【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第22話 ハニートラップ

 

「へぇ~、ここが個別棟なんだね! 広くて羨ましいなぁ☆」

 

 ほとんど無理矢理に部屋へ入ったラキは、室内をあちこち見て回る。

 

 彼女は女子棟の部屋を割り振られているはずだから、珍しくても無理はないが……。

 

「……で、なんの用だ」

 

 俺は警戒心MAXだった。

 腰に携えた剣の柄尻から、片時も手を離さない。

 

「なんの用って、遊びに来たって言ったじゃん♪ こんなに可愛いオンニャノコが部屋に来たんだから、もっと喜んでほしいな☆」

 

 恐ろしいほどの猫撫で声で喋るラキ。

 

 ……コイツ今、自分のこと可愛いって言ったぞ。

 自分が容姿に優れると自覚してやがる。

 

 確かに、ラキの顔つきは非常に端正だ。

 童顔系の美人で、どこかあどけなさが残った感じが実に男の目を引く。

 

 それでいてスタイルも抜群。

 スレンダーなのに出るところは出ており、どうしても胸元に目が引き寄せられる。

 

 彼女もそれを自覚しているらしく、わざと谷間が見えるような格好をしているのだからタチが悪い。

 あと香水も付けてるのか、なんだかいい匂いもする。

 

 まあもっとも、容姿にしても格好にしても俺はレティシアの方が遥かに好みだが。

 

「悪いが全然嬉しくないね。俺、お前のことなにも知らないし」

 

「じゃあ今からお知り合いになろ★ ウチ、アルくんのこと気になるなぁ♡」

 

 めっちゃ馴れ馴れしい。

 

 なんだよアルくんって……。

 初めてそんな風に呼ばれたわ……。

 

 やっぱ苦手かも、こういう女……。

 

「ならせめて、レティシアが一緒にいる時にしてくれ。他の女と二人きりでいるなんて、もし彼女に知られたら……」

 

「怒られちゃう? 嫌われちゃう?」

 

「わかってるなら帰れ。今すぐ」

 

「それは嫌☆ だって、今ならアルくんと二人きりになれるとわかってるから来たんだもん♪」

 

「なに……?」

 

「――しばらく帰ってこないよね、レティシアちゃん。シャノアちゃんと城下町へ向かうのを見かけたし」

 

 クスッと笑うラキ。

 次の瞬間――彼女は驚くべきことを口にした。

 

 

「ねえ、アルくんってさ……童貞(・・)でしょ?」

 

 

「…………は?」

 

「そうだよね、童貞だよね♡ フフっ、可愛い♪」

 

 ラキはゆっくりと、自らがまとっている服に手を伸ばす。

 

「レティシアちゃんとのやり取りを見てればすぐにわかるよ☆ あの子、身持ち固そうだもんね」

 

 シュルリ、シュルリ。

 

 一枚、また一枚と、彼女は服を脱ぎ捨てていく。

 時間をかけて、ゆっくりと。

 

 徐々に、彼女の肌色が露わになっていく。

 

「アルくんだって本当は卒業(・・)したくて堪らないのに、かわいそう……★ だから――代わりにウチが卒業させてあげるね♡」

 

 最後の一枚――。

 腰と下着の間に指をかけ、シュルリと下げる。

 直後、パサッと下着(ランジェリー)が足元に落下した。

 

「ほら……見て、ウチの身体♡」

 

 両手を後ろに回すラキ。

 

 俺の目の前に、一糸まとわぬ姿のラキが佇む。

 乳房も、秘部も、一切を隠すことなく。

 あまりにも煽情的な裸体を、惜し気もなく見せつけてくる。

 

 さらにラキは俺へ近付き、ぎゅっと抱き着いてきた。

 

 男のそれとは違う女の体温。

 柔らかな二つの突起の感触。

 それが情欲をかき立て、頭の中を支配しそうになる。

 

「……なんでも、していいよ? アルくんのしたいこと、なんでも受け入れてあげる」

 

 甘える声で、上目遣いで、ラキは言う。

 彼女の細くしなやかな手が身体を這い、ゆっくりと俺の下腹部へと向かう。

 

 まさに魔性の誘惑。

 悪魔の囁き。

 

 これに抗うのは、並の精神では到底不可能であろうが――

 

「……離れろ」

 

「え?」

 

「もう一度だけ言う。俺から離れろ。さもなくば……殺す」

 

 俺は激しい憤怒と殺気を放つ。

 尋常でないほどの。

 

 左手の親指で剣の鍔を押し上げ、いつでも刃を放てる姿勢となる。

 

 生憎だったな。

 俺は並じゃない”大悪党”だからさ。

 

 こんな見え透いたハニートラップに引っ掛かるほど、阿呆じゃない。

 

 それに――俺の身体に触れていいのは、レティシアだけなんだよ。

 

「……ふーん、身持ちが固いのはアルくんの方だったかな?」

 

 ラキは少し残念そうにすると、パッと俺から身体を離した。

 そして脱ぎ捨てた自分の衣服を拾い始める。

 

「どうしてこんな真似をした? 答えてもらおうか」

 

「それは勿論、アルくんの童貞が欲しかったから☆」

 

「真面目に答えないと、本気で片腕を斬り落とすぞ」

 

 相変わらずこちらを煙に巻こうとするラキに、かなり強い口調で脅しをかける。

 

 すると彼女もようやく観念したらしく、

 

「……わかったよ、真面目に答えてあげる。ウチはね、クラスの”(キング)”になんて興味ない。だけど”王妃(クイーン)”の座は欲しいんだ」

 

「”王妃(クイーン)”だと?」

 

「アルくんは間違いなくFクラスの”(キング)”になるよ。ウチが保証してあげる。でも今のままだと、アルくんの隣には――”王妃(クイーン)”の椅子には、レティシアちゃんが座っちゃうよね? それって面白くないの」

 

「……つまりお前は、Fクラスのナンバー2を狙ってると?」

 

「ご名答☆」

 

 拾い上げた衣服で胸元を隠し、不敵な笑みを浮かべるラキ。

 相変わらず、コイツの笑い方は不気味だ。

 

「ウチには力も権威もない。でも支配する側に回りたいの。一方的に支配されるなんて、絶対に嫌」

 

「だからハニートラップで俺に付け入ろうとしたのか」

 

「アザレア家の女は、代々ハニトラを得意としてるから☆ 寝取りも立派な生存戦略なんだよ♪」

 

「俺には理解できんな」

 

「別にいーよ。理解してもらおうとも思わないし」

 

 いそいそと服を着ていくラキ。

 そして全ての衣類を身につけ終わると、

 

「でも、ウチ諦めないから。アルくんも精々ウチに堕とされないよう、頑張ってね☆」

 

 そう言い残し、部屋を後にした。

 

 

 

 ▲ ▲ ▲

 

 

 

「――ただいま。アルバン、いる?」

 

 ラキが去ってから数時間後。

 ようやくレティシアが部屋に帰ってくる。

 

「……おかえり、レティシア」

 

 俺は彼女が帰ってくるまでの間、ベッドに座ってずっと剣を抱きかかえていた。

 

 こうしていないと落ち着かなかったのだ。

 理由は、察してほしい。

 

「……? なんだか疲れた顔をしてるわね。なにかあったの――」

 

 その時、スンスンと彼女の鼻が動く。

 どうやら気付いたらしい。

 ラキが残していった、香水の残り香に。

 

「…………ねえアルバン、部屋に誰か来たかしら?」

 

「ああ、ラキの奴が来た」

 

「ラキが?」

 

「こともあろうに、俺にハニートラップを仕掛けようとしてきたよ」

 

「――ッ!? なんですって!?」

 

「落ち着け。変なことされる前に追い返したから」

 

「……本当、よね?」

 

「信じてくれ。もし、どうしても信じられないなら――俺を斬るといい」

 

 抱えていた剣を持ち上げ、柄を彼女の方へ向ける。

 

 少しの間、彼女は難しい顔をしたが――

 

「信じるわ。あなたはこれまで、私に嘘を吐いたことなんてないもの」

 

 小さくため息を吐き、まるで己を納得させるように言った。

 

「ありがとう。そう言ってくれると、耐えた甲斐があったってもんだな」

 

「ふぅん、その言い方だと見た(・・)のね?」

 

「……見たって?」

 

「彼女の裸」

 

「……」

 

「見たのね?」

 

「……見ました」

 

「彼女の裸に触れたの?」

 

「……触れたというか、向こうが触れてきたというか……」

 

「よくわかったわ。泥棒猫への報復も十二分に考えておきましょう」

 

 背後でメラメラと怒りの炎を燃やすレティシア。

 うぅ、嫁さんが怖い。

 

「……なぁレティシア、俺からも一つ聞いていいか?」

 

「あら、なにかしら?」

 

「俺ってさ……そんなにハッキリ童貞ってわかる?」

 

「はぁ?」

 

「ラキに一発で見抜かれたんだよ……。俺ってそんなに童貞臭いかなぁ……?」

 

 普段、あまり意識したことはない。

 俺は俺らしくあればいいと思ってるから。

 

 ただあそこまであっさり見抜かれてしまうと、やはり男としてはショックというか、プライドが傷付くというか……。

 

 なんだろう、やっぱそういうのって滲み出るもんなのかな……?

 

 でも我慢しようと思ってる身だし、一応。

 レティシアを身重にするワケにはいかないから……。

 

「…………」

 

 俺の質問に対し、レティシアはしばし無言になる。

 だがなにやら意を決したように頷くと、

 

「……うん、そうね。()だわ」

 

「……今って?」

 

「あなたがこれまで、私を気遣ってくれていたのはわかってる。でもこれは由々しき事態なの。だから今夜は、私が身体を張るわ」

 

 なにか意味深なことを言うと、彼女はベッドの横にある棚を開け、なにか小さな物体を取り出す。

 

「もしもの時のためにって、屋敷のメイドたちが預けてくれたのだけれど」

 

 俺の眼前に来て、その小さな物体を見せつけてくるレティシア。

 

「これって――」

 

 俺の知識が正しければ、

 それはたぶん、

 いやきっと、

 おそらく間違いなく、

 

 ――”避妊具”

 

 と呼ばれる代物だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日の夜、俺は童貞を卒業した。

 

 




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本格的に『悪役主人公』『悪役令嬢』を題材にした作品を書くのはこれが初めてで、本当にめちゃめちゃ悩んで書き進めております。

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