【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第103話 〝月狼の戴日〟

 

 ――ナルシスとラファエロの舞踏会襲撃事件は、無事幕を閉じた。

 

 ラファエロの魔法によって乱闘に巻き込まれ大惨事となった貴族たちだったが、幸いなことに死者はゼロ。

 

 大怪我をした者は何人も出たが、それでも権力者の中から死人が出なかったのはラッキーだったと言わざるを得ない。

 

 ま、それもFクラスメンバーが率先して操られた貴族たちをはっ倒し――もとい手際よく気絶させていったお陰だろうが。

 

 とはいえ、有権者に怪我を負わせた――晴れ舞台に混乱を招いてしまったという事実は事実。

 

 レティシアを始め、マティアスやイヴァンたちは後処理をどうしたものかと頭を抱えていたが――不思議なことに、舞踏会に参加した貴族たちは誰もマティアスを責めなかった。

 

 あの乱闘に巻き込まれた、ただの一人も。

 

 それどころか、全員が「あの一件は気にしない」「我々は変わらずマティアス殿を支持する」という頑なな意思表明をするほど。

 

 無論、マティアスがぶち上げた〝資産を倍にする〟という公約のせいもあるだろうが……たぶん、あのおっさん(バスラ)のお陰だろう。

 

 〝レクソン家からも手を回しておく〟みたいなことを言ってたしな。

 

 レクソン家と言えば、王家と密接な繋がりのある影の名家。

 

 暗殺一家という家柄故に後ろ指を差されることもあるが、そんな彼らが能動的に貴族たちへ働きかけたならば、その影響力はあまりに未知数。

 

 レクソン家が持つ実際の権力がどれほどなのか、俺には予想もできん。

 

 だが……少なくとも〝舞踏会の一件をなかったことにする〟くらいの力はあったってことなんだろうさ。

 

 ありがたいと言えばありがたいけど、おっかないと言えばおっかないわな……。

 

 ま、なんにせよ一件落着で、エイプリルも五体満足。

 

 レティシアも俺のことを褒めてくれたし――面倒くさい思いをした甲斐はあっただろう。

 うん、そう思うことにしよう。

 

 ともかく、事態は沈静化し――ようやく〝月狼の戴日〟はやって来る。

 

 

 

 ▲ ▲ ▲

 

 

 

「――それでは、これよりウルフ侯爵家の家督相続の儀を執り行う」

 

 教会の中に、レティシアの父であり俺の義父でもあるウィレーム公爵の声が響く。

 

 彼が壇上に立ち、周囲には大勢の貴族たちの姿。

 

 その中に俺やレティシアなどのFクラスメンバー、それと王国騎士団・最高名誉騎士団長であるクラオン閣下も混じっている。

 

 そして――ウィレーム公爵の眼前には、マティアスとエイプリル両名の姿が。

 

 ちなみに、なぜウルフ侯爵家の家督相続の場にウィレーム公爵がいるのか――?

 それは――。

 

「本来であれば、父君であるコーウェン・ウルフ侯爵が直々にマティアス殿へ家督を譲るべきであろうが……私が代わりとなることを許してほしい」

 

「いえ、どうかお気になさらず」

 

「……父君のことは、不幸であったな。ご冥福をお祈りする」

 

 小さく苦笑するマティアスに対し、悼むように目を閉じるウィレーム公爵。

 

 そう……マティアスの父親であるコーウェン・ウルフ侯爵は、つい三日前に息を引き取った。

 

 元々意識がなく寝たきりとなっていたようだが、そのまま眠るように旅立ったという。

 

 まるで、マティアスとナルシスの因縁の行く末を見守ってから逝った――なんて感じるのは、俺の考えすぎであろうか。

 

 ともかく、マティアスへ家督を譲れる立場の者が不在に。

 

 故に代行者として相応しい権威を持ち、尚且つマティアス派として意思表明を出していたウィレーム公爵にお願いするという形となったのだ。

 

 実際問題、彼以上の適任はいないだろう。

 マティアスのウルフ侯爵家当主という立場にも、より拍が付くしな。

 

 ウィレーム公爵は故人をしばし悼んだ後、

 

「天国へ旅立たれたコーウェン・ウルフ侯爵の代行者として、〝月狼の戴日〟を迎えたことをここに宣言する」

 

 厳かに〝月狼の戴日〟の開催を告げる。

 

 ちなみにだが……ナルシスの奴は現在、絶賛行方不明となっている。

 

 本来であれば豚箱にでもぶち込まれるのが道理であろうが、貴族たちの間で「舞踏会の一件をなかったこととする」という暗黙の了解があったために、ナルシスの愚行もなかったことになったのだ。

 

 しかしあらゆる意味で負け犬となった奴に、もう居場所などない。

 

 今頃は国外に逃亡して、二度とヴァルランド王国の地を踏むことはないだろう。

 

 なんか聞いた話じゃナルシスの〝花嫁役〟の女もいたらしいけど、まあどうでもいいな。

 

「マティアス・ウルフ、そしてエイプリル・ウルフよ。貴殿らはお互いを支え合い、ウルフ侯爵家をより繁栄させていくと誓うか?」

 

「「誓います」」

 

「うむ。それではマティアス・ウルフよ、前へ」

 

 マティアスが一歩壇上へと上る。

 それに併せてウィレーム公爵が頸飾記章(ペンダント)を手に取り、

 

「貴殿に――ウルフ侯爵家当主の証である、〝月銀狼の頸飾章〟を授与する」

 

 〝月と狼があしらわれた銀の装飾〟が付いた頸飾記章(ペンダント)を、マティアスの首へと下げる。

 

「……これで、マティアス殿は正式にウルフ侯爵家当主となった。おめでとう」

 

 ――ウィレーム公爵のその言葉を待っていたかのように、教会の中はワッという拍手喝采に包まれたのだった。

 

 

 

 ▲ ▲ ▲

 

 

 

「やれやれ……ようやく面倒事が終わって一安心だな」

 

 あ~だるかった、とぼやきつつ俺はティーカップをスプーンで混ぜる。

 

 〝月狼の戴日〟の後日――俺とレティシア、そしてマティアスとエイプリルの四人は、シャノアの喫茶店に集まっていた。

 

 一度は爆破魔法で半壊状態となったシャノアの喫茶店だが、無事に修復が完了。

 

 以前と同じように、城下町のお客さんたちが集って賑わいを見せている。

 

 ちなみにであるが、店の修復費用は全てマティアス――というかウルフ侯爵家が出資してくれた。

 

 〝バカ兄貴のケツ拭きは俺がしないとな〟というのがマティアスの弁。

 まったく、兄より優れた弟ここにありだな。

 

 ともかく――。

 

「これで思う存分イチャイチャできるな、なあレティシア!」

 

「ええ、そうね。でも流石に二人の目の前でイチャイチャするのはよしましょう、アルバン」

 

 レティシアは優雅に紅茶を口へと運びながら、落ち着いた口調で俺をなだめる。

 

 むう、レティシアが言うなら仕方ない。

 

「……今回、二人には色々世話になっちまったな。オードラン男爵、レティシア嬢、改めて礼を言わせてくれ」

 

 反対側の席に座るマティアスが、なんとも申し訳なさそうな表情でそう切り出す。

 

 エイプリルのその言葉に続き、

 

「わ、私からもお礼を言わせてください! レティシア様には本当に色々教えて頂きましたし、オードラン男爵には命を救って頂いて……か、感謝してもし切れません!」

 

 そう言って、バッと頭を下げる。

 

 俺は「ハァ」と小さく息を吐き、

 

「勘違いするな。俺はお前たちのためにやったんじゃない。あくまでレティシアのためにやったんだ。だから礼を言われる筋合いなんぞない」

 

「……そう言って貰えると、助かるよ」

 

 苦笑するマティアス。

 何故かレティシアも俺の隣で「クスッ」と笑い、一瞬こちらから顔を背ける。

 

 ……あれ?

 俺、なんかおかしなこと言ったか?

 

 レティシアが喜んでほしくてやったのは事実なんだが?

 だってレティシアが二人を助けるって言うから……。

 

 いやまあ、好き好んで見捨てたくはないと思ったりはしたけどさ……。

 

 なんとも煮え切らない俺を余所に、レティシアは改めてマティアスたちへと目を向ける。

 

「ところでマティアス、無事にウルフ侯爵家の跡を継いだのだから、学園に戻ってくるのでしょう?」

 

「ああ、勿論だ。今回の恩はしっかりと返させてもらう」

 

 マティアスはハッキリと声に意思を込め、

 

「俺にできることならなんでも言ってくれ。これからもFクラスメンバーの一人として……アンタらには忠誠を誓うよ」

 

 そんな答えを返した。

 それを聞いたレティシアは満足そうに笑って、ティーカップを口へと運んだ。

 

「そう、頼りにしているわ」

 

「え? お、おいおいレティシア! 頼りにするのは俺一人で十分だろ!?」

 

「そういう意味で言ったんじゃないの。ほぉら、妬かない妬かない」

 

 むすっとする俺の頬を優しく撫でてくれるレティシア。

 うぅ……妻の手がスベスベで気持ちいい……。

 

 彼女は続けて、

 

「ああ、そうだわ。それよりエイプリル、あなたに聞いておきたいことがあったのだけれど」

 

「? は、はい、なんでしょう?」

 

「ずっと気になっていたのよ。あなたって、どこのクラスに所属しているの? これまで見てきたC~Eクラスにあなたは在籍していなかったと思うのだけれど……」

 

 何気ない感じでレティシアは尋ねる。

 すると、

 

「あ、はい! 私は〝Fクラス〟に在籍しています!」

 

「「「……え?」」」

 

 俺、レティシア、マティアス三人の声がハモる。

 

「ま、待って頂戴……? Fクラスは私たちのクラスであって……ええっと……」

 

「あっ、そういえばお伝えするのをすっかり忘れていました!」

 

 エイプリルはハッと思い出したかのように口を開け――。

 

「私、〝二年生〟なんです! 二年のFクラスに在籍しているので、皆さんとは学年が一つズレますね!」

 

 ――。

 ――――。

 ――――――。

 

「「「え…………ええええええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇッッッ!?!?」」」

 

 ――速報。

 これまで同級生だと思っていたエイプリルが、実は俺たちの先輩だった件。

 

 




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