【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第215話 〝悪役令嬢〟と〝大悪党〟

 

 ――見つけたよ。

 ようやく見つけた。

 

 我が最愛の女性。

 片時も離れまいと誓った妻。

 

 待たせたな……レティシア。

 

 俺は青い血で全身ベトベトになりながら、彼女の下へと歩み寄っていく。

 

「遅れてゴメンな。ちょっと道に迷っちまって」

 

「……気にしないわ。必ず来てくれるって、信じてたもの」

 

 レティシアは汚れに汚れた俺を見ても少しも不快感を見せず、可愛らしい微笑みで迎えてくれた。

 少しくらい嫌な顔されるかもと思ってたけど、やっぱりレティシアは流石だな。

 こんな女性を妻にできて、俺は誇らしい。

 

「こんな身なりなのは多めに見てくれ。虫ケラがわんさか湧いててさ」

 

「フフ……ならお互い様かしら。私も――綺麗な身体であなたを迎えられなかったから」

 

 微笑を崩さないながらも、どこかバツ悪そうに彼女は言う。

 

 俺は視線を下げ、彼女の両手を見る。

 ……明らかに彼女の身体は変質を始めており、肌は緑色に変色して青い血管がドクドクと脈打っている。

 なにか(・・・)に浸食されているらしい。

 さらに首を伝って顔の付近まで緑色に変わり始めており、このまま放っておけばレティシアの身体は人間のそれではなくなるだろう。

 

 だが――そんなの、なにも問題ない。

 

 俺は地面に片膝を突き、変わり果てた妻の手を取って、

 

「いいや、キミは綺麗なままさ。だってレティシアの心はなにも変わってないだろ?」

 

 彼女の目を、真っ直ぐ見つめる。

 

「身体が変わろうがどうなろうが、キミの心がレティシア・オードランである限り、キミは永遠に俺の妻だ」

 

「アルバン……」

 

「それは絶対に変わらない。絶対に」

 

 俺は、心底(レティシア)に惚れている。

 勿論彼女の容姿外見は美しいし大好きだが、俺が一番好きなのはそこじゃない。

 俺はレティシアの〝心〟に惚れ込んでるんだ。

 

 優しく、気丈で、聡明で――

 慈しみと強さを併せ持ち、常に気高く、それでいて屈託のない笑顔を見せてくれる。

 

 彼女のレティシア・オードランとしての生き方を、

 生き様を、

 〝心〟を――俺は愛している。

 

 姿形がどれだけ変わろうが、知ったことか。

 俺が惚れた俺の妻は、〝最高の悪役令嬢(レティシア・オードラン)〟以外はいないんだよ。

 肌が緑色になったくらいでレティシアの魅力がなくなると思ったら、大間違いだ。

 

 俺がそう思って、妻に優しい笑みを向けていると――

 

『……なん、で?』

 

 部屋の中に反響するように声が響く。

 この声は――クソ忌々しいゴミ虫(ジャック・ムルシエラゴ)のモノだ。

 

『アルバン・オードラン……。なんで……僕の邪魔をする……? どうして……僕から……ママを奪おうとするの……?』

 

「――奪う(・・)、だぁ? 奪ったのはお前の方だろうが」

 

 俺はさっきまでのは打って変わって、冷たい声で突き放すように答える。

 

「レティシアはお前のモノじゃねえ。彼女は俺の大事な妻だ。返してもらうぞ」

 

『ママがいれば……この世界に平和が訪れる……。この世界は、ずっといい場所になる……。それなのに……』

 

「ハッ、世界の平和ぁ? そんなもん――クソ食らえ(・・・・・)だ」

 

 俺は鼻で笑い飛ばすと立ち上がり、ヒュンッと剣を振るう。

 

「いいかクソ野郎、よく聞けよ。俺とレティシアは〝悪女〟と〝大悪党〟の悪役夫婦だ。お前なんかが妄想するゴミみたいな平和なんざ、俺たち〝悪役〟には似合わないんだよ」

 

『――!』

 

「世界の平和だと? そんなモン知ったことか。俺にとっちゃ世界の平穏なんかより、(レティシア)が傍にいてくれる方がずっとずっと、ずぅっと大事だ」

 

 周囲にジャックの姿は見えない。

 だが声が聞こえるなら――殺せるはずだ。

 

「……この世界がレティシアを拒むなら、世界を壊す。お前がレティシアを奪うなら、俺は全力で取り戻す」

 

 俺は、剣を握る手に力を込める。

 

「その果てに世界が滅んで、俺とレティシアの二人だけになるっていうなら――それもいい。世界平和なんかより……〝悪役〟には、そっちの方がずっと幸せだ」

 

 ああ、そうさ。

 この世界がどうなろうが、知ったこっちゃない。

 (レティシア)が消えて世界が平和になるなら、平和なんざクソ食らえだ。

 だって俺にとっての世界とはレティシアのことであり、俺にとっての平穏とはレティシアと共にあることだから。

 

 それを否定するなら――滅ぼすだけだ。

 なにもかも。全て。

 

「――クスッ」

 

 そんなことを思っていると、何故かレティシアが少しだけ笑う。

 

 ……え、なんで?

 なんでここで笑うんだ?

 

「レ、レティシア……?」

 

「ごめんなさい、嬉しくて……。あなたなら、そう言ってくれると思っていたから」

 

 目尻に涙を浮かべ、笑ってくれるレティシア。

 そんな彼女を見て、俺も僅かに頬が緩む。

 

「……ご満足頂ける回答だったかな?」

 

「ええ、百点満点。やっぱりアルバン・オードランは最高の〝悪役〟だわ」

 

 どうやらレティシアは、俺がジャックに対してどう答えるか予測していたっぽい。

 流石は俺の妻だな。

〝悪役令嬢〟は〝大悪党〟のことを、よく理解してくれてるよ。

 

「さて……」

 

 俺は剣の切っ先を天井へと向け――

 

「かかってこいよ、自称平和の使者。お前の言う世界平和が、俺たちの愛に勝るのか――この〝悪役(アルバン・オードラン)〟が直々に試してやる」

 

 




そろそろクライマックス^ω^)

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