黒閃砲、グラニテブラストと命名したそのビームは、特級呪霊を呑み込んだ。
凄まじい反動と衝撃が、廃病院の壁をぶち破り、木々を消滅させ、地面を抉り、山に大穴を穿った。
祓えた、か?
なぜか壺だけが無傷で残っている。
不壊特性でもあるのだろうか、あの歪な壺。
あ、帳……ない。
帳がないと物損ダメージは全て現実のまま残ってしまう。
これは後で偉い人に殺されるだろうな。
グラニテブラストの影響で、この廃病院が音を立てて崩れ落ちそうになっている。
慌てて虎杖と進藤さんを担ぐが、疲れた体に2人抱えるのはしんどい。
タイムリミットも厳しい。
崩壊まで幾許もないように思える。
間に合うか……?
慌てて駆け出そうとした瞬間だった。
背後から爆音が鳴った。
「よく頑張った、庵野」
よく知った声に振り返る。
その男の足元には小さなクレーター。
なんで、早すぎる。
ここは新潟県だぞ……!?
「五条先生……」
五条悟が立っていた。
「さ、高専に帰ろう。近くに寄って」
何か儀式的な手順を行う五条先生。
床に丸描いたりしている。
これで移動してきたのだろう。
大丈夫か、間に合うのか。
ハラハラする。
建物倒壊まで、猶予がない
パンッ、と手を叩く音。
「飛ぶよ」
次の瞬間、視界が光で消し飛んだ。
長い間眠っていた。
なんと三日だという。
「庵野、死ぬとこだったね。ギリギリだった」
家入さんから見下ろされている。
「まだ弱ってるから二日は安静ね。まさか腹部がごっそりなくなってるなんて……」
「あの……虎杖と進藤さんは?」
「無事よ、もう元気になってる。ねえ、この子いつから普通に話せるようになったの?」
「さあ、しらね。本人に聞いてみたら?」
なんか覚悟完了したら普通に話せるようになりました。とは言いづらいな……
五条先生と家入さんは仲が良さそうだ。
初めて聞いたけど、なんでも同期らしい。
まあ、でも、良かった。
特級と戦って皆生き残ったんだから。
「あ、五条先生……黒閃、出せました」
「あの時、一目見たら分かったよ。壁を一つ超えたね」
呪力の核心。
体験してみた感じ、一種のアハ体験のようなものだった。
全身を廻る呪力が無駄なく、かつストレスなく、120%の力で運用できた。
今はそこまでの力は出ないが、呪力や術式の扱いを何段階か飛ばして進歩しているのを感じる。
「あ、ちなみに調査の結果、祓えてないのが判明したよ。生存能力に特化した呪霊みたいだ」
「そんな……」
ちょっとショックだ。
まあでも、初めて術式使ったにしては上出来かな。
黒閃砲は決して弱い術式じゃない。
それがわかっただけでも十分だ。
さて、することないし治るまで寝るか…………
三日後、俺は報告やらなんやらを済ませて新たな任務についた。
今回は初めての一人で任務だ。
場所はここから比較的近くの中学校だそうだ。
なんでも授業で聞いた話によると、都会ほど呪いが多いらしい。
さあ、帳を下ろしてもらって突入!!!
校門を潜る。
目の前にはとてつもない呪力とプレッシャーを放つ存在が三体。
『ん? なんだこの小童は』
「あぁ、高専の術師だね。見ない顔だから1年かな。こんばんは、私は夏油傑。よろしくね」
『…………』
見たらわかる。
実力差がやばい。
死ぬ、殺される。
あの富士山頭は絶対特級だし、夏油って術師も半端じゃない。
後ろに校舎を超える大きさのダイダラボッチ控えてるし。
なんで突入するまで気づかなかったんだよ。
補助監督仕事してくれ……!?!
いや、俺も気づかなかったってことは既に結界術で隠されていたのか。
呪詛師と呪霊相手だが、とりあえず会話は成り立っている。
話してなんとか切り抜けよう。それ以外に生き残れる道が見つからない。
「庵野シンジ、です。夏油さんはここで何を?」
「この中学校、後ろの準一級がいたものだから」
「祓いに?」
「使役しに」
そう言うと、ダイダラボッチがフッと消えた。
格納したようだ。
「ところで君、スパイやってみないかい?」
あっ、死んだわ俺。