【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第55話 リュドアン侯爵家

 

《レティシア・バロウ(オードラン)視点(Side)

 

「本当にごめんなさいね、レティシア……こんなことになってしまって……」

 

 オリヴィア姉さんは「ハァ~~~」と長いため息を漏らし、ぐったりとテーブルに突っ伏す。

 

 私は秘密裏に姉さんへ連絡を取り、シャノアの喫茶店で詳しい話を聞くこととなった。

 

 こんなこともあろうかと……いえ、まさかここまでの事態は想定していなかったけれど。

 

 ともかく何かあった時のために、バロウ家を介さず彼女とコンタクトを取れるようにしていたのだ。

 

「オリヴィア姉さんのせいじゃないわ。それにしても、何故いきなりオードラン男爵家と絶縁してリュドアン侯爵家と婚約する、なんて話になったの?」

 

「私にも詳細はわからない。そもそも私の耳に入った時には、もう全てお父様が取り決めた後だったから……」

 

「……相変わらずなのね、お父様は」

 

「あの感じだと、魔法省の仕事とはいえ私があなたに会ったこともバレてると思う。それと〝呪装具〟の件にあなたが関わったことも。本当、耳聡い頑固親父だわ」

 

 チッと舌打ちするオリヴィア姉さん。

 

 お父様と姉さんが不仲なのは前々からだったけれど、どうやら関係が改善されるどころか悪化しているらしい。

 

「……お父様は、あなたが有名になることを善しとしていないのよ。〝レティシア・バロウ〟という名前が広まれば広まるほど、バロウ公爵家の家名に傷が付くと思っているのでしょうね」

 

「私は、別に有名になるつもりなんてないのだけれど」

 

「わかっているわ。少なくとも私は、あなたが大人しい子であることを理解しているつもり」

 

 そう言うと、オリヴィア姉さんはそっと私の手に触れる。

 

「でも……あなたは既に幾つかの事件に巻き込まれ、世間に名を広めてしまった。望む望まざるにかかわらず、貴族の間でレティシア・バロウは話題の人なのよ」

 

「……」

 

「あなたが活躍すればするほど、あなたを一族の汚点と思っているお父様にとっては面白くない話になる。だから身持ちを落ち着かせるために、リュドアン侯爵家に話を持ち掛けたのでしょうね」

 

 ――リュドアン侯爵家。

 

 一応、名前は知っている。

 王国騎士団に深い縁のある家柄で、代々優れた騎士を輩出しているとか。

 

 貴族の中でも独自の地位と派閥を有する武闘派として知られ、政には関与せず剣を持つことを善しとする。

 とても高潔な家風のため、民衆の支持も厚い。

 

 反面、政治の世界に関わろうとしないが故に爵位を上げられず、侯爵止まりになっているとも。

 

 そんなリュドアン家が、どうして私とヨシュアの婚約に同意したのか……?

 

 バロウ家はどちらかといえば、政治の世界に身を置く家柄なのに……。

 

「高潔と謳われるリュドアン侯爵家も、本音では階級を上げられないことを不本意に感じている、なんて話もあったから……。せっかくマウロが流した悪名が消えかかっているなら、政略に利用してやろう――両家の思惑はそんなところかしら」

 

「だからって、私に相談もなしで婚約を進めるなんて……!」

 

「ええ、酷い横暴だと思う。でも……正直お父様らしくない。あの人はとにかく、急いであなたとオードラン男爵を別れさせようとしているんじゃないかしら」

 

「アルバンと……?」

 

「もしかしたら――彼を諸悪の根源(・・・・・)だと思っているのかもしれないわね」

 

 

 

 ▲ ▲ ▲

 

 

 

『拝啓 アルバン・オードラン様

 アルバン様とレティシア様が王立学園に通われ始めて、早二ヵ月弱。

 如何お過ごしでごさいましょうか。

 この度は早急にお報せせねばならぬ事が起きました故、お手紙をしたためさせて頂きました。

 先日、こちらのお屋敷にバロウ公爵家より書状が届きました。

 書かれてあった内容は〝アルバン・オードラン男爵とレティシア・バロウの婚約を解消する〟という旨。

 私の方でも事態の究明に急ぎますが、学園ではなくこちらの屋敷に書状を送ってきたのは明らかな時間稼ぎかと。

 このお手紙が間に合うかはわかりませんが、どうか早まることなきように。

 セーバス・クリスチャン』

 

「……ふざけやがって」

 

 俺はセーバスから届いた手紙を、グシャッと握り潰す。

 

 別に今に始まったことではないが、バロウ公爵家は明らかにウチを――というか俺を舐め腐ってる。

 

 こんなの事実上の事後報告だ。

 

 元々〝最低最悪の男爵〟で知られていたワケだから無理もないし、だからこそレティシアと出会えたって事実もある。

 

 だがこれは流石にやり過ぎだ。

 俺を舐めるだけなら百歩譲って我慢もできるが、今回のはレティシアの意思を完璧に無視している。

 

 マウロの時とは事情が違うのだ。

 彼女の話くらい聞くのが、本来は筋ってものだろう。

 

 レティシアの親父さんが全て決めたのだとしたら、はっきり言って失望した。

 

「クラオン閣下、今回の事態についてなにかご存知ありませんか?」

 

 ――俺は今、ユーグ・ド・クラオン閣下の執務室へとやって来ている。

 

 リュドアン侯爵家は騎士団と関わりの深い家柄。

 だったらクラオン閣下に話を聞くのが手っ取り早いと思って。

 

「……我もリュドアン家とバロウ家が縁を結んだと知ったのは、つい昨日の話だ。よほど隠密に縁談を進めていたと見える」

 

「ヨシュア・リュドアンって、クラオン閣下の部下に当たりますよね? どうにかなりませんか?」

 

「正直に言って難しいな……。我はお主の支援者ではあるが、それ以上に王国騎士団側の人間だ。もし我が無理に介入すれば、騎士団の内部分裂を引き起こしかねん」

 

 なんとも悩ましそうに、クラオン閣下は机上で指を組む。

 

「リュドアン侯爵家は騎士団において名誉ある家名だ。それにヨシュアは将来を有望視されている高潔な武人。残念だが、キミとの評判は天と地ほどの差がある」

 

「ハァ……やっぱり〝最低最悪の男爵〟の汚名は、どこまでも付いて回るってワケですね」

 

「それが世間というものだからな。だが……妙ではあるのだ」

 

「? と言うと?」

 

「両家に利害の一致があったにせよ、あの高潔なヨシュアがこれほど横暴な政略婚に応じるとは……。バロウ公爵にしても、こんなやり方はらしくないと感じる」

 

「それってつまり……なにか〝裏〟があると?」

 

「さあな。そもそも貴族の婚姻において、裏取引きがない方が稀ではあろうて」

 

 まあ、それもそうか。

 俺とレティシアの結婚だって、ちゃんと〝裏〟があったことだしな。

 

 ある意味では、俺たちの結婚自体が〝裏〟そのものだったとすら言えるし。

 

 クラオン閣下はしばし思慮を重ねるように無言になり、

 

「……そうだ、あのヨシュアが何故……もしかすると……」

 

「クラオン閣下?」

 

「……オードラン男爵よ、よければ一度……彼と腹を割って話をしてみる気はないかね?」

 

 

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