術式〖黒閃光〗
「黒閃」は打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した際に生じる空間の歪み。
打撃と呪力による攻撃をベストタイミングでぶち当てると、2.5乗の威力を発揮する。
その際には呪力が黒く光って黒い閃光が駆け巡る。
故の〖黒閃〗
当然そんな宝くじくらいの確率を当てるのは難しい。
だが、黒閃を経験した者は呪力の核心に近づく……と言われている。
俺の術式は、そんな黒閃が発動した時にビームが出るらしい。
らしい、と言うのは六眼で術式の詳細を教えてもらったからだ。
これまでは術式持ちだと知らなかった。
ちょっと人より頑丈で、ちょっと人より呪力の扱いが上手い。
その程度の実力。
特に光る所はなく、一般から拾われただけ。
最初はやる気なかったけど、呪霊倒したらお金いっぱいもらえるらしいからやる気になった。
高専に入ったばかりで、同期は伏黒、釘崎、虎杖の3人。
3人とも仲が良い。
俺、俺は…………
「よー庵野。一緒に飯でも」
「ゴメン」
「訓練の相手を頼みたいんだが」
「………… エッ……ッ!?」
「今度服買いに行くから(荷物持ちで)来なさいよ」
「スミマセン……」
コミュ障だった。
いや、心の中ではまともに話せるんだ。
ただ声にうまく出ないし、感情が表情に出ない。
人付き合いが昔からどうにも苦手だ。
五条先生にも「君、人付き合いあんまり向いてないね〜」って言われている。通りかかった夜蛾学長に「デリカシーを学べ」と、どつかれてたけど。
それを見兼ねて、基本的にツーマンセルで任務にあたるようにされている。
コミュ障克服のためだが、今のところ効果は無い。
さあ、今日も任務だ。
虎杖と山間部にある廃病院へ。
補助監督が帳を降ろした。突入する。
報告では2級相当がうじゃうじゃいるそうだ。
俺の術式はあってないようなものなので、基本的に呪力を纏った肉弾戦となる。
まあ呪具も使えるのだが……緊急事態でしか使わないよう言いつけられている。
虎杖も術式はないのだが、呪力が遅れてやってくる
「おっ、早速だな。頑張るぞ、庵野!」
「アッハイ」
次々と呪霊が湧いて出てくるので、2人で背中を合わせて殴りまくる。
耐久力がないので、一発当てたら消し飛んでいく。
無双ゲーやってるみたい。
それにしても、虎杖のフィジカルは異常だ。
呪力の存在を知らない頃から、その運動能力は呪力を纏ったものと遜色なかったと伏黒から聞いた。
何食ったらそこまでになるんだろ、不思議。
「あれ、帳が?」
「……ん?」
一通り祓ったところで帳が消えた。
補助監督は進藤さん、なにかあったのだろうか。
まだ呪霊を全て祓ったわけではない。
しかし困った。
帳がないと、呪霊が炙り出せない。
ここでは呪霊の発生地点になるので、帳は下ろせない。
「庵野はここで待機、俺が進藤さん見に行ってくる!」
虎杖が窓から飛び出していった。
廃病院というだけあって、周囲は林になっていたり薮がひしめいている。
それをぴょんぴょん跳ねながら高速移動していた。
なにあれ、兎?
『ぱぁ』
あ、帳はないけど呪霊がわらわらと湧いてきた。
まあ雑魚だったので、呪力を込めた拳で粉砕していく。ってか数多いな。
殴りまくると、廊下の奥から存在感のある子供? の呪霊が出てきた。
こいつがここのボスか。
『み……お、ふくぃ……をーなす、めつ』
人語は介さない、と。
『めつ』のキーワードとともに、取り巻きの雑魚呪霊が爆発する。
術式持ち、準一級呪霊か!?
報告と違うし、進藤さんに何が起こったのかわからないし。
虎杖早く戻ってきて!!!
「スッ」
呼吸だ。
落ち着け。
やるしかねぇ。
全身に呪力を廻す。
血液のように廻る。
一息に拳を固めて、殴り抜けた。
『くけひひひひ ふ』
まだ幼い子供の姿をした準一級呪霊は消滅した。
雑魚呪霊も散っていく。
これで終わったはずなのに。
なんだ、空気が。
重い
『こわっぱ、この壺を見てどう思う? 素晴らしいだろう?』
背後から声をかけられる。
まるで魚人。
鱗を皮膚に貼り付けたような、人間と魚が混ざって壺に入ったような。
歪な姿をしている呪霊。
間違いない、特級だ。
そいつが虎杖と進藤さんを、見せびらかしていた壺から吐き出した。
『この壺は美しいだろう。そうら、お仲間だ』
「は?」
慌てて、ポケットに入れたままスマホで緊急コールの操作を完了させる。
床に倒れた2人は意識がなく、足が人魚のように変形している。
こいつが外で帳を下ろしていた進藤さんを壺に入れたから、帳が消えたんだ。
そして虎杖は助けに行ったところを特級に出会して、同じくやられた。
冷静でいられない。
他のみんなが、五条先生がきっと助けに来てくれる。
だから時間稼ぎをしなければいけない。
でも……
「ここでやらなきゃ、いつやるんだ」
覚悟完了。
先生から禁止されていた呪具を解き放つために、ベルトをズボンから取り外す。
だが、これはベルトじゃない。
ベルトのような形をした、鞭だ。
「特級呪具【王竜王の髭】」
これは使ってしまえば反動はデカい、が気にしていられない。
構えると、特級呪霊が語りかけてきた。
『貴様もこの壺を愚弄するのか?』
は?
天地がひっくりかえった。
なにをされた?
いつのまに?
よく見ると周囲に魚が何匹も泳いでいる。
術式? しかし、まずい。
足を掬われ、無防備で転がってしまう。
『おぬしも儂の壺の中で芸術と成るがいい』
ああ、壺の口がこちらに向けられた。
立ち上がる暇は無い。
虎杖と進藤さんが入れられていた、壺。
あれも術式で出来たものだろう。
もはやこれまでか……
スローモーションになる視界。
出来ることはひとつしかない。
最後の抵抗に、倒れたまま渾身の力で鞭を振るう。
シュッと音を立てて………… 避けられたが、かすかに鱗を掠めた。
黒閃!
『貴様ッ! 撫ぜただけでこの威力、黒閃だな! 良い良い面白くなってきおった!』
人生初黒閃キマッた……!
喜びに浸る間もなく、立ち上がり構える。
『ケヒッ! 面白いな小僧』
なんだ、空耳か?
ふと、この危機的状況でなぜ術式が発動していないのかが気になった。
五条先生はからかうことこそあれ、大事なところで嘘をつく人じゃない。
と、そんなことをスローモーションに映る世界で考えていると、呪力が鮮明に目に映り、体の奥底から激しく迸る。
黒閃により、呪力の操作や感覚が今までと天地ほどの差がある事を理解した。
そして術式情報も本能的に理解した。
黒閃砲、放つタイミングは好きな時で良い。
ストックして、放つ。
どうやら呪力切れの時に、ストックを消費して呪力補給にも使えるらしい。
黒閃を決めないといけないので、そんなに簡単な条件ではないけど。
だが黒閃砲の威力は……
「試してみてからのお楽しみ、だな」
届け、渾身の、
・庵野くんの術式で放たれる偽・グラニテブラストは真・グラニテブラストと同じ威力ですが、太さが細くなっています。
・玉壺は本家と比べると弱体化しています。
・両面宿儺は面白くなさそうなので出てきませんでした。