【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第119話 星々曰く

 

《レティシア・バロウ(オードラン)視点(Side)

 

『――親愛なる可愛い可愛いレティシアちゃんへ❤

 約束通り、アルバンちゃんの裁判を無期延期にしてあげたわぁん❤

 あなたの夫を想う一途で健気な気持ち、とっても素敵よぉん❤

 

 だけど、アルバンちゃんはもうちょっとだけこっちで預からせてもらうわ~。

 流石にポンと解放するのは難しくて~ゴメンねぇ~

 

 ……それからあなたの〝提案〟だけど、とってもユニークねぇ。

 アタシ、そういう面白いアイデアって好きよ~。

 だから採用(・・)しちゃう!

 

 また近々、細かいお話を詰めましょうね。

 可愛い可愛いレティシアちゃんへ、アルベール・ヴァルランド第二王子より

 か❤し❤こ❤――』

 

「……」

 

 私はアルベール第二王子から届いた手紙を読み終えると、学園中庭の長椅子の上で「ふぅ……」と胸を撫でおろす。

 

 ……よかった、ひとまずアルバンが処刑される可能性はかなり減ったわね。

 

 エルザ第三王女のことだから、アルバンが王家へ叛逆しようとしていた偽の証拠なんて幾らでもでっち上げられたでしょう。

 彼を犯罪者に仕立て上げるなんて、彼女にとっては造作もないはず。

 

 だけど……エルザ第三王女は気付いていなかった。

 アルバンを処刑するというのは、もはや犯罪の証拠が云々という次元の話では済まされないことに。

 

 アルバンは――今やヴァルランド王国にとって〝台風の目〟になりつつある。

 

 彼を支持する国の要人は何人もいる。

 私のお父様ウィレーム公爵を始め、王国騎士団のクラオン閣下、ウルフ侯爵家当主となったマティアス、レクソン家当主のバスラ……そしてFクラスの皆。

 

 彼らが味方になるということは、彼らと友好的な貴族たちも実質的にアルバン支持派になるということ。

 〝敵の敵は味方〟と言うけれど、〝味方の味方は味方〟なのよね。

 

 故にアルバン・オードラン支持派は、今やヴァルランド王国の中でも一大勢力になろうとしている。

 

 もっとも、アルバン自身にその自覚は全くないでしょうけれど。

 それが彼のいいところでもあり、悪いところでもあるわね。

 

 ともかくそれだけの勢力を味方に付けたとなれば、確実に〝政治〟が絡んでくる。

 

 アルバンを処刑するというのは、パンパンに詰まった火薬庫に火を点けるのと同義だから。

 

 私は、その点をアルベール第二王子に教えるだけでよかった。

 

 そして彼はアルバンの立場を理解し、上手く立ち回ってエルザ第三王女の揚げ足を取ってくれた。

 

 ――思った通り、エルザ第三王女には政治力がない。

 これまでエルザ第三王女が(まつりごと)に関与した記録はないから、たぶん政治自体に関心がなく疎いのだ。

 

 だから不用意にアルバンを捕まえるなんて真似をしてしまった。

 

 自分の権力があれば裁判なんて適当に終わらせて、彼を断頭台送りにできると――そういう慢心があったのかもしれない。

 

 それがアルベール第二王子につけ入られる隙になるとも知らずに。

 

 これでアルバンの冤罪が確定すれば、エルザ第三王女の王家内での求心力は間違いなく低下する。

 権力を笠に着て横暴を働いたと、民衆からも非難されるだろう。

 

 逆に、アルベール第二王子は権力を強めるはず。

 それはそれで別の問題が発生するけれど――彼の野心(・・)と私たち夫婦の利害は一致しているしね。

 

 兎にも角にも、アルバンの身の安全は確保できた。

 ひとまずは安心……。

 

 そう――安心していいはず、なのだけど……。

 

「……どうしても、一つ引っかかる(・・・・・)のよね」

 

「――レ、レティシア夫人ー!」

 

 遠くからシャノアが走ってくる。

 彼女は私も傍までやってきてハァハァと息を切らし、

 

「ア、アルベール第二王子からお手紙が届いたって……ど、どどどどうでした!? オードラン男爵は……!?」

 

「落ち着いてシャノア。大丈夫、アルバンの裁判は無期延期が決まったらしいわ」

 

「! ほ、本当ですか!? よかったぁ……」

 

 よほど安堵したのか、ヘナヘナと身体の力が抜けて地面に尻餅を突くシャノア。

 

 クスッ、嬉しいわね……。

 そこまでアルバンのことを心配してくれていたなんて。

 

「ほ、本当に本当によかったです……! すぐFクラスの皆に伝えなきゃ……!」

 

「ええ……そうね」

 

「……? ど、どうされたんですか、レティシア夫人……? なんだかお顔が晴れませんが……」

 

「うん……どうしても引っかかることがあって……」

 

 私は口元に指を当て――思考を巡らせながら口を開く。

 

「どうしてエルザ第三王女は、今になってアルバンを捕まえたのかしら」

 

「ふぇ? そ、それは……」

 

「こんな横柄な手段を使えるなら、もっと早くやっていてもおかしくないのに……。何故今更になって……」

 

 ――理由はわからない。

 わからないけれど……なんとなく感じることはあった。

 

 たぶん、彼女は――。

 

「彼女は……エルザ第三王女は、なにか焦っている……?」

 

 

 

 ▲ ▲ ▲

 

 

 ――レティシアの下にアルベール第二王子の手紙が届いた、その日の夜。

 

 学園長室にいるファウスト・メルキゼデクは、窓から夜空を眺めていた。

 

 夜空は晴れ渡っており、無数の星々が光り輝いている。

 

「……」

 

 つぶさに星々を見つめるファウスト。

 すると――流れ星が夜空の中を横切る。

 

 一回、二回――。

 計二回の流れ星が、連続して光の線を描いた。

 

「ふむ……星々曰く、この国は大きく動こうとしておる……。そしてその中心には〝二人の男女〟の姿がある、と……」

 

 〝占星術〟で未来を占ったファウストは、しばし考えるように顎を撫でる。

 そして、

 

「歪んだ運命が是正されるか、それとも運命自体が歪みを受け入れるか……見ものじゃな」

 

 どこか楽しそうな口ぶりで、そんなことを言った。

 

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