どきなさい!私は「お姉ちゃん」よッ!!   作:とろねぎ

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幸多からんことを

「ほら、話せることは全部話したわよ。リサのこと頼んだわ。」

 

「待て待て待て!」

 

話し終えた勢いのまま荷物をまとめて出ていこうとするギョクソウを慌ててドクターが静止する。

 

「リサに気付かれる前に行かせて。あの子は何も悪くないの。」

 

「あなたが突然いなくなる方が、スズランちゃんは悲しみますって!」

 

「離しなさい!あーもう!」

 

三人でもみ合っていると扉が開かれる。

 

「...これはどういった状況だ。」

 

そこに立っていたのはケルシーだった。ただ、そこの惨状を見ていつも以上に眉間に皺を寄せていた。

 

「ケルシー!ちょうどよk...」

 

「ドクター、君はここロドスのトップだという自覚を持った方がいい。君の仕事は決してこのような狭い部屋で三人暴れ回ることでは無い。まだロドスで治療を受けている患者たちの方が遥かに聞き分けがいいぞ。君はすこぶる健康だが彼らは重篤な症状と戦っているにも関わらず節度を守っている。彼らがもし完治した場合、彼らの方が賢い人間になるだろうな。今度オペレーターバニラの開催する感染生物IQテストに参加してきたらどうだ?意外と好成績を出せるかもしれないな。わかったらロドスのトップとしてこれ以上恥を上塗りするようなことはやめろ。」

 

「...わぁ...ァ...!」

 

「ドクター!?しっかりしてください。」

 

「ケルシー...先生。遅かったわね。それで、持ってきてくれたのかしら。」

 

「あぁ、本人の望みならば公開してもいいだろう。」

 

「ケルシー?何を持ってきたんだ。」

 

「あ、戻った...」

 

「ギョクソウの健康診断の結果だ。」

 

「...そうか。」

 

受け取ったドクターはいくらかの紙を受け取り目を通し始める。それをアーミヤは横から覗き込んでいた。

 

特に気になる点もなく読み進めていたがとある部分で手が止まる。

 

それは鉱石病に関するページだった。

 

源石融合率 0%

 

血液中源石密度 3.67μ/L

 

 

 

「3.67...!?」

 

「そんな数値が有り得るんですか...?」

 

公開されている中で最も症状が重かったイフリータですら0.51μ/L

 

それの7倍以上の数値。それでいて0%の源石融合率。

 

はっきり言って異常だった。

 

「...は、どう?私がまだ人に見える?」

 

ギョクソウはもううんざりとした様子で言っているが、記憶を失っているドクターにはそこまで恐れることでも無いと思っていた。

 

まだ鉱石病には分からないところが...いや分からないことの方が多い。

 

ましてや彼女は極東特有の感染生物の度重なる捕食や血縁者を使われての生物濃縮のような事までされていたのだ。

 

なにか他の感染者よりも変わったところがあってもおかしくは無い。

 

「うん。目の前にいるのはギョクソウだ。」

 

その言葉にギョクソウは一瞬目を丸くさせたが、すぐさま嘲笑と呆れの中間ほどの顔になった。

 

「まだ...そんなこと言うの。私は...醜い...人喰いの化け物よ...」

 

「今はスズランが大好きなお姉ちゃんだ。」

 

「私が何をしたか、何人殺したか知らない癖に。たかだか数十年生きているだけの餓鬼が知った口を聞くなよ...!」

 

「...ギョクソウさんが殺めた人達よりも救った人の方が遥かに多いことは確かです。」

 

「それに人喰いの化け物は『玉藻御前』だ。ギョクソウじゃない。」

 

「...」

 

白熱した議論も落ち着きを取り戻し、再び部屋に静寂をもたらした。

 

「...なんと言おうと...知られた以上私はここにいられない。」

 

およそ数分たった後ギョクソウは再び歩き始める。

 

「これだけはしたくなかったんだけど...ギョクソウ。」

 

「なにするつもり。」

 

「昇進だ。」

 

「「...え?」」

 

突然の昇進宣告にギョクソウだけでなくアーミヤすらも間の抜けた声を放った。

 

「それも一気に二段階。」

 

「はぁ!?」

 

ギョクソウをいつもの顔に戻すことに成功したドクターは確かな手応えを感じた。

 

「これで君はロドスの大事な...いや今までも大事だったんだけど、超大事なエリートオペレーターだ。」

 

「そうか。ドクター、これが君の判断か。...ふむ、もういいだろう。私は戻らせてもらう。」

 

何かを察したのか、はたまた呆れたのかケルシーは戻っていってしまった。

 

「なにを...馬鹿なことを...」

 

「アー昇進ニハ、スゴイコストカカルノニナー。今スグニモ、ヤメラレタラ困ルナー」

 

「ドクターのそうやって弱みにつけ込むの本当に嫌い。」

 

「ドクター...強引すぎます。」

 

「え、あぁごめんごめん。でもこれしか思いつかなかったんだよね。彼女を引き止めるには彼女の善性を信じるしか無かったんだ。」

 

「ぐっ...」

 

「ギョクソウ。一度みんなに話してみな。もちろんスズランは最初ね。」

 

「他人事だからって適当抜かしてんじゃねぇぞ。お前は何も賭ける物が無いくせに...」

 

「あるよ。」

 

「へぇ?」

 

「もし拒絶されたら、私を殺していいよ。私の命、それがチップだ。」

 

「ドクター!?」

 

「...やっぱりお前嫌いだわ。」

 

「ギョクソウさん!?」

 

「はは、まぁそれはそれとしてまだ聞きたいことがあるんだ。」

 

「おい無視すんな...どうせ私の力でしょう。」

 

「うんそうだね。」

 

「さっきから人の傷口エグりすぎじゃない?別にいいけど。」

 

「ギョクソウのアーツは炎を文字通り自由自在に動かすものだと思ってるんだけど...合ってるよね?でも、君のよく使う二つは意志を持っているように見える。それはどうしてかな?」

 

「私が...食べたものは再現した時に意思が宿るわ。ガウに意思が突然生まれたのはたぶん...私があの炎をあの子だと思ってしまったから。」

 

「その...ギョクソウさん。意志を持ったものたちの記憶は...」

 

「本物と同じよ。それでも害の無いものばかり出してるから大丈夫でしょう。」

 

「ありがとう。スッキリしたよ。じゃあもうあとは...」

 

緊張の糸が解けたドクターは椅子に深く座り込んで言葉を続けようとすると乱入者が現れた。

 

「お姉ちゃん!ダメッ!」

「もう我慢なりません!どつき回しますわよーッ!」

 

「リサ!?...とアヴドーチャかぁ...」

 

「わらわだけ露骨にテンション下がりましたわねこのおたんこなす!ペナンスさんのもと裁判にかけますわよ!」

 

「お、おたんこなす?」

 

「そうです!もう居なくならないって言ったじゃないですか!ばかばか!」

 

「え、いやちょっ...」

 

「嘘つき!おばか!もう知りません!」

 

「(顔ぐしゃぐしゃだけど可愛い...)」

 

「あぁほら、ハンカチ使いなさい。」

 

「ぐむぐむ...」

 

「スズランさんを泣かせるなんて...!このささくれ野郎!頭ハッピーセット!エンドウ豆!」

 

「お前だけ罵倒の語彙力どうなってんのよドゥリコン!」

 

「「(わぁ〜いつものギョクソウに戻った〜)」」

 

「(た、助けて!ドクター、アーミヤ...お前らなにわろとんねん!!)」

 

予想外の出来事に困惑し狼狽えるギョクソウをドクターとアーミヤは微笑ましげに見つめていた。

 

「もう心配なさそうだね。」

 

「そうですね。」

 

「あそこまで思ってくれる人がいるのは間違いなく彼女の功績だよ。」

 

「ふふ、では私たちは仕事に戻りましょうか。」

 

「ファッ!?マジで!?」

 

「この状況どうにかしなさいよ!分かりました私が悪かったです助けてぇぇ!!」

 

 


 

 

「はぁ...はぁ...落ち着いた...?」

 

「「はい...」」

 

「なんたってあんなことに。」

 

「お姉ちゃんがロドスを出て行くって...」

 

「あー...最初のやつを聞かれてた感じか。まぁリサは良いとして...そこの変態は?」

 

「日に日にわらわの扱いが酷くなっていきますわね!?わらわはスズランさんに助けを求められただけでしてよ。」

 

「そこから何してたのよ。」

 

「ずっと扉に張り付いて会話を聞いてましたわ!」

 

「ウッソだろオイ。でもケルシー先生が扉開けなかった?」

 

「け、ケルシー先生に見つかっちゃいましたが何も言わずに見逃してくれました。」

 

「そう...それで、話は全て聞いていたのね。」

 

「えぇ。」

 

「はい。」

 

「あなたたちは...私を...う、受け入れ...られる...か、かしら...?」

 

愛するものと親友に拒絶されるかもしれないという恐怖がギョクソウの声を自然と固くする。

 

「「...」」

 

二人が沈黙する。

 

鼓動が早くなる。心臓が痛い。

 

「ご、ごめ...やっぱり忘れ「何言ってますの。」

 

「受け入れるも何も、わらわたちはあなたが悪い事をしたとは思ってませんわ。」

 

「...え?」

 

「そうですよ!昔のお姉ちゃんじゃなくて今のお姉ちゃんの話をしてください!怒りますよ!」

 

「こんなに...あっさり...」

 

「ま、まぁ、ギョクソウさんのお話に既視感が無いわけではありませんが...」

 

「そうなんですか?」

 

「都で人を騙して悪事を働いていたヴァルポが退治されると言った話ですわ。...あなたじゃありませんわよね?」

 

「いや...」

 

「お話では退治されて終わりでしたが、これは現実。でしたら退治されたあとそのヴァルポが幸せになっても良いのでは無いでしょうか。」

 

二人からの許しはギョクソウにとって酷く眩しかった。

 

「あぁ...あり、が...とう...ありがとう...!」

 

安堵と、えもいえぬ感情の洪水。

 

「今度はあなたが落ち着きなさいな。」

 

「これからも一緒にいようね、お姉ちゃん!もうどこかに勝手に行ってはいけませんよ!」

 

 

 

 

 

 

 

「スズランさん...その発言、少し怖い...ですわ。」

 

 


 

 

一つの話としては終わり...かな?もう三話なんなら二話でシリアスに限界迎えてたので次回以降はもうやりたい放題やります。

 

そしてたまーにやりたいシチュが出来たら書きます。それを繰り返していきます。

 

R-18は今の所書くとしたら、可哀想なやつは絶対やりたくありませんね。

 

自分の癖の声に耳を傾けて書いてみます。

 

あと私の力が足りなくて上手く伏線回収できなかったと思うので、どないなっとんねんコレぇってなってる人は感想欄でもメッセージでもいいので聞いていただければと思います。

 

回答はそれ用の話を作るかその場で答えるかは未定ですが...

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