今回は後半ちょいシリアスさんが来ます。
「ふぅ、今日のところはコレで終わりかしら。慣れてきたとしても、かなり疲れますわね...このような時にはドゥリィッ!?」
仕事を終え、部屋から出てきたパゼオンカを何かが連れ去っていった。
「(い、いきなりなんですの!?まさな誘か...いではなさそうですわ。というかコレって...)」
「ぷはっ...ギョクソウさん!」
「え?アヴドーチャ...なんで私の尻尾に?」
「あなたの尻尾に拉致されたのですわ!」
「何言ってんの?」
「わらわなにも間違ったこと言ってませんわ!?」
「あー...よし、ちょうど良かったわ。」
「え?なんのこt「よいしょっと」スポンッ
「...?...!?」
「え、どした。」
「意外と腰の可動域広いのですわね...じゃなくて!なんでわらわ持ち上げられてますの!?それも軽々と!」
「えへへ〜、これから(私が)楽しいことするからよ。」
「持ち上げれた答えになっておりませんわ!ギョクソウさんわらわよりも小さいのに!」
「...いい?アヴドーチャ。身長に関しては、あなたがデカすぎるだけ。わかった?」
「でも、鬼の方...ホシグマさんは180越えじゃないかしら。」
「比べる相手が悪いわ。それにホシグマちゃん鬼だからそりゃデカくなるわよ。でもあなたはループス!ループスでそのデカさが異常って言ってんの!わかった!?」
「え、えぇ、分かりましたわ...!?」
「わかったならよし、てことで...」
持ち上げているパゼオンカをそのまま胸のところに持ってきて抱きしめる。パゼオンカは理解が追いついておらず、口がパクパクとしている。
「えっ!?えっ!?えっ!?」
「黙って抱かれなさい!」
「どういうこtわぷっ!」
質問したパゼオンカだったが、答えの代わりにより深い抱擁が返ってきただけだった。
「(普段はあんな...ですが、なかなかどうして...あったかいですわ...)」
「...アヴドーチャ。」
「...?はい。」
「大変だったわね。」
「え?」
「今までよく頑張ったわ。マジであのクソウルサス滅ぼしてやろうかしら...」
「(最後なんと...?)ありがとう...ございますわ...?」
「困ったらいつでも私に相談しなさい。どんなバカな事でもいい。あなたはもう十分辛い思いをしたわ。」
「感謝...いたしますわ。」
暖かな体温と言葉でふやけたパゼオンカは朦朧としたまま言葉を吐き出した。
「おばあさま...?」
「おばっ...!?いい雰囲気だったでしょうが!」
「ふふっ...」
「なにわろとんねん。」
「いえ、あなたと友人で良かったですわ。」
「...わぁ...」
「あら?ギョクソウさん?」
「...い、いい感じにまとめてんじゃないわよ!そんなに元気そうなら私もう次行くから!」
「あ、あと、もうウルサスとは無縁の生活させてやるから覚悟しておきなさい!」
ほぼ決意表明のような注意をしたところでギョクソウは走っていった。
「(照れ隠し...でしょうか。ふふっ...あら?そういえば...)」
「(...わらわ、ウルサス出身と教えてたかしら...?)」
「すぅーっ...すごい。」
執務室には、レッドと、レッドの尻尾に顔を埋めている
「ドクター?ちょっと?」
「ギャーっ!ギョクソウ!?ノック!ノックしてよ!」
「したんですけど...」
「えっ...(そういえばギョクソウってレッドとよく遊んでたよな...)」
「(今の私は...息が荒い・少女の尻尾に顔を突っ込んでいた・見た目が怪しい...あっ、今度は私がポリスのお世話になっちゃう...)」
「レッドちゃん、少しの間席を離れてくれないかしら。」
「...ん、わかった。」
「(レッド!?頼みの綱が消えた...)」
「ドクター。」
「はいぃっ!」
「私の尻尾は...いいのかしら?」
「......!?」
「ま、待って。一体何が起きてる訳!?なんでさっきの状況に触れずに「うるせぇ!甘やかさせろ!抱かせろ!」
「イヤァァ!本性表わしたァァ!あと語弊がすごいからやめろ!」
なにか嫌な予感がしたドクターは逃げ出すが...
「捕まえた♡」
「はっ!?いつの間に!」
「運動不足のヘナチョコドクターが私から逃げられるとでも思っていたのかァ...?」
ギョクソウは艶かしい表情をする。
「女の子にされるぅー!誰か助けてー!」
「性別不詳が何言ってんのよ人聞き悪いわね!ちょっと抱くだけよ!」
「おいお前それスズランが聞いたらどう思うんだろうなぁ!?」
「リサも堕ちた快楽ってモノを...教えてあげるわ...」
「スズランが!?(...じゃあ至って健全なことされるのか。よかった...!)」
「ドクター...?」
アーミヤが執務室のドアをノックする。
「ドクター?」
返事がなかったのでさらに強くノックする。
「...?ドクター、入りますよ。」
何かあったのかと思い扉を開けた。
「ドクター、どうかしましたか?」
「あら、こんにちわアーミヤちゃん。ドクターならそこで寝かせ...寝てるわよ。」
「ギョクソウさん、こんにちわ。ドクターには休むように言ったので、休んでいるのでしょうか。」
「...あー、私が寝かせたわ。なんか色々限界そうだったもの。」
「そう...だったんですか。ありがとうございます。」
「(時折、よく分からないことを言うドクターですが、それでも私たちを気にかけて私たちのために色々やってくれて...大変なはずなのに...私は...)」
「...アーミヤちゃん。」
「どうしましたか?」
「お膝乗りなさい。」
「...はい?」
「お膝乗りなさい。」
「聞こえてたから聞き直したんですよ!?」
「のりなさい。」
「...は、はい...」
執務室のソファに座るギョクソウの膝の上にさらにちょこんとアーミヤが座る。
「(ゔっかわ...小動物が過ぎる...)」
「...えっと、これは一体どいうほひょ...」
「(ほっぺモチモチ...)」
「ふぁ、ふぁの、ひょふほうふぁん?」
「(...源石結晶。)」
「ひゃっ!?ど、どうしたんですか。」
「(ここまで鉱石病が進行して...この歳で...)」
「あの?」
「アーミヤちゃん。今さ、ドクターは寝てるし...私とアーミヤちゃんしか居ないんだよ?」
「...あの...」
「察しろ!」
「えぇーっ!?」
「結局これが早いわね。」
諦めたようにギョクソウはアーミヤを向き合わせて抱き寄せ、胸にうずまらせる。案の定アーミヤは何をされているのか理解が追いついていない。
「ほら、いい子。いい子。」
「や、やめてください...私にはまだ...お仕事が...」
「その歳でロドスを纏めて、ドクターのサポートもして、レユニオンや非感染者たちからの憎悪を一身に受けて...辛かったよね...大変だったよね...!」
「(どうして、最近来たばかりのギョクソウさんがそんなに知って...)」
ぽた...ぽた、ぽた...
ギョクソウを見上げたアーミヤの頬に水滴が落ち、弾ける。
「ギョクソウさん...?」
「えっちょ、今こっち見ないで...!」
「泣いているん...ですか...?」
「違うわ...思い出し泣きよ...」
「ふふっ、なんですかそれ...?」
「歳よ歳!全く...涙脆くなるから歳はとりたくないわね...」
「...そういえば私、自慢だけどアーツですぐに服を乾かせるのよね。」
「...?」
「胸元を涙でぐっしょり濡らされても大丈夫だと思ってるわ。」
「急に何を...?」
「でも、アーツが鈍ったら嫌だし、練習したいしだから、いい感じに濡れる機会とかないかしら。」
「(はぁ、我ながらヘッタクソな誘い文句ね...)」
「...!」
アーミヤはなにかに気づき、遠慮がちにギョケソウの胸元に自ら顔を伏せる。
「そういえば、執務室って防音しっかりしてるのね。ドクターはぐっすりだし。ここで何言ってても誰にも分からないわね。」
この場にいるもう一人へ向けた独り言。
「...」
「だからさ、ほら。」
「...うっ...ひぐっ...」
ギョクソウは無言で、小刻みに肩が跳ねるアーミヤの背中をさする。
少し経った辺りで、ギョクソウは小さな子供をあやすような、慰めるような、それでいて褒めるように語りかける。
「お嬢さんお嬢さん。何がそんなに悲しいのかしら。」
「違いますっ...!怖いんですっ...!ろ...ロドスの皆を...!ドクターを...!失うことが...!」
「そうね。誰でも失うことは怖いわ。それに、アーミヤちゃんはリーダーとしてよく働いてくれてるもの。関わりが深い分、いなくなった時の悲しみは深いわ。」
「ですがっ...!ひぐっ...それ以上に...!そ、それっいじょ...うに!!」
「落ち着いて、ゆーっくりゆっくり吐き出しなさい。」
言葉が詰まるようになってきたらギョクソウは背中をぽんぽん、と優しく叩いたり、抱きしめた。
「それ以上に...!死んでいった方達の顔が!ひぐっ...!声が!感情がっ!頭からっ...!離れないんです!」
「...よしよし...」
「でもっ!絶対に!私が忘れたらいけないんです...!だって、私が忘れたら、もう...誰もっ...!その人のことを知らないんですっ!」
「...」
「生きていたってっ...ことをっ...!私だけでもっ、おっ...!覚えてないとっ!!」
「アーミヤちゃんは優しいわね。こんな世界には似合わないぐらい。」
「違います...臆病なだけなんです...!」
「臆病な子は自分の足でここまで歩いてきていないわ。」
「...う...ぐぅっ...!」
「臆病な子は自分の感情を押し殺してまで戦い抜かないわ。」
「...うっ...うぅ...!」
「何回でも言ってあげる。アーミヤちゃんは絶対に臆病なんかじゃないわ。」
「...ひぐっ...!ぎっ...!」
「強い子ね。」
「うぅ...わぁぁんっ!」
「うん、そう。全部私に吐き出して、スッキリしちゃいなさい。」
「怖いですっ!一人で歩くのが!誰かと歩くことが!みんなの先を歩くのが!誰かが先を歩くのが!」
「うん。」
「怖いです!怖いんです!とっても...!!」
「うん。」
「他の人達に責め立てられるのも!」
「うん。」
「誰かの命が奪われるのも!」
「うん。」
「誰かが命を奪うのも!」
「うん。」
「もう...なにもかも...ぜんぶ...!」
「こわいよ...!」
「えぇ...そうね。私も怖いわ...」
静かな執務室に少女の悲痛な叫びが、心の痛みが、未来への不安が木霊した。
執務室に夕日が差し込む。
「(...アーミヤには苦労を...かけていたな...)」
既に目を覚ましていたドクターはのそりと起き上がる。
「...アーミヤ。」
アーミヤは酷く穏やかな顔で反対側のソファで眠っており、その目の下には泣き腫らしたような赤い線が付いていた。
「(私ではアーミヤの溜め込んでいたものに気づけなかっただろう...本当にありがとう。)」
「あ、そうだ。仕事...!」
ドクターは自分の仕事が終わっていないにもかかわらず、ギョクソウに捕まり、好き放題されていた自分を恨んだ。...恨みそうになった。
「...あ、あれ?」
「ほとんど終わって...しかもキレイにまとめてある...あ、置き手紙がある。なになに...」
『とりあえずデスクの上の出来そうなものはアーミヤちゃんのも含めてやっておいたわ。後は私が見たらマズそうなものと、ドクターが確認して印鑑押すぐらいのものしかないから頑張りなさい。ギョクソウ P.Sこれからは定期的にアーミヤちゃん借りるわよ。』
ドクターはギョクソウに本日二度目の心からの感謝を送った。
酷く浮き足立った様子でギョクソウが歩いている。歩いていた。
「...レッドちゃん?」
「なに。」
「そろそろ...それ、消したいな〜って。」
ギョクソウは気まずそうにレッドの尻尾を堪能しているレッドに声をかけた。
「...もう少し。レッドの尻尾も、なかなか...」
「あぁ...そう。」
「うん。コレ、本当に炎?」
「...我ながら便利なものね...」
「「...」」
お互い無言の状況に割って入る者がいた。
「よぉ。」
「ニェンちゃん...どうしたのかしら。」
「は、大したことじゃねぇよ。今日は楽しかったか?」
「えぇ!そりゃもう!」
「つーかよ、よくそんなことしといて誰にもバレなかったよな。」
「...そんなことって?」
「あぁ?スズランとレッドをオメーの力で作って、今日本物がやるハズの仕事をやらしてたろ。」
「だって...『何も考えずに甘えなさい』って言っちゃったし...」
「つかなんでオメーまで増えてんだよ...」
「そっちの方が効率いいし...」
「ははっ!メンタルケアで効率とかいう言葉初めて聞いたな!いいねぇ!」
「ダメかしら?」
「いーや?ただ発作みてーにいきなりメンタルケアを始めんのはダメだろ。」
「あはは...ちなみにニェンちゃんのこと、まだ諦めてないからね?」
「...あー...」
「随分と情熱的なことしてくれたわね。」
「(刺したのバレてんのかよ...)気味わりーなお前。」
「ひどいっ!?」
ドクター...何されるのかと思ったら普通に寝かしつけられた。途中で目が覚めたけど、黙って聞いて、終わったら二度寝かました。何二度寝しとんねん口ん中でカップラーメン作るぞ。
アーミヤ...しばらくの間ギョクソウと目を合わせれなかった。話は変わるが『ミナモト』のライブ映像では、手の甲の源石が映る度に各ドクターたちを軽く鬱にさせた。明るい曲だから余計にね...