どきなさい!私は「お姉ちゃん」よッ!!   作:とろねぎ

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(脳が破壊される音)

飄々とした空気をまとっているが、ときたま芯のある言動をとることもある男、リー

 

そんな彼も困惑する時はある。

 

「...あー...なにしてるんですか?ギョクソウさん。」

 

「ファッ!?リーさん!?」

 

今がその時だった。

 

時は数分前に遡る...

 

ロドスはオペレーターたちの慰安という名目でドッソレスに数日間停泊することに決まった。

 

久しぶりの長期休暇にオペレーターたちは海に行ったり、はたまたショッピングや美味しいもの巡りを行うオペレーターも居た。

 

かくいうリーもその一人で、龍門とはまた違ったドッソレスの料理を適当に食べ歩いていた。

 

太陽が照り返すドッソレスを冷たいチョコスムージーをちびちび飲みながら歩いていた。

 

「(いやあ、どうしてこうしてお天道様の下を歩きながらの食事って美味いんでしょうかねえ。やっぱり、特別感ってのが...おや、アレは...)」

 

適当な思考をしているとあるものを見つける。

 

「あー、心臓が持たない...早くしてよ...!」

 

テラス席の近くにある生垣に隠れるように姿勢を下げて何かを見ているギョクソウがいた。

 

尻尾も全て地面近くに下げ、擦れてしまうのもお構い無しにぶんぶんと揺らしている。

 

「...あー...何してるんですか?ギョクソウさん。」

 

なんとなしに声をかけてみると一瞬だけギョクソウの肩が跳ねる。

 

「ファッ!?リーさん!?」

 

「ええはい、もう一度聞きますが一体何をして...?」

 

「...?なんで固まっちゃった?」

 

「えぇと、何ですかそのお面。」

 

「ん?あぁこれ、狐面。顔隠すのにちょうどいいからさ。」

 

「はあそうですか。では、なんで顔を隠す必要がおありで?」

 

「アレ見てアレ。」

 

「んー?」

 

ギョクソウが指さした先を見ると、スズランがテラス席の一つに腰掛け、落ち着かない様子で辺りを見回していた。

 

彼女を知っている者なら、一目で誰かを待っているとわかるだろう。

 

ただ、待ち人がギョクソウ以外の誰か、というのが珍しい話だった。

 

「あー...スズランさん、ですねぇ。それがどうされました?」

 

「あの子、今日はちょっとおめかししてるのよ。かわいい服着て。」

 

「あぁ確かに、いつもよりもべっぴんさんですねえ。」

 

「ええ、『いつも可愛い』けど、今日はもっと可愛いのよ。『いつも可愛い』けどね!!」

 

「妹さんが可愛いのはわかりましたから、声を抑えて抑えて。スズランさんに見つかりたい訳じゃあ無いんでしょう?」

 

「あ、えぇ。ごめんなさい。」

 

「それで、おめかししてる事の何が問題で?」

 

「リーさん、あの子だって女の子よ?いつもより可愛くしてる理由なんて一つしかないじゃない。」

 

「...あー...?」

 

「そう!男!ついにあの子にも春が来たのよ〜!」

 

「あぁはいはい落ち着いて...深呼吸深呼吸...」

 

「ヒッヒッフーヒッヒッフー...よし落ち着いた。」

 

「なーんかおかしくなかったですかい?」

 

「気にしないで。」

 

「はいはい...それにしても、ちと意外ですよお。」

 

「何が?」

 

「ほら、ギョクソウさんスズランさんを溺愛してるじゃないですか。もし本当に恋人だったとして、嬉しいもんなんですかい?」

 

「...」

 

「...ありゃ?」

 

「相手によってはその場でくびり殺してやる...」

 

「おっとぉ?こりゃいけねえ、用事思い出したんだった。ではおれはこれにて失礼しますよっと...ぐぅ!?」

 

「逃がさないわよお...私を一人にしたらどうなっちゃうのか私でも分からないんだからあ...!」

 

「...はあ、わかりましたよ。だからその、尻尾離してくれませんかね?掴む力が強くて痛いんですよ。」

 

それを聞いたギョクソウはあっさりとリーの尻尾を離した。

 

「いやー私運いいわね。回避70%を外して30%引き当てるなんて。」

 

「人が必死に避けてるのを、数値でデータ化しないで頂きたいもんですね。」

 

「んー、まあそれはドクターに言って。」

 

「あっ!こっち!ここですっ!」

 

「「...!」」

 

適当な話に花が咲きかけた頃、スズランの方に進展があった。

 

二人は息を潜めて身を隠し、誰が来たのかを注意深く見守る。

 

「も、もう来ていたのか?まだ約束の20分前なのに。」

 

「少し待ちきれなかったんですっ。えへへ...」

 

「え...!?」

 

「こりゃあ面白くなってきましたねえ。」

 

スズランと合流し、親しげに話すのは全身がふわふわの毛で覆われ、白と赤を基調としたペッローの男性だった。

 

ウン(・・)お兄さん、今日はお願いしますっ!」

 

「まさか、ウンのやつが来るとは...驚きましたねえギョクソウさん。...ギョクソウさん?」

 

「ウンくん...ウンくんなら...いい子みたいだし、優しくてしっかりと守ってくれそうね...ダメだ粗が見つかんねぇ...!」

 

「えーと?」

 

「てかお兄さんってなによ。お義兄さん...ってコト!?」

 

「しっかりしてくださいよ。」

 

「俺で良いのかは疑問だけど...頼まれたからにはしっかりやらせてもらうよ!行こうか!」

 

「はいっ!」

 

「リサが選んだんだからあなたでいいに決まってるでしょうが...!!」

 

「おーい?もしもーし?あの二人行っちまいますよー?」

 

「ハッ!こうしちゃおれん!尾行するわよ!」

 

「あー、拒否権は「ない!」...ですよねぇ...」

 

 

 

 

「それで、何を買うのかは決まってるのかい?」

 

「はい!ネックレス...にしようかなって、思ってます。」

 

「うん、とても良いと思うよ。じゃあスズランちゃんの気になるネックレスがないか探してみようか。」

 

「ネックレス!ネックレスですってよ!」

 

「わかりました、わかりましたから揺らさないでくだささささ...」

 

「でも、本人に聞いてプレゼントってのはちょっとマイナスね。...メモメモ...」

 

「何をそんなに姑まがいのことを...まだ恋仲って決めつけるのはちと早計なんじゃないですかい?」

 

「...?私は別に年の差なんて関係ないと思うけど?」

 

「いやそうじゃなくて...いや、違うかどうかもまだわかった訳ではない...か。よぉし、ここまで来たら最後まで付き合いますよ。でも一つ...」

 

「どうしたの?」

 

「そのお面...やっぱり外しませんか?悪目立ちしてますよ。」

 

「アレなんだ...?」

「見るからに怪しい...」

「ままぁ、あれなーにぃ?」

「見ちゃいけませんっ」

 

「...あはは...ごめんなさい。」

 

「あぁなんだ、ただの美女か。」

「いやそうはならんやろ」

「あのおねえちゃんきれー!」

「えぇ...」

 

「ふぅ、あー暑かった。」

 

「(結局目立ってますねぇ...)...おや、あの二人止まりましたよ。」

 

「本当ね。でもあそこに装飾品店見えないけど...あら良い匂い。あぁ、あの子アレ見てるのか。」

 

「何かあったかい?」

 

「あ、いえっなんでもないですっ」

 

「そう...?ならいいんだけど...あぁ、そう言えばもう3時だね。ちょっと待ってて!」

 

「えっ?えーっ?」

 

「マジかよお前ェ!?」

 

「!?」

 

「あ、やbもごもご...」

 

「何やってるんですかねぇ!?」

 

「...ごめん、あの子一人で置いてけぼりにするものだからついカッとなって...」

 

「はぁ、見てたらおれも腹減ってきちまいましたねぇ...そうだっ。」

 

「お待たせ!あとこれを!」

 

「えっあっ...クレープ...な、なんでっ、ですか?」

 

「ちょうど食べたくなってね、ほら遠慮しないで。」

 

「あ、あのっ!せめてお金...!」

 

「お店の人にサービスしてもらったんだ、いらないよ。」

 

「あ...ありがとう...ございます...」

 

「...二人で、クレープ食べてる...!」

 

「仲がいいことでなによりじゃないですか。それにしても、ウンのやつ子供の扱い妙に慣れて...あ、ウチに子供がいたか。納得ですねぇ〜んぐんぐ」

 

「...何食べてんの?」

 

「えぇ?あそこのクレープ。美味いですよ、買って損は無いってぇやつです。」

 

「あー...遠慮しとく。」

 

「おや、甘いものは苦手で?」

 

「そうじゃなくて、知らんやつの作った固形のものは体が受け付けないのよ。こればっかりは性分ってやつ。」

 

「ありゃ、もったいねぇ。こんなに美味いのに...もぐもぐ」

 

「(そういえば、あと数年でリサも結婚できる年齢なのよね...その時が来たら私って...どうなってるんだろう...)」

 

あらぬ考えが頭をよぎる。

 

『ちょりーっすwおばさんがリサの姉?あ、もうお義姉さんかw』

 

「...うぅ゙っ!!」

 

突然ギョクソウが変な声を出してうずくまってしまった。

 

あまりに突拍子のない奇行にリーも目を丸くする。

 

「どうしたんですかい!?どこか痛めでも...」

 

「...違うの...リサが...リサが連れてくる想像しちゃったの...」

 

「...何をですか。」

 

「筋肉質で肌の焼けた金髪オールバック...!!ア、ノウガ、アバババ...」

 

「...ドッソレスって美味いもん沢山ありますねぇ。」

 

「イドウスルトキニ...マタ、オシエテ...」

 

「はいはい。」

 

「ソレマデ...ムコウ、ナガメテルカラ...」

 

「わかりましたよっと。」

 

しばらく無言の二人だったが、特に気まずいなどと言ったことは感じてなかった。

 

「(あ、なんかあそこにいかにもチンピラですみたいな人が...何持ってんのあれ。)」

 

「は、え、なにやってんのアイツ。」

 

「んー?どうされましたか。」

 

「自分勝手で申し訳ないのだけど、尾行は中断よ。」

 

「...そりゃまたどうしてですかね?」

 

「ドゥリンちゃんが拉致られてる。」

 

 

 


 

 

 

人目もはばからずに一人の男がドゥリンの少女を担ぎ、運んでいた。

 

「なんで俺が...こんなことっ...!」

 

「すぅ...すぅ〜...」

 

「コイツは起きねぇし!はぁ、どこだったかなぁ...」

 

「待てやそこのお前。」

 

「いきなりなんたテメェ!?」

 

「その子、私の知り合いなのだけど...どうするつもり?大人しくこっちに渡してくれるなら...そうね、腕一本で勘弁してあげる。」

 

「何を言ってるのか分からねえけどなあ...俺は!コイツに!頼まれたから運んでんだよ!」

 

「...えっ」

 

「引き取ってくれるなら寧ろ引き取ってくれ!」

 

男はドゥリンを半ば強引にギョクソウへ受け渡す。

 

当のドゥリン本人は今も眠っている。

 

「...なんかごめんね?この子にはなんて言われたの。」

 

「あー?なんか中央図書館に行きたいとかなんとかで、俺が道案内してやるって言ったらすぐ寝やがった。」

 

「本当にごめん。」

 

「ありゃあ、もう終わったんですかい?無事なようでなによりです。」

 

「私の勘違いでした...この人ただの親切な強面お兄さんでした...」

 

「じゃあもう任せてもいいか?いや頼む...!」

 

「任せてちょうだい。ありがとう。」

 

「それで、ドゥリンさんをどうするんです?まさかこのまま連れて歩く訳にも行かないでしょうに。」

 

「保護者呼ぶわ、ちょっと待ってて。」

 

前よりは良くなったがそれでも不慣れな手つきで携帯電話を操作し、電話をかけたのか耳に当てる。

 

「......」

 

『はいもしもし、こちらノイルホーン。』

 

「お前の部隊員、ドゥリンは預かった。返して欲しければ今すぐ...今すぐ...リーさんここどこ?

 

「ドッソレス東区ですよ。」

 

「ドッソレス東区にあるクレープ屋の前に来い。」

 

『あー、ウチのドゥリンがなんかやっちまいましたか?』

 

「冗談冗談。訳あってお眠なドゥリンちゃんを保護しただけよ。」

 

『あぁなるほど。ありがとうございます。んで、クレープ屋?東区?ちょーっと待っててくれよ。』

 

──この後、無事にドゥリンを迎えに来たノイルホーンに渡した。

 

もうスズランたちを尾行するのは無理だと判断し、一足先にロドス艦へ戻ることを選ぶ。

 

リーは何かを掴んでいたらしく別れ際に何故かサングラスを渡された。

 

お代は結構との事。

 

 

 

 

 

 

自室

 

「...ふぁー...」

 

ほぼ死んでいるような状態のギョクソウ。

 

ドアがノックされる。

 

「おはいりー」

 

ドアを開けて入ってきたのはもちろんスズランだった。

 

手を後ろに組んで少し遠慮がちの控えめな笑顔をしている。

 

「あぁリサ、どうしたの?」

 

「その、お話が...あって。」

 

「ヒェッ(どんなお話?)」

 

「...?」

 

「なんでもない、続けて。」

 

「えっとねっ...これっ!」

 

スズランが後ろに組んでいた手を前に突き出した。

 

その掌の上には小さな小袋が乗っていた。

 

「...えっ?」

 

「ぷ、プレゼントっ...!お姉ちゃんのお誕生日に何も出来なかったから...少し遅いプレゼント!」

 

「デート...してたんじゃないの...?」

 

「デッ...!?違うよ!アレは、ウンお兄さんにお願いしてプレゼント選びを手伝ってもらったの、もうっ!」

 

「えっ...アッ...わ、ワァ...!」

 

「えへへ、ビックリしちゃった?この前のお返しっ。ほら、開けて開けて!」

 

言われるがままに袋を開けると中からスズランの花をモチーフにしたネックレスが出てくる。

 

スズランはイタズラが成功した子供のような無邪気な顔でギョクソウの反応を伺っていた。

 

ギョクソウはそれを身に付けるとスズランに笑いかけた。

 

「すごく...うれしいわ...ありがとう。大事にする。」

 

「喜んでくれて良かった!私までドキドキしちゃったよ。」

 

「てっきり...リサに好きな人が出来てデートでもしてると思ったのにねぇ...」

 

「好きな人...?」

 

「まだ分からないならいいのよ。」

 

スズランは少し考え込んだあと、こう言った。

 

「私、みなさんのことが大好きですっ!」

 

夜の室内なのに暖かな光が差し込む。

 

「(ヤバ溶ける...!あ、サングラス!...ふうなんとかなったわ。)」

 

リーから貰ったサングラスを思い出しなんとか一命を取り留めるも更なる追い打ちがやってくる。

 

「でも、お姉ちゃんはもっと大好き!」

 

「アッムリ」

 

...ギョクソウは溶けた。

 

 


 

 

スズラン...プレゼントにネックレスを送る系ヴァルポ。

ちなみにプレゼントにネックレスって「あなたと一緒にいたい」・「あなたは私だけのもの」って意味があるらしいですね。

いや特に関係ないですけどね?

 

リー...美味しいもの巡りしてたら重度のシスコンに絡まれた。

ギョクソウが他のところ見ている時に、スズランとウンの会話で目的が判明したからとりあえずサングラス渡しておいた。

 

ウン...スズランが困っているのに声をかけた結果、プレゼント選びを手伝うことになった。

クレープに目を奪われてるのに気付いて買ってくるあたり、気遣いとかそういう所凄い出来ると思う。(小並感)

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