【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第81話 全部キミのため

 

 ――エイプリルがマティアスにホの字だと判明した、次の日。

 

「それでレティシア、どうやってマティアスの奴に探りを入れるつもりなんだ?」

 

 教室へと向かう途中、俺は隣を歩く妻へと尋ねてみる。

 

「そうね……とりあえず遠回しに恋人や許婚の有無を聞くのが先決かしら」

 

「遠回しに、ねぇ。そのまま直球で言えばよくない? エイプリルって子と付き合っちゃえよって」

 

「ダメよ、アルバン。それでもしマティアスが嫌がったりすれば、エイプリルが悲しむわ」

 

「そこはホラ、〝(キング)〟の命令で拒否権なしってことで」

 

「…………アルバン、もし本当にそんなことをしたら、私あなたと一ヵ月は口をきいてあげませんからね」

 

「え!? あッ、う……!? ご、ごめんなさい……絶対言いません……」

 

「よろしい」

 

 レティシアはピシャリと言うと、

 

「……でも、ちょっと意外だわ」

 

「ん? なにがだ」

 

「あなたがエイプリルとマティアスの恋路に関心があることよ。てっきり他人の恋なんて興味ないものと思っていたから」

 

「あぁ……興味なんてサラサラないね」

 

 そう答えると、レティシアは「え?」と少し驚いた顔をする。

 

 俺は口元に微笑を浮べながら、

 

「俺がこの話に関わるのは、全部キミのためだよレティシア」

 

 そう……ぶっちゃけた話、俺はエイプリルとマティアスの恋愛模様になんざ興味ない。

 

 だって他人の恋愛に首を突っ込むなんて、どう考えても面倒くさいじゃん?

 

 どうぞ俺の視界に入らないところで勝手にやってくれって感じ。

 

 でも――レティシアは違う。

 彼女は本当に、心からエイプリルの力になってあげようとしている。

 

 目を見ればわかるよ。

 レティシアは本気だって。

 

 妻が本気を出してるってのに、夫の俺がどうして怠けていられようか?

 

 (レティシア)がエイプリルの恋を応援するなら、(アルバン)の俺もエイプリルを応援するのが道理ってもんだろう。

 

 ああそうとも。

 突き詰めて言えば、俺はただレティシアの力になりたいだけなんだ。

 

「レティシアがエイプリルを応援するなら、俺もレティシアを応援する。レティシアがやるなら俺もやるし、レティシアが本気になるなら俺も本気になる。妻と夫は一心同体、だろ?」

 

「アルバン……」

 

 レティシアは青く透き通った瞳を大きく見開き、俺を見てくる。

 

 ん、少しは驚いてくれたかな。

 なら僥倖。

 

 妻の驚喜する表情ほど、夫にとっちゃ嬉しい光景もないからさ。

 

「だから、俺にできることなら遠慮なく言ってくれ。力になれることは少ないかもだが、キミのためならなんでもするよ」

 

「――相変わらず、そういうことを臆面もなく言うんだから」

 

 クスッと笑うレティシア。

 

 俺はワザと肩をすくめ、おどけてみせる。

 

「何度だって言うさ。キミこそ、そろそろ慣れてくれてもいいんじゃないか?」

 

「あら、夫の甘言に簡単に慣れてしまわないことも、夫婦生活を円満に送るコツではなくって?」

 

「ハハ、言えてる」

 

「ウフフ」

 

 笑い合う俺たち夫婦。

 ホント、彼女のこういう性格(ところ)は愛おしくて堪らないよ。

 

 そんな仲睦まじい会話をしていると、俺たちはあっという間にFクラスの教室に到着。

 

 いつものように、ガラリとドアを開ける。

 

 すると――

 

「ヒ、ヒソヒソ……」

 

「ヒソヒソ……コショコショ……?」

 

「ヒソコショ……!? ガッデム……!」

 

「コショ……ヒソ……乙女がどうのこうの……」

 

「カァー!」

 

 シャノア、ラキ、エステル、カーラ&ダークネスアサシン丸は教室の隅で背中を丸め、めっちゃ小声で井戸端会議を開いていた。

 

 ……なにを話しているのかは、だいたい察しがつく。

 いや、こんなん誰でも完璧に察しがつくわ。

 

 だって何度も何度も、チラッチラッとマティアスの方へと視線を送ってるし。

 

 それも時折「キャー!」という浮ついた歓声を上げてるんだから、間違いないだろう。

 

 おまけに――女子たちと男子たちの距離が、えらく遠い。

 

 男子たちは男子たちでマティアスの傍でたむろし、明らかに不審な者を見る目で女子たちのことを見ている。

 

 そんな、なんとも言えない空気感が流れているFクラスを見て、

 

「ハァ……あの子たちったら……」

 

 レティシアはやれやれと言った様子で、女子たちの方へと向かっていく。

 

 俺も俺で、男子共の方へと近付いていった。

 

「よぉ……おはよっす、オードラン男爵」

 

 マティアスが机にぐったりと頬を突き、やる気のない声で挨拶をしてくる。

 

「ああ、おはよう。なんか朝から疲れた顔してるなぁマティアス」

 

「なあ、俺ってなんかしたか? 朝っぱらから女子共がさぁ、まるでスキャンダル起こした有名人を見るみてーな目で俺のこと見てくんだわ」

 

 額に「なんで?」の文字を浮かばせながら、縋るように俺に聞いてくるマティアス。

 

 俺は「あぁ~……」となんとも間延びした声で返し、

 

「したと言えば、したかも? とにかくアレだ、お前が色男なのが悪いんだ。俺からはそれしか言えん」

 

「はぁ? なんだそりゃ?」

 

 マティアスは眉間にシワを寄せ、露骨に訝しむ。

 

 だってしょうがないだろうが……。

 俺が余計なこと言うと、口を滑らせかねないんだからさ……。

 

 下手に口を滑らすと、絶対レティシアが怒られちゃうし……。

 

 周囲のローエンやイヴァンたちも口々に「お前なにをしたんだ?」と不思議そうに首を傾げるが、マティアスもマティアスで「知るか」と遠い目をするしかない状態。

 

 悪いな……レティシアが動くまで、もうしばらく好奇の目に晒されてくれ……。

 

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