【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】 作:メソポ・たみあ
《イヴァン・スコティッシュ
『オオオオオオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ!』
憤怒の咆哮を奏でる
向こうも楽しませてくれる気は十分、といった所か。
『――我ガ〝眷属タチ〟ヨ!』
ここへ来るまでの道中にも、オードラン男爵に駆除されたと思しき無数の死骸が転がっていたが、アレらと同じモノだ。
外観は〝サハギン〟と呼ばれるモンスターに似ているが、おそらくは別種。
サハギンの顔はより魚に近いが、こちらはカエルなどの両生類を彷彿とさせる。
とはいえモンスターの知識がなければ勘違いしてしまう程度には似ているが。
まあ、今はそんなことどうでもいい。
現れた半魚人の数は、ざっと三十ほど。
僕らは瞬く間に囲まれてしまう。
『……ウぅ~』
『うゥ~ウぅ~』
『ウウぅ~……!』
『アノ虫ケラ共ヲ、食ライ尽セ!』
号令と共に一斉に襲い来る半魚人。
だが僕は微動だにしない。
こんな奴ら――動く必要もない。
「〔サーペント・テイル〕」
その場から一歩も動くことなく、僕は僅かに
刹那――巨大な蛇の尾へと形を変えた水流が、周囲の半魚人共を薙ぎ払った。
『――!』
「数を呼べば僕らを倒せるとでも思ったか? 浅はかだな」
僕は〔アクア・ウィップ〕を基点とし、今日に至るまで様々な剣術や魔法を習得してきた。
こんな雑魚共では、近付くことすら叶うまい。
それに、今いる場所が閉所であることも幸いだ。
多対少の戦闘において、空間が狭いというのは少人数の側にとって極めて有利に働く。
オードラン男爵が無数の半魚人を一方的に屠れたのも、洞窟のように狭い通路の中という
彼は例外だな。
ともかく――
「ユーリ、左舷は任せるぞ」
「は、はい! お兄様!」
僕ら兄弟は二手に分かれ、互いの背中を守り合うように半魚人共を駆逐していく。
こうしてユーリと背中合わせで戦うのは初めての経験だが……この感覚は、どこか懐かしいような気もした。
ユーリもユーリで、さっきまで竦み上がっていたのが嘘のように勇猛に剣を振るっている。
――そうだユーリ、それでいい。
臆病風に吹かれた姿など、お前には似合わない。
お前がスコティッシュ公爵家の家名を背負わんとするならば、その姿こそ相応しい。
それでこそ、お前は僕の弟だ。
そうして僕らは半魚人共を圧倒し――ものの数分とかからない内に、全ての個体を始末した。
「準備運動は、これで終いか?」
『ナ……ナンナノダ……オ前……! 本当ニ……タダノ人間カ……!?』
「ああ、ただの人間さ。本当の〝
『グ、ウゥ……!』
さっきまでとは立場が逆転したかのように後退りする
しかしどうやら意を決したようで、
『人間ヲ嬲リ殺スナド……コノ
醜い巨体を蠢かせ、猛然と突進してくる。
僕は「やれやれ」と細剣《レイピア》を構え、
「ユーリ……
水流の刃を振るい、
すると、巨体がグラッとバランスを崩した。
「では、私は
それを見たユーリは間髪入れずに水かきの付いた右腕へと斬撃を叩き込む。
残念ながら巨腕を切断するには至らないが、
「次だ。
ユーリの攻撃が終わった直後、僕は続け様に連撃を見舞う。
「――
「
「
――常に、対になるように。
僕が左を狙えばユーリは右を狙い、
僕が上半身を狙えばユーリは下半身を狙い、
僕が正面を狙えばユーリは背面を狙う。
絶え間なく。
連撃に次ぐ連撃が、決して途絶えないように。
攻撃が常に対称位置を狙い、
僕が動けばユーリが動き、ユーリが動けば僕が動く。
お互いの挙動が完璧に噛み合い、
『コ……コノ……ッ!』
とはいえ、
何度目かの攻撃の後、ようやく僕らの連携を理解したらしく――
『次ハ……オ前ノ番ダロウッ!』
こちらの動きを予測し、ユーリが攻撃し終えた直後に僕の方を狙ってくる。
しかし――僕ら兄弟に、その程度の動きが予測できないはずもなかろう。
『……ア……レ……?』
ユーリの
「お兄様に触れるな、汚らわしい
僕もそれを待っていたとばかりに、
「いいぞユーリ。お前の成長、しかと見届けた」
ニヤッと、口元に微笑を浮べた。
――
本来であれば、ユーリとの兄弟喧嘩を想定して会得した技だったのだが……それをこうして弟に見せてやるのも悪くない。
――さあ刮目せよ。
これが僕の、
「――〔水刃ナーガ〕」
生き物のそれと大差ない動きでうねりながら、見る間に巨大になっていく。
七つの頭、七つの舌、そして二十四本の鋭い牙刃を持つ――巨大な蛇竜。
膨大な魔力を刃に注ぎ込んで生み出された水の大蛇。
七つの頭に付いた全ての蛇目は、得物を狙うが如く
「……食らい尽くせ」
一斉に襲い掛かる。七つの蛇頭が。
そして七つの頭に四本ずつ付いた牙刃は、醜悪な
今年は巳年^^
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