【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】 作:メソポ・たみあ
《エステル・アップルバリ
「ワン! ツー! ……スリーッ!!!」
レフェリーのスリーカウントと共に、会場に〝カンカンカーンッ!〟と鳴り響く
私のラリアットを食らったヨハンセンは遂に立ち上がること叶わず、リングの上にお沈み遊ばせましたわ。
『ここでゴングが鳴ったアアァァッ! 試合終了オオオォォォーッ! 勝者っ、エステル・アップルバリッ!!!』
「「「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」」」
『会場、凄まじい声援! 凄まじい歓声でありますッ! 王都国技館を埋め尽くす歓喜の声が、まるで地鳴りのように建物を揺らしている! これ以上の、これ以上の感動はないッ!!!』
――会場全体を包む熱気と、轟きのような歓声。
鼓膜が割れそうなほどの観客たちの声々は、私が経つリングの足元すらもビリビリと揺らしてきやがります。
そんな声に応えるかのように、私もグッと握った右手を天高くへと突き上げますの。
このエステル・アップルバリは、理想の殿方の――理想の
『この一戦は間違いなく、歴史に残る名勝負となったことでしょう! 一万人の観客が、新たなチャンピオンの誕生を祝福しておりますッ!!!』
イヤですわ、新たなチャンピオンだなんて……。
ちょっと照れちゃいますわね。
そんなことを思うけれど……私にはもう、満足に喜ぶ気力も残っておりませんの。
額からはドバドバと血が流れ続けていて、意識もほとんど朦朧。
ぶっちゃけ……立っているのもやっとですわ。
だけど――
私……あのヨハンセンに、勝ちましたわ。
正直、複雑な想いでした。
理想の殿方と慕っていた方を、自分の腕っぷしで薙ぎ倒す。
決して気持ちのいいはずがなくってよ。
それでも不思議と……私の口元には笑みがこぼれます。
なにかを成し遂げたっていう、そんな笑みが。
けれど――その時でした。
突然、
目に映る風景がグニャリと曲がり、聞こえていたはずの大歓声がプツリと途切れましたの。
なにも見えない。
なにも聞こえない。
まるで私が
ただ、
「エ、エステル殿……!」
「アル……王子……?」
一つ。
私と同じ空間へ投げ出されたらしい、ついさっきまで檻に閉じ込められていたはずのアル王子の姿があること。
二つ。
ついさっき私がぶっ倒した、真っ暗な床の上で仰向けになる
アル王子は完全に自由の身になっていて、すぐに私の下へと駆け寄ってきてくれます。
「エステル殿、大丈夫か!? ひ、酷い怪我だ……!」
「こ、これくらい、なんてェことなくって……はぅ」
余裕しゃくしゃくですわ! ってところを見せて差し上げようと、膝立ちの状態から直立しようと身体に力を入れた私。
……ですが、力んだと同時に額から噴水みたくピューッと吹き出す、真っ赤なお鮮血。
さ、流石の私も、ヨハンセンとの戦いの後では満身創痍でしてよ……。
「エ、エステル殿!? ま、待ってくれ、今どうにか手当を……!」
あたふたと慌てふためいて、全く慣れていない様子でどうにか私を手当しようとするアル王子。
まったく……一国の王子のあなたが、他人の手当なんてできるワケないでしょう?
ホント、ガキんちょのくせに――優しいんですから。
そんなことを思って、フッと私の気が緩みかけた――その瞬間、
「――」
私がぶっ倒したヨハンセンが、急にムクリと起き上ります。
でも……なんだか様子が変ですわ……?
「ウ……オ……アガッ……!」
突然全身を痙攣させ始めたヨハンセン。
それとほぼ同時に、彼の身体は
皮膚が破れて、まるで内側から溢れ出るみたいに、禍々しい筋肉が露出。
膨張を続けた彼の肉体は、すぐに人としての原型を留めなくなって――元のヨハンセンの二倍、いいえ三倍はあろうかという巨体の筋肉ダルマへと変貌致しましたの。
『オオ……オオォッ……!』
「ヨハンセン……なんて醜いお姿」
――最っ悪ですわ。
最悪の最低の
これがいくら幻の世界の中だからって、あの完成された肉体美を持つヨハンセンを、こんな醜い化物に変えてしまうなんて。
悪趣味にもほどがありましてよ。
反吐を通り越しておゲロが出そうですわ。
きっと、この幻を見せているあのおクソ野郎は、どうあっても私に悪夢を見せたいんでしょうね。
それも考え得る限り、最も私が見たくない類の悪夢を――。
「ハッ……クッソお上等じゃ――っ」
私は
チッ……思ったより、マジでおダメージが溜まってやがりますわね……。
まさか立つことすらままならないだなんて……!
『オオオォ……!』
醜悪な化物となったヨハンセンは一歩、また一歩とこちらに近付いてきやがります。
きっとヨハンセンはさっきよりもおパワーアップされてらっしゃるのでしょうけれど、対する私はおパワーアップどころか体力の限界。
――お万事休す。
ここまでなのかと、私の闘魂も燃え尽きそうになりましたが――
「く……来るな!」
アル王子が私の前に立って、バッと両腕を広げます。
「これ以上エステル殿を……余の大事な女性を傷付けるなど、絶対に許さん!」
「ア……アル王子……?」
「余は……このアル・マッラは、愛した女性を守ってみせる!」
――まるで私を守るみたいに、小さなお身体を精一杯張って
彼の両足は私が見てもハッキリとわかるほど震えていて、声だって必死に震えと恐怖を押し殺しているのがわかるほど。
「ンなっ……! なにおバカなこと……! 早くお逃げなさいッ!」
「嫌だ! 絶対に嫌だ! 余は……守られてばかりなんて、もう嫌なのだッ!!!」
アル王子は完全に泣きが入ったお声で、叫ぶように言います。
でも、どれだけ不甲斐ないお声でも、両の足は一歩たりともその場を動こうとはしませんでした。
「エステル殿は……余の花嫁だ! 花嫁一人守れずして、なにが夫なモノかッ!」
「アル、王子……」
「余は、余は、エステル殿を守ってみせる……! な、なにがあろうと……絶対に……例え、我が命に代えようともッ!!!」
酷く頼りない、小さな身体。
酷く頼りない、震えたお声。
だけれど――その姿は、その背中は、勇敢そのものでした。
だって紛れもなく――
今のアル王子は――
命がけで私を守ろうとしてくれている、〝王子様〟の姿をしてらっしゃるんですもの。
なんていうのか……今この感情を言葉にするのが、ちょっと難しいのですけれど……。
正直――
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォッッッ!!!」
目の前に立ち塞がるアル王子を、叩き潰すために。
「ア――アル王子ッ!!!」
思わず私は彼の名前を叫び、激痛で上手く動かない身体を全身全霊で動かして、アル王子の背中に抱き着きます。
それはほとんど反射的な行動でしたわ。
でもアル王子は絶対にその場を動こうとはせず、最後の最後まで私を守ろうとしてくれます。
そして、もうダメだと思った――その刹那でしたの。
突如、真っ暗な世界に
光が差し込めたのは、私たちの頭上。
見上げると、まるで空間を剣で斬り裂いたみたいに、縦一閃の大きな隙間が出来上がっていましたの。
直後――私とアル王子の身体がフワリと宙に浮き上がります。
「き――きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!?!?」
なにがなんだかわからず、互いに抱き締め合ったまま光の隙間へと吸い込まれていく私とアル王子。
そして――
「――よう。無事だったみたいだな、お前ら」
いつの間にやらすっかり不定期更新となってしまっておりましたが、投稿自体はどうにか頑張って続けて参ろうと思います……。
どうかユルシテ(´×ω×`)
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