【伝記】ドラゴンクエストⅤ ~天空の花嫁~   作:和成ソウイチ

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62.見送りの言葉を残して

 

 パパスは長い祈りを終えたところだった。今まで姿を見せなかったことで怒られるかと思っていたが、意外に何も言われなかった。その代わり、どこか物思いに耽る父の姿をアランは見た。

 

「さて、あまり遅くなってもいけない。そろそろ出発しよう」

 

 祈りのために外していた剣を身につけ、パパスは言った。

 教会を出て、父の後ろについて歩く。親子揃って旅装であることを見た村人から次々と声をかけられる。

 

「おや、パパスさん。またどこかへ?」

「何だよ。旅に出ちまうのか。ようやっと春の陽気が戻ってきたのに、気忙しいなあ」

「今度はすぐに戻って来られますか?」

 

 道行く人々のこうした質問に、パパスは律儀に答えていく。行き先がラインハット城で、国王直々の(しょう)(へい)だと聞くと、村人は納得してうなずいていた。「さすがパパスさんだ」「勇名はラインハットにまで轟いていると見える」と、口々にパパスを褒め称えた。

 

 後ろでやり取りを見ていたアランは不思議な気分になった。以前なら誇らしげに胸を張っていたところだが、今は少し違う。人々の称賛を浴びることは、それだけの努力と冒険を繰り返してきた証拠だということが、今のアランにはわかる。父がそうした道を歩んできたことに誇りを持つと同時に、自分もいつかああなりたい、そのためにはもっと努力をしなければならないし、強くならなければならないと思った。

 単なる憧れから、明確な目標として父の背中を見るようになっていたのだ。

 

「どうした、アランよ。さっきから黙って」

 

 村の入り口が近づいたところで、無言のままの息子にパパスが振り返る。アランは表情を緩めて「何でもない」と答える。

 父の隣に並び、アランは言った。

 

「ねえ、お父さん。僕、いつかお父さんの隣で戦えるぐらいに強くなるから」

 

 真っ直ぐ前を見つめながら、そう言い切る。自分でも驚くほど自然に口にできた。

 パパスはしばらくアランを見つめていた。やがて深くうなずく。

 

「期待していよう。お前は私の息子だ。きっと強くなる」

「うん」

 

 親子並んで、歩く。二人の邪魔をしないように、チロルがとことことついていく。彼女はアランとパパスの特別な繋がりを感覚で理解しているようだった。

 

 村で最後に話をしたのは、門番の男だった。

 

「お疲れさまです、パパスさん。お話はすでに聞いていますよ」

「うむ。行き先はラインハットだが、期間がどれほどになるかは陛下からお話を伺ってみないことには何とも言えぬ。私が戻るまで、村をよろしく頼むぞ」

「ええ。承知しております。もっとも、こんな平和で何もない村を襲う連中がいるなんて、ちょっと考えられないですが」

 

 門番が笑う。パパスは苦笑した。

 

「では、行ってくる。アラン、行くぞ」

「うん。じゃあ、行ってきます! おみやげ話、ちゃんと持ってくるから!」

「おう。期待しているよ坊や」

 

 手を振りながらアランは歩き出した。

 門番はずっと手を振り続けてくれていた。姿が見えなくなる直前、彼は大声で言った。

 

「行ってらっしゃい。パパスさん!」

 

 その声にパパスは一度振り返り、大きく頷いた。

 

 

 

 門番の姿が見えなくなる。アランは言った。

 

「いい人だね、やっぱり」

「うむ。住む人々の人柄こそが、サンタローズの良さだからな。こちらも早くお役目が終えられるよう、頑張らねばなるまい」

「そうだね、頑張るよ僕」

「よし。ラインハットは大きな街だ。お前もいい勉強になるだろう。少し遠出になるが、構わんな?」

「うん!」

 

 アランは満面の笑みでうなずいた。

 

 

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