【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】 作:メソポ・たみあ
《レティシア・
――さて。
久しぶりね、直接誰かと戦うなんて。
暴れるのはアルバンの専売特許ですし、そもそも彼が率先的に荒事に介入して解決してくれるから、私にお鉢は回ってこないのよね。
でも……だからって、無力な
狐に噛まれたら「痛い」じゃ済まないということを、思い出させて差し上げましょう。
さあ――今日は存分に暴れましょうか。
私は再びヒソヒソ声でラキに話しかけ、
「……ラキ、あなたはここでじっとしていて。私がガスコーニュをやっつけてあげる」
「へ……? な、なに言ってんのレティシアちゃん! 相手は凄腕の狩人なんだよ!?♦ 頭出した瞬間に――!♠」
「大丈夫」
ラキを落ち着かせるように、私は彼女の手をそっと触れる。
「私は負けないわ。それに、あなたをこんなところで死なせたりしない。だから任せて頂戴」
「レティシアちゃん……」
「ただ、あなたにも頼みたいことがあって――」
ラキの耳元に手を近付け、とても小さな声で
それを伝え終えた私は、私はグッと足に力を込めて立ち上がり――歩き出す。
そして堂々と、岩陰から出ていった。
……コツ、コツと
ラキとローエンに陽動を任せたこのルートは、
しかし反面、人間よりも大きな岩がそこかしこにあるため見通しが利かず、加えて薄暗がりであるために余計に視界が制限される。
人が隠れられる場所など無数に存在し、息を殺して獲物を狙う狩人にとっては、まさしく絶好の
私はそんな場所を、胸を張って、堂々と進んでいく。
私からは、相変わらずガスコーニュがどこにいるのかなど全くわからない。
逆に、既にこちらの位置を把握しているであろうガスコーニュにとっては、絶好のチャンスのはずだ。
いつだって私の額に弓矢を突き立てられるはずだ。
なのに――彼は、弓矢を放ってこない。
そんな場所の、やや開けた地点で立ち止まった私は――。
「……あら、射ってこないのね。せっかく狙いやすい場所まで来てあげたのに」
『……』
挑発に対し、沈黙で答えるガスコーニュ。
……ああ、やっぱり。
口先でどう言おうと、
彼らだってFクラスのこれまでの試験結果や、私が〝どういう人間か〟というのをよく知っているはずだもの。
ガスコーニュ……あなたは今、頭の中でこう考えているのでしょう?
――何故、自ら姿を曝け出した?
姿の見えない狩人の前に進み出るなど、単なる自殺行為だ。
あの小賢しいレティシア・
……罠か?
それとも焼きが回ったのか?
――そんな自問自答を繰り返しているはずよね。
あなたほど経験豊富な
これで
あとはいつでも――。
そう思っていた矢先、遠く離れた岩の影でほんの僅かに黒い影が動く。
直後、ビュンッ! と弓矢が放たれた。
――きた。
弓矢が放たれたと認識した私は、瞬時に体内で練っていた魔力を解き放ち――。
「――〔ウィンド・ウォール〕」
魔法を発動。
すると――私目掛けて飛翔していた弓矢が、脳天に突き刺さる直前にビュオッと
まるで真横から突風に煽られ、強制的に軌道を変えさせられたかのように。
『――!!』
「この魔法を誰かの前で使うのは初めてだわ。矢避けの傘には最適だと思わなくって?」
――〔ウィンド・ウォール〕は対象の周囲に〝風の壁〟を作る防衛魔法。
〝壁〟としての防御力はそれなりだけれど、発動までの時間が極めて早く、空気がある場所でならどこでも使用可能。
さらに視界を一切遮らない、移動を阻害しない、それでいて全周囲を守れるという利便性も兼ね備えている。
これらの特徴から、〝矢避けの魔法〟としてよく使われる魔法なのよね。
弓使いであるガスコーニュにとっては、厄介この上ない魔法でしょう。
猛者揃いのAクラスのことだから、私が魔法の心得があることくらいは周知していたはず。
でも――
……イヴァンやマティアスたちだけじゃないのよ?
強くなっているのは――!
『クソ……ッ!』
自慢の弓矢が届かないと悟ったガスコーニュは、バッと岩陰から動く。
そして岩陰から岩陰へカバーリングしつつ、弓矢を放って牽制をしながら素早く接近してくる。
自分とレティシア・
気配を消して一撃必中を狙っていた戦い方から、アクティブに動いて間合いを詰める戦い方へ――。
基本的に、魔法使いは接近戦に弱い。
特に私のような防衛魔法や遠隔魔法を得意とするタイプは、間合いを詰められると一気に対抗策を失う。
状況を判断し、魔力を練って、適切な魔法を発動する――という
敵ながら賢明な判断ね。
思い切って身を曝け出したのも流石だわ。
でも、そう易々と近寄らせるとお思い?
私はニィッと微笑を浮べ――改めて魔力を練る。
それも、できるだけ大きな魔力を。
そして――。
「――〔ブリザード・サンクチュアリ〕」
ガスコーニュに接近されるよりも早く――