【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第13話 試験の結果

 

「…………は?」

 

 呆気に取られ、ポカーンとマヌケ面を晒すバスチアン。

 

 あ~面白い。

 まったく期待通りの顔だよ、それ。

 

「は、え、混合魔法? なんで? 俺だって発動できないのに……?」

 

「ああ、すみません。たかが二属性を混ぜただけじゃ”基礎的”にもなりませんか? これくらい王立学園の先生なら基本中の基本ですもんねぇ」

 

 クックックと笑いながら言う俺。

 

 ”混合魔法”とは複数の属性をミックスして発動する、扱いの難しい上級魔法だ。

 

 なんで俺がそんなモノを発動できるかと言えば、無論セーバスに教わったから。

 

 ――俺がセーバスに教えてもらったのは、なにも剣術だけではない。

 

 剣術をマスターした後も、空いた時間を見つけては魔法などあらゆる戦闘技術を彼から指導してもらっていた。

 

 セーバスが戦場で会得した技術を、俺は全て受け継いだのだ。

 

 アルバン・オードランは天性の才能の持ち主。

 それは魔法に関しても同様だった。

 

 教えてもらった端から魔法を習得し、今や多くの上級魔法を使いこなすことが可能。

 

 混合魔法なら三属性までならミックスできるし、Sランク魔法もチラホラ使える。

 

 ハッキリ言うが、俺の魔法の実力は王立学園の教師に匹敵するかそれ以上だろう。

 

 セーバスのお墨付きもあるし。

 

 ”怠惰な天才が努力すれば、一体どうなるのか?”

 その答えが――俺なのだ。

 

「で? 合格ですか? 落第ですか?」

 

「そ、それは……」

 

「落第だって言うなら、これ以上の魔法を見せてくれなきゃ納得できませんが」

 

「ぐぅっ……! ご、合格、合格だ!」

 

「そりゃどうも」

 

「次の試験に移るぞ! 次は剣術だ!」

 

 バスチアンは二本の木剣を手に取り、片方を俺へと投げ渡す。

 

「剣術は貴族にとって最も基本的な嗜み! これより模擬試合を行い、この私から一本取れれば合格とする!」

 

「……入学前の生徒が”教師に勝て”って、いくらなんでも横暴では?」

 

「やかましい! 今更怖気づいたか!? だったらすぐにでも落第してやるぞ!?」

 

 ……はぁ~。

 いかん、もう付き合いきれん。

 

 こんなパワハラ紛いの方法で俺を落とせると、本気で思ってるのか?

 

 この阿呆教師はともかく、買収した貴族共は俺の身辺調査をやってないのか?

 

 少しでも調べてたら、こんな馬鹿馬鹿しいやり方はしないと思うんだが。

 

 なにせ俺は、あの(・・)セーバスに剣術を教わったんだぞ?

 

 こんな雑魚とは比較にもならない、あのセーバス・クリスチャンに。

 

「行くぞ! どりゃあッ!」

 

 勢いよく斬りかかってくるバスチアン。

 

 だが俺はそれを容易く回避。

 その後も彼は連撃を繰り出してくるが、俺は片手で木剣を握り、全て捌き切る。

 

「どうしました? 俺、まだ片手しか使っていませんよ?」

 

「な、舐めるなァ! このクソガキが!」

 

「――クソ(・・)はお前だよ」

 

 俺は初めて木剣を振るい――バスチアンの木剣を叩き折る。

 

 同じ得物でも、使い手によって威力も耐久力も変わる。

 故に達人は得物を選ばない。

 

 セーバスがよく言ってたっけ。

 

「……はぇ?」

 

「はい、一本」

 

 続け様に木剣を振り下ろし、バスチアンの脳天に一撃を叩き込む。

 

 腹いせにそこそこ力を入れてやったので、直撃と同時に俺の木剣も砕け散った。

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああああッ!?!?」

 

 大きく頭を凹ませ、地面をのたうち回るバスチアン。

 教師の威厳はどこへやら、だ。

 

「弱い」

 

 俺はそんなバスチアンのすぐ傍でしゃがみ込み、彼の顔を覗き込む。

 

 できるだけ、”悪ぅい顔”をして。

 

「弱い弱い弱い弱い、弱すぎる。貴様、本当に王立学園の教師か?」

 

「ひ、ひぃ……!?」

 

「次はなんだ? 真剣での斬り合いか? それとも魔法の撃ち合いでもやるか? さあ、もっと俺を楽しませてくれよ。さあ――!」

 

 こういう手合いは、徹底的に心をへし折ってやらないと気が済まない。

 

 レティシアがいれば止めるかもしれないが、生憎と彼女は寮の中。

 

 俺はレティシアみたいに優しくないからさ。

 泣いて謝るまで、せいぜい痛めつけて――

 

 

「――そこまでじゃ」

 

 

 ―――その時だった。

 背後から、声が聞こえた。

 

「ん……?」

 

「ファ――ファウスト学園長!」

 

 振り向くと、そこに立っていたのはヨボヨボの老人。

 

 雰囲気からして、セーバスやクラオン閣下よりもずっと高齢。

 身体は骨と皮だけで痩せ細っており、すっかり腰も曲がっている。

 

 ――ファウスト。

 その名前には覚えがあるな。

 

 ファウスト・メルキゼデク。

 

『マグダラ・ファミリア王立学園』の学園長にして、ヴァルランド王国でも屈指の大魔法使い。

 

 人間の身でありながら二百年という歳月を生きる傑人で、あらゆる魔法を習得していると噂されている。

 

 彼は「ふ~む」と唸って俺を見ると、

 

「なるほど、お主がアルバン・オードラン男爵か。これは聞いた通りのお手前よ」

 

「! 俺をご存知なんですか?」

 

「クラオンの若造が推薦しておったからな。百年に一度の逸材じゃと」

 

 クラオン閣下が――。

 

 彼は今、アルバン擁護派の中心人物として動いてくれている。

 

 それだけでも非常にありがたいが、まさかファウスト学園長に推薦までしてくれていたなんて。

 

 ありがたや、ありがたや……。

 

「ファ、ファウスト学園長! この者は教師に危害を加えました! 即刻処罰を――!」

 

「バスチアンよ。お主荷物をまとめて、今すぐ学園を去れ」

 

「は……?」

 

「入学前の生徒相手に、こうも惨めな失態を晒す無能は要らぬ」

 

 バッサリと言い捨てるファウスト学園長。

 唖然とするバスチアン。

 

 これはこれは、流石は超エリート育成所の首領。

 厳しいねぇ。

 

「んな……! 学園長、それはいくらなんでも……!」

 

「お主は教師失格じゃと言うておる。わかったらさっさと去ね」

 

「う……あ……くそぉ……!」

 

 がっくりと項垂れ、力なく声を漏らすバスチアン。

 

 終わりだな、コイツ。

 貴族たちから買収されておきながら、役目を果たせないどころか自分が学園を追われるとは。

 

 もはや国の中に居場所はあるまい。

 国外に逃亡するか、露頭で野垂れ死ぬかのどちらかだ。

 

「――さて、アルバン・オードランよ」

 

 ファウスト学園長はくるりと俺の方へ振り向き、

 

「お主の王立学園への入学を認める。心して学業に励むとよい」

 

「はっ、ありがとうございます!」

 

「うむうむ、若いのに良い返事じゃな。しかい、一点だけ忠告しておくぞ?」

 

「? はい?」

 

「今後、必要以上に教員をいたぶる(・・・・)真似は控えるように。自身が一介の生徒であるという自覚を持つことじゃ」

 

 そう言い残すと、ファウスト学園長はヨタヨタと歩いていってしまった。

 

 ……やっべ、釘を刺されちゃったよ。

 でもまあ、今回は見逃してくれたし?

 

 今後はやり過ぎないように注意しましょう、そうしましょう。

 

 さーて、寮棟に戻ったらレティシアにどう説明するか考えないとな。

 

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