【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第263話 サメ尻尾ゴスロリメイド

 

「ふぇ~……オードラン男爵、昨晩そんな大活躍をされてらっしゃったんですね……!」

 

 シャノアの奴が大層驚いたとでも言いたげな顔をして、目を丸くしながら言う。

 

 まあ俺がカルト教団に殴り込みをかけることは、当事者である俺やアルベール国王と騎士たち、それとレティシアくらいしか知らなかったからな。

 事後報告されて驚くのも無理はない。

 

 ――快晴の空の下、俺、レティシア、シャノアの三人は城下町・中央区の中を歩いていた。

 俺たちは足取りこそ合わせているが目的地は異なり、俺はアルベール国王が待つ王城へ、そしてレティシアとシャノアは行きつけであるシャノアの喫茶店へと向かっている。

 学園から出てしばらくの間は道順が同じなため、こうして仲良く歩を進めている次第。

 

 俺としてはレティシアも一緒に王城へ連れていければよかったんだけど、残念ながら今回彼女はお呼ばれでない。

 前以て「一人で王城まで来るように」って釘を刺されちまって。

 

 ま、俺が〝薔薇教団〟の教祖を取り逃がした件でのお説教なんだろうな。

 それで俺一人に召集がかかっていると。

 面倒くせぇわ~。

 

「まあな~。でもちょっとやらかしちまって、今からアルベール国王に説教されに行くトコだ」

 

「アルバン、やっぱり私も一緒に行った方が……」

 

「いいのいいの。呼ばれてるのは俺だけなんだし、レティシアはシャノアんトコで紅茶でも飲みながら待っててくれよ」

 

 レティシアと一緒にいられなくて残念……とはいえ彼女に気まずい空気を味わってほしくないし?

 やらかしたのはあくまで俺だけであって、レティシアは無関係。

 なので面倒な思いをするのなんざ俺一人で充分。

 

 それに妻に説教される場面を見せずに済むのは、それはそれで助かるかも?

 アルベール国王がそこまでわかった上で俺だけ王城に呼んだのだとしたら、もしかするとあの人なりの温情なのかも――なんて思いながら、俺はレティシアたちの隣を歩く。

 

「で、でも凄いですよ! オードラン男爵のご活躍で、その怪しい教団の人たちはほとんど捕まったんですよね……!」

 

 フンスフンス、となんだかやや興奮した様子のシャノア。

 別に集会所(アジト)へは騎士たちも突入してたから、俺だけの活躍ってワケじゃ全然ないんだけど。

 っていうか教徒共をとっ捕まえたのはほぼ騎士の連中だし。

 俺、実質なんもしてないし。

 

 ま~、後で騎士たちに聞いた話じゃ〝薔薇教団〟の教徒共はそこそこしっかり抵抗したらしくて、生きて捕まったのは半数に満たなかったなんて聞いたが。

 つまりほとんどは捕まったんじゃなくて斬り殺されたそうな。

 現場はさぞ血生臭い光景になっていたんだろう。

 でもシャノアはそういうエグい話にあんま抗体ないから、言わないでおくか。

 

 シャノアは興奮冷めやらぬ様子で、

 

「そ、それにその怪しい教団の人たちが、偽物のジャックさんを学園に送り込んで、レティシア夫人を狙った人たちなんですよね……? あとはアル王子の誘拐にも関与していた……!」

 

「ああ、確かにそいつらがレティシアを狙ったクソ野郎共だな」

 

「なら、やっぱり凄いです! レティシア婦人を苦しめた悪い人たちを、オードラン男爵はやっつけてくれたんですから……!」

 

 なんだかやたらと俺を褒めてくれるシャノア。

 

 ……そういえば、シャノアも偽ジャック(ラーシュ)の一件の時には痛い目に遭わされてたっけな。

 あの時の怪我は今じゃすっかり完治して傷跡すら見えないが、当人としちゃ仕返しのひとつでもしてやりたかったのかも――

 

 ――……いや、違うか。

 シャノアはそういう報復とか考える性格じゃないもんな。

 

 シャノアはただ単に、レティシアが酷い目に遭ったのが許せなかったんだろう。

 コイツにとってレティシアは一番親しい友達で、偽ジャック(ラーシュ)の時だってレティシアを守るために身を挺して戦ったことが、戦闘跡からハッキリとわかったくらいだったんだ。

 

 だから、レティシアを苦しめた奴らがいなくなったことが、純粋に嬉しい――ってな感じか。

 お人好しと言えばお人好し。でもそうであるが故に、レティシアとはウマが合い続けているんだろうさ。

 

 ま、現場では惨劇が繰り広げられたって教えてやれば、暴力を好まないコイツは血相を変えて震え始めるんだろうけど。

 っていうか悪い人たち(・・・・・)って言い方したが、どっちかというと俺の方が〝悪〟なんだが。

 

 いい機会だ。この際このアルバン・オードラン様は正義の味方なんてちんけな存在じゃないと、しっかり教えておいてやるか。

 ついでにあんまりシャノアが暴力に染まらないように、現場でなにがあったのかしっかり教えといてやろ。

 なんて俺が心の中で悪い笑みを浮かべていると、

 

「アルバン? もしかしてシャノアを怖がらせてやろうなんて、意地悪なこと思ってないわよね?」

 

 レティシアが釘を差すように言った。その一言を受けてギクッとする俺。

 

「うぇ!? な、なんだよ~レティシア~、俺がそんなこと思うワケないだろ~? ア、アハハハハハ!」

 

「そう? 今のあなた、ちょっと悪いことを考えている顔をしていたモノですから」

 

 まるでこちらの内心などお見通しとばかりに、口元に微笑を浮かべて言うレティシア。

 

 ふぐっ……! さ、流石は我が妻……! 俺の思考回路を完璧に理解されていらっしゃる……!

 

 いやはやまったく、俺がちょっとでも悪巧みするとすぐに見透かしてくるんだから。

 でもそんなトコも大好きで愛おしい……。

 理解のある奥さんを持てる俺って幸せ者……。

 

「オ、オホン! でもなぁシャノア、油断するなよ? その悪い教団ってのは、完全に消えたワケじゃ――」

 

 なんて言いかけて、俺たちは街角を曲がる。すると――

 

「……ん?」

 

 俺の視界の隅に、なにかが映り込んだ。より厳密な言い方をすれば、なにかが地面に倒れ込んでいた。

 

「う……うぅ~……」

 

 それ(・・)は、全身に白と黒のヒラヒラ衣装をまとった、小柄な人体。

 もっとわかりやすく言えば使用人(メイド)衣装を着た少女が、そこに行き倒れていた。

 

 しかも、だ。使用人(メイド)姿の少女が道端でぶっ倒れているだけでも、既に充分おかしな光景なのに――さらに輪をかけて、ソイツには明確におかしな点があった。

 

 着用している使用人(メイド)服がなんとも特異な意匠で、ヒラヒラでフリフリのフリルが随所に施された……言うなれば〝ゴスロリ風使用人(メイド)〟という、あまりにもエキセントリック極まりないデザイン。

 

 

 加えてそのゴスロリ使用人(メイド)には――〝尻尾〟があったのだ。

 それも大きくて太くて長くて、青みがかった灰色の、先端が二又に分かれた尾ひれとなっている、そんな尻尾が。

 

 

 一見すると魚の尻尾のようにも見えるが、俺には何故かすぐにわかった。

 これはサメ(・・)の尻尾であると。

 

 つまり――

 尾てい骨の辺りからサメ尻尾を生やして――

 ゴスロリ使用人(メイド)衣装を着た――

 

 そんな――〝サメ尻尾ゴスロリ使用人(メイド)〟という奇怪極まりない存在が、その場にあったのである。

 

 オマケにそのサメ尻尾ゴスロリ使用人(メイド)の周囲を、明らかにガラの悪そうな男たち(ゴロツキ)三人が囲っている。

 

「オイ、なんだコイツぁ? おかしな格好しやがって」

 

「しかも変な尻尾みたいなのまで付いてるしよ。こりゃなんの仮装だ?」

 

「ヘヘヘ、まあなんでもいいじゃねーか。とりあえず金目のモン持ってねーか、服ん中まさぐらせてもらおうぜ。ついでにちょっと身体を触っても……」

 

 ゴロツキ共は金目の物を奪おうと、地面に倒れるサメ尻尾ゴスロリ使用人(メイド)に手を伸ばそうとする。

 この辺はそれほど治安が悪い地域ってワケじゃないが、道端で無防備に倒れてたらそりゃ目を付けられるわな。

 服装だって少なくとも貧乏人のソレには見えないし。

 

 ぶっちゃけ関わるのも面倒だし、俺はスルーしたいのだが――

 

「オ、オードラン男爵……!」

 

 シャノアがとてもハラハラとした表情で俺の方を見てくる。

 

 ああうん、皆まで言わずともわかる。

「助けに行かなくていいんですか、オードラン男爵なら助けに行きますよね」

 ――そう言いたいのだろう。

 いや別に俺は興味ないんだけど。

 

 俺はかったるさを隠そうともせずポリポリと後頭部を掻き、

 

「……レティシア?」

 

 どうすべきか、妻に大して暗に尋ねてみる。

 

「私からもお願い、アルバン。見て見ぬ振りはできないもの」

 

 レティシアもシャノアと同じ気持ちらしく、俺にお願いしてくる。

 

 お願い、か。

 愛する妻のお願いとあればしょうがない。

 面倒くせぇけど、いっちょ蹴散らしてくるか。

 




本当はネコミミメイドを出そうかと思ったけど、ネタを考えてる時に「ノー・シャーク」って映画の話題が流れてきて「そういやオタクは皆サメが好きよな……」と思い至った結果サメ尻尾ゴスロリメイドになりました(;^ω^)
あぁ、愛すべきZ級サメ映画の数々……。

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