【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第133話 最悪の相性

 

《レティシア・バロウ(オードラン)視点(Side)

 

 ――さて。

 久しぶりね、直接誰かと戦うなんて。

 

 暴れるのはアルバンの専売特許ですし、そもそも彼が率先的に荒事に介入して解決してくれるから、私にお鉢は回ってこないのよね。

 

 でも……だからって、無力な女狐(・・)と思われるのは心外。

 

 狐に噛まれたら「痛い」じゃ済まないということを、思い出させて差し上げましょう。

 

 さあ――今日は存分に暴れましょうか。

 

 私は再びヒソヒソ声でラキに話しかけ、

 

「……ラキ、あなたはここでじっとしていて。私がガスコーニュをやっつけてあげる」

 

「へ……? な、なに言ってんのレティシアちゃん! 相手は凄腕の狩人なんだよ!?♦ 頭出した瞬間に――!♠」

 

「大丈夫」

 

 ラキを落ち着かせるように、私は彼女の手をそっと触れる。

 

「私は負けないわ。それに、あなたをこんなところで死なせたりしない。だから任せて頂戴」

 

「レティシアちゃん……」

 

「ただ、あなたにも頼みたいことがあって――」

 

 ラキの耳元に手を近付け、とても小さな声で作戦(・・)を伝える。

 

 それを伝え終えた私は、私はグッと足に力を込めて立ち上がり――歩き出す。

 

 そして堂々と、岩陰から出ていった。

 

 ……コツ、コツと洞窟(ダンジョン)の中に響く靴の音。

 

 ラキとローエンに陽動を任せたこのルートは、洞窟(ダンジョン)の中でも比較的広々とした空間となっている。

 

 しかし反面、人間よりも大きな岩がそこかしこにあるため見通しが利かず、加えて薄暗がりであるために余計に視界が制限される。

 

 人が隠れられる場所など無数に存在し、息を殺して獲物を狙う狩人にとっては、まさしく絶好の狩場(キルゾーン)と言えるだろう。

 

 私はそんな場所を、胸を張って、堂々と進んでいく。

 

 私からは、相変わらずガスコーニュがどこにいるのかなど全くわからない。

 

 逆に、既にこちらの位置を把握しているであろうガスコーニュにとっては、絶好のチャンスのはずだ。

 

 いつだって私の額に弓矢を突き立てられるはずだ。

 

 なのに――彼は、弓矢を放ってこない。

 

 そんな場所の、やや開けた地点で立ち止まった私は――。

 

「……あら、射ってこないのね。せっかく狙いやすい場所まで来てあげたのに」

 

『……』

 

 挑発に対し、沈黙で答えるガスコーニュ。

 

 ……ああ、やっぱり。

 口先でどう言おうと、Aクラス(あなたたち)は私を強く警戒しているのね。

 

 彼らだってFクラスのこれまでの試験結果や、私が〝どういう人間か〟というのをよく知っているはずだもの。

 

 ガスコーニュ……あなたは今、頭の中でこう考えているのでしょう?

 

 ――何故、自ら姿を曝け出した?

 姿の見えない狩人の前に進み出るなど、単なる自殺行為だ。

 あの小賢しいレティシア・バロウ(オードラン)が、そんな愚かな真似をするワケがない。

 ……罠か?

 それとも焼きが回ったのか?

 

 ――そんな自問自答を繰り返しているはずよね。

 

 あなたほど経験豊富な狩人(ハンター)であれば、必ず〝獲物の心理状況〟を読もうとしてしまうでしょうから。

 

 これで確認(・・)は取れた。

 あとはいつでも――。

 

 そう思っていた矢先、遠く離れた岩の影でほんの僅かに黒い影が動く。

 

 直後、ビュンッ! と弓矢が放たれた。

 

 ――きた。

 

 弓矢が放たれたと認識した私は、瞬時に体内で練っていた魔力を解き放ち――。

 

「――〔ウィンド・ウォール〕」

 

 魔法を発動。

 

 すると――私目掛けて飛翔していた弓矢が、脳天に突き刺さる直前にビュオッと逸れた(・・・)

 

 まるで真横から突風に煽られ、強制的に軌道を変えさせられたかのように。

 

『――!!』

 

「この魔法を誰かの前で使うのは初めてだわ。矢避けの傘には最適だと思わなくって?」

 

 ――〔ウィンド・ウォール〕は対象の周囲に〝風の壁〟を作る防衛魔法。

 

〝壁〟としての防御力はそれなりだけれど、発動までの時間が極めて早く、空気がある場所でならどこでも使用可能。

 

 さらに視界を一切遮らない、移動を阻害しない、それでいて全周囲を守れるという利便性も兼ね備えている。

 

 これらの特徴から、〝矢避けの魔法〟としてよく使われる魔法なのよね。

 

 弓使いであるガスコーニュにとっては、厄介この上ない魔法でしょう。

 

 猛者揃いのAクラスのことだから、私が魔法の心得があることくらいは周知していたはず。

 

 でも――今の私(・・・)がどれだけの魔法を会得しているのか、までは調べが足りていなかったようね。

 

 ……イヴァンやマティアスたちだけじゃないのよ?

 強くなっているのは――!

 

『クソ……ッ!』

 

 自慢の弓矢が届かないと悟ったガスコーニュは、バッと岩陰から動く。

 

 そして岩陰から岩陰へカバーリングしつつ、弓矢を放って牽制をしながら素早く接近してくる。

 

 自分とレティシア・バロウ(オードラン)との相性が最悪だと気付いて、戦術を変えたのだろう。

 

 気配を消して一撃必中を狙っていた戦い方から、アクティブに動いて間合いを詰める戦い方へ――。

 

 基本的に、魔法使いは接近戦に弱い。

 

 特に私のような防衛魔法や遠隔魔法を得意とするタイプは、間合いを詰められると一気に対抗策を失う。

 

 状況を判断し、魔力を練って、適切な魔法を発動する――という手順(プロセス)が間に合わなくなってしまうから。

 

 敵ながら賢明な判断ね。

 思い切って身を曝け出したのも流石だわ。

 

 でも、そう易々と近寄らせるとお思い?

 

 私はニィッと微笑を浮べ――改めて魔力を練る。

 それも、できるだけ大きな魔力を。

 

 そして――。

 

「――〔ブリザード・サンクチュアリ〕」

 

 ガスコーニュに接近されるよりも早く――Sランク(・・・・)の魔法を発動した。

 

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