めちゃくちゃボリューミー(小並感)
「うん!ぐっもーにんってやつね!」
いつも通りの目覚め、いつも通りの朝。
それでも今日はいつも通りの日ではなかった。
軽く朝食を摂って身だしなみを整えると部屋を出る。
そして、すぐさま隣の部屋に拳を叩きつけるようにノックし始める。
「起きなさい前科持ち!へい!うぇいくあっぷあんど、はりーあっぷ!」
なかなか返事が返って来ない。
「慣れない言葉まで使って起こしに来てるのよ全く!はーやーく!ほらはーやーぶへっ!?」
勢いよく開いた扉をたたきつけられ背中から地面に倒れるギョクソウ。
そしてそれを鬼の形相で見下ろすパゼオンカ。
「あさっぱらからっ!いったい!なんの!つもりですのっ!!」
「あだだだ!ちょ、グーはやめて!あなたの腕力洒落にならないから!」
「あぁそうですか!ならわらわの部屋でじっくりとおハナシしましょいね!」
「あー!尻尾引っ張んないでぇぇ!」
バタムッ!
パゼオンカの室内でギョクソウは正座をさせられていた。
「それで?言い訳をお願いしますわ。」
「...今日はあの子の誕生日...だからデス...それで、何を用意したのか気になっただけ...デス。あ、ちなみに私は手作りぬいぐるみ。」
「...はぁ、あなたがそれだけ浮かれるなんて、本当に楽しみでしたのね。」
「ハイ...」
「...わらわは自作の小説ですわ。これでよろしくて?」
「あらそうなの。まぁ何となく予想はできてたけど...検閲入るわね。」
「えぇどうぞ。」
「やたらと素直に渡すってことは大丈夫なのかしら、前科持ち?」
「いつも大丈夫なものしか書いておりませんし、龍門の拘留所で放置されたことを言っているのならあなたも前科持ちですわ。」
「へぇ、あれね。絵本みたいなお話で可愛いわね。挿絵は誰が書いたの?アヴドーチャ?」
「いいえ、表紙絵と挿絵はディピカさんにお願いいたしましたの。」
「あら、あの子描いてくれたのね。」
「ええ、快く引き受けていただけましたわ。」
「やるじゃん。見直したわアヴドーチャ。」
「見直されるほどわらわの評価は地に落ちていたのですか?」
「いや最近のあなた奇行ばっかりだったじゃない。当たり前の評価だと思うのだけど?」
「...そういえば、あなたはこんな所でゆっくりしていてよろしいのですの?準備を始めたりは...」
「あー大丈夫よ。さすがにまだ早いわ。準備はまぁ...少なくともお昼ごろからね。協力してくれる人たちにもそう伝えてあるし...まあそれまでは根回し...色んな子を招待でもしましょうか。」
「あー...何名ほど招待するご予定なのでしょうか。」
「できるだけたくさん。お友達や普段お世話になっている子たちは必ずって感じ。」
「それでしたら、そんなにゆっくりとしていていいのですか?かなりの人数を当たらなければいけないと思うのですが...それにお仕事が残っている方もゼロではないと思いますわ。」
「だいじょぶだいじょぶ、人海戦術するから。」
「ん?それってどのような...」
「「「こういうこと。」」」
「本体の私を『私A』と呼称しましょう。あなたたちは右から、BとCね。」
「じゃあBの私はみんなの招待をしてくるわ。」
「ならCの私はドクターの仕事を手伝ってくるわ。」
「あぁ待ちなさい。今回に限って、自分を複製することを許可するわ。それでは...そうね、9時から各々全力を尽くすように!」
「「御意!!」」
「...えぇ...」
「あ、ごめん。それまでまた消えててもらってもいいかしら。いきなり私が増えるのはみんなを驚かせちゃうし、何かあるって感づかれちゃうかもしれないから。」
「...それもそうね。『さぷらいず』が気づかれてたらそれ『さぷらいず』じゃないものね。」
「もはやただのパーティーね。わかったわ。私A。」
「いや本当にごめんね!」
二人の自分を消したギョクソウはパゼオンカの部屋にあった椅子に腰掛ける。
じいっと睨みつけるパゼオンカの視線は無視して。
「いつまでいるつもりですの...わらわもう着替えようと思うのですが。」
「あぁそうなの?早いわね。」
「誰かさんのおかげで目が覚めましたのでねっ!」
「わぁお、そんな奴がいたのね。感謝しておきなさい?」
がちゃ
「感謝の品は矢でよろしいかしらね...!!」
澄んだ何も映さない瞳をしてボウガンを突きつける。
「ごめん。」
「はぁ、それで、バースデーパーティは何時からありますの。未定という訳では無いのでしょう?」
「ん、まあね。七時に食堂にいらっしゃい。今日はもう貸切...というか皆使うから。」
「...?さきほど招待と申してましたが、皆さん来るのであれば一体誰に...?」
違和感を感じたパゼオンカの質問に手をヒラヒラとさせて返答する。
「皆ってのはロドスに常駐してる子達の事ね。んで、招待するってのは協力関係の子達。ペンギン急便とか...そこら辺ね。」
「えー...つまり、今日居ない方の参加は出来ないと...言うことですのね?」
「まぁそうね。それは運が悪かったとしか言えないけど。...っともうこんな時間か。もう行くわね。」
「あら、まだ時間はあるのでなくて?」
「あー、そろそろ他の子達も来る時間だと思うからそれを捕ま...探しに行くわ。」
「あぁ...そうですのね。それではまた。」
「うん、またね。」
場所は変わって執務室
「タノ...シィ...オシゴト...タノシィ...」
「ドクター、お辛いのは分かりますがまだ終わってないお仕事が沢山あります...」
「オシゴト...タメルンジャ...ナカッタ...」
「ほら、私も手伝いますからしっかりしてください。」
理性0のドクターと心なしか耳がしょんぼりしているアーミヤが仕事をしている最中に勢いよく扉が開かれた。
「『はっぴぃばぁすでぃ』よコラァ!!」
「ギョクソウさん!?いきなりどうしたんですか!ハッピーバースデー!?」
「あぁん!?あの子の誕生日を忘れたとは言わせないわよ!」
「モチロンワスレテナイヨ」
「...アーミヤちゃん。」
「はい。」
「なにあれ?ロンディニウムにあんな感じのスライムいなかったっけ。」
「ドクターです。」
「...冗談よn「ドクターです。」
「...そう...今度は何したのよ。」
「仕事を溜め込んでいたんです。かれこれ三日ほど...」
「はぁ?そこのアホ。なにしてるわけ?なんで三日も仕事放置してるのよ。」
「キキケイヤク...」
「「あっ...」」
嘲笑や侮蔑の類であろう目線を与えていたギョクソウはドクターの絞り出したような発言で言葉を失った。
「...ごめん。私も手伝うから。手伝ったら今日の誕生日会間に合う?」
「どうでしょうか...な、なんとか...?」
「あー、じゃあもう一人いるかな。」
「え?今なんと...」
「「わぁすごい書類の山...」」
「ワァ、フエタァ...」
「んじゃ、私CとDは頑張って!自分で増えていいからなんとか仕事片付けてそこの二人が休める時間作って。」
「「らじゃー。」」
「じゃあ私招待してくるから。」
「「りょうかーい。」」
二人の自分に指示を出してから執務室を出る。
騒がしいやつAが消え、代わりに騒がしいやつCとDが残った。
アーミヤとドクターがなにか言うまでもなく一つの小さな書類の山を持っていく。
そして、空いている適当な場所に座り書類の整理を始める。
ギョクソウC、Dの顔に普段の脳直会話ないし姉バカの姿はなかった。
「(ギョクソウさんって...あんな顔できるんですね。)」
「これなに?あ、費用計上...ウソ、ロドスってこんなに身内が原因の修理費とかある訳?」
「任務の報告書...っていやいや!『完了』じゃないわよ!誰よこれ...スカジちゃん...!」
「(あ、いつものギョクソウさんです。)」
ものの数秒で化けの皮は見事に剥がされた。
「オシゴト...オシゴト...」
「さて...まだ時間はあるわね。それまで...あっ!」
「珍しいですね?朝からロドスに来るって...」
「せやなぁ。エクシアはん?もう教えてくれてもええ思うんやけど。」
「えぇ〜?どうしよっかな〜」
「エクシア。」
「...わかったよもー!パーティーがあるの!...あ、でもでも、あくまで私の予測だからね?」
「えっ予想で僕たちを連れてきたんですか!?」
「あはは〜...まぁまぁ、落ち着きなよバイソンっ」
「...ん?」
騒がしい四人組を見つけたギョクソウは息を殺して近づくとエクシアを後ろから抱きしめた。
「みーつっけた!よしよしよしよし!」
「わひゃあ!?ギョクさん!?なんで頭撫でてるの...!?」
「「あっ...」」
「クロ姉?なんで僕の目を隠すんですか?あとテキ姉今の声なんですか?」
「ミンナ...タスケテ...」
「エク姉今どうなってるんです!?」
「...言わせるな。」
「せやな、エクシアはんの名誉のためにも。」
「アレね?エクシアちゃん、リサの誕生日を聞きつけてやってきたのね?」
「ハイ...ソウデス...」
「あ、あぁー!そっか!スズランちゃん今日誕生日か!そういう事かいな!」
「ワ、ワカッテ...クレタ...?」
「...ギョクソウ。そろそろエクシアを離してやってくれないか。見るに堪えない。」
「え、あっごめん。」
解放されたエクシアはふらふらと三人の元に帰っていく。
「エクシア、無事か...?」
「あ、危うくまたオギャる所だった...!」
いつにも増して深刻そうな顔で言うエクシア。
「そういえばソラちゃんは?」
「ソラは今日アイドルの方で仕事だ。」
「あぁそうなの...残念。ということで、誕生日会来てね!七時頃に食堂よ。歓迎するわ。それじゃ!」
突然やってきて、突然去っていくギョクソウは嵐という言葉が似合っていた。
「「「「(なにが『ということで』だったんだ?)」」」」
「...んお、あのモフモフトリオは...!」
見るからに暖かそうな見た目の三人の前に歩き出る。
「へいそこの三人!私とお話しな〜い?」
「誰です...ってギョクソウさん。こんにちわ。」
「え、あぁうん。こんにちわ、ワイフーちゃん。ウンくんとアくんも。」
「こんにちわ!」
「こんちゃー」
ウンは元気よく、反対にアは面倒くさそうに挨拶を返した。
「お返事が個性あっていいわねぇ。」
「あはは...一人は珍しいですね。大抵はスズランちゃんと一緒に居るじゃないですか。」
苦笑しながら質問をするワイフー。
「まあねぇ、今日はあの子の誕生日だから秘密裏に今色々と準備中なの。」
「ふーん、過保護すぎて嫌われたわけじゃなかったんだな。おばさん。」
「がふっ!?」
アは何気ない一言一言のつもりだったのだろうが、ギョクソウからして見れば致命傷だったらしく、なぜかきりもみ回転をして吹き飛んでいった。
「え、えぇー!?どうしたんですかちょっと!」
「リサに嫌われる想像しただけで死ねる...!しかもおばさんて...!違くはないけどさぁ!」
「ア!いきなりなんてことを言うんだ!謝りなさい!」
「いや思ったこと言っただけなんだけど。」
「お前と言うやつは...!」
「あぁいや...いいの、気にしないで...うん。大丈夫、私は大丈夫だから...ふぅ。」
「いや、めちゃくちゃ無理してるじゃないですか!」
「そんなことは...いいわ...脱線した話を戻すわね。」
「あ、はい。」
「今日あの子の誕生日会をやるから来ない?っていう話なんだけど...」
「なぁなぁ、それ、メシ出んのか?」
さっきまで興味なさげに聞いていたアが割って入る。
「そりゃ出すわよ。食堂の子たちにも手伝ってもらうの。」
「んじゃ参加するぜ。二人もいいよな?」
「私はいいですけど...」
「俺も嬉しいんだけど...」
「「リー先生はどうするの(んだ)?」」
「あ...」
「それなら心配しないでいいわよ。あの人も誘うから。どこにいるか知らない?」
「リー先生なら...屋上か第三宿舎にいるんじゃないか?ほら、あそこ喫煙できるからな!」
「ウンくんありがとう。でも、もしリーさんと会ったら確認しておいてくれるかしら。」
「それぐらいなら構わないぜ。」
「さーてと、居るかしら...お。」
宿舎に着くと部屋の隅で煙が立ち昇り、天井についている排気口に吸い込まれていくのが見えた。
「隣、いいかしら。」
「あぁはいはい、少し詰めますねっと。どちら様で...おや。」
「リーさん久しぶり。」
「そんなにでしたかい?ギョクソウさん。...あー、煙大丈夫なんですかい?」
「えぇ問題ないわ。匂いつくのは嫌だけど...」
「へぇ、吸ってたんですかい。」
「まあね。匂いキツイし煙にお金使うってのが虚しくなってやめたけど。」
「はは、それで正解ですよ。金はかかる、匂いもつく、オマケに体を壊すときたもんですからねえ。」
「じゃあなんで吸ってるのよ、もう。」
「鉱石病で理不尽に死ぬくらいなら、喫煙が祟って死んだ方が俺の葬式で笑い話になるじゃないですか。『ずっと煙草やってるから死んだんだよ』なんてね。」
「...いろいろ考えてるのね。」
「まあ何か咥えてないと口寂しいってのもありますがね。」
「おいコラ、それが本音でしょ。せっかく格好ついてたのに。」
「さて、どうでしょうか、ね。あぁそうだ。こんな所に何の用で?まさか、おれと煙草談義でもしに来た訳じゃあ無いでしょう?」
「今日はリサの誕生日なの。」
「リサ、リサ...リサって言うと...スズランさんの事ですかい?そりゃめでたい。」
「あら、ありがとう。それで今日の夜誕生日会やるから来ない?」
「あぁー...お誘いは嬉しいんですが、子供のいるパーティーってのはどうも苦手で...ほら、色々気を遣わないといけないじゃないですかぁ。酒に煙草はもちろん、会話の内容まで。」
「安心して。煙草はやらないで欲しいけど、酒飲み達は酒飲み達の島を作るわよ。」
「なるほどぉ。ですが...えー...」
「あ、あと、ワイフーちゃんたち参加するって。まあ食いついたのはアくんだけど...どうしたの?顔抑えて。」
「...いやぁ、それはちとずるいでしょうよ。」
「ふふ、別に脅してるわけじゃないわよ?」
「おんなじようなものでしょう...わかりましたよ、参加しますって。準備もお手伝いさせていただきますよっと。」
「え?そんな悪いわよ。」
「いやいや、たまにはこれぐらいやんないとウチのガキどもにバカにされちまいますよ。」
「そこまで言ってくれるのなら...ちょっと待って。今何時?」
「うん?...あぁもうそろそろお昼ですねぇ。」
「...私B!私E!」
「「いきなり何よちょっと。」」
「他の子達を招待してきて!このままだと間に合わない!EはBから詳しい事聞いて!行ってらっしゃぁぁい!!」
「本当に何!?」
「いいから行くわよ!」
一人のギョクソウかまもう一人のギョクソウの手を引っ張って走って行く。
「はぁ、はぁ...」
「...おれ、やっぱ手伝わなくても良いですかねぇ...?」
「あー、ギョクソウさん?今ってどこに向かっているんでしょうか。」
「食堂。今は医療部の子達が飾り付けの真っ最中。」
「ははぁ、それを手伝えばいいですかね?」
「えぇ、本音を言うと調理も手伝って欲しいんだけど...」
「...ジェイさん連れてきま「元々お手伝いに入ってくれる予定よ。」
「ささ、着いたわよ。」
扉を開けて食堂に入る。
カラフルなパーティーリングやスズランの花をイメージした白い花飾りで飾り付けられた食堂があなた達を出迎える。
「あっギョクソウ!妾を助けて欲しいnバタンッ
ただし、巨大なタンコブを着けたワルファリンが吊り下げられていたのは気の所為だろう。
「...」
「...」
「ごめんなさい。間違えちゃったみたい。」
「え、いやいや、今のワルファリンさんじゃあないですか?逆さに吊り下げられてましたけど。」
「...おや、ギョクソウさんと...リーさんですか。何をしているのですか?」
扉の前で固まっていた二人にガサガサというビニール袋が擦れる音と共に声をかける人物がいた。
「マッターホルンくん...」
「僕もいますよ。」
「クーリエくんも。どうしたの...ってその両手に下げた袋を見れば分かるか。」
「はい。今夜のパーティーに使う食材が足りそうになかったので買い出しです。」
「僕はその荷物持ちです。食堂、入らないのですか?」
「ほらここ食堂じゃないですかぁ。早く入りますよ。」
「...ウン...」
ギイッ
「おっ!戻ってきたか!さっきはどうしたんじゃ、まあよい...助けてぇぇぇ!!」
「...リーさん、人ってどのぐらい逆さになってたら死ぬんだっけ。」
「それ、こっちに聞きます?普通。」
「妾の知識が間違ってなければ、30分〜2時間程度でもうお陀仏じゃ。」
「私たちが来た時から逆さになっていて、そこから3時間ほどで戻ってきたところなのですが。」
「「「(...不味くないか?)」」」
「私は食材をしまってきますね。」
「あ、じゃあ僕も行かないとですね。」
「...リーさん肩借りるわね!足掴んどいて!」
「え、あぁはい。」
リーにしては珍しい虚をつかれた様な返事を気にかけることなく肩車の体勢になる。
「おわ高っ...!全く、なんでこんなことになってるのよ。はい。」
「わかんない...でも感謝するぞ...!」
「...あー、なかなか大胆なことしますねぇ。」
「重かった?」
「おもっ...いえ、あなたに男だとか女だとか言うのは野暮ってもんでしたねぇ。」
「なんかすごい失礼なこと言われてる気がする。」
「気のせいですよお。」
「あ...降ろしちゃったんですか...?」
「これトミミちゃんがやったの?」
「はい...ガヴィルさんに『邪魔だからどっかやっとけ』って言われて。」
「それでも逆さ吊りは死ぬわよ。」
「え...そうなんですか?」
「...ダメだこりゃ。」
「あの〜おれは何をすりゃあ...」
「あそこで飾りつけしてるフォリニック先生手伝ってあげて。リーさん身長高いから助かると思うわ。」
「りょーかいしましたよっあなたは?」
「他の子の様子確認しておく。今増えてるから。」
「何人に?」
「最低四人。多分今はもっといると思う。」
「それはそれは、大変でしょう。体にはお気をつけて。」
「ははっ肉体労働よりはマシよ。」
「ふぅ、さて...」
『扉ぶっ壊れすぎでしょう!!これ誰がやってるわけ!?』
『スカジ...』
『ファーーーwww』
『私が発狂した!この人でなし!』
『...聞いてる?』
『あぁ』
『エリジウムくん、これ聞いてなくない?』
『あぁ』
『はは...ブラザーはこういうヤツだよ。まあ後で伝えておくからさ。』
『あぁ』
『ありがとねぇ...』
『それでいいよねブラザー?』
『あぁ』
『次は...あれ?モスティマちゃん?』
『どうしたんだい、そんな豆鉄砲食らった羽獣みたいな顔して。』
『いやさっきあなた宿舎に...』
『なんの事かな?』
『アッハイ。』
『ほーら行くぞ!』
『嫌よ。絶対出ないわ。あと尻尾引っ張らないで。』
『ニェンちゃん?まだ来なくてもいいのよ?準備中だから。リィンちゃんとチョンユエさんも何か言ってちょうだいよ。』
『光陰矢の如し。二人がこんなふうに戯れあっているのは何年ぶりだろうね。』
『あぁ、ギョクソウと言ったな。これからも妹たちと仲良くしてやってくれ。』
『え、あ、はい。こちらこそ...いやそうじゃなくねぇ!?』
「...なにこれ...情報量やっば...」
「...ゃん、ランちゃん、スズランちゃん!」
「ふぇあっ!」
「ぐっすりだったね。それだけ今日は疲れたのかな?はは、ロドスに着いたよ。」
ロドスのオペレーターの方が私を起こしてくれたみたいです。
「えっあっ、ありがとうございますっ。」
「いいよいいよ。お疲れ様〜」
夕日を背にして手をヒラヒラと振って見送ってくれるのに対して私も振り返した後、自分の部屋に向かうことにしました。
「ふう、なんだか今日はとっても疲れちゃいました...」
ドクターさんのお部屋を通る時に、気になる声が聞こえてきました。
「ッシャオラァァ!終わりィッ!」
「この声...お姉ちゃん?」
そーっと扉を開けちゃいました。
「最後らへんは私もアーミヤも寝てたけどね。...あ。」
覗き込んでたらドクターさんと目が合ってしまいました。
「なによドクター。なんか変なものでも見え...あ。」
お姉ちゃんとも目が合ってしまいました。
お姉ちゃんは私を見つけた瞬間に扉を開けて、気が付いたら抱っこされちゃってました。
「おかえり。怪我はない?執務室に何か用事?」
「い、いえ、近くを通ったらお姉ちゃんの声が聞こえたから...気になって...」
「そう...そうなのね。無事でなによりよ。」
「もうっ、そんなに心配しないでもいいじゃないですか。」
「リサの実力は信じてるわ。でも偶然なにかがあったらって思うと心配なの。」
「...うん。」
「わかってないわね?まぁいいわ、無事だったんだから。」
いつも通りのお姉ちゃんの声を聞いているとだんだんと瞼が重くなってきました。
脚に力が入らなくって、倒れちゃいそうになった時なにかに受け止められて、眠ってしまいました。
「ん、スズランどうしたの?」
「疲れが限界に達したんでしょうね。ドクター見てよ、いい顔して寝てるわ。」
扉が開く音と共にもう一人のギョクソウが入ってくる。
「...もう入って大丈夫?」
「別にやましい事じゃないんだから隠れなくっても良かったじゃない。」
「私が増えてたらそれだけでただ事じゃないって思うでしょうが。」
「はいはい、それで?私Aは準備終わらせてた?」
「飾り付け終わらせて料理の仕込みも終わった。だからあとは丁度いい時間で向かうだけ。」
「そうなのね。...ドクター、この子お願い。」
「な、なんで?」
「私たち消えるから。私Aの負担今すごいことになってるらしくてね。私Rまで居るらしいわ。」
「あ...うん。わかった。」
「んじゃ、その子は七時ちょうどぐらいに連れてきてね。アイマスク使う?置いとくわね。」
「お疲れ様。二人とも。」
「「おつかれ〜ばいびー」」
古臭い言葉を発して霧散した。
「ん...まくらかたい...」
「...起きた?」
「(お姉ちゃんじゃない...だれ...?)」
「ぱ、ぱ...?」
「ぱっ...!?ゲホッゲホッ!違うよ!?」
「え...あ...ドクターさん...?ご、ごめんなさいっ!しかもこれドクターさんのお膝っ...!ごめんなさいごめんなさい!今どきますっ!」
「そこまで焦らなくてもいいよ。それよりも、起きたのなら一緒に来て欲しいところがあるんだ。」
「え、どこ...ですか?」
「んー、秘密。これ付けて、手を繋いで一緒に行こうか。」
「は、はい...?」
(´・ω・`)
「ぶふっ!」
「え、な、なんですかっ!?」
(´・ω・`)
「いや、可愛いアイマスクだなって。」
「そう...ですか?」
(´・ω・`)
「(なんてもん渡してんのアイツぅぅぅ!)」
「ドクターさん?」
(´・ω・`)
「なんでもない。うん、じゃあ行こっか。」
「はいっ!」
(´・ω・`)
「(うぅん...どこに向かっているんだろう...んっ?止まった。)」
「スズラン。今日を忘れられない日にしようか。」
「(扉の開く音...どこのお部屋なんでしょうか。)」
「マスクを取っていいよ。」
「は、はいっ...?」
パンッ!
「わひゃあ!?」
「あははっ!びっくりした?」
「お姉ちゃん?他にもたくさんの人が...これは一体...」
「まあまあ、こっちおいで。ドクター、ここまでありがとう。」
ギョクソウはドクターからスズランを受け取り、そのまま手を繋いで一番前の少し開けたスペースまで連れて行った。
そこに着いた時、スズランの脇に手を通して持ち上げ、他の人々にも見えるように掲げると話し始めた。
「今日の主役が来たわよー!」
「...ライ〇ンキング?」
「確かに。」
「ライオン〇ングじゃん。」
「スズランちゃんはシ〇バだった...ってコト?!」
「おーいそこうるさーい。」
野次を飛ばしてくる連中にツッコミをしてからスズランを下ろす。
「お、お姉ちゃん...これ、なにっ...!?」
「え?リサの誕生日会。ここにいる皆、リサのお祝いに来たのよ?...まぁ何人かは違うけど...」
「「はぐはぐはぐはぐ...!」」
「ケーちゃん、他の人の分まで食べたらダメだからな?」
「はぐはぐはぐ...んぐっ。うん!わかった!ヴァルカンお姉ちゃん!」
「ルナカブもだ!」
「はぁ!?」
「主にそこの野生児二人と向こうの呑んだくれども。」
「えあっ、私ぃ?あははは!」
「おい...さすがに節度は守った方がいいと思うぞパラス?リィン姉も黙って注ぐな...シーちゃんもなんか言ってくれよ!」
「雄大なる大海に浮かぶ小さな島で出会った同志、少しぐらい贔屓してしまうものだろうね?」
「好みが合致したから呑みあってるだけでしょ。もう二瓶空にしておいて...よく言うわね。」
「...リサは将来ああなったらダメだからね。」
「...?」
「ふふ、わからないならいいのよ。ささ、あんまり長々と話してたら料理冷めちゃうし、始めましょうか。リサ、コップをどうぞ。ジュース入ってるから気をつけてね。」
未だに少し困惑しながらも受け取る。
「じゃあ音頭とってくれるかしら。本日の主役ちゃん?」
「はいっ。み、みなさん。今日は本当にありがとうございますっ!か、かんぱいっ!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
静かだった会場は瞬く間に喧騒に包まれる。
至る所から笑い声が上がる。
「ったく、誰が主役かわかったもんじゃないわね...あぁリサ、ちょっと待って。」
「...?」
「手ぇ出して。...はい、プレゼント。」
スズランの小さな手のひらから溢れるぐらいの大きさのプレゼントボックスを置く。
「わぁ...!ね、ねぇ...」
「もちろん今開けていいわよ。」
丁寧に一つ一つ包装のリボンを解いていき、箱が開く。
そして、中に入っていたものを取り出す。
「これって...」
「えぇ、私とリサとこの子のぬいぐるみ。手作りなのよ?」
『がふっ!』
いつの間にかスズランの横で炎狐が尻尾をパタパタと振って座っていた。
ぬいぐるみを見つめていたスズランの尻尾もパタパタと動き始める。
「か、かわいいっ!大事にするね!お姉ちゃん大好きっ!」
「(がふっ...!破壊力やば...)」
「ふふ、ありが...っ!?」
突然腰の辺りに衝撃が来る。
見てみるとスズランが抱きついていた。
「お姉ちゃんわかって無さそうだから...大好きのぎゅーですっ!えへへ、これで分かってくれるよね?」
「あっもう無理。」
何かを呟いたギョクソウは目を閉じ天を仰いで固まってしまった。
「え、お姉ちゃん?ねぇお姉ちゃん?聞いてるの?」
「...はぁ、なにをやっておりますの。あなたは...」
「あ、パゼオンカお姉さんっお姉ちゃんが動かなくなっちゃったの!」
「いつもの事ですわ。もうこの際どうしたらこの方が起きるのか、という出し物にしてみましょう。借りますわね。」
...このあとも多くの人が至る所でバカな事を始めたのは言うまでもない。
我らが光誕生日おめでとうございます。
スズランのバースデーパーティ...ギョクソウが一週間以上前から計画、根回し、協力者の確保を行っていた。
見かけた人全員に招待を送り、『さすがに何人かは来ない人いるかな〜』とか思ってたらまさかの全員来た。
なんやかんやでケルシーも来てた。
『ギョクソウ叩き起し選手権』を筆頭に様々なミニイベントが起きた。
子供たちは9,10時にはもう帰っていたが、大人たちは一部を除いて日が変わる頃までがはしゃいでいたので次の日仕事の人は地獄を見た。ざまぁ
ギョクソウ叩き起し選手権...パゼオンカ主催のミニイベント
誰が先にギョクソウをトリップ状態から引き戻せるかを競う。
優勝はシルバーアッシュ。
「スズランはシルバーアッシュ家の養子に来てもらう。」宣言で飛び起きた。
リィンと呑み比べ...吹っ切れたニェン主催
その名の通りリィンとひたすらに飲み比べをする。
ブレイズとパラスの二人がかりでもリィンが勝った。
余談だが、某近衛局隊長が瞬殺されるのを見てホシグマが爆笑していた。
チョンユエと力比べ...最初は前衛オペレーターの腕相撲大会だったが、チョンユエが強すぎて名前が変えられた。
一押しする時の掛け声がスキル発動の掛け声だったので思ったよりも周りのウケは良かった。
リーのマジックショー...こっそり酒を飲んで酔ったア主催
尚ほとんどマジックはせずに、リーは話をしているだけの模様。
スペクターとスカジの生ライブ...スペクター主催
誰でも啓蒙を得られると話題に。
二人が推しの皆様と一部の研究者にはすこぶる好評だった。
ただ問題があるとすれば、後日彼らはなんの前触れなく宙を睨むようになったことだが...些末な問題だろう。
ブレミシャインの格安DIY...ブレミシャイン主催
DIYを謳っているが実際はただの魔改造。
何を血迷ったかケルシーが作戦で使う治療器具を渡すとスナイパーライフル型になって帰ってきた。
ムリナールさんの心労は絶えない。