虚の穴は何故閉じない?   作:エア_

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便乗厨、小説サイトに現れる。

エア「僕だ!」

蟹「お前だったのかエアーノ!?」


特別話~茜雫

 

 

クリスマス。それは一年に一度起こる祭り事の一つだ。家族やら恋人やら友達やらで集まり、25日と言う日を祝う日である。前日にイブと言うのもあるが、今はそんな事はどうでもいい。重要な事じゃない。

 

そんなリア充がキャッキャウフフしている日に、ある男がその目に闘志を宿しながら眼前を睨んでいた。

 

「くっそ、くっそ!!」

 

その表情は暗く、その手、額には多量の汗。一歩でも間違えば死んでしまうかのような緊張が彼の周囲を覆っていた。

 

「くそ・・・・・・畜生」

 

「お、お兄さん」

 

男の後ろに動物に埋もれる少女が下唇を噛みながら彼の姿をただじっと見つめていた。手を伸ばそうとし、そして引っ込める。

 

彼女の顔は・・・・・・笑いをこらえるのに必死だったのだ。

 

「何でひっかからねぇんだくっそ!!」

 

「ちょっとお兄さん流石に今のは酷いんじゃないの~」

 

「安心しろ!! お兄さんに任せなさい!!」

 

空座町のとあるゲームセンターにて、高校生と思われる少女と一緒にUFOキャッチャーをしている男の姿があった。500円玉を投入してレバーを動かす、金がどんどん溶けていく音楽が聞こえている。

 

そう、我らが馬鹿。東悟守がまた何かしでかしていたのだ。

 

「ねぇ・・・・・・本当に大丈夫? まだ一個も取れてないよ?」

 

「なっはっは、安心しなさい。お兄さんは案外お金持ってるからな! ぬいぐるみの1個や10個くらいすぐに取ってみせるぜ」

 

「・・・・・・お客様」

 

などと息巻いていたのだが、馬鹿騒ぎしていたところを店員に見つかってしまい完全に荒らしと思われ追い出されたので御座るの巻。結局はこうなってしまうのであった。少女が持っていた両手いっぱいの動物のぬいぐるみを抱え、守は少女につれられ町を歩く。何故守がこんなことをしているのか、しかもこのJKはいったい誰なのか。というかこんなことしてハリベルが顔出さないか。それが問題である。

 

「ちょいちょい、茜雫ちゃん。お兄さん前見えないんだから袖引っ張って走るのは勘弁しておくれ」

 

「何言ってんのよ。どうせ霊子が見えるから大丈夫でしょ?」

 

「確かに体中に霊力はってるから分かるけど見えてはねぇんだよ」

 

「そんなの知らな~い」

 

少女は嬉しそうに笑いながら歩く、ケタケタと守の袖を引きながら。守も倒れないように必死に足を動かす。見えない前に向かって全力で足を先に出す。

 

「でもすごいよねぇ。あの白髪のおっさんを蹴り一発でKOするなんて」

 

「まぁな。これでもそれなりに鍛えてるしね」

 

「・・・・・・それなりなのか」

 

さり気無く何かやらかした我らが天然馬鹿。そのギャグのようなパワーを駆使して今回は現世にて問題を起こしたのだった。しかも誰かは知らないが蹴飛ばしているらしい。完全にチンピラである。

 

「それで? 可愛い死神? の茜雫さん、僕は自分の時代に帰られるのでしょうか?」

 

「うむうむ、まぁ待ちたまえ守少年。お姉さんはこれでも列記とした死神。きっと多分何とかしてみせることが出来るさメイビー」

 

「うん! すっげー不安になったって事は分かったよスカポンタンめ!」

 

幸先が悪いと心でつぶやきながら、守は茜雫に連れられ何処とも見えぬ道を歩むのだった。

 

守、現在過去(数ヵ月前)に跳躍中。

 

 

 

 

守と茜雫が出会ったのは偶然である。そもそも出会う事などなかったのだ。ならこれは偶然と言うよりは奇跡なのか? まぁ今のところどちらと言っても変わり映えはしないけども。

 

事の発端は彼がいつものように時空跳躍機を使い、現世にアーロニーロの原稿を持っていこうとしたときである。その時期がクリスマスであるのことは誰も突っ込まないでくれ。こいつに何も予定がないという事実は黙っていてくれ。絶望して泣き倒れるから。

 

さて、跳躍するとき使う時空跳躍機は、懐中時計のような丸い形をして針も何故かついているのだ。跳躍機自体が時計として機能しているのだ。そのため一ヶ月に一度はザエルアポロの点検を受けており、万全だったはずなのだが、今回の使用時に突然逆回転していると錯覚するスピードで針が回転を始めたのだ。焦った守はとりあえず跳躍をやめその時間に戻った。すると気がつけば空蔵町上空2000mを垂直落下急降下紐無しバンジーあの世への片道切符スペシャルを決め込んでしまっていたのだ。加速する落下スピードに恐怖が比例する。そんな時だ。彼の目にこの茜雫が白髪のおっさんこと巌龍に腹パンを受けた瞬間が映ったのだ。勿論、彼がとった行動と言うのが。

 

「女の子に腹パンする奴があるかハゲ」

 

落下からの響転からの回し蹴りである。高度2000mからの落下速度もあいまってかその時の彼の攻撃は音を置き去りにした速さで、巌龍のレバーに思い切り食い込むような蹴りを入れたのである。これには流石のウォーズマンもこめかみに指を当てるほどのゆでたまご殺法である。でも実際痛い。

 

目をまん丸に見開き、鼻水が噴出し、お笑い芸人でも出来ないような渾身の変顔を晒しながら、巌龍は地平線の彼方へと真直ぐ綺麗に吹っ飛んでいった。その場に居た仲間たちもいきなりの事で頭がついて行かず硬直し、下のほうに居た死神たちもどういう状況かわからず見上げて同じく硬直していた。一護のみが煙幕の中から巌龍たちを止めるために飛び出していったが、時既にお寿司。飛び出した頃には巌龍の仲間は巌龍が吹き飛んだ方向へ間抜け面で見つめており、状況がつかめずにいたのだった。

 

とりあえず茜雫をキャッチしその響転の勢いのままどこかへと吹っ飛ぶ二人。残された双方が動けたのは彼らが消えて4~5分ほどである。

 

片方は自身の頭領を探しに、もう片方は茜雫を探しに。

 

余談だが守はこの時、煙幕のためか下にいた死神を確認しておらず、巌龍の周りに居た集団の顔もみることなく消え、死神たちも彼の姿を確認できておらずここでも彼らの出会いはなかったのだった。

 

あのシリアスシーンですら、彼の介入の所為で台無しになったのである。

 

 

 

 

「ねぇ・・・・・・お兄さん」

 

「なんじゃい? 茜雫ちゃん」

 

空座町にある空座タワー。その高さは東京タワーにひけをとるが300mとそれなりに高い。そのてっぺんにて、守が茜雫を抱えて立っていた。縫い包みは真っ白な包みに詰め込み、気分はフィンランドの赤い服を纏ったお爺さん。これでソリとマッハ30で飛ぶトナカイが居れば完璧なのだが、前者はともかく後者は無理だろう。

 

「何でここに登ったの?」

 

「ん~、だって好きだろ? 高いとこ」

 

「そういう意味じゃないんだけど・・・・・・まぁ、好きだよ」

 

タワーの中ならまだよかったのだが、生憎ここは外。夕焼けに染まった空を冷たい風が横切る。流石冬だ。雪でも降れば完全にホワイトクリスマスになっていただろう。残念なことに今は雪など見当たらない。

 

「・・・・・・私ね、小さい頃のこと思い出すと何故かごっちゃになって頭痛くなっちゃうんだ」

 

「おぅ」

 

「でもね。こうやって高いところに居るとそんなことも全部忘れられて・・・・・・頭も痛くなくなるんだ」

 

「・・・・・・わかるよ」

 

守は茜雫の話に耳を傾ける。そして頷く。話していることがまるで自分のことのようにも感じる。彼の場合はその記憶すらないのだが、彼女のように幼い頃のことを曖昧にさえ覚えてはいない。楽しかったのか、悲しかったのか、辛かったのか、喜ばしかったのか・・・・・・。

 

守の記憶に幼い頃の記憶は存在していなかった。

 

「お兄さんも?」

 

「あぁ、俺の場合は記憶すらないんだけどな・・・・・・昔の頃なんてわからない。だからこうやって空見上げたりとか、女の子に声かけたりとか・・・・・・茜雫ちゃんの時みたいにさ。でも一番そんな寂しいことを忘れられるくらい、今は親友と一緒に馬鹿やってんだ。三馬鹿なんてしょっちゅう言われるくらいはやってるよ」

 

「そっか・・・・・・楽しそうだね、その人たち」

 

「あぁ、最高だよ。俺の自慢の仲間さ・・・・・・ここが過去って言うんだ。未来に帰ったら茜雫ちゃんに紹介してやるよ。あいつらも喜ぶと思うぜ」

 

「ほんと? 約束してよね」

 

「ほんとほんと・・・・・・約束だぜ!」

 

指きりを交わし、守は茜雫の笑顔をみることができた。安心した表情になったことで守自身嬉しいようだ。彼自身女好きというのも重なってか、心底嬉しそうだ。

 

「・・・・・・よし、そうと決まれば戻んないとな。茜雫ちゃんもそのオレンジ頭が待ってるんだろ? 連れてってやるよ」

 

「そこまでしなくていいよぉ。お姉さんは死神様だからね。あれの霊圧くらいすぐに見つけられるからさ・・・・・・ばいばい」

 

「それなら安心だな、じゃあ“また逢おうな”茜雫ちゃん。次逢う時は皆連れてくるよ」

 

「・・・・・・うん、“またね”」

 

【さよなら】、そう言わない辺り守の良さというものが見て取れる。一期一会とはよく言うが、守の【また】はまさにそれなのだろう。彼にとって全てのことが一期一会なのだ。生涯にたった一度しかない【茜雫との初めての出逢い】を大事にしたい。そしてまた逢うのだという思いが、感じ取れる。

 

跳躍機が再び回転を始める。直ってないのだが、守はとりあえずこれで起こったのだからもう一度すれば直るとかいう安直な考えでまた回したのだ。

 

・・・・・・まぁ、実際ここで直したら未来に帰れないのもまた確かなのだが。

 

 

しかし、跳躍と共に守の記憶から茜雫が消えたことに守自身気づくことはなかった。

 

 

 

 

「ふむ、守。お帰りだ」

 

「おーっす、アーロニーロの旦那。ちゃんと届けてきたぜ」

 

届けるものも終わり、無事に帰ってきた守はアーロニーロの引きこもっている彼の宮へと足を運んだ。中に入るとちょうど電話をし終えたのだろうか何処から取っているのかわからない電話の受話器を戻している。勿論ザエルアポロの仕業だ。

 

「うむ、これで来年5月までの仕事は終わった。正直魔怪人編の後を続けようか迷っているが、ファンレターをみてるとだらだら続けてしまう。いけない事かもしれないが、やはり読みたいといってくれるものが居るのはいいことだからな」

 

「俺はいいと思うけどな・・・・・・で、冬コミの準備か旦那」

 

「あぁ、ストLIKEの同人本だよ。2500ほど刷らないといけないから業者に電話をしていたんだ」

 

ストLIKE、吹矢丈太郎作のちょっとエッチな漫画だ。当然アーロニーロと同じ出版社で、この人の作品も凄いものだ・・・・・・ただ、内容はラッキースケベのオンパレードであり、それの同人誌はとてもとてもよく売れるのだとか・・・・・・アーロニーロの場合、作風を変えて描く力をつければもっといい作品ができるとかいう理由が9割、残りの一割は女の子が描きたいという何とも言えない理由だ。完全に趣味の範囲になるため別にいいのだが、残念過ぎる。

 

「それまじで全部売れるのな」

 

「私の場合金目的ではないからね。皆安いからと買ってくれるよ」

 

「多分違うと思うけど旦那がそう思うんならいいや」

 

アーロニーロの実力と安さが重なったのではないかと思ったが、守は黙ることにした。彼の考えを態々改めることもないだろう、どうせ彼自身が理解すると信じたのだ。

 

「そうだ守。実は私のDyeなのだが・・・・・・映画を作ろうという話になった。内容をどうしようか考えていてな。少し助力を貰いたい」

 

「へぇ、旦那でもそんなことがあるんだなぁ・・・・・・内容か」

 

その時、ふと頭を過ぎったワードがのどを通り声へと変わる。それを彼自身なぜ過ぎったのかわからないし、何故この言葉だったのかもわからない。

 

「記憶がない女の子の話・・・・・・なんてどうだ?」

 

「ふむ・・・・・・記憶喪失系か。少し考えてみよう」

 

この意味の本筋を理解できることは、生涯ないのだろう。

 

何故なら彼の記憶に茜雫との出逢いはもう残っていないのだから。

 

 

 




今年も後6日ですね。皆、来年もしくよろ
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