どきなさい!私は「お姉ちゃん」よッ!!   作:とろねぎ

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...西洋の物の怪?

「oh......」

 

「本気で言っておりますの!?」

 

「お前...今までどんな所で育ってきたんだ?」

 

ドクターは軽く天を仰ぎ、アーミヤはそんなドクターをどうにかしようとあたふたしている。

 

一緒に来ていたパゼオンカにはドン引きされ、ドクターの補佐を務めていたサリアには心配をされた。

 

元凶でもあり、張本人のギョクソウは、パゼオンカにドン引かれているのを少し癪程度に思っているだけだった。

 

なぜこうなっているかと言うと、先程のギョクソウの発言である。

 

 

 


 

 

仕事が立て込み、人のものとは思えないような呻き声を小さく上げていたドクターにさらに追加の仕事を持ってきたパゼオンカ。

 

それに野次馬しに来たギョクソウを見たドクターが発端でもあった。

 

「そういえば、もうそろそろクリスマスだけど、みんなはプレゼント用意した?」

 

「あぁ、イフリータに図鑑をプレゼントする予定だ。」

 

「やめてあげよ?イフリータが可哀想...ほら、サイレンスとよく相談してさ...もっとこうさ...」

 

「わらわは、特に用意しておりませんわね。」

 

「渡す相手いないもんねwww」

 

「張り倒しますわよ。」

 

「ギョクソウ、お前はどうだ。...ギョクソウ?」

 

あまり反応が無いギョクソウを気にかけてか、サリアが話を振った。

 

しかし、首を少し傾げて

 

「...クリスマス...?プレゼント...?」

 

と明らかな疑問を口にした。

 

その言葉に、その場にいる全員が目を見開いた時、やたらと圧のある間伸びした声がドクターを襲った。

 

「ドークーター?」

 

「ヒェッ」

 

「まだ終わってないお仕事は沢山あるはずですよ?ですから...」

 

「待って!待ってアーミヤ!ギョクソウが...!」

 

「...な、なんですか?」

 

「クリスマス知らないらしい!」

 

「...え?だ、だったらギョクソウさん。聖夜、クリスマスプレゼント、サンタクロース、これらの言葉は分かりますか?」

 

「え?え?聖夜は...字の通りでしょ?クリスマスプレゼント...は、クリスマスのプレゼント?で...サンタクロース?サンタクロースってなに?」

 

「「「......」」」

 

アーミヤを除く三人が「マジかよこいつ」という目で見ているのをアーミヤが軽く諌め、サンタクロースについて簡単に説明した。

 

クリスマスの夜にプレゼントを子供たちに配ること、トナカイのひくソリで空を飛んで移動することなどなど...

 

それらを聞いてのギョクソウの反応が悪かった。

 

「...西洋の物の怪?」

 

そして、冒頭に戻る。

 

 

 


 

 

価値観の古いギョクソウから見た、極東以外の地域での伝説・口伝は、フィクションではなく現実に存在する怪異という見方をしていた。

 

よりにもよって『物の怪』呼び。

 

ギョクソウからして見ればサンタクロースは『人に贈り物をする老人の怪異』だった。

 

仮にもスズランの保護者がそれは不味いだろうと、真実を知っている全員の意見が一致した。

 

問題は誰が教えるかだった。

 

仕事で忙しいドクターとアーミヤは省き、子供のオペレーターとドゥリンのオペレーターと接触禁止令を出されているドゥリコンは論外。

 

そうなると、消去法で残っているのはサリアしか居なかった。

 

「てことでサリアごめん!お願い出来る!?」

 

「...わかった。」

 

この瞬間、サリアの業務はドクターの補佐からギョクソウへの一般教育になった、

 

皮肉にも、彼女とサイレンス、そしてイフリータの三人で『ライン生命一家』と密かに呼ばれていたのであった。

 

それを知ったギョクソウが気まずそうに謝るのはまたあとの話...

 

それよりも今はギョクソウだ。

 

「ギョクソウ、あー、サンタクロースというのは、実はだな...」

 

「あ、待って。先に一個聞きたいことがあるの。」

 

「...何をだ?」

 

「さっき言ってたわよね。サンタクロースはプレゼントを配るって、でも、あなた達も配るプレゼントを用意してた...どういうこと?二つ以上渡してもいいの?」

 

突然の質問だったが、お陰ですぐに話せるとサリアの気も楽になった。

 

「それについて話したかったんだ。助かるよ。」

 

「???」

 

「実はサンタクロースはな...居ないんだ。」

 

「...」

 

「......」

 

「......え?」

 

「...」

 

「どういうこと?」

 

「そのままの意味だ。」

 

「いやもっとわかんないんだけど...え?居ないの?サンタクロース。なんでそんな事が分かって...」

 

「これは、科学的にわかっている事だ。...本当にサンタクロースが居たら、このテラは毎年滅んでいる。」

 

「え、えぇー...?」

 

手っ取り早く伝えたがために訪れた微妙な空気を払うようにサリアが今一度話し出す。

 

「子供たちもクリスマスプレゼントを楽しみにしているんだ。ただそれをサンタクロースの仕業にしているだけで、本当は親...保護者がプレゼントを送っているだけだ。」

 

「あ、だから私にプレゼント準備してるか〜なんて聞いたのね?」

 

先程から続く怒涛の超展開にもある程度の理解を示して自分なりに納得のいく結論を導き出した。

 

あまりにもあっさりと理解したギョクソウの顔を、サリアは安心と困惑の間にあるような顔で見つめていた。

 

「...あら...?クリスマスって...」

 

何かに気付いたギョクソウが目を見開いて固まる。

 

腕を組んだり、顎をさすって何かを思案するギョクソウの顔色が少しづつ青くなっていく。

 

まるで、今朝出かける時に鍵をかけていなかったことに気づいたような。

 

忘れていた至極重要な事柄を思い出したように。

 

やがて冷や汗が頬を伝って顎にそい、落ちた。

 

「...サリアちゃん。」

 

「あぁ。どうした?」

 

「あの子の、プレゼント...用意して無い...!」

 

「え?...あぁ、そうだろうな。だからこの話を「今からプレゼントを準備しに行ってくるわね!」

 

「待て。」

 

謎に決心したような顔で駆け出すギョクソウの後頭部をサリアが掴み取った。

 

みしみしと痛々しい音が響く。

 

「ぎゃぁあああ!!頭がぁぁ!!?」

 

「すっすまん。そんなに強くしたつもりはなかったんだが...」

 

「アタマ...ワレルカトオモッタ...」

 

「そんなにだったか!?」

 

「ぷふっ...あーっはっはっは!みっともないですわねぇギョクソウさん!」

 

いつの間にか、パゼオンカもこの場に参入し大笑いしていた。

 

「...」

 

ぱちん

 

『ギャウギャウギャウ!』

 

「ひーっ!」

 

ギョクソウが指を鳴らすと虚空から形作られた炎狐がパゼオンカに飛びかかった。

 

そして、あっという間にパゼオンカを組み伏せて頭をがじがじする。

 

「あーっ!この感覚久しぶりですわね!?あっちょごめんなさい!謝りますから!謝りますからーっ!」

 

悪は滅びた。

 

「...」

 

「...」

 

「...なんか、ごめんね?」

 

「はぁ...いや、いい。」

 

「えーと...アヴドーチャ持ってっちゃって。」

 

『わふっ!わふわふわふっ...』

 

「アーッ!今回はわらわが悪かったですわーっ!」

 

そのまま外に引きずられていくパゼオンカ。

 

「(コイツはなんで来たんだ...?)」

 

「(なんであの子来たのかしら...)」

 

二人ともよく分かっていない状況だったが、サリアの咳払いを合図として再び会話を始めた。

 

「それで、なんで私を引き止めたわけ?」

 

「プレゼント、スズランに渡すんだよな?」

 

「当たり前じゃない。」

 

「なら先にスズランの欲しいものをそれとなく聞き出すんだ。そっちの方が良いだろう?」

 

「...どうしろと?」

 

「ほら、さっき丁度いい嘘を教えてやっただろう。」

 

「...?」

 

もう一度腕を組んでゆっくりと記憶を振り返っていく。

 

そして、一つ思い出した。

 

自分がさっき怪異扱いした存在のことを。

 

「サンタクロース...!」

 

 

 

 


 

 

「スズランちゃんの手紙...ですか?」

 

「えぇ。サンタクロースへの、ね。」

 

「あ、はい。ありますよ。少し待っていてもいいですか?」

 

「(もっと緩く話してくれていいのに...)」

 

ギョクソウは、スズラン...ではなく、ロドスに所属するトランスポーター、アンジェリーナの元を訪れていた。

 

理由は単純で、子供たちがサンタクロースに宛てた手紙を彼女が預かっている、とつい先程ドクターから教えてもらったからだ。

 

「(...別に、リサに聞くのを躊躇ってるわけじゃないわよ?)」

 

「えっと...これ?...じゃない。これだっけ...あれっ?」

 

せっかくの機会だと思ったギョクソウは口を開いた。

 

「...そういえば、アンジェリーナちゃんは何か欲しいものないの?」

 

「ん〜...んえっ!?私ですか!?」

 

「それ以外に居ないでしょ。」

 

「そうですね〜...はい、特にないですね。あ、でもドクターからなら...

 

「(乙女だ...乙女がいるわ...)」

 

「逆に、ギョクソウさんは無いんですか?」

 

「...あの子に笑っていて欲しい...じゃダメかしら?」

 

望んでいた、もしくは思っていた返答じゃなかったのか、アンジェリーナはギョクソウの顔をまじまじと見つめて目を閉じたり開いたり繰り返している。

 

「い、いえ!良いと思います!ウソ、それだけだと困るんだけど...!

 

「?」

 

「あ!そういえばここに入れたかも!」

 

ハッと思い出したように、パンパンに膨れ上がったバックからあぁでもないこうでもないと手紙を次々取り出しては戻し、取り出しては戻し...

 

「...ごめんね?忙しかっただろうに...」

 

「んぅ〜...あっ!い、いえ!スズランちゃんのお手紙は元々ギョクソウさんに渡す予定でしたので!」

 

「...もうちょっと緩い感じで話してくれると嬉しいな。」

 

「んえっ?」

 

「別にこのままの方が落ち着くってのならいいんだけど、ちょっと寂しいかも。だから...ね?」

 

どもるアンジェリーナ。

 

誤魔化すようにバッグに視線を戻して荷物を探し始める。

 

「えーっと...目上の人には敬語を使わないと...」

 

「真面目ぇ〜」

 

茶化すように笑って言うギョクソウの表情の変化に、アンジェリーナが気付くことは無かった。

 

「...あれ?どこに入れたかなぁ...あっ!もしかして...」

 

「え、何?」

 

「貰って...ないかも...!!」

 

「...くふっ...!」

 

まさかの思い違いだったかもしれないという事実を、とんでもない間違いを犯したかのような顔でいるアンジェリーナに、ギョクソウも思わず吹き出してしまった。

 

「それ...ふふっ、ホント?」

 

「は、はい!ごめんなさいごめんなさい!」

 

「あーあー!そんなに謝らないで!もともとは、私がアンジェリーナちゃんに声をかけたのが悪かったんだから。」

 

「うぅ...ごめんなさい...」

 

「いいのよ。それならそれで、本人に聞いちゃえばいいんだからね。」

 

「そう、ですか。」

 

「そうそう。んじゃ私行くから、頑張ってね〜」

 

軽くアンジェリーナの頭を撫でたあと、尻尾を揺らして歩いていった。

 

一、二本程度下を向いて床に引き摺っていたが。

 

アンジェリーナは、その余裕そうな背中から大人の貫禄と言うべきであろう物を感じ取っていたのか、少しの間だけ呆けていた。

 

しかしすぐに我に返って今すべきことに戻った。

 

一方ギョクソウは...

 

「(え?私が聞くの?リサに?それとなく聞き出すなんて私に出来ると思ってる訳?はー、キレそう。いやもうキレていいかな。キレ散らかしてキレッキレのキレ子ちゃんなんだけど。)」

 

大人の余裕(笑)を見せつけていた。

 

普段はロドスのエリートオペレーターとして、スズランの姉として任務も業務もそつなく、ノルマ以上の成果を出して終わらせるギョクソウだったが...

 

「(どうしよぉー...)」

 

変なところでチキンだった。




これでクリスマス当日に間に合わなかったらどうしよう...
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