【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】 作:メソポ・たみあ
「……シャノアも少し休んだら? あなたも疲れているようだし……」
「わ、私は大丈夫です! お母さんも今日はお店にいませんし、それにケイさんに早く仕事を覚えてもらいたいですから……!」
「そのお仕事を教えるのが、どうもあまり上手くいっていなさそうに見えるのだけれど……」
「うっ……うぅ……」
レティシアに言われ、ガックリと肩を落とすシャノア。
やはり悪戦苦闘していたのは図星っぽい。
「お仕事を教えるのが上手くいかないというか……それ以前の問題というか……」
「? というと?」
「…………こんなことを言うのは本当に、本っっっ当に憚られるんですけれど……」
「大丈夫、言ってご覧なさい。私たちの仲じゃない」
「……ケイさんは
もの凄く言いづらそうにしながら言うシャノア。
その言葉を聞いて、思わず俺とレティシアは互いの顔を見合わせる。
「常識を知らない……? そりゃどういうことだ?」
「オードラン男爵……例えばお皿を床に落としたら、どうなりますか?」
「どうって……割れるな、そりゃ」
「そうですよね……。でもケイさんは、今朝まで
「は、はぁ……?」
「ケイさんはお皿を落としたら割れることも、お皿がなにでできているのかも知りませんでした。それだけじゃありません、包丁の使い方も全く知りませんでしたし、フライパンで食べ物を焼く時は油を引くことも知りませんでしたし、そもそも調理という工程そのものを〝やる意味がわからないサメ〟と仰っていました……」
「「…………」」
「正直、とても
「なんか……まるで野生児みたいだな……?」
唖然とさせられる俺とレティシア。
別に俺は自分が文明人だなどと偉そうに宣うつもりはないが、それでも流石に皿を落としたら割れることやフライパンに油を引く必要があることは知っている。
ついでに調理が大事なことも理解してる。
だって調理された料理って美味いし。
っていうか調理して火を通さないと肉なんて食えないし。
だがどうも、ケイにはそういう〝俺たちにとっての前提〟みたいなモノがないらしい。
いやまあケイの奴は記憶喪失らしいし、この国にも貧富の差はあるから一言で常識と言っても色々だろうが、いくら貧しい民と言えど皿が割れることを理解していないなんてあるだろうか……?
つーかケイの奴は着ている服装からして、貧民出身って感じじゃないし。
それ以上に、調理という工程の大事さを理解していないってのもおかしすぎる。
そういえばアイツ、昨日も素手で料理をムシャムシャ食べてたけど……まさか今の今まで、生ものだけ食って生きてきたとでも……?
もっとも、ケイが本当に別の大陸で生きてきた亜人なら、そりゃ常識なんて異なって当たり前ではあるだろうが……。
う~む……やっぱり怪しすぎる……。
「今は、そういう常識から教えていっている段階です。でもそれはそれとしてお仕事も覚えてもらわなきゃですから、並行して少しずつ進めています」
「なあシャノア……やっぱりケイを傍に置くのはやめたらどうだ?」
俺はため息交じりに言う。
やはりシャノアの奴はお人好しがすぎるなと思って。
「アイツは
「だ、大丈夫です! 私がケイさんをなんとかしてみせます!」
「……シャノア」
「本人も頑張ってくれてますから! だから、私がへこたれるワケにはいきません!」
疲れた表情を隠すように笑顔を見せ、グッとガッツポーズして見せるシャノア。
……どうあってもケイを見捨てる気はないらしい。
コイツもコイツで見上げた根性だ。お人好しバカとも呼べるが。
ま、そんなお人好しバカが、レティシアの友人でいてくれてよかったと思ったりもするけどな。
「それからケイさんの〝お父さん〟探しも始めるつもりでいます。今はケイさんに色々教えなきゃなので、ちょっと忙しいですけど……」
「……頑張ってるのね、シャノア。――よし、それじゃあ私もお店のお仕事を手伝っちゃおうかしら」
シャノアの話を聞いていたレティシアが、なにやら意気込んだ様子で言う。
そんな彼女の発言を聞いて「「え?」」と声がハモる俺とシャノア。
「レ、レティシア夫人!? 手伝うって……!」
「この喫茶店にはもう何度も来ているのだもの。シャノアを見ていて、お仕事の内容は概ね覚えたつもりよ。さて、お給仕用のエプロンはどこかしら?」
「ふ、ふえぇ……!? レティシア夫人にそんなことをさせるワケにはぁ……!」
シャノアの制止を振り切り、レティシアはツカツカとカウンターの奥へと入っていく。
そしてすぐにエプロンの在り処を見つけ、楽し気に身に着ける。
「――よし。どうかしらアルバン、似合う?」
ヒラリ、とエプロンを着た姿で軽く舞うレティシア。
――――
ありがとう。本当にありがとう。
最高かよ。俺は夢でも見てるのかよ。
まさかレティシアのお給仕姿が見られるなんて……俺もう死んでもいいよ……もう天国行っちゃってもいいよ……いやむしろここが天国かもしれん……!
感動のあまり、隻眼からザバッと滝のように涙を流す俺。
それほどまでに彼女の
個別棟にいる時もたまにエプロンは着けてくれるが、喫茶店のお給仕用となるとやっぱり雰囲気が違う。
庶民的な感じがまたグッド……!
それを着こなすレティシアもベリーグッド……ッ!
「さ、お仕事しましょう? 私はなにをすればいいかしら?」
「ほ、本当にお願いしていいんですかぁ……? 流石に申し訳なくって……」
「いいのよ、シャノアとこの喫茶店にはいつもお世話になっているのだもの」
「そ、そこまで仰って頂けるなら、お言葉に甘えて……お願いします!」
「はい、頑張ります。アルバンも頑張りましょうね」
「うんうん、そうだな。レティシアが可愛くて最高――って、え? 俺も頑張るって、なにを……?」
「決まっているじゃない、あなたも一緒に働くの。あなただってこのお店にはお世話になっているでしょう?」
「いや、それはその……そうかもだけど……」
え、俺も働くの? 俺も労働するの?
うわぁ~、面倒くせぇ~。
労働って響きだけでもう面倒くせぇわ、働きたくねぇわ。
俺ってそもそも労働自体に向いてない気がする。
っていうか絶対向いてない。うん、間違いなくそう。
……でも、レティシアが頑張るってんなら……夫の俺が頑張らないワケにはいかないもんなぁ……。
妻一人だけ働かせてこっちはなにもしないなんて、俺の夫主義に反する!
しゃーない、ちょっくら頑張るとしますか。
可愛い姿の妻と一緒に働くってのも、たまには悪くないだろう。
「わかった、レティシアが頑張るなら俺も頑張るよ」
「ありがとう。今日は楽しい一日になりそうね」
俺もお給仕用のエプロンを手渡され、絶対似合わないと自覚しつつそれを身に着ける。
――この後、俺とレティシアはお給仕手伝いとして労働に精を出した。
レティシアは初めてこの店で働くとは思えないほどテキパキと仕事をこなし、シャノアを驚愕させていた。
うむうむ、流石はデキる我が妻である。
ちなみに俺は彼女ほど器用ではないので、ウエイターとして雑務を担当。
しばらくしたらケイも仕事に戻り、ちょっとてんやわんやになったりもしたが――なんだかんだ、楽しい一日を過ごせたのであった。
喫茶店で働くのってちょっと憧れる……。
憧れない……?(▰╹◡╹▰)
※新刊宣伝!
『最凶夫婦』書籍第6巻&コミックス第3巻が発売中!!!
Amazon様など各サイト様でご購入頂けます!
☟ストアページ一覧☟
書籍版第6巻
【TOブックス様ストアページ】⇒ https://www.tobooks.jp/contents/22262
【Amazon様】⇒ https://x.gd/P0oTV
コミックス第3巻
【TOブックス様ストアページ】⇒ https://www.tobooks.jp/contents/22256
【Amazon様】⇒ https://x.gd/tG19B