どきなさい!私は「お姉ちゃん」よッ!!   作:とろねぎ

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ペットって子供の情操教育に良いらしいわよ

ネオンライトの差し込む路地裏で戦闘音が響いていた。

 

「スズラン!こっちは片付いた!」

 

「ギョクソウさんっガウくん一人じゃ厳しそうです...!」

 

そんなことを言っている間にも暴徒たちはおしよせてくる。

 

「わかった。じゃああなたたちはあの子を助けに行ってあげて。」

 

『『がふっ!』』

 

「こっちは...もう来ないか...」

 

「み、皆さん持ちこたえてっ!」

 

スズランがアーツユニットを掲げると、辺りを青白い炎が覆い、暴徒たちの動きが目に見えて緩慢になった。

 

「上出来よ!炸裂せよッ!」

 

ギョクソウが手を握り込むと炎狐が暴徒たちの密集しているところに駆け寄り、その体を破裂させる。

 

煙が晴れれば...

 

「うん、上手くできたわ。これで最後?」

 

「はいっ!ね、念の為付近を見てきますね。」

 

「じゃあ、一人付いてってあげて。」

 

『わふっ』

 

「残った子たちはコイツら巻いて近衛局に引渡しなさい。」

 

『『『『わふっ!』』』』

 

「(ナイフ、火炎瓶、鉄パイプ、アーツユニット?アーツ使えるやつが居たのか。装備を見る限りやっぱチンピラ集団か。)」

 

「(...あぁ、レユニオン残党も入ったチンピラ集団か。それにしても...)」

 

「なんで暴徒鎮圧に二人で行かせるわけっ!?」

 

『ぎゃ...!?』

 

「あぁごめんなさい。...まあ別にいいのよ。リサと私以外の二人で行かせるよりかは。」

 

「ギョクソウさん、周辺にもう敵はいませんでした!」

 

「わかった。ありがとうね、スズラ...」

 

ギョクソウはスズランの方を向くとそのまま固まってしまった。

 

なぜならば、スズランのお腹のあたりが露骨に膨らんでいたからだった。

 

「何を隠しているの?」

 

「な、何も隠していませんっ!」

 

「今そのかわいらしい背中に隠したのは何?」

 

「何も隠していませんってば!」

 

「今したにこっそり落としたのは何?」

 

「何でもありませんっ!なんにもいませんってば!」

 

「...なんでか今、昨日あなたがウィスパーレインちゃんと見た映画がなんなのかわかったわ...」

 

某風の谷を想起しながら目頭を押さえていると、スズランの後ろから聞きなれない音が聞こえてきた。

 

『うじゅ...うじゅ...』

 

「あっダメ!出てきちゃだめだよ!」

 

「...オリジムシ?それにしてはやけに丸っこい体してるわね。まあいいわ、こっちに渡しなさい。」

 

「ダメです!」

 

「なんでそんなに嫌がるのよ...」

 

「だ、だってこの子、ほかの子と違ってとげとげしてないし、私のことも攻撃してこないんですよ!?」

 

とげのないオリジムシを抱えながらだんだんとその瞳が潤ってくる

 

「それによく見たらなんか体中から血みたいなのが出てるし...放っておくなんてかわいそうだよ!」

 

「リサ。」

 

「ううっ...酷いことはしないでねっ...」

 

「はぁ...そんな事しないわよ。初めて見るオリジムシなんだし、ロドスに連れ帰って少し調べるぐらいはすると思うけど。」

 

ギョクソウはそう言って携帯電話を取り出し、不慣れな手つきで操作し始める。

 

「えーと、こう...?あ、こうか。...もしもし?ドクター?」

 

『おー、終わった?』

 

「えぇ。だから迎えをよこしてちょうだい。あと、迎えのメンバーに...そうね、バニラちゃんも出来たら同行させて欲しいわ。」

 

『えー...?どうして?』

 

「よくわかんないオリジムシ拾った。今のところ攻撃性は無し。ついでにトゲトゲも無し。」

 

『それは...バニラが喜びそうだ。わかった、じゃあ座標送るからそこに行ってねー』

 

「あ、そうだ。一個文句言いた『ごめん仕事あるから!無事に帰ってきてね!』

 

「...聞こえてたわね?行きましょうか。」

 

「うん!あっ...はい!」

 

 

 

 

「...ん、おーい!こっちですよー!」

 

二人をハルバードを持ったヴイーヴルの女性が出迎えた。

 

「バニラちゃんありがとうね。」

 

「それでそれで!例のオリジムシちゃんとは!?」

 

「あ、はいっこの子...ですっ!」

 

『うじゅ...?』

 

「おぉ!この子が...ほかの子とは違って殻がないし、体から垂れてるのは...すんすん、んーなんだろこれ。」

 

特に恐れる様子もなく、撫でたりひっくり返しているバニラだったが、やがて

 

「やっぱりしっかりとした施設で研究した方が良さそうですね。この子が新種であれ、ただの大怪我したオリジムシであれ。てことでケージに入ってね...素直だねぇ。」

 

「(この子ペット相手だと口調変わる子だわ...)」

 

 

 

 

 

ロドスに帰還した二人。

 

あのオリジムシが心配なスズランを落ち着かせるためにギョクソウがしたことは...

 

「...ねぇなんで私の執務室にいるのかな?」

 

「ん、ただの仕返し。」

 

「なんの!?」

 

「リサを入れた2人で龍門の暴徒鎮圧に向かわせたこと。何かあったらどうしてくれるのよ。」

 

「ギョクソウがいるから大丈夫だろう?」

 

「...そりゃもちろん!」

 

「それよりも...スズランの方が気になるんだけど。」

 

スズランはソファに腰掛けてはいるものの、辺りを見渡したり脚をばたつかせていて忙しなかった。

 

「リサー、心配なのはわかるけどそんなに気に病む必要は無いと思うわよ。」

 

「うん...」

 

こんこんこん

 

「ドクター?入っても...よろしいでしょうか。」

 

「この声は...うん、いいよ。ギョクソウ開けてあげて。」

 

「はいはいー、どうしたのアヴドー...チャ...何その格好。てか頭。頭大丈夫?」

 

「これですか?これは、スズランさんを元気にするために作った、オリジムシの被り物ですわ。ダンボールで作ってみましたの。」

 

「まさかその格好でここまで来たの?」

 

「えぇ、そしてこの黄色の全身タイツを着ることでわらわのオリジムシコスプレは完成するのですわ!」

 

「...ドクター、リサの目と耳塞いで。」

 

「うん。」

 

「わわっ、な、なんですか...?」

 

「セイヤッ!」

 

「うぐっ...ギャー!目があぁぁぁ!」

 

「...哀れ。」

 

ピシャンッ!

 

容赦なくパゼオンカの目を指で突き、悶絶しているところを冷たく一蹴してから扉をしめた。

 

「ふー...もういいわよドクター」

 

「あいよーんじゃ仕事戻るわ。」

 

「???」

 

困惑するスズランを他所に今一度時間を潰し始める。

 

少ししたところで再び扉がノックされた。

 

「今度は何よ...」

 

「ヒャッハー!手を挙げなさいおバカさんたち!わらっ...オレ様達はキレたら何するか分からないのでありますわー!」

 

今度はさっきも見たような服装のオリジムシの被り物で顔を覆い隠している人物が入ってきた。

 

「「「...」」」

 

「...えっ『達』?」

 

「そうだ。不確定要素の塊である俺たちの要求すらも不確定な事象であるうちは大人しくしておいた方が良いだろうな。大人しくしていれば一先ずの身の安全は保証しよう。」

 

もう一人同じ被り物で顔を隠した白衣の人物がやってきた。

 

「「(ン゙ン゙ン゙増えとるぅー!)」」

 

「えっ?えっ?」

 

「とりあえず...」

 

「えちょ一体どうな...ん!?何しますの...ぉぉぉ!!?」

 

一人に近づき、脇に手を通して担ぎあげるとそのままバックブリーカーをキメた。

 

「...わぁ。」

 

「はわわわ!」

 

それを見たドクターとスズランの反応はそれぞれドン引きと照れであった。

 

「ちょ、ちょっと!これ、わらわの格好考えておりますのっ!?わらわスカート!スカートですのよ!」

 

「うるせぇ!」

 

「おぎょっ...!?」

 

ビクンと跳ねた後に動かなくなったことを確認してそのまま床に下ろすともう一人の方に向き直った。

 

「はー、何を持ってこんな馬鹿なことを...あとあなた誰よ。白衣着てて声は男の子だから大体見当はついているけど。」

 

「俺はオリパシー戦隊のウニブラックだ。それ以上でもそれ以下でもない。」

 

「はいはい、それじゃあこのクソダサいモン脱ぎましょうね。ソーンズくん。」

 

「...バレていたのか。」

 

本心から驚いていたような声を出し、被り物を脱ぐとソーンズが中から出てきた。

 

「ソーンズ...なんでこんなことしてるの...?」

 

「それは単純に暇だったからだ。それと少しの興味。」

 

「...ソーンズ、今何徹目?」

 

「ドクター、心配には及ばない。あと四日程度なら十分動ける。任務にも支障は出ないだろう。」

 

「...ゆっくりおやすみ。」

 

「...?先程も言ったようだがドク「これは命令!休め!今すぐ...休め!」

 

「...そうか。わかった。」

 

ソーンズが出ていくとバニラが入れ違いで入ってきた。

 

「ドクター、わかりましたよ!」

 

「ほ、本当ですかっ!」

 

「うんそうだよスズランちゃん。結論を言うと、あの子は...」

 

「あの子は...?」

 

溜めに溜めるバニラによって室内の緊張が引き上げられていく。

 

「新種!しかも至って健康!」

 

「え...!?」

 

「体から出ていた液体は、後述する食物が溶けて体から少し溢れ出してるだけ。」

 

「何を食べるんだ?」

 

「金だね。」

 

「金...?ゴールド?」

 

「そうそう。金塊にえらく反応していたから試しに与えてみたらビンゴ。人懐っこいのはたぶん...人を利用していたからじゃないかな。」

 

「人を利用...ですか?」

 

「人に金を掘らせてそれを食べてたから人に敵意がないんじゃないかなってのが私たちの見解。」

 

「うん、わかった。スズラン凄いね、新種を見つけちゃったよ。名前はどうするの?」

 

「え、な、名前っ?」

 

「見つけた人が名付けるのが一番でしょ?」

 

「はい、ドクターの言う通りだと思います。」

 

「うーん...うーん...コガネオリジムシ...とか?」

 

「いいと思います。コガネオリジムシは一先ず私が預かることになっているので、会いに来たい時はいつでも来てね。」

 

「あら、そうなの。名前は決めてるの?」

 

「はい、ギンギラちゃんにしようかなって!」

 

「ギンっ...!?」

 

「ギラ...!?」

 

「そこまで光ってないと思うけど!?」

 

「あ!ギンギラちゃんにご飯あげないと!」

 

バニラ!止まりなさい!ちょっと!」

 

 

 


 

 

 

バニラ...お前身長172もあるんか。

今はコガネオリジムシの繁殖実験を行おうとしている。

 

パゼオンカ...言わずもがな床に放置されてた。

目が覚めたら体バッキバキ。励ますこと自体は本気で思っていた、ただ方法がアレ過ぎた。

 

ソーンズ...現在──徹目。

オリジムシの被り物はあとでエリジウムに押し付けた。

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