Permeate   作:コンテナ店子@コミケ出ます

25 / 26
今回は2年ぶりのソフィアのイレーヌの再会です


第25話「あなたと私の距離」

 普通の紙よりもちょっとだけ硬いそれを手にしたまま足を両方とも揃えて止まる。自分の胸の少し前くらいの位置でそれを斜め向きにする感じにさせて。顔も下へと向けた状態のまま見つめていると、呼吸がいつもよりも早くなっているのを感じて。その中身をもう一度確認する前に他の建物よりも一際大きなその何階も連なっている方へと顔を見上げた。

 

 太陽の光も隠すようなそれの影の中に立っている私は、首を限界まで上へと向けながらいなければその一番上の所に取り付けられている看板であったり装飾までもを見ることはできない。それどころか、そこすらも逆光になってしまっているせいで、うっすらと十字架のマークは見えている物の、その色であったり細かい様子や文字の内容までも以前見せてもらったものと全く同じであった。

 

 一方で、私の周りでは未だこっちが道の真ん中に立っているせいもあり、足早に歩いて行く人の足音や軽快に走っている馬のそれや、引いている馬車の車輪の音は一切止まらない。彼らはみんな背後で風を起こしながら進んでいたり、視界のわずかな範囲に入り込むようになっていた。以前の時と異なり腰まで伸ばした髪の毛もそれでわずかに揺れて、私の背中をその先端がほんのわずかに擦る。

 

 その感覚をエクソシスターの羽織り越しに感じると、顔をわずかに下へと向けながらそこで両方の唇へと力を入れて潰していた。それに対して、周囲で進んでいる人たちの等間隔の足音のペースが変化することはない。

 

 私は上の瞼を少しだけ落っことすような表情のまま、ずっと同じ様子でいるだけで、いつの間にか自分のお腹の方へと落っこちてしまっていた両方の手と手首をしばらく同じくしているだけであった。

 

 しかし、自分の首元に付いている2つのロザリオがリボンに引っかかることもなく風で左右に揺れて。その間は私の体も制服もそれに追従することもなかったせいで、それが下着や服越しに自分の体の骨を擦るような感覚を味わうことになった。それから、もう一度だけ左右へと唇の力を入れている場所をスライドさせるような動きを繰り返した後に、持っていた紙の向きを横から縦へと変えて、心臓に片方の手をそっと重ねるような形で胸の前へと持っていく。それからもう一度顔の向きを上へと変える。しばらくそのまま目の前のエクソシスターの事務所の様子をただ見つめ続けてから、ゆっくりと歩き出した。

 

 

 

 両方の手を背中で組み合わせながら柱に寄り掛かったまま顔を下へと向けているが、それで見えている物はワックスが塗られて天井から降り注ぐ光を反射している床の格子のような模様だけ。もう何年も見続けているはずのそれをただただずっと上瞼を落っことしながらもそこで視線を左右に向けながら眺めていた。

 

 そうしていない間は、自分の両方の指で前髪を何度も横へとスライドさせるように動かして整えたり、視線を斜め上へと向けて赤茶色をしている木材のような出っ張りが壁や天井に出来上がっている様子を見つめる。しかし、そこを見ている間も、何度も視線が左右にずっと動き続けてしまい、数秒の間しか同じ場所を見ることが出来ない。

 

 ただ、私の正面にある中央玄関の方から人がドアを押してくることで鳴るベルの音がするたびに息を鋭く吸いながら視線をそっちへと向けつつ背中を柱から放す。でも、そっちにいる老夫婦だったり親子連れの様子を見るたびに、自分の体から離れた手の指が力も入れずに折り曲げてしまっていく。一瞬だけ体から離れる形で持ち上がったそれが胸元へと戻っていくと、またすぐに柱へと体を預けて同じような体勢にしておく。

 

 わずかに目を見開くような力を入れながらいたのも元々の様子に戻ろうとしていたころ、私のすぐ横を女の子が通ってるのに合わせて、向こうから視線を来てるのに気づく。すぐに顔を開きながら目を細くしつつ顔をわずかに傾けて。わずかに上半身を前のめりにしつつそっちへと手を振ると、向こうも目元は変えないながらも、顔はこっちへと向けながら口元の両端を上へと持ち上げつつ手を振り返しているようであった。その様子が柱の向こうへと消えていくまでこっちはただずっと同じ体勢のまま、ずっといるだけにしている。

 

 それが終わるとまた息を吐きながら顔を下へと向ける姿へと戻ってしまい、眉と一緒に瞼を落っことす。前へと持ってきていた手を背中へと移動しようとするも、そっち側は完全に自身の背中と柱が重なり合っているようで、一度だけ鼻をすするように息を強く吸い込みながら、片方の手を持ち上げておでこの横の方をわずかにかきあげる。髪の毛の中に指がわずかに入っている状態のままいる私はしばらくずっとそのままでいようとしている間、周囲から音は感じない物の、ずっと空気の流れが変わっているのを感じて。しばらく目の開けている範囲だけを大きく広げながら口から息を吸う。しばらくそれ以外で体を動かせないままただただずっと背中を丸めたのも変えずにいた。

 

 息を止めてたのを開放する深呼吸を一組だけさせてから、勢いよく顔を上げると、半透明の玄関に取り付けられた窓ガラスの向こうから降り注ぐ太陽の光を一身に浴びてる、ソフィアが私のことを見下ろしてて。それをみてるだけで私は、喉を一気に締め付けるような感覚と共に口から一気に息を吸い込んで。長くなった髪の毛や背負うように羽織ってる上着とその中のブラウス、そして小さな黒いリボンの上に付けてる2つのロザリオの若干サビた様子を見ているだけで、私は視線を上下にずっと動かして相手の様子を見つめることに。

 

 それから、両方の唇を閉じて両方の目線をわずかに横へと逸らすと、そっちの方で、床へと反射することで濃い緑色みたいな色をしてるエクソシスターの制服に包まれた自身の様子を見せられてて。

 

 その硬いコルセットや肩の防具によってはめ込まれたそれに包まれた体や足首の辺りにまでスカートのすそが来ているのに気づくと、自分の肩の下の辺りの制服を強く握りしめた。

 

 ただ、目を閉じないながらも限界までしわをそこに作りながらいる私に対して、向こうは口を大きく開けながらそこから何度も息を繰り返しているかのような音を私に聞かせて来てた。

 

「イレーヌさん……」

 

 私とまっすぐに目を向けてるソフィアが、息と交じり合わせるように語尾を強調するような声を出しているのを聞いて。私がそっちの様子を見上げるような視線で見る。ただ、それも数秒間だけにして視線をすぐに落っこすと、自分の両方の腕で体を締め付けるようにしながら、肘をそこへと押し付けていた。

 

 一方で向こうはもう一度、今度は語尾の音を持ち上げるような形で私の名前を呼んできてるのに気づいて。それに対してこっちはまた口から息を吸い込みながら相手の様子を見つめる。でも、ソフィアは自分の帽子のつばに手を少しだけ当てながらわずかにそこを持ち上げて、口の両端を持ち上げると小さな声を出しながらいた。

 

 向こうはまた目の中の範囲を広げていたのを両側から細め、頬をわずかに膨らませて、そこを赤くさせてる。そのまま顔をわずかに横へと傾けていた。

 

 でも、一方で私は、数秒に一度程の瞬きをしつつ瞼を震わせながら、もう片方の肘に付けた手で内側に引きながら顎を自分の方へと近づける。歯を強く噛みながらいるつもりだったのに、気づいたら無理やり勢いよく体を翻しながら走り出す。何度も高い声を出すようにしゃっくりを繰り返した。

 

 私が顔を伏せたまま必死にモノクロのタイルが並んでいる廊下をただただ走っているのに対して、周囲にいる人は体を動かして避けてくれている様子が見えて。わずかな物で私の名前を様付けやさん付けで呼ぶ声が聞こえる。でも、それに対してこっちは何も返事なんかできずに、ずっと両方の腕を限界まで前後に振りながらまっすぐに走ることしか出来なかった。

 

 しかし、その間も、私の胸元に付いているエクソシスターとしての名札が何度も胸の所にぶつかってくるのは感じさせられ続けた。




読了ありがとうございます
反応、コメント等お待ちしています
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。