【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第145話 面倒くせぇけど

 

《レティシア・バロウ(オードラン)視点(Side)

 

「〝串刺し公(スキュア)〟……あなた……」

 

 既に事切れ、動かなくなった〝串刺し公(スキュア)〟を見て――私は茫然と立ち尽くす。

 

 今際(いまわ)(きわ)に打ち明けた、彼の本心。

 

 エルザ第三王女への忠誠心を超えた感情。

 それは文字通り、命を賭したモノだった。

 

 ……私とアルバンは、ずっとこの男に策謀に苦しめられてきた。

 

 私たち夫婦を幾度となく引き裂こうとした、怨敵にして仇敵。

 いつか必ず報いを受けさせてあげましょう――そう思っていたのに。

 

 でもまさか、その怨めしい相手の最期がこんな形だなんて……。

 

 私は自分の気持ちを整理し切れず、ただ彼の亡骸を見つめることしかできなかった。

 

 そんな私とは対照的に、パウラ先生はスタスタと〝串刺し公(スキュア)〟へ歩み寄っていく。

 

 そして指先で彼の首筋に触れ、

 

「……脈拍なし、死亡確認。ま、こういう手合いの死に方としては上等な方でしょうか。面倒な手間を省かせてくれたことには、感謝しなくちゃいけませんね」

 

 慣れた様子で生死の確認を取ると、あっけらかんとした様子で言った。

 

 そんな彼女の言い草に、私はなんだかモヤッとした感情を覚える。

 

「パ、パウラ先生、死者に対してそんな言い方は……!」

 

「事実ですよ。それにこの子はここで死ななければ、もっと酷い最期が待っていたんですから」

 

「え……?」

 

「今回の事件の失敗により、エルザ第三王女の失脚はもはや確定事項となりました。となれば、実行犯であるこの子は政治犯かつテロリストとして扱われ、惨い尋問を受けたことでしょう。最期は獄中で気が触れて死ぬか、それとも断頭台にでも送られるか……」

 

 淡々とパウラ先生は語る。

 まるで、実際にそういう人々を見てきたかのように。

 

「いずれにせよ、碌な末路を迎えられなかったのは間違いありません。誇り高い自死を選んだのは、正しい判断なんです」

 

「……」

 

 それがせめてもの情け(・・・・・・・)だった――そう言わんばかりの彼女の口調に、私は言葉もなかった。

 

 ……こうして人の死を間近で見たのは、ライモンドの時から二度目。

 

 何度見ても……慣れないわね。

 

「……レティシア嬢、大丈夫か?」

 

 そんな私を気遣ってか、ローエンが背後から声をかけてくれる。

 

「……ええ。あなたこそ平気?」

 

「俺は〝職業騎士〟だからな。生い立ち柄、人の死には比較的慣れている」

 

 ローエンはそう言って〝串刺し公(スキュア)〟の方を見やると、

 

「コイツと我らとは因縁浅からぬ仲だが……死者まで愚弄することはあるまい。せめて安らかな眠りを祈ろう」

 

 黙祷するように目を瞑る。

 そして、しばしの後に目を開けると――。

 

「……それにしても、解せんな」

 

「え?」

 

「コイツがレオニールの格好をしていたのは、本当にただ俺たちを驚かせるためだったのか……? そもそも、当のレオニールは何処に――」

 

 そうローエンが言いかけた――その時。

 

「――――み、皆ぁ! 大変だッ!!!」

 

 遠くから、学園の男性教師らしき人物が一人走ってくる。

 

 たぶん洞窟(ダンジョン)の入り口からずっとここへ向かってきたのだろう。

 額から汗を流し、なんだか焦り切った表情をしている。

 

 パウラ先生もその弾性教師に気付き、

 

「おや? どうされました?」

 

「ああパウラ先生! 今すぐ生徒たちを連れて避難を!! 今、城下町の方で――ッ!」

 

 男性教師が言いかけた、その矢先――。

 

 ズンッ……! と、突然洞窟(ダンジョン)全体が大きく揺れる。

 

 地震……?

 いや違う、そういう感じじゃない。

 

 まるで――遠くで大きな爆発(・・・・・)でも起きたかのような――。

 

 男性教師は顔を真っ青にし、

 

「は……反乱(・・)だ! 武装した兵士や民衆が、王都で大規模な暴動(テロ)を起こしてる! 今、城下町のあちこちで――火の手が上がってるんだ!!!」

 

 そんなことを、私たちに告げた。

 

 

 

 ▲ ▲ ▲

 

 

 

 ――ドーン!

 ――――ズズーン!

 

 ――わああああああああ!

 ――――きゃああああああああああ!!!

 

「…………ふぁ~あ、うるせぇなぁ……」

 

 ――()は寝心地の悪い粗末なベッドの上であくびを鳴らし、ゴロンと寝返りを打つ。

 

 どこからか爆発音が鳴り響き、それに混じって薄っすらと聞こえてくる人の悲鳴。

 

 俺がいる牢屋は窓などが一切ないため、外界の音はかなりくぐもった感じにしか聞こえてこない。

 

 逆を言えば、それでも聞こえてくるということは監獄の外で――城下町の方で、なにかマズいこと(・・・・・)が起きているという証左でもある。

 

「あ~あ、面倒くせぇ……。面倒くせぇけど――そろそろレティシアが迎えに来てくれるかもだし、シャン(・・・)としておかなきゃな」

 

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