さて、作者は今回結構長いお盆休みをいただきました。
そう、なんと9日間もいただいてしまったのです。
そんな9日間に思いついたショートストーリーを今回はお送りします。
それではお楽しみ下さい。
キュウィウィウィウィブロロロロゥゥゥンブロゥゥン!!
空の彼方、1JZ-GTEのエンジン音が響き渡る。
ここは冥界、いわゆる亡くなった方が行くとされる場所だ。
そして今日は8月13日の迎え盆、多くの死者が現世へと戻る準備をしている。
今回の主人公もその一人だ。
天使「えーっと...はい、吾妻康介さんですね。今回もお孫さんがツアラーVを用意してくれました。」
康介「ほっほっ、いつも気が利く孫じゃのぉ。さて、では16日に戻ります。」
主人公の康介、享年76。
3年前に複数の箇所でステージ3以上のがんが見つかり、最期は親族に見守られながら虹の橋を渡った。
天使「お気を付けて~」
ガコッブロォォォパパァン...ブロォォン...
アフターファイアを奏でながら康介は現世へと戻っていく。
天使「元気だなぁ...」
一方現世では迎え盆の準備で大忙しであった。
真美子「ほら康一、その迎え車飾ったらこっちも手伝って頂戴!あなたもボーッとしてないで動いてくださいよ!」
彼女は真美子、年齢53。
康介の実の娘である。
康一「はいはい今行く~」
こちらは康一、年齢20。
康介の孫であり、真美子とは親子だ。
俊和「ボーっとしてないですよ...」
このボーっとしていそうな男が俊和、年齢52。
康一の父であり、真美子の婿である。
嘉子「こら真美子、俊和さんをそんな風に言わない!」
最後に嘉子、年齢76。
真美子の母であり、康一の祖母であり、康介の伴侶である。
この4人は慌ただしく家の中をあっちに行ったりこっちに行ったり大忙しだ。
そんなこととはいざ知らず、康介はオーディオでカントリーロードをかけながら冥界から現世へと車を走らせる。
康介「さて、今年もあの道を通ろうかのぉ。」
冥界から現世に行く道は複数あるが、康介が通ろうとしているのはその中でも現世で言う峠道に近いものであった。
康介「さてとその前に...」
ブロォォォゥゥゥン...
???「らっしゃーせー...って、なんだ康介か。そうか今年もそんな年になっちまったか。冥界ハイオク満タンでいいか?」
康介「おう成田~。あと、康介さんな~」
冥界にもGSはある。
そのGSで気だるそうに店番をしているのは康介の後輩で成田と呼ばれている男だ。
享年71。
成田「年はそっちが一個上だけど死んだのは一年早いからな。しかも病気じゃなく事故だ。病気で体が蝕まれて苦しい思いして逝くより一瞬の出来事で気づいたらこっちくる方が楽だと思うぜ。」
康介「けっ、言ってくれるじゃないの、奥さんいないくせに~!ベロベロバー」
成田「んにゃろ、その車をお釈迦にして現世に帰れなくすっぞ!!」
康介「やれるもんならやって味噌カツ~」
成田「っ!!...まあいい、ほら満タン入れ終わったぞ。」
康介「なんや、昔みたいに殴りあおうか思ってたところなのに...」
ガチャッ
康介は助手席の鍵を開ける。
成田「なんや、助手席を掃除しろってか?」
康介「いや、毎年そんなこと俺がさせてるか?大丈夫、崖から落ちたりはしねぇよ。」
成田「...」
店長「ふふ、行ってきな!毎年のことなんだからさ!」
成田「うわっ!?ビックリした...」
康介「悪ぃね店長さん、本当は店長さんも連れていきたいんだけど...」
店長「いいのいいの!!どうせ俺は無縁仏、店長って肩書きがなければ冥界にすら居場所はないんだからさ。その分、君たちはまだ帰る場所があるんだからさ!」
成田「いつもありがとうございます...」
店長「その代わり...帰りもよろしくね 」
康介「えぇ、分かってます。それじゃあ成田、シートベルトしてしっかり上の掴んでろよ!!」
成田「おう」
バタン...カチャッ...キュウィウィウィブロロロォォゥゥゥ!!ブロロォォゥゥン!!
康介「出発!」
ガコッブロロォォゥ!!パパァァン!ブロロォォ...
一方現世では一段落終えた4人がテーブルを囲んでいた。
俊和「さて、ご馳走も用意できましたし、食べましょっか!」
嘉子「あ、ちょっと待って俊和さん。あれだけお供えしてくるわね。」
真美子「成田さんのお写真?お父さんと仲良かったもんね」
嘉子「まああれはどちらかと言えば腐れ縁に近かったかしらね。成田さんが亡くなって葬儀に参加したあとお父さんも急にだったから寧ろ呼ばれてたりするかもしれないわ。」
そう言いながら嘉子は康介の遺影の隣に成田の遺影もそっと飾った。
真美子「不気味なこと言わないでよ~」
俊和「まあ成田さんは最後までお一人でしたし寂しくなる気持ちは分かりますよ。」
嘉子「男同士の友情ってやつかしらね。」
康一「今年もツアラーVに乗って二人で仲良く来てると思うよ」
嘉子「ふふ、そうだと良いわね。さて、じゃあいただきましょうか」
ブロロォォゥゥキキー...
康介「ふぅ、着いた着いた」
成田「ゼーハーゼーハー...こ、殺す気か!!あ、既に死んでたわ」
康介「馬鹿言ってねえで、さっさと入るぞ」
スーッ...
康介「たでーまー」
成田「お邪魔します」
嘉子「...あら?なにか玄関で物音が」
康一「帰ってきたのかな?」
俊和「一応仏間の電気はつけておこう」
カチッ
康介「ま、俺たちの声は聞こえないし姿も見えないがな。寂しいもんだでホントに」
成田「まあしょうがないだろう。それよか見ろ!俺の分も供えてくれてあるで!」
康介「かーっ、他人なのにこんな豪勢なの供えやがってからに、成田なんか成田空港の霞でも食っとけばいいものを」
成田「なにを言うか!お前こそ俺のあとを追いやがって、毎年聞くには俺が連れてきたみたいな言い様じゃないか!!」
康介「けっ、誰がお前なんかの後追うかよ!」
成田「な、それはそれでなんかムカつくのだが!?」
康介「じゃあどうしろってんだよ!!」
俊和「さて、自分たちには見えないけど二人は何か食べてくれてるかな」
真美子「どうだかねぇ、ちょっとしたことですーぐ口論しちゃってたりするんじゃない?それでヒートアップして二人で一升瓶開けちゃって、記憶が飛ぶのか次の日には仲良く車で出かけちゃったりして。」
嘉子「ふふ、そんな事もあったわねぇ」
康介「...全部お見通しって訳ね、流石我が娘」
成田「お恥ずかしい...」
康介「...ま、一杯やるか。」
成田「いっぱいだろ?」
康介「あったり前よ、ほれ、お猪口」
成田「ホイホイっとっとと、じゃあこっちも」
康介「へい...おっとっとっと...それじゃ、二人の友情に乾杯」
成田「乾杯」
チンッ
康介「...?」
仏間の方でお猪口が重なるような音を聴いた気がしたが、多分気のせいだろうと思う康一。
今年のお盆も楽しくなりそうだ。
いかがでしたでしょうか。
すみません、実はこの小説本来の投稿日は9月予定だったのですが先のサボり癖のせいですっかり投稿を忘れていた作品になります。
本当にすみません。
では次回もお楽しみに。