【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第140話 また一緒に笑い合うために

 

《エステル・アップルバリ視点(Side)

 

 さながら打ち上げられたお花火の如く、天高くへ蹴り上げられたフィグ。

 

 お時間にしてみれば、きっとほんの一瞬。

 

 けれどそのお時間はとてもとても長く長く感じられて、ゆっくりゆっくりと彼の身体は宙を舞い、徐々に徐々に落下していきます。

 

 そしてようやく――ドシャアッ! という音を奏で、背中から地面に激突(ノックダウン)しやがりました。

 

「――」

 

 白目を剥いたまま、ピクリとも動かないフィグ。

 口からは泡をお吹きになって、辛うじて呼吸だけはしているご様子。

 

 そんな彼の完全に気絶した姿を見て、

 

「――しゃああああああああああああああああああああああああああッ!!! 〝対あり〟ッ――ですわァッ!!!」

 

 思いっ切りガッツポーズを決め、咆哮をぶち上げる私。

 

 っしゃオラァ!!

 ご覧になりましたかコラァ!!

 

 ボクシングがなんぼのもんじゃい!

 これが私の、〝お喧嘩〟の強さなんじゃ! ですわ!!!

 

「オホホホホ! 私ってば完全勝利ですわねぇ! さぁて、お気持ちよくボコしたところで、さっさとレティシア夫人の下へ――」

 

 向かいましょうかしら、と私が言おうとした時でした。

 

 プピュー……とわたしの額から、まるで小さな噴水のように血が噴き出します。

 

「……あ、ら?」

 

 フィグの拳を見事に粉砕した私の石頭でしたが、パンチを受けて割れた《・・・》のはこちらの骨も同じだったご様子。

 

 自分の頭からドバドバと血が流れ出ていく感覚を覚えると、すぐにグワンと視界が大きく揺れ、私は立っていられなくなります。

 

「ウ、ウフフ……金槌(ハンマー)よりも硬い、私のお頭(ドタマ)をかち割るなんて……。ボクシングもおバカにしたものじゃ……ふみゅ」

 

 あっという間に意識は遠のいていき――私はそのまま、バターンッと倒れたのでした。

 

 

 

 ▲ ▲ ▲

 

 

 

《レティシア・バロウ(オードラン)視点(Side)

 

 ――私は、洞窟(ダンジョン)の中をまっすぐ進む。

 

 臆することなく、身を隠すこともなく、ただまっすぐに。

 

 Aクラスの本陣は、もう目と鼻の先。

 なのに誰も襲ってこない。

 

(アルバン)〟の代役を務める私を仕留めればそれで試験は終わりなのに。

 

 ……やっぱり、ね。

 Aクラスのメンバーたちは、私のこの行動を〝罠〟だと思っているのでしょう。

 

 Fクラスの動きが全て監視されて筒抜けになっているのなら、私の動きも逐次追っているはず。

 

 そして今は、Aクラスにとってはどう考えてもチャンスのはずだ。

(キング)〟が単身で、それも自陣の前にいるのだから。

 

 なのに、迎え撃ってくる者が一人として現れない。

 

 警戒(・・)している証拠だ。

 私の行動になんらかの裏があると、疑っているという証左に他ならない。

 

 ――ガスコーニュとの戦いの時、彼は私が無防備に岩陰から出て行っても、すぐには弓矢を放ってこなかった。

 

 彼にとって、あれはあくまで瞬間的な判断だったかもしれない。

 

 けれど間違いなく、無意識下には私への警戒心があったはず。

〝レティシア・バロウの動きには必ず裏があるはずだ〟という。

 

 そしてその意識は、きっとAクラス全体が共有している。

 だから素直に迎撃してこない。

 

 敵陣に突っ込むなんて、普通ならあり得ないものね。

 そんなことができるのは、アルバンを除いて他にいない。

 

 もっとも、私の迎撃に動けば拡散した戦線が崩壊するという理由もあるでしょうけれど。

 

 今頃Aクラスを裏で指揮している誰かさんは、大混乱に陥っているんじゃないかしら?

 

 その誰かさんもそろそろ尻尾を出して、パウラ先生が捕まえる頃合いかも。

 

 ……ここまでは、凡そ想定通り。

 でもここからは、私にとって正念場となるでしょう。

 

「さて……」

 

 私は一度立ち止まり、目を瞑って深呼吸をする。

 

 この先には、Aクラスの〝(キング)〟が待っている。

 そして……もしかしたら、レオニール(・・・・・)も。

 

 私は、彼らを倒せるだろうか?

 彼らに勝てるだろうか?

 

 ――否、絶対に勝つのだ。

 

 因縁を断ち切り、前へと進むために。

 ……アルバンと、また一緒に笑い合うために。

 

「――行きましょうか」

 

 再び、私は足を動かす。

 前へと進んでいく。

 

 けれど――その時だった。

 

「う…………あ…………ッ」

 

 私の前に、何者かがフラリと現れる。

 

 直後、力なくドサリと倒れた。

 

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