【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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【第2部】第4章 邪教VS悪役夫婦
第260話 〝邪教〟①


 

「ああ――ああ――〝暗黒に住まう、大いなる神々よ〟――」

 

 古びて朽ち果て、廃墟も同然の聖堂。

 その中で十名足らずの信徒(・・)が祈りを捧げている。

 

 信徒たちは誰も彼も真っ黒なフード付きローブを羽織り、全身を覆い隠している。

 だがその中でたった一人だけ真っ赤なローブを羽織り、祭壇の前に立つ信徒――いや司祭(・・)の姿が。

 

「〝いあ いあ あざ=そとーす〟――」

 

 呪文か、詠唱か、それとも祈りか、あるいは呪いか。

 司祭は女の声(・・・)で唱え、祭壇に向かって大きく両腕を広げる。

 

「〝我らの祈りを聞き給え〟〝我らの信仰を祝し給え〟――〝あざ=そとーす おんぐ だくた にゃる〟――〝おんぐ だくた にゃる〟――」

 

「「「〝あざ=そとーす おんぐ だくた にゃる〟――〝おんぐ だくた にゃる〟――」」」

 

 司祭に続き、信徒たちも跪いたまま両手を握り合わせ、復唱するように唱える。

 

 何度かの復唱が続くと、祈りを捧げていた信徒たちの中から一人が立ち上がり、司祭の傍へと歩み寄って行く。

 その信徒の腕には、なにやら生き物が抱えられている。

 

「ニャア! ニャアァ!」

 

 それは黒い毛並みを持つ子猫だった。

 黒猫は必至に暴れて逃げ出そうとするが、前後の足を縄で縛られており、身動きが取れない。

 

 信徒は抱えた黒猫を祭壇の上へと、ゆっくりと置く。

 そして祈るように両手両指を合わせる。

 

「〝我らに星の智慧を与え給え〟〝我らに神秘を授け給え〟――」

 

「さあ、大いなる神々の啓蒙を賜りなさい」

 

 司祭が導くように言うと、信徒はローブの中へと片手を忍ばせる。

 

「〝我が信仰。我が愛。我が平穏〟――〝我に救済を……与え給え……〟――〝我が内なる……最も熱い深淵の……」

 

 ブツブツと呟くように唱えながら、信徒は一度ローブの中へ忍ばせた片手を抜き取る。

 するとその手には短剣(ナイフ)が握られていた。

 

 祭壇に飾られたロウソクの火が怪しく反射する銀色の刃。

 信徒は迷うことなく、その切っ先を黒猫へと突き刺す。

 

 ――聖堂に木霊する、悲痛な黒猫の鳴き声。

 だが司祭や信徒たちは少しも動じない。

 

「我が黄昏……安寧の薔薇っ……。あぁ、あぁ……! この畜生の血をお啜りください! 我が痴態をお許しください……! 我が愚かしい衝動を……ッ!」

 

 首元に短剣(ナイフ)を突き込まれ、絶命する黒猫。

 真っ赤なフードで顔を隠す司祭は、その様子を見ていてクスッと笑い――

 

「フフ……この貴い贄は、我ら『薔薇色の黄昏(ローゼン・トワイライト)』に輝かしい道筋を照らしてくれることでしょう」

 

 どこか愉快そうに言う。

 

 

 あぁ――もういいや、見るに堪えん。

 

 

 アルベール国王には慎重にって釘刺されたけど、これ以上の様子見なんて面倒くせぇ(・・・・・)わ。

 

 くだらん茶番なんぞさっさと見納めして――妻(レティシア)の下へ帰らせてもらうぞ。

 

「おい、クソ邪教(カルト)共」

 

「「「――ッ!!!」」」

 

 物陰から姿を現した俺が一声かけてやると、さっきまでの厳粛な空気が嘘のように破られ、信徒たち全員がこちらに振り向く。

 

 俺は鞘から抜き放った剣を肩の上でポンポンと弄び、

 

「どーもー、お前らをぶっ潰しに来た悪の男爵でーす。お前らは包囲されてやがりまーす」

 

 やる気のない声色で宣言してやる。

 同時に周辺に張り込んでいた騎士たちが一斉に聖堂の中へと押し入ってきて、信徒たちを取り囲む。

 

 そんな光景に、信徒たちの中で焦り切ったどよめきが上がる。

 

「ど、どうしてこの集会所の場所を……!」

 

「お前ら〝薔薇教団〟のことは、アルベール国王がなにもかも調査済みだから。この中に貴族や豪商が混ざってることもな」

 

「「「……ッ!!!」」」

 

「ま、俺はお前ら教団の狙いなんてどうでもいいけど……」

 

 どうでもいい。本当にクソどうでもいい。

 コイツらがどこでなにをしようが、死のうが生きようが、俺には至極どうだっていい。

 

 だけどコイツら〝薔薇教団〟は――俺にとって命より大事な宝物(・・)を狙いやがった。

 

「――よくもレティシアを狙ってくれたな。ただで済むと思うなよ」

 

「クッ、クソォッ!」

 

 どうもやぶれかぶれになったらしく、ついさっき黒猫を刺し殺した信徒が手にしていた短剣(ナイフ)を振りかざし、こちら目掛けて襲い掛かってくる。

 短剣(ナイフ)には黒猫の血がまだベッタリと付着しており、赤黒い色が否応なく視界に映る。

 

 ちょうどいいや――まずお前だ。

 

 俺は適当に剣を振るい、スパッとやる。

 同時に短剣を持った信徒の上半身が綺麗に分割され、深紅の飛沫が飛び散った。

 

〝ベシャッ〟という音と共に、人体の一部が床に落ちる。

 それは一面を鮮血で染め上げて、聖堂の中に滑り気を帯びた鉄の匂いを充満させる。

 

 ついさっき自分が畜生扱いして殺した黒猫より惨い死に方をするってのは、どんな気分なんだろうな。

 ま、見せしめとしてはこれで充分だろ。

 




大変……大っ変長らくお待たせ致しました!
『最凶夫婦』更新再開&第2部・第4章スタートでございます!!!٩(ˊᗜˋ*)و

書籍の方の作業が忙しかったり他にもアレやコレやとありましたが……著者は生きておりますので、再開します!
すっかり間が空いてしまいましたが、お付き合い頂けますと嬉しいですo(*^▽^*)o

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