【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第178話 レティシアからの伝言②

 

《レティシア・バロウ(オードラン)視点(Side)

 

「――ぷはぁ!」

 

 やっと……やっと狭い抜け穴から出られたわ……。

 息苦しかった……。

 

 ――狭苦しい抜け穴の中を進み続け、私はどうにか〝外〟へと脱出。

 幸い抜け穴自体は一本道だったし、ベンが慣れた様子で先を進んでくれていたから、特に迷ったりすることもなかった。

 

 ……けれど、抜け穴は途中から急勾配の登り坂となっていて、進むだけでも一苦労だったわ……。

 

 よくよく考えれば、地下水道から地上へ繋がる通路を進むのだから、道が登り(・・)になって当然よね……。

 

 お陰で、抜け穴を出るまで思ったより時間がかかってしまった。

 ドレスも泥だらけになっちゃったし。

 

「……」

 

 ――アルバン。

 彼は――我が最愛の夫は――無事かしら――。

 

 幾ら彼が強くても、子供たちを守りながら無数の半魚人(モンスター)を相手取るなんて不利過ぎる。

 多勢に無勢の中、消耗戦になんてなったりしたら……。

 

 それに――あまりにも未知数な〝魔導書(グリモワール)〟の存在。

 

 ――なんとかしないと。

 でも、私だけじゃ……。

 

 私はしばし思案した後、「ふぅ」と小さく息を吐き――

 

「……仕方ないわね。こうなったら呼ぶ(・・)しかないかしら」

 

 できれば、巻き込みたくなかったのだけれど……。

 でも彼らがいてくれたら百人力――いいえ、百万人力(・・・・)ですものね。

 ――と自分に言い聞かせる。

 

「貴族のお姉ちゃん、こっち! こっちだよ!」

 

 そんなことを考えていると、一足先に抜け穴から出ていたベンが私の下へ駆け寄ってくる。

 

 彼は私の手をグイグイと引っ張り、ちょっとだけ歩かせると――なにやら開けた場所に出た。

 

 ――〝外〟。

 空はすっかり暗くなっており、少し離れた場所には灯りの付いた家々が見える。

 そのさらに向こうには、王城の姿も。

 

 どうやらここは東区の最端らしく、ほんの少しだけ地面が盛り上がって丘のようになっているらしい。

 

 東区の中にこんな風に王都を見渡せる場所があるなんて、知らなかったわ……。

 

「き、貴族のお姉ちゃん、助けを呼ぼうよ! セラお姉ちゃんたちを助けなきゃ……!」

 

「ええ、わかってる。――ねえベン、少しお使い(・・・)を頼まれてくれないかしら?」

 

「? お、お使い……?」

 

「そう、お使い。中央区の中にね――」

 

 私はベンに〝とあるお店〟の場所を教え――同時にメッセージを伝える。

 

「――という風に、お店の女の子に伝えてほしいの。どう? 頼める?」

 

「う、うん! 任せて!」

 

「いい子ね。それじゃあ、お願い」

 

 力強く頷き、タッタッタと勢いよく走り去って行くベン。

 その背中を見送った私は――

 

「さて……私も私にできることをしましょうか」

 

 

 

 ▲ ▲ ▲

 

 

 

「ハァ……ハァ……!」

 

 ――レティシアからお使い(・・・)を頼まれたベンは、一生懸命に走っていた。

 

 無我夢中だった。

 息を切らし、滝のように汗を流し、途中で転んで膝を擦りむいても、決して止まらずに走り続けた。

 

 ベンは皆を――家族を助けたかった。

 

 ヒメナ、ジェリー、アンドレ、パコ――そしてセラ。

 ベンにとって、皆はかけがえのない存在だった。

 血は繋がっていなかったとしても、六歳という短い人生の中で苦楽を共にしてきた家族だったのだ。

 

 だから走った。

 つらくても、痛くても。

 皆を絶対に助けるんだという強い意志を、決して捨て去ろうとはしなかった。

 

 そしてようやく――ようやく、ベンは〝とあるお店〟の前に辿り着く。

 店内には明かりが灯り、店の周囲にはとてもいい香りが漂っている。

 

 そこが飲食店――所謂〝喫茶店〟であることは、幼いベンにもすぐわかった。

 

 ベンは迷うことなく、そのお店のドアを開ける。

 すると「カランカラン」という鈴の入店音が響き――

 

「いらっしゃいませ! 何名様で――って、あれ? 子供……?」

 

 カウンターの奥から、一人の少女が出迎えてくれる。

 エプロンを身につけた、栗色の髪の少女。

 優し気な顔立ちをしており、年齢はおそらくレティシアやアルバンと同じくらい。

 

 ベンにはすぐわかった。

 この人が、貴族のお姉ちゃん(レティシア)が言っていた人なのだと――。

 

 ベンはハァハァと息を切らし、

 

「お……お姉ちゃんが、〝シャノア〟って人……?」

 

「ふぇ? そ、そうです、けど……」

 

 

「き、貴族のお姉ちゃん……レティシアお姉ちゃんから伝言! 〝大至急、Fクラスの皆を集めて〟――って!」

 

 




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