前回の死にかけギョクソウとは別の話です。
二話ぐらいの構成を予定
珍しく席に座り、デスクやら小難しそうな書類とにらめっこをするドクター。
なんならこちらの方が本来の姿なはずだが?
「ワ、ワアッ...タ、タノチイ...オシゴト、タノチイ...」
ただ、理性はとっくにゼロのようで、デスクの上には的には空のアンプル容器のようなものが散乱している。
「オ、オシゴト、オ、オチ...アッヒャッヒャッヒャッヒャ!!!」
「おーおー、いつにも増して限界そうじゃねぇか。どうした?まぁたこんなもん使ってよ。」
空の容器を指先で潰した声の主は、赤い鱗の生え揃った尻尾を揺らしながらドクターの目の前...デスクの上に腰を下ろした。
「ア...ア...チゴト...」
飛び散る書類に気を取られているドクターが気に食わなかったのか、ニェンはドクターのフードを掴んで無理やり目を合わせると、一つ指を立てた。
「ドクター、1+1は?」
「おりじむし」
「よぉし、そんなドクターに良いもん持ってきてやったぞ。気に入ること間違いなしだ。私と...あぁ〜...リィン姉が保証すっからよ。」
大仰に扉まで歩みを進めて、こちらへ意味深長な笑みを投げ付けるニェン。
「おーい、入ってこいよ。おい何をうだうだしてんだよ。中身まで戻っちまってんのか?ったく...」
「ほらよ」とニェンが連れてきたのは、着物を着た6歳だとか7歳だとか、そのあたりだと思わしき少女。
「...?」
不安そうな顔でニェンとドクターの顔を何度も見ては、後ろに多く生えた白い尻尾を抱く。
「じゃーん!どうよこれ!」
「ニェン...」
「...誘拐は良くないと思う。」
「いや誘拐じゃねえし。おいおいおい、よく見てみろってこのふてぶてしいツラ!誰かさんにそっくりじゃねぇか?」
まじまじと視線を送るドクターに気圧され、少女がついに二本目の尻尾を抱き始めた頃、なにかに気付いたようだった。
「...え...?そんなはずは......ギョクソウ?この、子供って。」
「まあ半ば事故みてぇなもんだけどな。よっ。」
「っ!?」
突然ニェンの肩に抱き上げられたことがよほど驚いたのか、ばたばた暴れる小さなギョクソウ。
「おーい暴れんな、落ちんぞ?」
「いや...にわかには信じ難いけど、まあ...ニェンだし...」
「あぁ?だぁから、今回は私じゃねぇって。リィン姉のやらかしだ。」
「...何があったの...?」
いつの間にか理性を取り戻していたドクターに、ニェンは事情を説明し始めた。
その数分後、ドクターの部屋の扉を軽くノックする者がいた。
「ドクターさん?入ってもいいですか?」
せいいっぱいに声を出すと、中からくぐもった声で「いいよ」と声が聞こえたので、ドアノブを回して中に入ります。
「何かあったんですか?」
「まあ...うん。」
ドクターさんの返事は、どこか煮え切りません。何か言いにくいことがあるみたいな...
「その、色々仕事があるスズランに、またこれ以上お願いするのも申し訳ないんだけど...今日一日、この子の面倒を見てくれないかな?」
そう言ったドクターさんの後ろから、なにか白い...小さなものが私に駆け寄ってきました。
「......」
私の服をぎゅっと掴んで、不安そうに尻尾を抱いているヴァルポの女の子。
あれ?この子の尻尾...
「...わっ...!」
「!?」
「あ、ご、ごめんね。尻尾が九本ある子、私とお姉ちゃん以外で初めて見たからつい...怖がらせちゃった?...ドクターさん、この子は?」
「...ニェンが...保護した子だよ...」
「ニェンお姉さんが?あ、この子の歳って...?」
「7歳くらいかな。だから、今はスズランの方がお姉さんだね。」
「お姉さん...!」
いつもは呼ぶ立場ですが、なんて素敵な響きなんでしょう!
「本来なら然るべき所に預けるべきなんだろうけど、ちょっとこの子は特殊で...だから、今日一日任せてもいいかな?スズランお姉さん?」
「はいっ!任せてください!」
失礼しましたと一言伝えて執務室から出た時、大人しく繋いだ手を握って私を見つめてくる女の子が、さっきの「お姉さんだね」という言葉を思い出させてきました。
「〜っ!」
尻尾をぱたぱた揺らして、嬉しいのを隠しもせずにしゃがみこんで目線を合わせると、女の子がわずかに身を引きました。
やっぱり、さっき大声を出しちゃったから怖がられてます...
「えっと...お名前は?なんて言うの?」
「......」
まだ怖がっているのか震えている女の子を、優しく撫でてあげます。
ゆっくり、ゆっくり。
髪をとくように優しく。
根気強く撫でていると、震えた声で答えてくれたんです。
「......た...たま......も...」
「たま?可愛い名前だね。」
最後の方が聞こえませんでしたが、たまちゃん。可愛い名前です。
「私は...あっ...スズランでも、リサでも、好きな方で呼んでいいよ。」
「り、さ?」
「...はい!」
リサお姉さん、と呼ばれなかったことが少しだけショックです。
けど...この子を一日ちゃんと見れたら、きっとお姉ちゃんも褒めてくれるよね?
「たまちゃん。私から離れないようにね?」
「......ん...」
こくりと頷いては、またぎゅっと手を握る。
口数も少ないし、恥ずかしがり屋な子なのかな?
お姉ちゃんならもっと上手く出来るかもしれないけど、お姉ちゃんは任務に行ってるって...ドクターさんが言ってたし...
やっぱり、私が頑張らないと!
「?」
あとがき
中身まで戻ってます。
おはようじょってことか?(明察)