【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】 作:メソポ・たみあ
痩せ細った身体、まるで血色のない真っ白な肌、雪を連想させるほど純白の髪、そして生気を感じさせない深紅の瞳――。
その風貌は、見るからに
年齢は……外観からは推測できない。
少なくとも二十歳よりかは上だと思うが、顔立ちが童顔だからかかなり若く見える。
同時に――その雰囲気や佇まいから、只者でないことだけは一目で読み取れる。
威圧感みたいな刺々しいオーラは皆無だが、気圧される
俺は正直、車椅子の男を見た瞬間にグッと息を飲まされたほどだ。
そんな男が〝王家特別親衛隊〟の一員であるホラントに車椅子を押されつつ、他一名の騎士も伴う護衛二名を連れて執務室の中へと入ってくる。
ホラントともう一人の騎士は俺と目を合わせることもなく黙りこくっているが、その実かなり強く警戒しているのが気配でわかった。
無論なにを警戒しているって、俺のことを警戒しているんだろうが。
「――やあ、こうして直接キミと会うのは初めてだね、アルバン・オードラン男爵」
車椅子の男は、どこかか細い優し気な声で話しかけてくる。
そして車椅子の上から片手を伸ばして握手を求めてきたので、俺も僅かに彼の方へと歩み寄ってその手を取る。
「えぇっと……あなたは……?」
「僕の名はルイス――ルイス・ヴァルランド。〝ルイス第一王子〟と言えば、ピンときてくれるかい?」
「――ッ! ルイス……第一王子……ッ!?」
その名を聞いて、流石に俺はギョッとさせられる。
ピンとくるどころじゃない、このヴァルランド王国に住まう人間であれば、その名を知らぬ人間は一人としていないはずだ。
何故なら――前国王ディートフリートの実子であり、滅多に人前に姿を現さないことで知られていたヴァルランド王家三兄妹の長男その人なのだから。
俺は大概田舎者だし王家のことも全然詳しくないし、なんなら王家について興味も関心もないが、それでもルイス・ヴァルランドの名は知っている。
っていうか、知ってないと非国民と呼ばれてもおかしくないレベルでヤバいと思う。
もっとも……こうして本人の姿を拝むのは、正真正銘これが初となるが。
なにせ俺が王立学園に入学してから、一度としてルイス第一王子は民衆の前に姿を見せていないのだから。
エルザの反乱後も「身柄は無事」とだけ発表されて、ぶっちゃけ行方不明も同然だったし……。
それに大事な国王の座も、弟のアルベール第二王子に取られちゃったワケだし……?
こんな言い方するとかなり失礼に当たるだろうが、正直ルイス第一王子は既に忘れ去られた人間というか、もはや世間からは「いない者」も同然に扱われているような気がする。
人前に出ないが故に、元々存在感が薄かったってのもあるだろうが。
俺もたった今その名を聞くまで、すっかり存在を忘れていたが――いやはやまさか、こんなタイミングで会うことになるとは思ってもみなかったな……。
「キミの活躍と名声は耳にしているよ。こうして会えるのを楽しみにしていた。弟のアルベールもよく世話になっていると聞く」
「んもぉ~~~お兄様ったら、アタシだってアルバンちゃんのことは結構お世話してるのに~♪」
クネクネと身体を揺らしながら親し気に言うアルベール国王。
弟……そうか、そうだよな。
第一王子ってんだから、第二王子であるアルベール国王の方が年下ってことになるんだよな。
う~む、この第一王子、年齢不詳感が凄まじい……。
どう見てもアルベール国王の方が年長に見えるが……。
いや、むしろこのオネェが老けて見えるだけなのか……。
「ちょっとアルバンちゃん、なんか失礼なコト思ってな~い?」
「いや、別に~……」
ワザとらしく目を逸らす俺。
一方、ルイス第一王子は落ち着き払った様子で言葉を続けてくる。
「それと……
「……いえ、もう過ぎたことですから。どうかお気になさらず」
「そう言ってくれると助かるよ」
ほんの僅かにはにかむルイス第一王子。
……不思議な感じのする人だ。
明らかに常人ならざるオーラがあるのに、同時に触れれば崩れてしまいそうな印象も受ける。
あまりにも儚い雰囲気がある、というか。
かねてよりルイス第一王子は病弱で、城の外に中々出られないという話は聞いていたが……どうもそれは紛れもない真実らしいな。
「さて――それでは挨拶もほどほどに、本題へ入ろう」
ルイス第一王子は背後のホラントに目配せし、車椅子から手を離させる。
そして自らの手で車輪を回し、執務室の中央まで車椅子を転がす。
「オードラン男爵、今キミは内心でこう思っていることだろう。〝これまで影も形も現さなかった第一王子が、今更自分になんの用だ〟と」
「いや……まあ……」
「まず最初に、僕の立場をハッキリとさせておきたい。このルイス・ヴァルランドはキミの
こちらの警戒心を解くように、柔和な感じで言うルイス第一王子。
実際敵意や殺意の類はまるでなく、いっそ俺の方が不安になるくらい不用心というか……。
まあ敵意がないのは気楽で助かるけど。
彼は言葉を続け、
「その前提の上で、単刀直入に言う。僕は〝薔薇教団〟を――『
静かで穏やかな――けれど非常にハッキリとした力強い口調で、ルイス第一王子は言った。
あまりにも意外な一言に、俺は思わず返す言葉を失う。
「キミは〝薔薇教団〟の信徒たちを一掃してくれた。だが僕は教祖ゼイラムを捕まえない限り――いいや、奴を捕まえてようやく〝薔薇教団〟根絶の第一歩となると思っている」
「なんだってそこまで……えっと、あなた様は――」
「畏まらなくていい。僕はキミに敬意を払っているし、なにより王家の人間としては既にいないも同然となっている。だからできれば、対等の立場で話したいんだ」
「……そりゃどうも。で、なんだってそこまで教祖とやらに執着するんです? そもそも、アンタらはどこまで奴らのことを――」
「奴ら……とは――〝外なる神々〟のことかい?」
「――ッ!!!」
――ルイス第一王子の口からその名を聞いた瞬間、俺は思わず隻眼を見開く。
だが驚きを露わにしたのは俺だけで、アルベール国王もホラントももう一人の騎士も、微動だにしない。
……なるほど、ここにいる連中には周知の事実ってことらしい。
そりゃつまり――
「……アンタら王家の人間はとっくの昔になにもかも知ってた、ってワケか」
「隠すつもりはなかった。というより、言っても信じてもらえない――言っても奴らの脅威を理解してもらえないと、そう思っていたんだ」
「……」
「しかしキミは既に二度も〝外なる神々〟と戦い、そして退けて見せた。ならば……包み隠さず全て打ち明けた方が誠実だと、僕はそう判断した」
「誠実、ね……。ならどうしてレティシアをこの場に呼ばなかった? 彼女だって立派な被害者なんですが」
「理由がある。今から話すのは、如何に聡明な彼女でも信じ難い内容になってしまうと思ってね。だからまず、キミだけを呼んで先に話すことにしたんだ」
「はぁ……で、レティシアでも信じ難い話って、なんです?」
「僕たち王家の人間が、何故〝薔薇教団〟の根絶を願うのか……。その
ルイス第一王子は「どうか落ち着いて聞いてほしい」言うと、手で車椅子の車輪を回して俺を正面に見据えてくる。
そして透き通るような儚い微笑みを口元に浮かべたまま――
「僕は、ね……このルイス・ヴァルランドは――〝転生者〟なんだ」
ルイス第一王子は目のハイライトがない儚い系美男子(´-ω-`)
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