【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第261話 〝邪教〟②

 

「逆らう奴は殺していいって言われてるから。――ああ、でもお前(・・)を除いて」

 

 そう言って、俺は祭壇の傍にいる赤いローブの奴を指差す。

 おそらくこのイカレた信徒共をまとめ上げているであろう――教団の司祭とやらを。

 

「おかしな格好の司祭女。お前が〝薔薇教団〟を創った教祖(・・)だな?」

 

「あら……私をご存じなのね」

 

「お前だけは生かして連れ帰れって言われてる。でも五体満足でとは言われてないから。逆らうなら容赦しない」

 

「クスクス、なんて罰当たりな。あなた天罰(・・)が下りますわよ?」

 

「お前の言う天罰なんざ、クソ食らえ(・・・・・)」

 

 お前がなにを信じてなにを恐れるのかなんて、知った事か。

 

 俺は神も天罰も興味ない。

 怖くも恐ろしくもない。

 

 そんなモノより――レティシアを失うことの方が、俺には何千何万何億倍も恐ろしい。

 

 ああそうさ。神だろうが天罰だろうが……レティシアを奪うなら、なにもかも全て滅ぼす(・・・)だけだ。

 

 俺の返答を聞いた司祭は、パチパチと小さく拍手を送ってくる。

 

「まさに神をも恐れぬ英雄……いえ暴君(・・)。お噂の通りね、アルバン・オードラン男爵」

 

「あぁ、そっちも俺を知ってんのか。なら話が早い、さっさと投降しろ」

 

「それはできないご相談ですわ」

 

 司祭は祭壇の上に置かれていたドクロに軽く触れる。

 するとゴゴゴッという轟音と共に祭壇それ自体が動き出し、地下へと続く隠し階段が露わとなる。

 

「信徒の皆様、今こそ信仰心が試される時です。あの不信心な男を〝外なる神々〟への贄として捧げし者には、福音がもたらされますわ」

 

「「「――ッ!」」」

 

 司祭の言葉を聞いた信徒たちは一斉に目の色を変え、俺のことを睨んでくる。

 そして全員ローブの中に隠し持っていた短剣(ナイフ)を抜き放ち、こちら目掛けて一斉に突進してきた。

 

「「「〝外なる神々〟のご加護があらんことをッ!!!」」」

 

「フフフ、ではこの場はお任せしましたわ」

 

 信徒共を焚き付けた司祭は、我先にと隠し階段を下っていく。

 

 部下を捨て駒にして自分一人だけ逃げおおせようってか。

 やっぱりカルトの教祖なんてそんなモン(・・・・・)だな。

 

「チッ、邪魔くせぇ」

 

「オードラン男爵、ここは我々にお任せを!」

 

 俺と一緒に踏み込んだ騎士たちが信徒たちを迎え撃ち、聖堂の中はあっという間に混戦状態に。

 

 別にぱっぱと皆殺しにしてから追いかけてもいいんだけど、コンマ一秒でも時間を取られるのは面倒ではあるしな。

 お任せをって言うなら任せるか。

 

「じゃ、頼んだぞ」

 

 この場を騎士たちに任せ、俺は司祭を追って隠し階段へと飛び込む。

 隠し階段を降りると長い通路が続いており、その中を俺は全力疾走で走り抜けていく。

 

 しっかしあの司祭女、結構逃げ足が速いな。

 たぶん肉体強化の魔法でも使ってんだろうが、俺がすんなり追い付けない辺り中々の魔力の持ち主かもしれん、クッソウゼェ。

 

 でも――逃げられるなんて思うなよ。

 

「やっと追い付いたぞ、食らえ」

 

 剣を振り被る俺。

 狙うは奴の足。片足一本吹っ飛ばせば、逃げたくても逃げられなくなるだろ。

 

 そう思いながら斬撃を放つが――

 

「……〝星の風〟よ、憐れな私をお救いください」

 

 司祭の足目掛けた斬撃が、ぐにゃり(・・・・)と逸れる。

 目に見えないなにかの力が、刃の軌道を逸らしたのだ。

 

「――ッ!」

 

 この感触(・・)は――覚えがあるぞ。

 

 アイツだ。あの執事野郎(・・・・)と戦った時と同じ感触だ。

 

「〝黄衣(こうい)の夜王(やおう)〟様……どうか私に救済を」

 

 司祭がフードの下で呟く。

 刹那――奴の足元から伸びる影が、奴自身を飲み込んだ。

 

 同時に俺の目の前から司祭の姿が消え、文字通り影も形も(・・・・)なくなる。

 俺がずっと走ってきた長い地下通路が、胸糞が悪くなるほどの静寂に覆われる。

 

『――申し訳ありませんわね、アルバン・オードラン男爵』

 

 俺以外誰もいないはずの通路の中に、司祭の声が響き渡る。

 

『〝外なる神々〟は私に慈悲をくださいましたわ。そして……あなた様への天罰(・・)を望まれておいでです』

 

「……」

 

『厄災が、あなた様から大事なモノ(・・・・・)を奪うことでしょう。そのお顔に絶望が浮かぶ瞬間を……楽しみにしておりますわ』

 

 ――俺は奴の声を薙ぎ払うように、思い切り剣を振るう。

 地下通路の壁も床も天井も、視界に映る全てをズタズタの滅多切りにする。

 

 だが刃が人体に当たった感触はなく、斬撃から手に伝わってきたのは〝司祭を取り逃がした〟という空虚な実感だけだった。

 

「……上等だ、クソ神の奴隷風情が」

 

 俺から大事なモノを奪う、だって……?

 

 面白い冗談だ。

 面白くて面白くて、腸(はらわた)が煮えくり返りそうだ。

 

 どうせ知ってるんだろう?

 俺の大事なモノなんて、この世にたった一つしかないって。

 

 それを奪うってんなら――お前も天罰も災いも、俺がこの手で滅ぼしてやる。

 

 このアルバン・オードランから妻(レティシア)を奪うなんて、例え神にだってできやしないと……そう運命に刻み付けてやる。

 




邪教? アルバンとレティシアのイチャラブに勝てると思うなよ?(ꉺ౪ꉺ)

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