嗚呼、愛しのミチャエル様   作:きよたプッチン

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あなたに一生の忠誠を誓います。ミチャエル様。




嗚呼、愛しのミチャエル様

 

 

 

 

 

【嗚呼、愛しのミチャエル様】

 

 

 

 

 

「私は、いずれこの世界を蹂躙し、征服する悪魔ミチャエル・ダテンスキー様だ!」

 

 

仁王立ちでそこに立つ肌色の悪い女性は、私が仕えている悪魔一族の末裔のミチャエル・ダテンスキー様だ。そして私は、ミチャエル様にお仕えしているセバスチョンである。

ミチャエル様に小さいころからお仕えしていて、もう160年になるだろうか。

 

ミチャエル様は、悪魔なのに羽がない。

 

肌色は青く、悪魔の角は雄々しくあるが、悪魔の特徴の羽がないのだ。

しかし、魔力は人一倍……いや、悪魔倍はあり、常々羽がないとからかってきた輩を返り討ちにしていた。

それでも、ミチャエル様を悪く言う輩も多く、そのたびにダテンスキー家の方々はそういう輩を排除してきた。無論、私もミチャエル様に仕える身。

そのような輩を千切っては投げ、千切っては投げてきた。

 

そんなお可愛らしいミチャエル様も、もう今年で166歳を迎える。立派な大人悪魔へご成長された。

ミチャエル様の曽祖父であるメチャチョロン・ダテンスキー様の命令で、異世界にいき誰かを堕落させねばならないとご命令を受けた。

 

しばらくミチャエル様も駄々をこねていらっしゃったが、ダテンスキー家の誰もが166歳になったときに受けたご命令だとお教えして、何度も何度も説得を繰り返し、ようやく「……セバスチョンがついてきてくれるならば」との一言で事なきを得た。

あのまま、駄々をこね続けていたらきっと異世界一つがポンと消えてしまうほどの大惨事になっていたことだろう。

 

異世界の者どもよ、私に感謝するべきだ。

 

さて、それはそうと早速異世界へとやってきたのはいいのだが……。

どうやらこの異世界には悪魔と呼ばれる存在は古のものとなっているようだ。

ミチャエル様が仁王立ちでこの世界の輩共に挨拶をしているというのに、まったくもってけしからん。

誰もがミチャエル様を見て見ぬふりをするのだ。

 

 

「ミチャエル…ダテンスキーだぞ……。おい、そこな……人間…聞いているのか……?」

 

 

いけない!ミチャエル様のお心は大変弱いことで有名だ。

この異世界でいうところの朝の時間。人々が多いであろう駅前というところにやってきたが、かれこれミチャエル様がみて見ぬふりをされて15分が経とうとしている。

ミチャエル様は適当な人間を指さし、じりじりと暗い顔で迫っていく。

 

「ひぃっ」

 

と逃げる人間を見て、誇らしくもあるが…これではいつまでたってもミチャエル様が誰かを堕落などさせられるわけがない。

 

これではいけないと大至急我が偉大なる父・セバスチュンに連絡を取り、対策をとることになった。

我が偉大なる父・セバスチュンもダテンスキー家に忠誠を誓っており、奥様の異世界入りの際には気を揉んだ、と聞いたとこがあったからだ。父は、「どうしてもわからないのならば、まずは情報収集だ」と、とある場所の存在を教えてくださった。

涙目のミチャエル様をなだめながらその場所へと移動する。

 

どうやら駅前などのにぎやかな場所には大体あるものらしい。

 

階段をあがり、薄暗い建物の中へと足を踏み入れる。

勝手にドアが開き、ドアの前にいる人間が不愛想にこちらをみつめていたが、小さく聞き取りづらい声で何かを言い始めた。

 

 

「…いっしゃいませ。会員にご登録はされておりますか?」

 

 

「な、なんだ人間…何の話をしているのだ!私は偉大なるミチャエル・ダテンスキー様だぞ!」

 

 

さすがミチャエル様。さきほどまで涙目でいらっしゃったのにもうここまで回復され、何よりお名前を発せられるとは。

 

素晴らしいです。

 

思わず、拍手をしそうになるが…そんな場合ではない。

先ほどの駅前の人間たちと同じ表情をしはじめた人間に、ミチャエル様はおびえてしまったようだ。

びくびくと震え、私の後ろへと隠れていらっしゃる。

 

これではいけない。

 

私はすぐさま、ミチャエル様にチャームをお使いくださいとお教えした。

ミチャエル様は涙を浮かべていた目をこすり、大きく頷く。

 

 

「下等な人間よ、我の目を見てひれ伏すがいい。ミチャエル・ダテンスキーが許そう」

 

 

その言葉を聞いたや否や、ミチャエル様の前にいた人間は急に座り込みその場で頭を地面にこすり始める。

まるで犬畜生が主に媚び諂っているように、「はっはっはっ」と発情したような息遣いまでして。

ダテンスキー家の方々は皆素晴らしい魔力をお持ちだが、ミチャエル様は特に魅了(チャーム)のお力が強い傾向にある。

悪魔のお力として、このお力は大変良いものであるといえよう。

 

「みっミチャエル様…!ミチャエル様はこちらのお部屋を…お使いください…!」

 

人間が何かのカギを渡してきた。

そこには606と書かれたプレートもかかっている。

 

……いや、もしや罠か?

 

ミチャエル様に何かあったらと思うと気が気ではない。

あまり手を貸すことはよくないと思いながら、我が主ミチャエル様をみる。

606のカギを持ちながら、どう使うものだ?と首を傾げていらっしゃる。

 

なんとおかわいらしいのか。

 

地面に頭をこすりつける人間の頭にぐちゃりと乗る。

しばらく待てば、私が人間の脳内に浸食した状態となり、奴の知る全てが私の知識へと変換される。

我が一族の能力である。

 

ふむ……次第に奴の知識が私の中に流れ込んでくる。

 

……ここは『ネットカフェ』というものらしい。

606号室は…なるほど、鍵付きの広い個室…というわけか。

そこの端末でもいろいろと調べられるし、備え付けのタブレットを使えば資料や文献も読み放題ときている。

 

これほど良い拠点もないだろう。

 

ミチャエル様のチャームの力を頼りに、我々はしばしその拠点に留まることに決めたのだった。

 

 

 

 

 

拠点制圧から7日後。

このネットカフェというのは素晴らしい!ミチャエル様もご満足いただいているようだ。

何より、部屋は最上階にあり、ミチャエル様の好きな海も見える。

海が見えたことにより、ミチャエル様も部屋に閉じこもるばかりでなく海辺周辺を散策されているらしい。

ミチャエル様に「一人の時間が欲しい」といわれて、ミチャエル様が海辺に行かれる際は私はついてはいけないのだ。

その時はしぶしぶ文献をあさることにしているが。

 

また、このネットカフェは部屋も広く、数台の検索端末があり、ベッドも広い。

恐らく、宿泊施設も兼ねているのだろう。

各階層には、漫画や小説といった文献の類も置かれており、主に少女漫画と呼ばれるものをミチャエル様は好んで読んでいるようだ。

私はこれらの文献の巻数がバラバラになっているのが非常に気になり、いつも並び替えをしている。

ミチャエル様のチャームによって下僕と化した人間からは、我も同じ店員だとでも思われているようだった。

 

そして、ミチャエル様は端末にて、とあるゲームをされるようになった。

 

それが、この自由戦闘型MMORPGである『悪魔娘オンライン』だ。

はじめはミチャエル様と同じような容姿のキャラクターを作ることができると遊び半分で始められたようだが、

今ではすっかりこのゲームにハマり込んでいる。

どうやらこのオンラインゲームを通じて、この異世界の下等な人間たちとコミュニケーションをとっているようだ。

さすがミチャエル様。まずはこのゲームから掌握してしまおうという魂胆なのだろう。

しかし、私がご進捗を聞こうと近くによると、ミチャエル様は画面を隠してしまわれる。

 

 

「なっ……なんだ!セバスチョン!何かあったのか!」

 

 

ミチャエル様は画面を背で多い隠して私を見る。

心なしか、顔が赤いように思うのは気のせいだろうか。

お熱があるのでは、と手を伸ばしたが「いやっ」と払われてしまった。

 

……ミチャエル様もお年頃ゆえ、致し方ないこと。

 

自分の不甲斐なさにため息をついてから、部屋に散らばったミチャエル様の借りてきた文献を籠にいれた。

ミチャエル様もお一人の時間が欲しいのだろう。

静止するミチャエル様に、文献を返してくるだけです、とお答えして部屋を後にする。

 

 

…さて、各階層でとってきた漫画を返しにいかねばな。

ミチャエル様にお仕えすることが、私の生きがいなのだから。

 

 

借りた本の表紙には番号と階層が書かれており、私はそこの番号と階層を頼りに文献を返しにきていた。

ミチャエル様のお借りした文献は、『CHOラブる』『家具屋さんは儲かりたい』『あせとせっかん』『青山くんに登りたいからしにたい』などなど。

表紙から見ても、恋愛要素の強いものばかり。

どうやら、ミチャエル様はご自分のチャームを使って人間を堕落に追い込むつもりなのだろう。

さすが、ご自身のお力をわかっていっしゃる。

ミチャエル様のお力を考えれば、人間などひとたまりもないはずだ。

そのようなことを考えるけれど、ミチャエル様は未だにどこか幼さを残している。

 

……なんどいうか、爪が甘いのだ。

 

この異世界に降り立った時には右も左もわからず、泣いてばかりいた。

この拠点にきたのだって、ミチャエル様のお気持ちを考えて父に相談した結果だったはず。

未だ結果が出ていないのは…このセバスチョンのお力添えが足りないのかもしれない。

足りない頭で精いっぱい考え、急いでミチャエル様の元へ戻らねばと決意する。

 

籠に入った本を全ての階層と番号を頼りに元の位置へと戻し、

下僕に成り下がった人間に挨拶をしてから、急いでミチャエル様のお部屋へと戻った。

 

ただいま戻りました、とあたりを見回すけれどミチャエル様のお姿がない。

どちらに行かれたのだろう。

ミチャエル様が先ほどまで使われていた端末の画面をのぞき込む。

画面は起動したままになっており、ミチャエル様によく似たキャラクターがにこやかに椅子に座っている。

画面の下のほうには、先ほどまでミチャエル様が交流していたであろう民草どもとの会話記録だ。

 

 

 

みちゃ♡ちょん『そういうわけでとても悩んでるのだ』

 

★yuki★『そりゃあ、かわいいお洋服を着たらいいじゃない』

 

NYANこすたー『かわいいって言ったらやっぱり夏は水着だよね!』

 

★yuki★『みちゃ♡ちょんさんのために選ぼっか!水着!』

 

ぷぎ男『え、このままオフ会やっちゃいます?俺、30分くらいでそっち行けますよ』

 

みちゃ♡ちょん『直接会ってくれるのか?それなら、作戦は今日仕掛けようと思っている』

 

NYANこすたー『ぷぎ男やらしい!私地元だからすぐだよ』

 

おしりを隠すマラリア『私遠いからパス~』

 

( ゚Д゚)gggg『俺予定あるからパス~;;』

 

 

 

会話記録はここで途切れている。

ミチャエル様はどうやら、このコミュニティに属していた者たちと会うようだ。

ならば、早く追いかけたほうがいいだろうか。

どこで会うのかなど見当もつかない。

 

困った。

 

しばらく固まって考えていると、もう一つの端末も電気がついているのに気が付く。

もしや、ここでミチャエル様は何か調べていたのだろうか。

あまり主の検索履歴など調べるのはよくないことなのだろうが、

ミチャエル様を心配する気持ちに勝てず、端末の検索履歴をフリックしはじめる。

 

『かわいい ねこ』  ちがう

 

『かわいい ねこ いぬ』 ちがう

 

『すらいむ』 ちがう

 

『かわいい すらいむ』 ちがう

 

『誘惑とは』 ちがう

 

『友人AB』 ちがう

 

『駅前ショッピングモール』

 

……これだ!

何件か見てみると、この駅前ショッピングモールだけは場所の名前なのだ。

きっとここに向かったに違いない。

ミチャエル様には羽はないが、魔力がある。

きっと瞬間移動をされたのかもしれない。

 

私は、ミチャエル様の元に向かうべく駅前ショッピングモールへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

3時間後。

 

よ、よくミチャエル様はこのような場所にいらっしゃったのだな。

残念ながら私・セバスチョンにはあまり強い魔力がない。

そのため、このショッピングモールまでは歩いてやってきたのだ。

 

聳え立つ建物は、大きなベヒモスのようだ。

 

いざ、いかん。巨大ショッピングモール!

いや、ミチャエル様の元へ!

その建物の中は、様々な店舗でひしめき合っており、下等な人間どもがわんさかといるようだ。

私は歩みを進めながら、ミチャエル様の魔力の痕跡を辿る。

私とミチャエル様は主従関係。いつでもつながっている関係なのだ。

ミチャエル様への忠誠心は誰にも負けるとは思っていないし、

何より、私の一族は魔力は低いが魔力の痕跡を辿る力は高いのである。

 

ミチャエル様の痕跡を辿りながら、1店舗1店舗を眺めていく。

 

なんだか、ひらひらのついたお洋服のお店が多いように思う。

が、全てミチャエル様の好みではなさそうだ。

ミチャエル様は、偉大なる曾祖父メチャチョロン・ダテンスキー様から頂いた黒のコートを愛用しており、

その下はミチャエル様のお母上であるガブリエチョ・ダテンスキー様が若い時に来ていたドレスを着ていらっしゃる。

私もミチャエル様にはそれが一番似合っていると確信している。

そう頷いていた時だった。

 

 

「こっこれは…!布地が少なすぎやしないか…?!」

 

 

このお声は、ミチャエル様のお声!!

さらに奥の店舗からミチャエル様のお声が聞こえてきた。

いかねば!ミチャエル様が変な輩に絡まれている可能性もある。

意を決して、私はミチャエル様のいるところまで全速力で向かっていった。

 

ぐちゃっ!!と何かに躓いたようで、私はカラフルな店舗へと転がり入って行ってしまった。

 

ぐるぐるとまわる体。そして視界。

店内の奥に、声の主はいた。

 

 

「みちゃ♡ちょんさん、この水着もあうと思うよ~!」

 

「……ん!?なんだ、こいつ!?」

 

 

今、みちゃ、と呼んだな?

それはつまりミチャエル様のことだな?

上手く壁にぶつかってよろけながらも、私はミチャエル様のおそばまで来ることができたようだ。

カーテンの向こう側にミチャエル様がいるらしい。

とにかく、お会いできてよかった…と胸をなでおろす。

 

いや、ミチャエル様に話しかけていたであろう下等な人間を、私は罰せねばならない。

 

私を訝しげに見るその二人組にたいあたりでも食らわせてやろうかと態勢を整えた時だった。

 

 

「セバスチョン!!!」

 

 

カーテンの向こうから、ミチャエル様が顔をだす。

ようやく会えた!ご無事だ!

私は心から喜び、思わず飛び跳ねながらミチャエル様をみる。

ミチャエル様は驚いたような、でも、少し観念したような様子で私をみる。

 

「少し、待っていろ」

 

というご命令があったため、店外でミチャエル様を待つことにする。

ミチャエル様に話しかけていた下等な人間は店を出るまでは、ミチャエル様に付き添っていたようだ。

 

そうして、ミチャエル様が店舗から出てきたときに、ミチャエル様に寄り添いショッピングモールを後にしたのだった。

 

 

 

 

 

ようやく部屋へと戻り、私はミチャエル様のほうを見る。

 

表情は見えない。

 

するとミチャエル様は部屋の真ん中にある大きなベッドへ一直線に向い、腰をおろした。

そのままぽすぽすとベッドを叩いたのは、私にこちらに来いと言っているのだろうか?

近くまで進んでから、ベッドには上がらずにいようとしていると急に体を掴まれ、ベッドに乗り上げてしまった。

ぐちゃり、と染み出る粘液がシーツを濡らしていく。

そして、私が天井を向くように仰向けにされた目の前には、いつもの涙目で私を見下ろしているミチャエル様がいた。

 

 

「お前が来てくれて、……嬉しかった」

 

 

私を見下ろしたまま、ミチャエル様は小さな小さな声でそうつぶやく。

いいえ、もったいないお言葉です。

そうお返事がしたいのに、どうにも言葉は紡げない。

 

 

「なあ、セバスチョン。お前は本当に良くしてくれている」

 

 

ぐちゃり。

ミチャエル様の体が私に乗り上げ、私を押しつぶすように馬乗りになる。

 

ぐちゃ。

ねちょ。

ミチャエル様が動くたびに、粘液がミチャエル様にまとわりついてしまう。

 

ああ、おやめください。

ミチャエル様のお体が汚れてしまいます!

 

私はミチャエル様への抵抗を続けるように体を揺らすが、ミチャエル様はそれを楽しそうにみつめていて、どいてくれそうにない。

そして、ミチャエル様は着込んでいた愛用のコートを脱ぎ、ベッドの足元へと落とす。

そこには。

 

 

「見てくれ。お前のために、水着というものを買ったのだ。

 ……お前を肌で感じたかった」

 

 

そこには、水着姿のミチャエル様がいらっしゃった。

 

私は思わず、ミチャエル様に見惚れてしまっていた。

ミチャエル様の青い肌にあるその水着という代物。

一般的な魔界でもはしたない、と言われるようなものではあるが、ミチャエル様は悪魔だ。

はしたない、という言葉なぞ、誉め言葉に過ぎない。

 

そして、ミチャエル様は、見惚れる私の体を抱きしめる。

ぐちゃり、と忌々しいほどの粘液がミチャエル様を包み出す。

そう…今までのぐちゃ、という水音は私の体の音なのだ。

この粘液は私のものなのだ。

 

 

「お前がスライムでも構わない」

 

 

そう呟いたミチャエル様の目からは大きな涙が零れる。

やっと言える、とほとんどベッドシーツに溶け込んでしまった私をかき集めるように抱く。

私を抱きしめるミチャエル様は、私の知らぬミチャエル・ダテンスキー様だった。

 

 

 

「…セバスチョン…………好き」

 

 

 

ミチャエル様はそういい、魅惑の笑みを浮かべた。

ミチャエル様の手が、私のおよそ臍の部分に触れ、それをわかっているのかわからぬままなのかそこを撫でながら

何度も、何度も、その魅惑の言葉を私に投げかける。

 

 

スライムが、悪魔とだなんて。

 

 

下級魔族が、超上級の悪魔とだなんて。

頭で考えていても埒があかない。

ミチャエル様にそのお気持ちは偽りなのだとお教えせねば。

 

そして、私は、ミチャエル様をまっすぐに見た。

 

見た。観た。視た。美た。魅た。

そして、魅入ってしまった。

 

なんの反応もなくなったスライムを弄ぶように、ミチャエル様はとろとろになった粘液を手で掬っては落とし掻き混ぜる。

時折、粘液に顔を寄せ、舌で舐めようともしている。

かき集めた粘液が顔にへばりつき、髪を濡らす。

そして、ミチャエル様の汗や唾液までもと混ざり合わせるように、ミチャエル様は私を弄んでいる。

……なんとも言えない光景。

ごくり、とないはずの喉がなったようだ。

私に喉などないはずなのに。この光景に喉が、乾く。

 

その存在は、まるで魅惑の姫。

 

嗚呼、私が断ることなどできるわけがない。

 

嗚呼、私はただのスライムなだけなのに。

 

嗚呼、スライムが悪魔になぞ勝てるわけがないのに。

 

嗚呼、ミチャエル様。なんと…なんと麗しい。

 

 

 

「共に堕ちよう……我が愛しの、セバスチョン。」

 

 

 

ぐちゅり。

私の粘液の音と共に、ミチャエル様は私に口付ける。

 

そして、……共に堕ちていくのだ。

 

 

 

【Fin】

 

 

 

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