【伝記】ドラゴンクエストⅤ ~天空の花嫁~   作:和成ソウイチ

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54.アランの確信

 

「俺に全部教えてくれた人がいるんだ。それ以上は言うもんか」

 

 ザイルはそっぽを向く。

 ベラは険しい表情ながら、そこには困惑の色も混ざっていた。

 

「おい、そこのやつ」

 

 ふと、声をかけられる。

 

「お前、妖精族じゃないな? 人間だろ?」

「あ、うん。そうだけど」

「気をつけろよ。妖精族ってな、人間なんてどうでもいいと思っているんだ。利用するだけ利用して、それでおしまいさ。わかったらさっさと帰った方がいいぜ?」

「心配してくれるの?」

 

 アランの素直な一言に、ザイルは言葉を詰まらせた。

 

「ば、ばっか言ってんじゃねえ! 誰がお前なんかに。妖精族に味方する奴はみんな敵だ!」

「でもゴースさんは大切なんでしょ?」

「あったり前だ! 話聞いてなかったのかよ、お前!」

「そうじゃないよ。ゴースさん、とってもやさしそうだったから、気持ちわかるなって」

 

 さらにザイルは言い淀む。アランは苦笑を浮かべながら、こう言った。

 

「ゴースさんを大切にするのと同じように、妖精族も、他の人たちも大切にできればいいなって思ったんだ。ポワンさんにも会ったけど、悪い人じゃないよ。ゴースさんと同じくらいやさしそうだった」

「じ、爺さんとポワンを一緒にするんじゃねえよ」

「でも、二人がまた仲良くなったら、とってもいいことだと思わない?」

「それは、その」

「それにさ。ここは寒いよ。暗いよ。早く帰って、ゴースさんとお話ししよう」

「嫌だ」

「寂しそうだったよ。ゴースさん。それにザイルも」

「お前に何がわかるんだよ」

「んー。何となく。ザイルは悪い子じゃなさそうだなって。ゴースさんの言った通りだ」

「う、うるさいな」

「ねえ」

 

 アランは一歩前に出て、手を差し出した。

 

「僕たち、友達になれないかな?」

「はぁっ!?」

「だめ?」

「いや、その、あー……うー……」

 

 しどろもどろになるザイル。アランはじっと、彼を見つめ続けていた。アランの瞳を見たザイルから刺々しさが消えていく。ベラは大いに驚いた。

 

「アラン、やっぱりあなたは」

 

 そう、ベラがつぶやいたときである。ザイルが癇癪を起こして叫んだ。

 

「あーっ、もう! うるさいうるさい、うるさーいっ!」

 

 背後に手をやる。小振りの手斧をひっつかみ、振りかぶった。ベラが警告の声を上げるより先に、ザイルは勢い良く手斧を投げつけた。

 鋭く回転する手斧は放物線を描きながら、アランに向かってくる。

 

「アラン!」

「だいじょうぶ」

 

 落ち着き払ったその声にベラの足が止まる。

 刃先が空気を裂く恐ろしい音が近づき、やがて激しい音を立てた。

 アランのすぐ横の地面に手斧が突き刺さっている。アランは涼しい顔を崩さない。悔しそうに唸るザイル。主の態度を察して暢気に欠伸をするチロル。

 

 彼らの様子にベラは戦々恐々としていた。

 

「ア、アラン! 危ないじゃないの! 当たったらどうするつもりだったの!?」

「うーん。でも、本当にだいじょうぶだと思ったんだ」

「どうして!?」

「え? うーん。どうしてだろう。何か、怖くなかったんだ。だからだいじょうぶって」

「あ、呆れた子ね。あなたは」

 

 アランの肩に手を置き、深いため息をつくベラ。姉代わりの彼女がどうしてそこまで疲れた表情を浮かべるのかわからず、アランは小首を傾げた。

 

 脱力したのはベラだけではなかった。

 

「まったく、何なんだよ。お前」

 

 ザイルもまた疲れた表情で大きく息を吐く。投げた手斧を回収することなく、その場に腰を落とす。

 

「初めてだよ、お前みたいなやつ」

「えへへ。そう?」

「嬉しそうにするな、まったく」

「だってさ、友達ができるのは嬉しいじゃない」

 

 ザイルが鼻をかいた。

 

 

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