【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第25話 ダンジョン突入

 

 ダンジョンへと突入するFクラスメンバーたち。

 

『暁ダンジョン』は王都の近くにある地下迷宮で、ダンジョン自体の難易度も出現モンスターの強さも中の上程度。

 

 俺は王都周辺のダンジョンには詳しくないが、レティシアがそう説明してくれた。

 

 なので少なくとも、俺が苦戦するほどではないらしい。

 彼女がそう言うんだから、まあ大したことはないんだろう。

 

「ガハハハッ! 今度こそ武勲を上げてくれる!」

 

「おいローエン! あんま急ぐとトラップにハマッちまうかもよ!?」

 

 意気揚々と先行するローエンとマティアス。

 

 ――と、さっそくモンスターの姿が見えてきた。

 遭遇したのは二匹の小型ゴブリン。

 見るからに雑魚である。

 

『ギ! ギギィ!』

 

「フン、ゴブリン風情が我らの進撃を――!」

 

「邪魔、ですわよ」

 

 先頭を走っていたローエンを、優雅な金髪縦ロールがフワリと追い越す。

 

 エステルだ。

 彼女は地面を蹴り、ゴブリンたちの頭上まで跳躍すると――ゴブリンの一体を、思い切りハイヒールで踏み潰した。

 

 グシャアッ!という快音と共に地面が陥没し、ゴブリンの一体は跡形もなく消え去る。

 

『ギィ!? ギギギ!?』

 

「オーッホッホッホ! お脳味噌ブチまけろですわぁッ!!!」

 

 間髪入れずに、エステルは残りのゴブリンの顔面を右手で殴打。

 

 まるで鉄球砲弾のようなパンチを受けたゴブリンは、頭が破裂して即死した。

 

「”対あり”、ですわね」

 

 ゴブリンを倒したエステルは、優雅に縦ロールの髪を払う。

 そんな彼女の姿を見たローエンとマティアスは唖然。

 

「お、お前……」

 

「そんな馬鹿力の持ち主だったのか……?」

 

「あら? エレガントなお嬢様ならば、このくらいのおパワーを持っているなんてデフォでしてよ!」

 

「そーなんだ。じゃ、お先」

 

 俺は余裕ぶるエステルを追い越し、先頭に出る。

 

 確かにその怪力は見事なモンだが、ゴブリン倒して自慢気になられてもね、って感じ。

 

「あっ!? お、お待ちなさいですわー!」

 

 待てと言われて待つ奴がいるか。

 俺は逆にスピードを上げ、一気にダンジョンの中を突き進む。

 

『暁ダンジョン』はほとんど一本道の単純な構造で、道沿いに進めばどんどん奥へと進めるようになっているらしい。

 

 迷子にならなくて助かるが、その代わりモンスターとのエンカウントは避けられない。

 

 面倒だが仕方ないので、俺は遭遇する雑魚共を斬り捨てながら先へと進んでいく。

 

 こんな競争、とっとと終わらせよう。

 それでレティシアと一緒に、シャノアの喫茶店へ紅茶を飲みに行くんだ。

 

「――流石の実力だな、オードラン男爵」

 

 すると、ダンジョンの中を駆け抜ける俺の背後から声が。

 イヴァンが追い付いてきたらしい。

 

 ……お?

 ちょっと意外。

 

 これでも俺、そこそこの速度を出してるつもりなんだけど。

 

「へえ、アンタ案外速いんだな」

 

「移動速度を上昇させる魔法を使ったのだ。動くだけならキミにも負けんぞ」

 

「ふーん」

 

「――ようやく追い付いたよ、オードラン男爵! ”騎士(ナイト)”レオニール・ハイラント、参上!」

 

 少し遅れてレオニールが追い付いてくる。

 

 おお、こっちも流石は主人公。

 俺と斬り結んだ実力者だけあって、動きを合わせてくるな。

 

 だけどさ、その名乗り口上はどうにかならんのか?

 聞いてるこっちが恥ずかしいんだが?

 

「あ、ウチもいるよ☆」

 

 続けてラキも追い付いてくる。

 手に小型のクロスボウを携えて。

 

 うわ、マジか。

 コイツもかよ。

 

 素の脚力なのか魔法なのか知らんが、相変わらず油断ならない奴だな……。

 ちょっと速度を上げて離れるか……。

 

 俺はさらに地面を力強く蹴り、移動速度を上げる。

 これで先頭を独走できるかと思ったが、イヴァンだけは俺に食い付いてくる。

 

「……オードラン男爵よ、一つ聞いておきたい。”(キング)”の座を辞退する気はないか?」

 

 不意に、イヴァンがそんなことを尋ねてくる。

 

「はぁ?」

 

「これは忠告でもある。……どうやら学園の中には、キミたち夫婦が権力を握るのを面白く思わない者もいるようだぞ?」

 

 諭すような口調で言うイヴァン。

 

 忠告、ねぇ。

 ”アルバン・オードラン批判派”がいることなんて、とっくに知ってるけど。

 

 それにぶっちゃけ、俺は最初から”(キング)”の座なんて興味ないんだけどさ。

 

 他の誰かがやってくれるなら、個人的にはその方が楽だし助かると思ってるくらい。

 

 けどな――(レティシア)が言ってくれるんだよ。

 

 

『私はただ事実を述べたまでよ。あのクラスに、あなたよりも相応しい人物なんていないもの』

 

 

 そこまで言われちゃうとさ、期待を裏切れないじゃん?

 

 彼女が背中を押してくれるなら、俺は往くのみ。

 それだけだ。

 

「そんな連中どーでもいい。もし俺とレティシアの邪魔をしようってんなら……なにもかも蹂躙するだけさ」

 

「……そうか」

 

 イヴァンとそんな会話をしている内に、なにやら開けた場所に辿り着く。

 

 どうやらこの広場が最奥らしいが――

 

「え~っと……ポーション原草はどこに生えてるんだ……?」

 

 辺りを見回しても、それらしき植物が生えている様子はない。

 

 俺が不思議に思っていると、

 

「――”串刺し公(スキュア)”、見ているか!? 言われた通り、オードラン男爵を連れて来たぞ!」

 

 イヴァンが、唐突に叫んだ。

 

「な……に……?」

 

「どこにゴロツキ共を潜めている!? とっとと姿を見せたらどうだ!」

 

 ゴロツキ、だと?

 一体なにを言って……?

 

 困惑する俺であったが――イヴァンの叫びに対して、返ってくる声はない。

 広場はシン……と静まり返ったままだ。

 

「”串刺し公(スキュア)”……? 何故出てこない!? なにか返事を――ッ!」

 

 イヴァンが焦り始めた、その時だった。

 広場の中央に――突如、大きな魔法陣(・・・・・・)が出現する。

 

「――!? これは、転移魔法……!?」

 

 驚愕するイヴァン。

 

 ――――聞いたことあるぞ。

 転移魔法って、確か魔法陣を使って物体を遠くに移動させる魔法だよな。

 

 確かかなり高度な魔法で、使いこなせる者は少ないとセーバスが言っていた。

 

 その魔法陣が、どうしてこんな場所に――

 

 そう思ったのも束の間、魔法陣の上に巨大な物体が転移させられてくる。

 

 より正確に言えば――生命体が。

 

 俺やイヴァンが遥か見上げる程の体躯、

 不気味な青白い肌、

 片手に持った歪な形の棍棒、

 そして……特徴的な一つ目。

 

『ウゥゥボオオオォォォ……!』

 

 俺たちの前に現れたモンスター。

 それは――”サイクロプス”という馬鹿でかい怪物だった。

 

「なっ……なんだこれは!? 話と違う!」

 

 イヴァンが声を上げると、サイクロプスの一つ目がギョロリと彼を捉える。

 

 そして棍棒を振り上げ、

 

『ウボボオオォォッ!!!』

 

 イヴァンの身体を、まるでゴミ屑のように殴り飛ばした。

 

 

 

 ▲ ▲ ▲

 

 

 

《レティシア・バロウ(オードラン)視点(Side)

 

「……み、皆さん、そろそろダンジョンの奥に着いている頃、でしょうか……?」

 

 ソワソワした様子で、シャノアが私に話しかけてくる。

 なんだか不安そうな様子だ。

 

 ”Fクラス/ポーション原草争奪戦”に参加しなかった私とシャノアは、未だにダンジョンの外で皆の帰りを待っている。

 

 もうそれなりに時間も経過しており、彼女が気にし始めるのも無理はない。

 

「ええ、アルバンの足ならとっくに着いてる頃でしょうね」

 

「そ、そうですか……」

 

「……皆のことが心配?」

 

「い、いえ、その、私は今までダンジョンに潜ったことがないので……」

 

 ああ、成程ね。

 たぶんダンジョンという場所を相当な危険地帯だと思っているのかしら。

 

 まあ、あながち間違いでもないと思うけれど。

 

 実際ダンジョンの中はモンスターが徘徊しているし、探索の最中に命を落とす者も多いと聞く。

 

 私もこれまでダンジョンというダンジョンに足を踏み入れたことはないけれど、危なくて怖い場所だという印象は同じだわ。

 

 少なくとも、理由もなく入りたい場所でないことは確かね。

 

「大丈夫よ。むしろ逆に、アルバンがダンジョンのモンスターを全滅させてしまわないか不安なくらいだわ」

 

「ふぇ!? い、いくらなんでも、それはあり得ないんじゃ……!?」

 

「わからないわよ? なにせ()だもの」

 

「……レティシア様は、本当にアルバン様を信頼しておいでなのですね……」

 

「ええ、勿論。アルバン・オードランは私にとって最愛の人であり、最も信ずるに足る人よ」

 

「な、なんだか羨ましいです……。わ、私もいつか、そう思えるような人と、出会えたらいいな……」

 

「きっと出会えるわよ。だってあなたは、とっても健気な――」

 

 ――性格なんだもの。

 そう言おうとした。

 

 けれど、私の目は見た。

 見てしまった。

 

 シャノアの背後で――細長い角材を、思い切り振り被る男の姿を。

 

「シャノア! 危ないッ!」

 

「え――?」

 

 ――叫んだけれど、もう遅かった。

 ゴスッ!という鈍い音が鳴り響く。

 

 シャノアは殴打の衝撃で気を失い、そのまま地面へと倒れてしまった。

 

「シャノア! う――ッ!」

 

 次の瞬間、後頭部に走る衝撃と鈍痛。

 

 自分も殴られたのだと理解した直後、意識は暗闇の中へと沈んでいった。

 

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