どきなさい!私は「お姉ちゃん」よッ!!   作:とろねぎ

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無題

 

 

 

思い付きで計画を踏み壊していく人のみ私に石を投げなさい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緻密な計画を立てて実行に移せる人は私に源石爆弾を投げなさい

 

 

 

 

 

 

やりたい事的にこっちの方が都合良くなっちゃったんです本当にごめんなさい

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「ワ、ワア...!ヤット、ハンブンッ...!」

 

取り囲むようにデスクへ積み重ねられた書類の山の中で、いつものようにドクターは理性をすり減らしていた。

 

床にいくつもの理性剤の容器を散乱させて、正直かなり危なそうな痙攣をしながらも丁寧に仕事を片付けていた。

 

一枚、また一枚と処理を続け、その努力を認めるようにデスクの上から執務室の姿が顔を見せ始める。

 

安堵したその時だった。

 

「終わった?じゃあ次ね。」

 

モノクロの奇妙な四足歩行の生き物が群れを成して、再びドクターの周囲を書類で囲った。

 

「キャ----ッ!!!!」

 

「生娘みたいな悲鳴を上げないでくれる?構想が崩れるから...今、良い感じなの。もう少しでぴったり決まる...」

 

それをなんの興味も無しに跳ね除けて、ソファの上で目を閉じるシーへ不満を募らせるドクター。

 

当のシーはソファへ寝転び、快適に過ごしている。

 

「...秘書なのに...全く手伝ってくれない...」

 

「やりたくてやってるわけじゃないわ。あのバカの穴埋めとお詫びだなんてあの人が言い出さなければ...」

 

「仕方が無いじゃないシーちゃん。ニェンったら、やるべき事も放り出してお友達と旅行に行っちゃったんだから。」

 

そしてシーを諭すようにドクターの味方をしながらシュウが扉を開き、デスクとは別のテーブルへその手に持っていたものを下ろした。

 

「無理をしても仕事は進まないわ。適度に休んで、自分のペースで歩きましょう?」

 

そして猫でも持ち上げるようにドクターを運び、料理の置かれたテーブルの前へ座らせた。

 

「マ、ママァ...!」

 

「私はお母さんじゃないわよ?」

 

「イタダキマス!オ、オイチッ!オイチィヨッ!オギャァァァ...!」

 

「...はあ...理解に苦しむわ。あなたも、姉さんも、あのバカも。」

 

「全てを理解し合える人なんて居ないわ。あのほら...ニェンが懐いてる子だって、姉妹仲は良好だけどどこかすれ違っているじゃない。」

 

「......まあ、確かに...否定は、しないけど。」

 

「お互いにお姉ちゃんだから、たまに話すこともあるのだけど...どうしてあそこまで自分を好きになれないのかしら?」

 

ひたすらにシュウの手料理を頬張るドクターを見つめながら、独り言のように件のヴァルポについて話す。

 

「ギョクはそういう質なんでしょ。自分を愛せない。人を愛することでしか満たされない。一人になりたいのに誰かの傍に居たい。そんな矛盾した本性を......何よ姉さん。」

 

「いいえ?ただ、お姉ちゃんよりもシーに懐かれていて羨ましいなって思ったの。そんなに饒舌になるなんてちょっとだけ妬けちゃうわ。」

 

「.........忘れて。それと、絶対ニェンには言わないで。」

 

「えぇ。」

 

寝返りを打つように顔を隠したシーに、シュウは微笑ましいものを見るような目で頷いた。

 

シーの尖った耳が、わずかに赤くなっていたのを理性の回復したドクターは見逃していなかった。

 

それはもちろんシュウもだが、わざわざそれを指摘する理由も無いと考え、今度はドクターを見た。

 

「あら、少し作り過ぎたと思ったのだけど...ちょうど良かったみたいね。美味しかった?」

 

「シュウの料理が不味かったら一体何が美味しいのかって感じ。」

 

「良かった。いくらあなたが機械みたいと言っても限度があるの。農業機械にだってメンテナンスは必要なのよ?それをよく覚えておいてね。」

 

「...分かったよシュウ。」

 

実の姉のように甲斐甲斐しく世話を焼くシュウにドクターは頭が上がらない。

 

「これからは適度に休むから、シュウも自分の仕事に戻ってくれ。忙しいだろう?」

 

そう言って立ち上がったドクターのポケットから、電話の受信を知らせるアラームが鳴り響いた。

 

「ん?誰だろ...あ、この番号は...」

 

見慣れた番号だったため、特段何も思わず応じた。

 

ただ、『旅行中なのに何かあったのかな?』程度の考えで。

 

「ギョクソウ?休暇は楽しんでる?」

 

そう開口一番プライベートに足を踏み入るドクターだが、予想だにしない返事が返ってきた。

 

『アイツじゃねぇよ。私だよ私。ドクター、私私。』

 

一昔前に流行った詐欺のような口調で私と連呼する人物の声を、しっかりとドクターは認識できた。

 

「...ニェン?」

 

『正っ解!今度帰ったら飴ちゃんやるよ。』

 

「前鷹の爪味とか渡してきたくせに?そうやって辛い飴渡されるとトラウマが蘇るからやめて。」

 

ニェンの冗談に一通りの応答をして、本題へ。

 

「それで、なんでこの番号でニェンが掛けてきたの?ギョクソウに...何かあった?」

 

『...それ聞くか?』

 

「......あぁ。」

 

突然変わった声色に、ドクターも固唾を飲んで次の言葉を待つ。

 

向こうからはただ息を吸う音が聞こえた。

 

ニェン自身も、言うのを躊躇っているように。

 

そして『あー...』と心の整理をつけるような、意味の無い言葉を発してから。

 

 

 

 

 

 

 

 

『死んだよ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

「......は...?」

 

そう短く告げた。

 

『葬式は要らない・弔いも要らない...これがアイツの頼みだ。体の一部は持ってっから、今から帰るな?私が説明すっから、』

 

「...頼んだ。スズランとパゼオンカは?」

 

『アイツらか?アイツらは...あー......まあ、言わないでおくわ。そっちの方が良いだろうしな。まあ少なくとも、無事に帰ってくるよ。』

 

「そうか...」

 

そんな気遣いが出来るんだなと感心がわずかに入り込んだが、それでも突然訪れた仲間の...それも、休暇と旅行を楽しんでいるはずの者の訃報は辛かった。

 

『何しょぼくれてやがる?はっ、仕方ねぇしとびきり甘い飴ちゃんやるよ。』

 

「なんでそう飴を渡してくるんだお前は...」

 

『んじゃ切るな。』

 

「あぁわか...早くない?」

 

言い終わるよりも早く通話は途切れ、ツーツーと虚しい音だけが鼓膜を打ち付けた。

 

そしてなんとなく顔を上げるとすぐ、シュウと目が合った。

 

シュウは何を言えばいいか迷うように視線を泳がせた後、露骨に悲しそうな顔になった。

 

「別れは突然よ。私も分かってるけど、慣れたわけじゃないの。だから...あなたは少し考える時間を作りましょう。ほらシー、行くわよ。」

 

「は?なんで私が......はいはい。分かりましたよ。オネーサマノオーセノトーリに。」

 

反抗的な目付きでシュウを睨み付けたシーも、やけに大人しく従い、部屋にはドクターだけが残された。

 

「...お前も、私の掌から零れていくんだな。」

 

軽率に休暇の許可を出した自分を静かに恨んだ。

 

「弔いは要らない、か...はあ...」

 

最後まで彼女らしいと思いつつ、その言葉は忘れることにした。

 

「...供える物は、何がいいかな。」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

そしてギョクソウの突然の訃報から翌日。

 

「おーっす!んだよ、まだシケたツラしてやがんのか?あぁん?」

 

サンタのように大きな袋を担いだニェンが、朗らかな笑顔を浮かべながらドクターの部屋へ入ってきた。

 

まるでパーティー帰りかのような浮かれた表情に目を丸くしていると、その視線の先に気が付いたニェンは袋を前に落とした。

 

ぼすりとそこそこの重量のあるものが落ちるような音がする。

 

その中の物を想像してしまったドクターは嫌悪感を覚えるが、取り繕って依然とした態度でニェンを迎えた。

 

「おかえり。」

 

「いやー疲れちまった。無駄に重てぇんだからよ、もう〜。」

 

ある意味様子のおかしいニェンを見ていると、袋の縛り口を開け始めた。

 

「うっし、じゃああのバカにもおかえりを言う準備が出来てっか?」

 

まさか艦内で腕とか足とか、首とか出すつもりなのかと思った瞬間、ニェンの手には大きな白い毛玉が乗っていた。

 

「......なにそれ...」

 

「アイツの一部は持ってるつったろ?九本のうち四本はダメだったけど、残りは...ほら!ほぼそのまんま!」

 

まさかの尻尾を持って帰るなんて言う猟奇的な一面に苦笑いを浮かべていると、ニェンは「んじゃこれで私はちと籠るから」と言い放った。

 

「...え?」

 

「さーて何作ろっかな〜!」

 

「頭おかしいんじゃないの?」

 

つい本音が溢れるもニェンは気にしていない。

 

「あ、そうだ。」

 

「えっなに?もう今のニェン怖いからこっち来ないで欲しいんだけど。」

 

「そう邪険にすんなって。ただ聞きてぇだけだ。どうせおめーの事だし、アイツの墓かなんか作ってんだろ?何作ってんだ?何供えてんだ?」

 

ノンデリの権化のようにズカズカ聞き入るニェンに、しばらく思考停止していたが埒が明かないと判断したドクターはニェンの淡いアメジストのような瞳を覗き見た。

 

「...ギョクソウの部屋に、花を...つまらなくて申し訳ないな。」

 

「へえ?種類は?やっぱりスズランか?」

 

「......」

 

やっぱり誰にでもわかるよなと図星を突かれて黙るドクターをまた笑うと、今度こそその袋を縛って担ぐと、出て行った。

 

「...えぇ...?」

 

「ドクター、今日もご飯を作ったのだけど...どうかしたの?」

 

「シュウ...」

 

困惑と僅かな狂気から頭痛がしたが、入れ違いで昨日のようにシュウが入室してきた。

 

「...君の妹の情操教育どうなってるの...?なんで...故人の尻尾を、お土産みたいにしてるの...?戦利品...?君の妹って蛮族だったりする...?」

 

「本当ならあの子も、そんな死人の尊厳で遊ぶようなことはしないのだけど...今回は、状況が状況だもの。」

 

「どういうこと?」

 

「そうね...あなたにも分かりやすいように例えるなら...もしも、あなたの狙っていた人全員が、今求人を出したら応募してくれるって言ったら?」

 

「貯蓄全ツッパ。」

 

「...こんな機会、滅多にない事だから、あの子も年甲斐なくはしゃいじゃってる。きっとシーも、この後いくつか貰えないかねだりに行くんでしょうね。」

 

「...頭大丈夫?君の妹たち...」

 

「えぇ。シーはともかく、ニェンはずっと人の中で生きていたのよ?普段のあの子ならそんな事はしないわ。今回はちょっと...まあ...」

 

「...やっぱりおかしいんじゃないか!!」

 

フォローしきれずに視線を泳がせるシュウに思わず叫ぶドクターだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ニェン...珍素材が手に入ってウッキウキ

 

シー...それで筆を作りたかったから嫌々頭を下げた

めっちゃ煽られた

 

 

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