【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】 作:メソポ・たみあ
《エステル・アップルバリ
『組み合った! エステル・アップルバリとスタンリー〝サンライズ〟ヨハンセン、試合開始と同時に組み合いました!』
――お互いの両手をがっぷりと組み合わせて、手四つになって力比べの状態に入る私とヨハンセン。
〝
飛び散る汗。弾ける血潮。
ワーワーという観客たちの声援が奏でる、筋肉への讃美歌。
全身全霊で、己の全てを込めて〝
互いの目線が交差する度、私たちは燃え上がるような火花を散らし合いますわ。
私とヨハンセンとでは体格に大きな隔たりがあって、その差はまるで子熊と大熊。
こっちはクッソおデカい巨人とでも戦わされているような気分ですわ。
でも――〝
ヨハンセンだって、見た目に違わぬ流石の馬鹿力ですけれど――
「負けませんわよ……〝
手の大きさも身体の大きさも、まるでスーパーヘビー級選手とライトヘビー級選手くらいの違い。
けれど……来る日も来る日も磨き上げ続けてきた、私の純然たる剛力。
その輝きはたとえヨハンセンが相手だろうとも、少しだって曇ることはありませんの。
「どっせええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇいッ!!!」
全身のお筋肉を、はち切れんほどにギチギチとふんばらせる私
すると私のミラクルな〝
「……!」
「どうですの!? 私だって――ッ!」
このまま押し切ってしまおうと、私がニヤリと笑った――その時でした。
突然、ヨハンセンがガクッと力を抜きますの。
「なっ……!?」
突然脱力を食らった私は思わず身体を前方へ投げ出す形になり、ヨハンセンはそんな私をサッと回避。
私はすっ転ばないようリングロープに飛び込み、すかさず全身を反転。
すぐにヨハンセンへ反撃を行おうとしましたけれど――
「セイッ!!!」
私がなにかアクションを取るよりも早く、彼のぶっとい右腕から繰り出されるチョップが私の脳天を襲いました。
「ぐぅっ――!?」
たった一撃。
たった一撃、額にチョップを受けただけで、私のお脳みそは激しく揺さぶられますの。
同時に激しい痛みと立ち眩みが私を襲ってきやがります。
私の頭蓋骨は、おハンマーで思い切りぶん殴られてもへっちゃらくらい頑丈なはずなのに。
ヨハンセンの剛腕から繰り出されるソレは、おハンマーで殴られるのとは比べ物にならないくらいの威力でしたわ。
「セイッ! セイッ! セイッ!!!」
『ヨハンセンの連続チョップぅー! この猛攻は反撃すら……あ――っとぉぉぉ! エステル・アップルバリが額から流血うううぅぅぅッ!』
そう簡単には傷すら付かない私の玉のお肌が、ヨハンセンのチョップの前には薄紙も同然。
視界が赤く染まっていく中、ヨハンセンの猛攻はまだまだ続きます。
『チョップに続いてヘッドバッド! ヘッドバッドに続いてエルボー! アップルバリは成す術もなーいッ!』
ヨハンセンの凶悪極まりない連撃。
容赦もおへったくれもない攻撃のお連発に、私の身体にはさっそくダメージが蓄積されていきやがりますわ。
「エ、エステル殿……エステル殿!」
解説者と観客の声に交じって、微かに聞こえてくるアル王子の声。
それを聞いて、
「こンの……ッ」
負けじと、私も反撃に出てやります。
拳を握り締めて、全力のおパンチをぶちかましてやろうとしますけれど――
『ヨハンセン、アップルバリのパンチを回避――と同時に、関節をキメたァー! アームロックうううぅぅぅッ!』
右腕をがっちりと絡め捕られてしまい、アームロックへ移行されてしまいますの。
「くっ……うううううぅぅぅ……ッ!」
別に自慢じゃありませんけれど、ちょっと関節キメられたくらいなら、力任せに抜け出す自信がありますわ。
でもヨハンセンのアームロックは完璧で、ちっとも抜け出せそうにありませんの。
「ディーヤッ!」
ヨハンセンはアームロックをキメたまま、その剛腕で私をロープへ向かってぶん投げます。
と同時に関節を解かれ、私の身体は反発力の効いたロープへダイブ。
大きく
コレはおチャンス……!
そう思った私は、ロープから受けた勢いを殺さぬままに、すかさず反撃体勢に出ようとします。
けれど――
「ウイイイイイィィィィィヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッッッ!!!」
そんな私を待ち構えていたのは――まるで巨木みたいにお図太い、ヨハンセンの上腕二頭筋。
私――この
とても、とてもよく知っていますわ。
だって、ずっとこの目で見続けてきたんですもの。
ヨハンセンが本気で相手を潰しにかかった時に使う、ミラクルパワーの必殺技。
彼の十八番にして、何人もの
その名も――
『き――決まったアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッ! ヨハンセンの必殺技、〝ウエストエンド・ラリアット〟が炸裂ウウウウウゥゥゥッ!!!』
私の首に直撃する、ヨハンセンの〝ウエストエンド・ラリアット〟。
剛腕から繰り出されるソレは、猛牛の突進なんて可愛く思えるほどの破壊力。
あらゆる防御も受け身も意味をなさない、
そんな、史上最凶とまで謳われる首刈り技をモロに受けた私は――
「か――――は――――っ!」
目の前で星が飛ぶ感覚を味わうと同時に、視界が途切れますの。
首の骨が無事なのか、それとも折れてしまったのかすら自分ではわからない。
唯一ハッキリと自覚できたのは……自分の身体が、リングの上に薙ぎ倒されたということだけ。
『エステル・アップルバリ、ダウーンッ! これは意識が飛んでいるか! さしものお嬢様でも立ち上がることはできないか、エステル・アップルバリッ!』
「ウィィィィィィィィィッ!!!」
『ヨハンセン、ヨハンセン勝ち誇っております、余裕の表情です! これがチャンピオンの実力だ! お嬢様なんて敵じゃないぜと言わんばかりに、腕を掲げておりますッ!』
どこかくぐもったように朧気に聞こえてくる
そしてヨハンセンの必殺技に沸き立つ観客たちの声援。
「が…………う…………っ」
私はお脳みそがおシェイクされたみたいに視界がグルグルと回って、立ち上がることができません。
それどころか、意識が落ちないようにするのが精一杯なくらい。
やっぱり――半端じゃなく強いですわね、ヨハンセンは。
本当に理想通りですわ。
〝
テクニックも経験も、技のキレさえも。
ええ、そうよ。当然ですわ。
だってヨハンセンは私の理想なんですもの。
それくらいお強くて当たり前。
悔しいけれど――〝理想の王子様〟になら、負けてしまったって――
『レフェリーがカウントに入る! アップルバリ立ち上がるか! エステル・アップルバリ立ち上がれるか!?』
「ワン! ツー!」
「た……立つんだエステル殿!」
――アル王子?
「立ち上がってくれ! エステル殿なら立てる!」
アル王子の声が、聞こえた気がしますわ。
私を応援してくれる、幼い王子様の声が。
「エステル殿は強い女性だ! 余の理想の人なんだ! エステル殿は……絶対、そんな奴に負けるはずないんだッ!!!」
……。
…………。
………………。
ええ……ええ、そうですわ、そうでしてよ。
私、寝てなんていられませんの。
倒れている暇なんてありませんの。
私には――
今ここで、私が倒れてしまったら……一体誰がアル王子を助けられるっていうんですの?
お嬢様という高みを目指す、一人の乙女として――こんなみっともない姿、いつまでも晒し続けるワケにはいきませんわよね。
「まだ……終わっていなくってよ」
レフェリーのカウントが終わる前に私は両肩を床から離し、膝に手を突いて、ゆっくりと立ち上がります。
そして待ち構える〝
「今度はこっちの〝
※レフェリーのスリーカウントが普通に逆になっていたので修正致しました……!
なんでこんなのに気付かなかったんや……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
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