【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第205話 不定の化物

 

 ったく、なーにやってんだコイツ(ローエン)は。

 こんな一年坊なんぞに追い詰められやがって。

 

 俺は振り下ろした剣を、ヒュンッと軽く払う。

 

 あーあ、こんな本降りの中で呼び出してくれやがってよ。

 風邪でもひいたらどうすんだっつーの。

 まあひいたことないけど、風邪なんて。

 

「オ、オードラン男爵……!」

 

「おいローエン、シャノアに感謝するんだな。お前とお前の後輩がなんかヤバいってんで、急いで俺を呼びに来たんだからよ」

 

 俺はため息交じりに言った後、「あとレティシアにも感謝しろ」と言い加える。

 

 ――シャノアの奴はローエンが喧嘩の仲裁に行ったとかで、慌てて俺とレティシアを呼びに来た。

 なんかコルシカがリンチにされてて、それを聞いたローエンが得物を持って怒り心頭で走っていったとかなんとか言って。

 たぶん、止めないと本気の殺し合いになっちまうと思ったんだろうな。

 

 それを聞いたレティシアは、すぐに現場(ここ)に向かおうとした。

 無論、俺はすぐに彼女を止めたけど。

 今から殺し合いが行われるかもしれない場所に、妻を行かせるワケにいかないから。

 だから、代わりに俺が行くって言ってさ。

 

 ま~喧嘩なんて適当にどっちもボコして仲裁すればいいか~、くらいに思ってたんだが……どうも俺が思ってたのとは、些か状況が違うらしい。

 

「つーかローエンお前、その腕大丈夫か? なんか凄い方向に曲がってるけど?」

 

「だ、大丈夫なワケないだろう! これでも痛みを必死に堪えているのだ!」

 

 あり得ない方向にぷらーんと曲がった右腕を抑え、声を張り上げるローエン。

 どうにも綺麗にへし折られたっぽい。

 

 そして……そんなローエンの後ろで横たわる、無惨な姿のコルシカ。

 ……見る限り酷い怪我だ。リンチにされてたってのは、どうやら本当らしい。

 

 で――そのコルシカをリンチにした、張本人。

 

「……」

 

 俺はゆっくりと、隻眼をソイツへ向ける。

 

 ――腹の底から忌々しい。

 レティシアがされたことを思い返す度に、怒りと嫌悪感で吐き気がする。

 

 でも、ようやく会えたな。

 なぁ――〝クソ野郎(ジャック・ムルシエラゴ)〟。

 

「お前が……ジャック・ムルシエラゴか」

 

 俺は右手に剣を握ったまま、少しずつジャックへと近付いていく。

 

「レティシアから聞いたぞ? その汚らしい手で、妻の身体をまさぐってくれたそうじゃねーか?」

 

「……アルバン・オードラン」

 

「どんな風に殺してほしい? 斬首か? 串刺しか? 磔か? 火炙りか? ああ、やっぱ選ぶな。お前にはそんな権利すら勿体ない」

 

「……レティシア・バロウの……あの女性(ヒト)の夫……」

 

「とりあえず、死ねよ。死んでレティシアに詫びろ。そんでせいぜい地獄で苦しんで、二度とこの世に生まれてくるな」

 

「……あの女性(ヒト)は……僕のだ」

 

 ジャックはスッと左手を上げ、俺を指差す。

 

 ――降り注ぐ雨の中を突っ切るように、()が飛んでくる。

 それも、何本も束になって。

 

 いや、腕というより足? 触手? (つる)

 まあ別になんでもいいが、とにかく――ジャックの背後にいる〝化物(バケモノ)〟が仕掛けてきた。

 

「ウザ」

 

 面倒くせぇなぁ、と思いながら――俺はその長く伸びてくる攻撃を回避し、さっきと同じように斬撃を叩き込む。それも連続で。

 容易く斬り落とされ、ボトボトと地面に落ちていく化物(バケモノ)の腕。

 どうやら普通に刃は通るっぽい。

 

「――で、ソレ(・・)はなんだ?」

 

「………………え?」

 

「お前の後ろにいる、その〝化物(バケモノ)〟だよ。なんか緑色(・・)した、気色悪いヤツ。お前のペットか?」

 

 今度は俺がジャックの背後を指差して尋ねる。

 

 なんか――見たことないモンスターがいるんだよな、ずっと。

 しかも従順なことに、ジャックの傍から離れようとしないし。

 

 ありゃなんだ?

 形状が些か不定で、軟体生物っぽくも植物っぽくも見えるんだけど。

 まあ、別に殺せば皆同じだから、ぶっちゃけ大した興味なんざないが。

 

 そんなことを思いつつ、俺は何気なく尋ねたのだが――

 

 

「――――――」

 

 

 ――ジャックの奴は、両目を引ん剝く。

 さっきまでの陰鬱そうな表情とは打って変わり、心の底から驚いたと言わんばかりの顔して見せる。

 半ば唖然としたような顔、というか。

 

「…………なんで?」

 

「あぁ?」

 

「お前、なんで……〝■■の落とし子〟が見えるの……?」

 

「なんでもクソもあるか。そこにいるんだから、見えるに決まってんだろーが」

 

「う、嘘だ……じゃあなんで……お前の精神(サタニティ)は……」

 

 目を血走らせ、信じられないとでも言わんがばかりの顔をして、俺のことを見てくる阿呆(ジャック)

 何故かはわからんが、酷くショックを受けた様子だ。

 

 俺はクルッとローエンの方に首を回し、

 

「ローエン、お前あのモンスターって見覚えあるか?」

 

「……? あのモンスター……とは、どれのことだ……? 雨粒が伝っている、透明な奴のことか……?」

 

「はぁ? お前までなに言って――」

 

「…………鬱だ……鬱鬱する……」

 

 俺とローエンが会話していると――ジャックは突然身を翻し、フラフラと俺たちの下を去って行く。

 

 同時に、ジャックの背後にいた化物(バケモノ)は斬り落とされた複数の腕を瞬時に再生し、バッと飛び上がって校舎の壁に張り付く。

 そしてそのまま這うように壁を伝い、屋上の方へと消えていった。

 

 俺はジャックを追いかけて、ぶちのめしてやろうとしたが――このすぐ後に学園の教員たちが駆け付けて来た為に、それは叶わなかった。

 

 




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