【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】 作:メソポ・たみあ
「あ~ら、いらっしゃいアルバンちゃん。待ってたわよん♥」
「どーも。遅刻でしたか?」
「いいえ、ギリセーフってトコ。でもオネェを待たせると怖いわよん?」
いつものようにヘラヘラとした腹の底が見えない笑みを浮かべながら、執務椅子に腰かけて来客である俺を歓迎してくれるアルベール国王。
ちょっと待たせちゃったかな?
まあでも怒られてないってことは、そこまでキレてないってことなんだろ。
あんまり気にせんとこ。面倒だから。
「今日はレティシアちゃんと朝から別行動だったのかしら? 遅刻ギリギリなんて、あの良妻賢母が許さなそうだけど」
「いやぁ、レティシアとはついさっきまで一緒だったんですけど……それとは別に、ここに来るまでちょっと色々あったっていうか……」
「?」
「にしても、今日はいつもの謁見の間じゃなくて執務室の方なんですね。また修復工事の関係ですか?」
俺は半ば強引に会話を区切り、微妙に周囲をキョロキョロと見回しながら訪ねる。
普段、俺やレティシアを含めアルベール国王への来客は大体の場合で謁見の間という場所へと通される。
一応は、そこは国王が部外者と会うための正規の場所でもあるためだ。
しかし王城に到着した俺は衛兵に案内され、普段アルベール国王との会談に使われる謁見の間とは別のアルベール国王個人の執務室へと通された。
エルザの反乱で半壊した王城の修復もだいぶ進んではきたみたいだし、謁見の間に崩落の危険が~とかはあんまなさそうな気もするんだけど。
「ンフフ~、さあどうでしょう~♥ もしかしたらアルバンちゃんを逃げられなくして食べちゃうためかもよ~?」
「あ、もう帰っていいっすか。つーか帰りますね。妻一筋なんで俺」
「いやぁん冗談よ♪ アタシだって略奪愛なんてたまにしかしないんだから、怖い顔しないでぇ~~~ん♥」
ぶっ殺してぇ。
いや、国王にぶっ殺してぇとか思っちゃダメか。
でもぶっ殺してぇ。
つーかアンタたまになら略奪愛すんのかよ。タチが悪すぎるだろーが。
そもそも一国の王が略奪愛なんてすんなや、国滅ぼしてぇのかよ。
いや……もうこのオネェ相手に真面目に突っ込むなんて野暮か……なんて思いながら頭を抱える俺。
だがそんな俺とは対照的に、アルベール国王は落ち着き払った様子で息を整える。
「……まずは、あなたを労わなきゃよね。この間はご苦労様、アルバンちゃんのお陰で〝薔薇教団〟はほぼ壊滅状態にできたわ」
「そりゃどうも。でも、奴らの
「そうでもないわ。信徒共を一掃できただけでも充分に意義はある。少なくとも奴らの資金源は絶てたことになるワケだもの」
……〝薔薇教団〟の信徒たちの中には、有力な貴族や商人などが多く紛れていた。
奴らが組織に多額の献金をしていたであろうことは疑いの余地もない。
それにアルベール国王の言い方から察するに、信徒共が〝薔薇教団〟の資金源としてどれほどの大金を貢いでいたかなんて事実は、とっ捕まえた奴らから洗い浚い情報を吐かせて調査済みなんだろうな。
だから「意義はあった」なんて言い方をしてくれるんだろう。
それにしても――
「資金源、ね……。でも〝薔薇教団〟は大金をせしめて、いったいなにをしでかそうとしてたんです?」
俺はなんとなしに疑問を持った。
これまで俺やレティシアは何度も〝薔薇教団〟と渡り合ってきた。
セラたちの時、
しかしそのどれも、多額の資金が動いたような感じはしなかった。
アル王子の一件の時だって、なんたらゲッツとかいうゴロツキの親分が自前の金を動かしただけで〝薔薇教団〟の資金が動いたって雰囲気はなかった。
なら――〝薔薇教団〟は、一体なんのために信徒共に多額の献金をさせて金を集めていたのか?
やっぱ取り逃がした教祖の奴が贅沢三昧するため?
それとも〝
もし俺なら、あんな薄気味悪い寂れた本を量産するのに大金費やすなんて、まっぴらゴメンだけど――
「……アルバンちゃん、今日は
「え?」
「そう、まさに
アルベール国王は机の上で両手の指を組み、より深く思考するように口元へと当てる。
「アタシたちが捕まえた信徒共は、誰一人として献金されたお金がどう使われているのかを知らなかった。〝外なる神々〟の加護が得られるなんて名目で寄付を募って、資金は教祖が一人で管理していたみたい」
「……」
「でも今日に至るまで、〝薔薇教団〟が巨額の資金を使って大掛かりな行動に出た形跡はない。奴らがやったことはどれもこれも比較的小規模で、それこそ水面下でコソコソ動くような真似ばっかり」
「つまり――莫大な資金がなにに使われているのか、皆目見当も付かない……と?」
「ええ、その通り。そもそも……
アルベール国王は意味あり気に小さな声で言い、ゆっくりと椅子から立ち上がる。
「さて…………ねぇアルバンちゃん、今日あなたを一人で呼んだのには
「は……はぁ……?」
「アタシはあなたを色んな意味で信頼してるわ。それこそ、〝レティシアちゃんには聞かせられない話〟を聞かせられるくらいには、ね」
――アルベール国王が妻の名を口にした瞬間、執務室の中にヒリつくような空気が張り詰めたのがわかった。
どうやらここからが本題、ということらしい。
「そりゃどうも。でも頭使う話なら、俺より絶対レティシアの方が適任だと思いますけど」
「フフ、どうかしら? アタシもレティシアちゃんは大好きだし信用してるけど、あの子はあくまで真っ当な人間だもの」
「……まるで俺が真っ当な人間じゃないって言ってるみたいっすね」
「少なくとも、幾らか〝人智を超えた存在〟とは思ってるかもね」
悪気なさそうに言うアルベール国王。
っとに、このオネェは……人様をなんだと思ってやがるのやら。
俺はあくまで、妻の敵を皆殺しにするつもりでいるってだけの一般愛妻家にすぎないんだが?
ま、いい意味で人外扱いされるのは悪い気分じゃないけども。
俺はちょっと面倒くさくなりつつ、耳の穴を小指でかっぽじる。
「それで? 俺にしか聞かせられない話って、一体なんです?」
「まず、最初に言っておきたいんだけど――」
「他言無用。この場で聞いたことは外で話すべからず、でしょ」
「よろしい。それとレティシアちゃんにも言っちゃダメよ」
「え――レティシアにも?」
「ええ。言っちゃダメというより……〝言っても信じてもらえない〟と思うわ」
アルベール国王は極めて冷静な声で言って、執務室入り口のドアへと向かう。
俺が「それ、どういう意味です?」と聞き返すよりも早く。
そしてドアの前で立ち止まり、
「いいわよ
ドアの向こうへと話しかける。
すると――〝ガチャリ〟という音と共に、ゆっくりとドアが開いていく。
そうして、ドアの向こうから現れたのは――車椅子に乗った一人の男だった。
おそらくほとんどの読者様がもう覚えていないであろう、あの人物が再登場 ^ω^)
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