ここは『ロドスアイランド』の執務室。
今日も今日とてドクターは仕事に励んでいた。
「オペレーターたちの給与...宿舎の設備費...発電施設の故障...うん?なんで?...あっバグパイプ...誰だよバグパイプに機械触らせたの。」
「...スルトのアイス代...多くね?...映画撮影のもろ込み費用...あの辛党ニート...!...オペレーターたちの治療費...」
「宿舎の修理費...よく分からない実験費...アか?ワルファリンか?それともソーンズ?...オペレーターたちの福祉費...特化施設の修理費...ファッ!?」
「使ってたの誰だよこれ...!あっスカジ。あっふーん...なんでスペクターも一緒なの!?もうやだ...」
今月の決算表を眺めているドクターだったがそばに置いておいたファイルから一枚の紙が落ちていくことに気づいた。
「あれ?上手く止めれてなかったのかな...ってこれ...」
ドクターが拾い上げたのは一枚の履歴書であった。
「思い出すんじゃなかった...」
こんこんこんっ
ドクターが一人頭を抱えていたその時、小さく執務室のドアをノックする音が聞こえた。
「ドクターさん?入っても大丈夫ですか?」
「あっあぁ、どうぞ。」
許可を出すと九つの尻尾をもったヴァルポの少女が入室してくる。
「失礼、しますっ。さっきお願いされた資料を持ってきました。どこに置いておけば...」
「あー、そうだね。そこのデスクの上にお願い。」
「はいっ!」
「うん。ありがとうね。
「いえ!これぐらい、簡単ですよ。えへへ...」
「(さすが我らが光。見てるだけで疲れが吹っ飛ぶ。源石よりも上級理性回復剤よりも理性が回復していく。)」
「...ドクターさん?」
「(もうこれスズランが歌ったのを録音して聞いた方がいいのでは?いっちにっさんはいっ!って始まって全体的に明るくそれでいてスズランが健気に頑張っている様子も分かるようなそんな曲、そうだ。タイトルは『えがおの花束』に...)」
「ドクターさんっ。」
「!あ、ごめん。少し考え事してた。」
「そうでしたか...大変なのは分かりますが、あまり無理をしたらダメですよ?アーミヤお姉さんに、めっ!ってされちゃいますよ?」
「(あ〜もう無理癒されて昇天s)ア゚ッ」
「ど、ドクターさん!?どうしたんですか!?やっぱり無理をしてたんですか!?」
突然奇声をあげて倒れたドクターをスズランは心配し、辺りを右往左往する。
「どうしようどうしよう!えーと...?」
慌てていたスズランだったが、あるものが目に移り、落ち着きを取り戻した。
「これ...りれきしょ...って言うのでしたっけ。なんでドクターさんの机の上に...」
「(え!?見ちゃった!?)す、スズラン!ちょっとまっ...」
「ギョクお姉ちゃん...?」
「...え?」
「この人、ギョクお姉ちゃんじゃないですか!?」
珍しくスズランは興奮したようにドクターへ詰め寄る。
「し...知り合い?同じ名前ってだけじゃ...」
「いいえ!この綺麗な銀色の髪の毛に、少し見えているおっきなたくさんの尻尾、間違いありません!ギョクお姉ちゃんがロドスに来るんですか!?」
目を輝かせて、より一層詰め寄る。
「(えっどういうこと!?その不審者とスズランが知り合い!?いや待ってそれよりも...)」
「ギョク...
あまりの衝撃にドクターですら開いた口が塞がらない。(見えないが。)
「は、はい。私のお姉ちゃんで昔、すーっごい仲が良かったんです。でも、ロドスに来る少し前にいきなり居なくなっちゃって...とても心配していたんです。」
「比喩...とかじゃなく、血の繋がりでのお姉ちゃん...?」
「はい!大好きな自慢のお姉ちゃんです!」
「...」
「...ドクター、さん...?」
「スズラン。」
「ひゃ、ひゃい!?」
「ちょっとケルシーとアーミヤを呼んで、会議してくる。良い子で待っていてくれるかい?」
「えっ?あ、わかり...ました?」
「それで...私たちをわざわざ招集した理由は?ドクター。」
いつも険しい表情をより一層険しくしてドクターへ質問を投げかけるのはケルシーだ。
「まず...アーミヤ。」
「な、なんでしょうか。」
「少し前の求人で来た、『ギョクソウ』という人物を覚えているか?」
「...はい。あのヴァルポの少女を探していた方ですよね。忘れるはずがないですよあんなの...」
「ドクター。話が見えないのだが、まず人に「会議するぞ」とだけ言って集めること自体、常識がなっていないと思うのだが?それも半強制的にだ。珍しく真剣な声だったから応えてやって今こうして会議室に来ている訳だが、君はそんな私を差し置いて訳の分からない説明から入ろうとしている。そこのところ...」
「わかった!わかった!わかってるって!それで!そのギョクソウが...」
「...」
「...ハァ、早く言ったらどうだ。」
「スズランの...!姉だったんだよォォォ!!」
「え、えぇぇぇ!?」
「...」
「そ、それってスズランちゃん本人が言ってたんですか!?」
「ウン...しかもスズランがロドスに来る少し前に行方不明になったんだって...」
「...もしかして私たち...再会を邪魔してた、ということですか...!?」
「あとでスズランと彼女に謝ろうか。」
「はい...!」
「そろそろ良いだろうか。」
「...ごめん。」
「まずそのギョクソウについての資料は?」
「あっはい。どうぞ。」
「...ふむ...」
「(ひえー!なんか緊張するんだけどぉ!)」
「(スズランちゃんごめんなさいスズランちゃんごめんなさいスズランちゃんごめんなさい...)」
「わかった。このような書類に私情を持ち込むのはあまり褒められたものでは無いが、経歴や人間性も特に異常な点は見られない。だからといって手放しに来てくださいと言えるような人物かは分からないが、呼び出して面談をする程度ならば問題なく行えるだろう。以上が私の意見だ。あとの判断は君たちに任せる。」
「私はこれで失礼する。まだ途中のものがいくつもあるからな。」
「ごめんって。あと、ありがとね。」
「...ドクター」
「わかってるよ。」
「「ギョクソウさん...呼ぼう(呼びましょう)!」」
二人は応接室でギョクソウが来るのを待っていた。
「つ、ついにこの日ががが...」
「落ち着いて、アーミヤ。」
「ドクター...」
「こういう時は三回人って字を書いて...あれ?細くなったフィリオプシス描いて飲み込むんだっけ...」
「ドクターも落ち着いてください!?」
コンコンコンッ
「...ッ!」
「どうぞ。お入りください。」
「失礼するわ。」
桜の花が描かれた浴衣を着た九つの大きな尻尾を持つヴァルポの女性が入室してきた。
「本日はお越しいただき「リサは...?」
「はい?」
「リサはいるのっ!?」
「...」
「...」
「え、も、もしかして、ここには居ない...!?嘘でしょぉぉっ!」
「「(ちょっと呼んだの後悔してきたァー!)」」
「嘘よね!?嘘だと言って!?」
「えーと...あなたの言うリサと私たちの思っているリサは違うかもしれませんが...ドクター」
「うん。スズラン、おいで。」
「し、失礼します...」
ドクターが外に向けて声をかけるとスズランが入室してきた。
「...リサ...?」
「...やっぱり、やっぱりギョクお姉ちゃんだ!今までどこにいたんですか!心配してたんですよ!」
スズランが駆け寄り、ギョクソウが受け止め、抱きしめる。
「ごめんねぇ...ごめんねぇ...」
そして、ギョクソウがゆっくり、ゆっくりスズランの頭を撫でる。
「...そろそろ、良いかな?」
「あっごめんなさい!ドクターさん。」
「あら、もう終わり?寂しいわ。」
「今回、面談に来ていただいたのは、本当に彼女の知り合いなのかを確かめるためでした。」
「つまり...どういうこと?」
「君はほぼ受かってるようなものってことだよ。ウチは正直いって優秀ならOKだからね!まぁ、希望のところに就けるかは保証しかねるけど。」
「確か私は補助オペレーターを希望したはずだけど...リサは何をしているの?」
「私は補助オペレーターをしています!」
「...決めた。私、補助オペレーターを補助する補助オペレーターになるわ。」
「うん?」
「えっとつまりは...補助オペレーター、でいいんですよね?」
「ええ、お願いするわ。」
「オペレーターになるには、戦闘テストを受けていただきたいのですが...」
「それでオペレーターの合否が決まっちゃうの?」
「い、いえ!そういう訳ではありません。ただ、戦闘経験がおありのようですし、現時点でどれほどなのかを知っておきたいのです。」
「あーなるほど。」
「補助オペレーターならば、やはり敵の足止めや、味方の鼓舞などでしょうか...」
「それ以外には無いのかしら。」
「それでしたら...自分の作ったものやアーツなどを配置し敵を攻撃したり味方をサポートする方もいらっしゃいます。」
「へぇー、リサ。」
「なんですか?」
「最後のやつって、どんな感じなのか見たことある?」
「えっと...マゼランお姉さんのドローンを見たことがあります。戦ってる時に見たことは無いけど、ドローンが敵を足止めしたり攻撃したりするみたいです!」
「そうなんだ〜。マゼランさんのことはわかんないけど...うん、私それになるわ。」
「...えっと、何を設置するのでしょうか?」
「...これね。」
ボウッ
ギョクソウが言った直後、青白い火の玉が複数現れる。
「これで...まぁ、色々するわ。」
「それでしたら、データでの模擬戦闘で良い...ですかね。ドクター」
「そうだね。そこまで難しくする必要は「少しいいかしら。」
「私、対人戦をご所望するわ!」
「「???」」
「わー!かっこいい!」
「スズラン?」
「ギョクお姉ちゃんは優しいだけじゃなくて、とっても強いんですよ!」
「スズランちゃん?」
「...そ、それじゃあ、今からでも良いかな?」
「ええ、もちろん。」
「ドクター、彼女が例の...?」
ドクターにこっそりと確認をとってきたのはドーベルマンだ。彼女には模擬戦の審判をしてもらう。そして、模擬戦の相手だが...
「えっと...メランサ...です。よろしくおねがいします。」
「よろしくお願いするわ。」
行動予備隊A4の隊長メランサ。
「がんばれー!メランサちゃん!」
「気を抜かないようにしてください!」
「リラックスリラックス!」
...と野次馬のその他面々。
「アンセルは?」
「忙しくて来れないんだって!残念だよねー」
「...彼女、只者じゃないような雰囲気がする。」
「えっそういうの分かるの?さすが射撃担当だね!」
「さすしゃげ!」
「「さっすーしゃげ!さっすーしゃげ!」」
「そこ!うるさいぞ!」
「「はい!ごめんなさい!」」
「ギョクお姉ちゃん頑張ってー!」
ドーベルマンに怒られたスチュワードとガーディだったが、反対側にいるスズランに三人は気づいた。
「えっ!す、スズランちゃん!?」
「どうして彼女が?」
「もしかして、あの人ってスズランちゃんに関係ある人なんじゃ...」
「(ギョクお姉ちゃん。こんな時でも落ち着いていて、とてもかっこいいです!)」
スズランは至って純粋にギョクソウを応援している。一方でギョクソウはというと...
「(え待ってウチの妹可愛すぎ?いやまぁしっかりとした姉妹じゃないんだけど。まずまず、あの見た目の愛くるしさよ。神が創りたもうた奇跡か?こう...眼に仕込んで撮影ができる小型のカメラとかない?あったらあったでリサを撮り尽くして一瞬でフィルム無くなる自信あるけど。)」
「(ア゙ーッ!可愛い!可愛すぎる!こういう時は素数を数えて落ち着くんだ...1,2,3,6,9,18...いやちげぇわコレ18の約数じゃねぇか!)」
全く落ち着いていなかった。
なんなら真面目な顔して頭悪いこと考えてた。
あっオリ主の名前ですが、まぁシンプルに玉と藻の音読みで玉藻(ギョクソウ)です。
今この瞬間、モチーフがモロバレしました。