【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第197話 ユーリの奴は――

 

《イヴァン・スコティッシュ視点(Side)

 

 ――コルシカとフランの二名が、『決闘場』にて激突した翌日。

 

「昨日の戦い、ありゃー見ものだったぜ? お前も見にくればよかったのによ」

 

 ……僕の隣を歩きつつ、ニヤニヤと笑いながらマティアスが言ってくる。

 僕たち二人は、中庭へと続く外廊下の中を肩を並べて歩いていた。

 小さくため息を吐きながら僕は眼鏡を動かし、

 

「僕には僕でやることがあるからな。そんな暇はない」

 

「へえ、〝興味ない〟とは言わないんだな」

 

 どこか揚げ足を取るように言ってくるマティアス。

 その言い草に僕は多少の苛立ちを覚えたが、軽く聞き流すことにした。

 マティアスの軽口になど、もう慣れたモノだ。一々付き合っていられない。

 

 ……が、それでもマティアスは微笑を浮べたまま、こちらをジーッと見続けてくる。

 

「……なんだ、そのなにか言いたげな目は」

 

「いんや、別に。ただ、ね――」

 

 マティアスは微妙に「釈然としない」とでも言いたそうな顔して、首をコキッと鳴らした。

 

「なぁイヴァン。お前がこっそり影に隠れて、一体なにをしてるのか――少なくとも俺やレティシア嬢は気付いてるぜ」

 

「……だったら、どうしたと言うんだ」

 

「お前が努力(・・)してるのは知ってる。でもよ、なんだって俺たちに隠れてコソコソするような真似してんだよ?」

 

「努力とは他人に見せないモノだ。少なくとも僕はそう思っている」

 

「あっそ、お前らしいわ」

 

 毅然とした口調で答えた僕に対し、マティアスは「やれやれ」と頭を掻く。

 

「お前のその努力(・・)も――全部(ユーリ)のためってか?」

 

「……」

 

「昨日の決闘に勝ったコルシカって嬢ちゃんも、一番の好敵手はユーリだって認めてるらしいじゃねーか。あんなに強ぇのに……どうしてユーリを名指しするのかねぇ?」

 

 声のトーンを抑えて、マティアスは言う。

 彼は数秒ほど無言になり、間を置いた後――

 

「……お前にゃー悪いと思ったが、ユーリのことは少し調べさせてもらったよ。学園側の評価じゃ武芸・智力・精神性、全てにおいて貴族として申し分なし……〝極めて優秀な人材〟だとさ。近頃スコティッシュ公爵家が喧伝し始めた話と一致するな」

 

「フン、スコティッシュ公爵家の人間であるならば当然だ」

 

「だったらよ――そんな優秀な人間が、どうしてこれまで()に出てこなかった?」

 

 ――確信を突くような口調のマティアス。

 そんな彼の言葉に対し――僕は一瞬、返す言葉を見つけられなかった。

 

「不思議なことに、俺はこれまでユーリ・スコティッシュに関する噂や評判ってのを碌に聞いたことがない。お前(イヴァン)に関する話は、結構な割合で聞いてた気がするのにな」

 

「…………」

 

「スコティッシュ公爵家ってのは、とにかくプライドの高い家柄だ。次男であるユーリより、長男であり跡取りだったお前(イヴァン)の有能さをアピールしたがったのは理解できる。だけど――それは次男(ユーリ)の評判がない理由にはならないよな。別に〝兄弟共に優秀〟って言えばいいだけなんだからよ」

 

 淡々と、けれど僕の心の内に踏み込むように重く語るマティアス。

 

 ああ……そうか。

 どうやら彼は、勘付いてしまったらしい。

 

「評価や評判――人や物の価値性ってのは、群集の話題(・・)にどれだけ上がれるかで決まる。いい意味でも悪い意味でもな。〝悪名は無名に勝る〟なんて言われちまう所以がコレだ」

 

「……つまり話題(・・)に上がらないモノは、無価値だとでも?」

 

「より正確に言うなら〝価値がわからない〟だな。話題に上がらないモノは知りようがない、知りようがないモノには価値を付けようがない――。目立つ(・・・)ってのは、時には手段と目的を逆転させるに足るくらいには重要なのさ」

 

 もっとも、ただ目立てばいいってモンでもないが――とマティアスは言うと、僕の方へと視線を流してくる。

 

「けどよ、そんなのはスコティッシュ公爵家もよくわかってんだろ? 貴族の世界の中で目立つ重要性ってヤツを。なのに、ユーリを目立たせようとはしなかった……」

 

「……」

 

「こっから先は〝推測(たぶん)〟の話だけどよ……考えられる理由は、主に二つ(・・)だ」

 

 マティアスは右手の人差し指と中指を伸ばし、〝二つ〟のジェスチャーをして見せる。

 

「まず一つ、ユーリがお前よりも優秀だった――優秀過ぎた(・・・・・)って可能性。お前(イヴァン)は間違いなく優秀な人材だが……ユーリにはあってお前にはない〝なにか〟があったんじゃねーか? だからスコティッシュ公爵家は徹底してユーリの評判をなくし、比べさせる余地をなくそうとした」

 

「……マティアス」

 

「もっとも、これだけじゃ弱い(・・)。だから、そうせざるを得なかった理由(ワケ)があるはずだ。これが二つ目の推測だが……もしかするとよ、ユーリの奴は――」

 

「マティアスッ!!!」

 

 僕は張り裂けんばかりの大声で、マティアスの言葉を遮る。

 同時に歩みを止め、外廊下の真ん中で立ち尽くした。

 

「……それ以上は言うな。もしそれ以上言うなら――僕はキミの友人ではいられなくなる」

 

「イヴァン……」

 

「この話はもうおしまいだ。さあ、行こう。もうすぐ授業が始まる」

 

 無理矢理に会話を終わらせ、僕は再び歩み出す。

 そしてマティアスの肩を通り過ぎた――その時だった。

 

 

 

 ――――〝グシャッ〟

 

 

 

 そんな音が、突然僕の耳に入ってきた。

 なんだか、とても水っぽいような音が。

 

 なんだ――?

 そう思って、音がした方へと顔を向ける。

 

 すると――僕の目に映ったのは、地面に横たわる〝人〟だった。

 貴族衣装を着た男性。身体つきは細身で、華奢な印象を受ける。

 髪の色は――僕に似た(・・・・)青みがかった黒色。

 

 そんな男は、手足がおかしな方向へ折れ曲がっていた。

 身体からは血が流れ出し、彼は瞬く間に血溜まりへと沈んでいく。

 たぶん、いや間違いなく、校舎の屋上から落下したのだ。

 

 その衣服、

 その体格、

 その髪の色――

 

 両の目に映った情報が、その光景が、ようやく頭の中で統合された瞬間――僕は自分の瞳孔が開くのを感じた。

 

 

「ユ――――ユーリッッッ!!!」

 

 

 僕は反射的に駆け出す。

 全速力で。

 取り乱すのを隠そうともしないで。

 

 そして地面に横たわる身体を、すぐに抱きかかえた。

 

 




今から幻想を言います。
僕も兄貴(男兄弟)が欲しかった……(´;︵;`)

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