さて、今年もこの季節がやってまいりました。
お盆ですね。
作者は今年残念ながら5日間しか休めません。
いや、5日なら大分長い方ですね。
あまり長い休みというわけではないので有効に使って行きたいと思います。
それでは本編をお楽しみください。
ミーンミンミンミンシャワシャワシャワ...
元気よく蝉が鳴く真夏。
今日は8月13日の迎え盆だ。
康一「あっつー...」
額から流れる汗を肩にかけたタオルで拭いている彼は吾妻 康一、21歳。
彼は今、家の縁側に座り割り箸ときゅうり、ナスでなにか作っている。
そう、お盆に玄関先に飾る精霊馬を作っていた。
嘉子「こうちゃん、出来てるかい?」
康一を”こうちゃん”と呼ぶ彼女は吾妻 嘉子 77歳。
康一の祖母である。
康一「うん、こんな感じでいいかな?」
康一が差し出した精霊馬はきゅうりを半分に切り、ナイフでうまく加工してスポーツカー風の見た目に。
そして割り箸は足ではなくタイヤ同士をつなぐシャフトになっていた。
嘉子「...こうちゃん、普通のも作ってちょうだい。これも飾るけどね、足が早いっていうのも速度じゃなくて腐りやすいって意味になっちゃうから。」
康一「はーい」
するとたまたま通りかかった母親がぎょっとする。
真美子「こらっ康一!!またあんたはこんなきゅうりを無駄にして...」
彼女は吾妻 真美子、54歳。康一の母であり嘉子の娘である。
康一「無駄にしてないよ、きちんと食べてる。」
真美子「あんたねぇ、食べればいいってもんじゃないのよ...」
すると3人集まっているところに俊和も顔を覗かせる。
俊和「ほ~、よく出来てるじゃない。なに、これ飾るの?」
少しワクワクした表情で真美子に顔を向ける彼は吾妻 俊和、53歳。
康一の父であり、真美子の婿である。
真美子「まあ康一がせっかく作ったんだし飾らないわけには行かないでしょ。全く、車好きにもほどがあるわ...」
真美子は呆れたような表情でぼやく。
こうしてスポーツカー風の精霊馬と共に今年もまたツアラーVが迎え車として飾られた。
その日の夕方。
キュウィウィウィブロロォォォゥゥ!!
90系ツインターボエンジンの轟音が天界に轟く。
天使「あ、康介さーん、今年もまた~」
康介「おっほぉ、今年も良い音、よく整備されてるなぁ」
こちらは今回も主人公の吾妻 康介、享年76歳。
4年前に複数の箇所でステージ3以上のがんが見つかり、最期は親族に見守られながら虹の橋を渡った。
その昔は地元ではそこそこ名の知れた走り屋でもあった。
バタン。フィシュゥゥンフィシュゥゥン!!
運転席に乗り込むと少しアクセルを吹かす。
康介「じゃあいつもの通り16日に戻ります!」
ガコッブロォォォォォフィシューン!!」ブロォォォォ...
天使「お気をつけて~...ってはっや!?」
天使も驚愕のツインターボの加速力である。
数分後、康介はガソリンスタンドへ寄る。
そう、成田の居るGSだ。
成田「っしゃーせー...何だお前か」
この少し気だるそうな男は成田、享年71。
康介とは腐れ縁的な仲で生前は仲良く喧嘩するほどであった。
康介「おいおい、何だはないだろ成田~」
そう言うと万券を1枚渡す。
成田「おい、お前ニュース見てないのか?今年は天界ガソリンの供給が不安定で今アホほど高いんだよ。釣りは渡すからもう一枚。」
天界も原油不足なのだろうか。
康介「っと、そうだった、いつもの癖で。ほら」
そういうともう一枚渡す。
成田「あいよ、ハイオク満タン入りまーす!」
ゴウンゴウン...
数分沈黙の時間が流れる。
二人の耳にはGSで流している天界ラジオしか耳に入っていない。
天界ラジオ「「続いて天界交通情報です。ただいまの時間、現世への帰省による精霊馬渋滞が発生しております。数年前より一部制度が変更となり迎え火がなくてもご自宅の位置情報がわかるサービスが提供されております。皆様我先にと移動せずこちらサービスをご利用いただき渋滞緩和への協力をお願いします。」」
すると成田が話し始める。
成田「そういえばお前、いつも迎え火炊いてもらったあとに戻るのにどうやって家に帰れるんだ?」
康介「なんでって、これ見れば一目瞭然だろ。」
そう言うと康介はフロントパネルに設置されたカーナビを指さす。
成田「...は?いや、それ普通のカーナビだろ。」
康介「と思うじゃん?これワシが改造して自宅までのルートが出るようにしてあるんだわ。」
よく見るとカーナビには既に自宅までの道のりが示されていた。
成田「いやどんな技術力だよ...」
ガコン
ガソリンを入れ終わると釣り銭を持ってくる。
成田「はいよ、お釣り7300円な。」
ガチャッ
康介「はぁ、全く高くなったねぇ。ほら、乗れよ。」
成田「おい康介、流石に毎年毎年...」
すると後ろから店長が現れる。
店長「あ、やっぱりさっきのエンジン音康介さんだったね~、いいよ成田くんまた行ってきな!」
成田「て、店長でも毎年数日開けるんじゃ店長が過労で...」
店長「何いってんの!お盆は天界に残る人が極端に少なくなるんだからむしろいつもより楽なんだよ!?」
成田「あ~...じゃ、じゃあすみません」
ガチャッバタン
店長「康介さんも安全運転で~」
康介「どうもいつもありがとうございます店長さん!」
キュウィウィウィブロロォォォゥゥ!!
ガコッブロオォォォォフィシュゥゥンブロォォォゥ...
こうして二人は現世へと向かった。
一方現世では吾妻家の4人が食事を楽しんでいた。
時間は19時前、今日はごちそうだ。
康一「そしたらあいつを乗せて行く感じ。」
真美子「危ない運転はダメよ?」
康一「分かってるって、だから時々疲れたらに道の駅とかコンビニによって~」
何やら康一達はドライブの話をしているようだ。
俊和「しかし、まさか康一も彼女が出来てしかもドライブデートなんてなぁ、成長したな康一。」
しみじみする父。
嘉子「そうなると、ひ孫を見る日も近いかねぇ、楽しみだねぇ」
嘉子もなにやら嬉しそうである。
康一「ひ、ひ孫っておばあちゃん、まだ付き合って2ヶ月だよ!!これから交際を深めてゴニョゴニョ...」
真美子「全く、でも本当に子どもが欲しい時以外はきちんとゴm」
俊和「ストーップ真美子、それ以上はいけないし康一も分かってるはずだ。」
嘉子「全くこの子は恥じらいというものがまるで無くっていけないわね...」
そんな話をしている中で康介達は家の前に到着した。
キィィッ...
康介「ありゃ?」
成田「どうした?」
康介「いや、知らん車が止まっててな。うーん?」
吾妻家の駐車場には一台、康介にとって見慣れない、しかしよく知っている車が止まっていた。
康介「90系...ツアラーV?どうしてまた」
成田「本当だ、俺達が今乗ってるのと色違いか。」
康介「しゃーない、ちょっと待ってろ」
そう言うと康介は車を降り、吾妻家の隣の家のドアをノックする。
するとスーッとだれかがドアを通り抜けて出てくる。
梅子「はいどちらさんで...あれ康介くんじゃないかいどうしたの?」
この女性の霊は吾妻家の隣、澤田家の先祖の一人、澤田梅子。享年92歳。
康介が40の頃に老衰で亡くなっており、康介のことは子供の頃からよく知る人物だ。
康介「梅子さんすみません突然、実はうちに知らない車が止まっていて...」
梅子「あぁ~、ありゃあんたの孫の車だよ!あ、もしやそれで駐車場が埋まってるから入れさせてほしいって感じかい?良いよ、そこら辺空いてるから好きに使っておくれ。」
康介「そういうことでしたか、あーじゃあすみません止めさせてもらいます。」
梅子「あいよ、ただ代わりに16日は乗せておくれよ?」
康介「分かってます」
こうして車を止め、成田と共に家に入る。
康介「帰ったぞ~」
ビービービー!!
その瞬間、なにやらけたたましいサイレン音が鳴り響く。
そう、吾妻家は昨年から玄関に警報装置を取り付けていたのだ。
しかし本来幽霊には反応しないはずが、この時誤作動で警報がなってしまったのだ。
嘉子「ひえっ!?この音心臓に悪いわね...」
康一「いいよ、僕が見てくる。」
俊和「一応二人で行くぞ、何かあったら困るから。」
そうして二人は玄関へと向かう。
だが当然のことながら鍵はしまっており、人間が侵入しようとした形跡は一切ない。
康一「やっぱ誤作動っぽいね。」
ピッピッププッ
警報装置の操作パネルを操作して警報を止める。
俊和「人感センサーに感知って、いや誰もいな...」
が、俊和はあることを察した。
ああ、お義父さん達が帰ってきたのだなと。
二人は居間に戻ると、仏間の電気をつけた。
真美子「いけない、仏間の電気付けるの忘れてたわ。」
俊和「大丈夫、多分また二人が来たんだと思うよ。」
真美子「や、やぁねー怖いこと言わないでよ」
一方康介達は玄関で腰を抜かしてた。
康介「あーびっくりした、死ぬかと思った。」
成田「もう死んでるだろ。」
康介「まったく、この家にこんな装置をつけるほど治安が悪くなったのか?」
成田「まあ俺等が乗ってきた幻じゃなくて本物のツアラーVがそこに止まってるからな。多分それの盗難を防ぐ意味合いのほうが強いんだろう。」
康介「かーっ、あんな古い車を盗むとか本当に治安が悪くなったんだな」
成田「いや、ツアラーVは結構前から、下手すりゃ俺達が生きてた頃から盗難被害は合っただろ。それだけ人気なんだよあの車は。」
康介「そんなもんか。ま、とりあえず上がって飲むぞ~」
こうして二人は去年同様仏間で飲み会を始めた。
後編に続く。
いかがでしたでしょうか。
一年ぶりのこのお盆休みシリーズ。
後編は8月16日後悔ですのでお楽しみに!