【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第47話 禁忌の代償

 

《エステル・アップルバリ視点(Side)

 

「”対あり”、ですわ」

 

「ぐえっ……」

 

 最後の一人がドサリと倒れます。

 

 ふぅ、中々いい殴り合いでしたわ。

 

 一対一(おタイマン)の喧嘩も悪くないけれど、やっぱりたまには大乱闘もいいですわね!

 お祭りみたいで!

 

 うっかりお頭を潰してしまわないよう加減は必要ですけれど、スカッとしますわぁ!

 

「……エステル、俺、金輪際お前とだけは喧嘩したくねぇわ」

 

「……右に同じ」

 

「あらあら、マティアスもカーラもそんなに怯えないでくださいまし! 喧嘩なんて楽しんだもん勝ちですのよ、オーッホッホッホ!」

 

「へぇへぇ、そりゃ立派な心構えなこって。……ところでお前、気付いてた(・・・・・)か?」

 

「? 気付くって、なにをですの?」

 

「……彼らの正体……私も途中から気付いてた……」

 

「進んで俺たちを襲ってくる連中なんて、ある程度想像はしてたが……ちょっとばかし意外だったな」

 

 マティアスはそう言って、私にぶん殴られて気絶した一人のフードを取り払います。

 すると――

 

「! この方――Dクラス(・・・・)の生徒さんではありませんか!」

 

「ああそうだ。EクラスじゃなくてDクラスの連中だよ。こりゃどういうワケなんだろうな?」

 

「……わからない……でも彼らはまるで、誰かに操られてる(・・・・・)みたいだった……。これは、至急”(キング)”に伝えるべき……」

 

「ああ……俺たちは想像以上に、厄介なことに巻き込まれちまったのかもしれねーな」

 

 

 

 ▲ ▲ ▲

 

 

 

 ――俺はレティシア、レオニール、そしてオリヴィアと共にダンジョンへと赴いていた。

 

「お~い、ミケなんとか出てこ~い。面倒だから、さっさとぶっ飛ばしてやるぞ~」

 

「オ、オードラン男爵、ぶっ飛ばすと言われて出てくる人って、普通はいないと思うんだけど……」

 

 ダンジョンの雑魚モンスターを適当に倒しながら進む俺と、そんな俺に突っ込みを入れるレオニール。

 

 でもアレじゃない?

 悪役って案外「どこだ、姿を見せろ!」とか言うとあっさり出てきてくれたりするもんじゃない?

 

 あ、でもこの世界の悪役って俺だったか。

 じゃあ出てこないわな。

 

 もっとも、俺にとっての悪はミケ阿呆であることに間違いはないんだけど。

 

 そんな感じで俺とレオニールが先頭を進み、背後からレティシアとオリヴィアが追従していたのだが――

 

「……なあオードラン男爵、気付いているかい?」

 

「ん~? そこら中にできた、この凹み(クレーター)のことか?」

 

「ああ。ダンジョンの入り口からずっと破壊の痕が続いている。どう見ても、何者かが攻撃魔法を乱用した痕だ」

 

「モンスターを蹴散らすために魔法を使った――って雰囲気じゃなさそうだな」

 

 俺たちが踏み込んだダンジョンの様相は、明らかに異常だった。

 

 地面・壁・天井の至る所に攻撃魔法の着弾痕があり、しかもそれが延々と続いている。

 

 だがどうも、激しい戦闘があった気配はない。

 そもそもここのモンスターは大して強くもない。

 

 ダンジョン自体を壊そうとした――のとも雰囲気が違う。

 

 まるで、術者が暴走して魔法をぶっ放しまくっただけのような……。

 

 抑え切れない破壊衝動を、本能のまま巻き散らかしたかのような……そんな気配さえ感じる。

 

 ともかく気味が悪い。

 こんな所にレティシアを長居させたくはないな。

 

 さっさと終わらせて帰ろう。

 そうしよう。

 

「……」

 

「姉さん、さっきからなにか考え込まれている様子だけど……どうかしたの?」

 

 悩ましそうに腕組みをして歩くオリヴィアに対し、レティシアが声をかけた。

 

 ――オリヴィアはダンジョンに入ってからずっとこんな様子だ。

 なにか考え事しているかようだが……。

 

「ええ、ちょっと気がかりがあって……。でも心配しないで、早くミケラルドを見つけましょう」

 

 そう返して微笑んで見せるオリヴィア。

 

 すると――その時だった。

 

「……ク……クヒヒ……」

 

 ダンジョンの奥から、呻くような声が聞こえてくる。

 

「あ、出た」

 

「! ミケラルド……!」

 

 剣を構えるレオニール。

 いつも通り脱力して剣を肩に担ぐ俺。

 

 そんな俺たちの前に、いよいよミ阿呆ルドが現れた。

 

 明らかに血走った目をしており、そのニヤニヤと笑った顔からは正気が感じられない。

 

 レオニールは剣の切っ先を奴へと向け、

 

「あの時は遅れを取ったが、今度はそうはいかない! ローエンの借りも返させてもらう!」

 

「クヒ……ヒ…………助……け……」

 

「――え?」

 

 次の瞬間――ミケなんとかが、ドサリと倒れる。

 まるで糸が切れたかのように。

 

 今の倒れ方……。

 

 俺はおもむろに横たわるミケなんとかへ歩み寄り、その首元に手を当てる。

 

 ――ああ、やっぱり。

 

「アルバン……?」

 

「レティシア、見るな」

 

「え――?」

 

「コイツ、もう死んでる」

 

「「「――!!!」」」

 

 驚く三人。

 まあ、目の前に現れた人間がいきなりこと切れたら、そりゃ驚くわな。

 

 俺は別に驚かないというか、どうでもいいけど。

 むしろ手間が省けたとすら言えるのかもしれないが……。

 

「どうやらかなり衰弱してたらしいな。なんだってまた、こんなになるまでバカスカ魔法を――って、これは……?」

 

 ふと、俺の目にとある物(・・・・)が映った。

 

「なんだこれ? ネックレス?」

 

 それは、ミケなんとかが首に付けているネックレスだった。

 

 小さな宝石のような物体が付いているが、あまり高級感はない。

 

 どうも貴族が見栄えのために着ける類の物ではなさそうだが……。

 

 っていうか、なんだ?

 この宝石から魔力を感じ――

 

「――っ! 待って、触っては駄目!」

 

 突然、オリヴィアが声を荒げる。

 

 今度は流石に俺もビクッと驚き、

 

「え……あの、このネックレスって……?」

 

「やっぱりね……嫌な予感が当たってしまったわ。それは”呪装具”よ」

 

「”呪装具”?」

 

「簡潔に説明するなら、それ自体が強力な魔力を帯びる特殊な装備品(アイテム)って感じかしら。身につけると着用者に莫大な魔力をもたらしてくれるの。それこそ、魔力量の少ない人間が簡単に高位魔法を使えるようになる程の」

 

「へえ、そんな便利な物が世の中にあるんだな……。でも今の反応から察するに――」

 

「そう、魔法省は”呪装具”を特級危険物に指定。回収及び封印に努めているわ。何故なら……これは、人を壊してしまうから」

 

 忌諱が込められた声で彼女は言う。

 

 オリヴィアがこれほどの不快感を見せるのは初めてだ。

 

「”呪装具”は膨大な魔力と引き換えに、着用者に強烈な負の感情を植え付けてしまう」

 

「負の感情……」

 

「怒り、憎しみ、妬み、恐怖、破壊衝動……。とにかく着用者を攻撃的にさせるの。しかも一度着けたら最後、外そうとする度に精神汚染に襲われて、並大抵の精神力では外すことすらままならなくなってしまうのよ」

 

「それで、衰弱死するまで魔法をぶっ放し続けるようになる――ってか」

 

 ……なるほどな。

 つまり強烈な力を与える代わりに人格を破壊する、バーサーカー製造機ってことか。

 

 まさに呪いの装備。

 そりゃ確かに危険極まりない。

 

 もしこんな物が世間に広まろうものなら、巷は手の付けられない暴走魔法使いで溢れ返ってしまう。

 

 魔法省が躍起になって回収するワケだ。

 

「その効果故に、”呪装具”を新たに作り出す行為を魔法省は”禁忌”と定めているわ。今では闇市場にもほとんど出回っていないはず。それなのに、彼が身に着けていたということは――」

 

 

「――――ええ、お察しの通り。それは()の作品なのですよ」

 

 

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