

 

「アランってさ、あんな顔でおしゃべりするのね」

 

 ふと、メタリンが言った。

 彼女は今、スラリンとともにチロルの頭の上にいる。いつもはアランの側にいることが多いメタリンたちだが、今は気を利かせて下がっているのだ。

 

「楽しそうにおしゃべりしちゃってさ。ウチのパーティで、アランとあんな風に話ができるヤツっていないんじゃない?」

「そだねー。あ、でもヘンリーとはあんな感じだったよ」

「スラリンさぁ……あいつとビアンカじゃあ、違うじゃない」

「違う? なにが? どして?」

「それは、そのぅ。イロイロよ、イロイロ!」

 

 上手く言葉にできずモヤモヤしたのか、メタリンは八つ当たりするようにスラリンに体当たりした。頭の上できゃいきゃいはしゃぐ二匹に、美貌のキラーパンサーは苦笑する。

 彼女の隣に、ピエールとマーリンが立った。

 

「けれど確かに、違いますね。フローラ嬢のときとは」

「ま、あれが人間の幼馴染というものなのじゃろうて。いいではないか。ワシらの主も、たまには女子にうつつを抜かしても。真面目一辺倒なアラン殿にはちょうどよい『息抜き』になるじゃろう」

 

 マーリンがからからと笑う。いつもならお調子者の発言に目くじらを立てる隻腕の騎士だが、このときは少し反応が違った。どこか神妙な口調でつぶやく。

 

「息抜き……それで済むでしょうか。ビアンカ嬢と再会してから、アランの様子は今までと違うように見えます」

「……ま、タイミング的に奇跡と言える再会じゃからの。どうやらアラン殿の身には、運命とやらがこれでもかと声をかけるようじゃ。あまり思い詰めなければいいがのう」

「我らも力になれればよいのですが」

「こればっかりはワシらにはどうにもならんわい。諦めい」

 

 あっさりと言ってのけるマーリンに、さすがにピエールも彼を睨む。

 スライムナイトの鎧を、まほうつかいが軽く叩いた。

 

「今、ワシらがやるべきは、この洞窟を無事に攻略することじゃよ。フローラ嬢の二の舞は、アラン殿も絶対に避けたいはずじゃからな」

「ええ、そうですね」

 

 いまだ楽しそうに話を続けているアランとビアンカ。

 その背中を、ピエールたちはじっと見つめていた。

 

 洞窟の中をしばらく進んだ頃である。

 チロルとドラきちがにわかに警告を出した。

 直後、高い天井から巨大な緑色のコウモリが急降下してくる。

 長い舌を持った飛行型のモンスター――『へびこうもり』だ。

 彼は上空を旋回しながら、機を見て一気に襲いかかってくる。

 

 狙いは――ビアンカ。

 彼女を守ろうとしたアランは、直後、別の気配を察知する。

 通路の奥から、ブヨブヨの身体をしたモンスターが現れる。空気孔のような穴を備えた『ガスダンゴ』。

 

「気をつけなされ! ヤツはどくの息を吐きますぞ! 行動される前に仕留めるんじゃ!」

 

 マーリンが叫ぶ。アランは唇を噛んだ。

 

「ピエール、サイモン! ガスダンゴは任せた!」

「承知!」

「チロル! 僕と一緒にへびこうもりを――」

 

 仲間に指示を出し、頼れる妹分を振り返ったとき。

「はあああぁぁっ!」

 

 ビアンカの気合いが一閃した。

 手にした『どくがのナイフ』で、へびこうもりを見事に迎撃したのだ。

 鮮やかな会心の一撃――。

 

「どう? ビアンカさんもやるもんでしょ?」

 

 思わぬ反撃に為す術なく消滅していくへびこうもりを前に、勝ち気な幼馴染はそう言って力こぶを作った。

 

 

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