ドS京ちゃんシリーズ・小説版 作:京ちゃんスキー
宮永咲は須賀京太郎と中学時代からの縁である。
最初の頃は優しくて紳士的な人だと誤解をしていたが、彼の本性が
切っ掛けは些細なこと、日常の何気ない会話の中に姉である宮永照と同じ雰囲気を感じた。
彼女の姉は麻雀会のNEWスター、時に魔物と称される程の打ち手。
だが、外面は非常によく、雑誌やテレビのインタビューでは台本が用意されているように猫をかぶる。
――それを京太郎にも感じたのだ。
彼女は尋ねた、尋問したと言ってもいい、京太郎はなぜ、良い人を演じているのかと?
京太郎は驚いた。今まで自分が
『俺、生粋のSなんだ! 人が困ってる姿を見るとすっごく興奮するの!!』
咲は頭を抱えた。
今まですごく紳士な人だ、迷子になってもすぐに見つけてくれる優しい人だ、色々と魅力的な人だ。
そう思っていたが、自分が迷子になってオドオドしている姿が好きだから接触を試みたという深い絶望。
一ヶ月くらいの間、彼との関係を断ち切ろうと努力した。だが、彼女は極度の方向音痴、少し出かけただけで迷子になることもザラ。
付け加えて世間知らずの一面も有している。
『咲? 修学旅行で迷子は流石にマズイだろ……』ゲスマイル
彼女は理解した。
拒絶するのではなく、あっちが利用するのなら、こっちも利用してやろうと。
超弩級の
2
宮永咲に友達はいない、利用関係のゲスな男はいる。
だが、最近はそのゲスが一緒に帰ることが少ない? また犠牲者を見つけたのかと溜息が出てくる。
こういう場合、彼の最も親しい友人である高久田に質問を投げかけることで被害者が誰かわかる。少しの勇気を振り絞り、顔見知りの高久田とコンタクトをとった。
「あら、咲ちゃんが京太郎とセットじゃないなんて珍しい?」
「うん、最近京ちゃんが忙しそうにしてるの。高久田くんは何か知らないかな」
「ああ、京太郎なら麻雀部に入ったんだよ。原村和っていうスゲー美人が麻雀部にいて、インターミドルとかいう麻雀の大会で優勝したらしいんだ」
「そう、なんだ……」
宮永咲に冷や汗が流れる。
インターミドル、
彼女の行動は早かった。
その日の放課後には麻雀部の場所を調べ、迷子にならないように入念にメモをして麻雀部に向かう。
そして辿り着いた麻雀部。
「――すいません? 京ちゃ……須賀くんはいますか……?」
「須賀くんですか? 須賀くんなら……」
「無理ラスして外の空気吸ってるじぇ!」
「こらゆーき!」
部の中にいるのは一年生二人、部室中央に置いてある全自動麻雀卓ではなく、手積みの麻雀卓、開かれている牌をみる限り三麻をしていたのだろう。
咲は本当に麻雀部なんだな、そう思いながら一礼を見せて京太郎がいるベランダの扉を開いた。
そこには外の景色を無表情で眺めている金髪長身美少年が確かに存在している。
「優希か……流石に三連続無理ラスはキチーって、あと五分くらい休憩させてくれ……」
「京ちゃん? また悪い癖が出てるよ」
「げっ!? さ、さき……いやー? なんのことやら……俺にはわからないなぁー」
「高久田くんに聞いたよ……
京太郎、大量の冷や汗を流す。
そう、京太郎にとって宮永咲は重要な栄養源であると同時に天敵でもある。
咲に何度獲物を逃されたことか、数ヶ月の間、迷子咲しか性的嗜好を満たすことが出来ないこともあった。
だから天敵、でも迷子咲の顔は大好き、こんな歪な関係性が出来上がってしまっている。
「そ、そうだよ! 麻雀部に入ったんだ!! 全国大会目指してがんばるぞー」
「ダウト……本心は?」
「学校一の美少女を手のひらで踊らせるのが楽しすぎて死にそう」ゲスマイル
「はぁ……変わらないね……」
咲のジト目、その目にも興奮する京太郎はゲスな笑みの純度を高めてしまう。
彼女は思った。この状況は非常にマズイと。
なんやかんやで咲は京太郎のことが好き、
どんなに性癖が歪んでいようと、自分のことを助けてくれる王子様の一面を有している彼に恋い焦がれている。
そんな彼が部に入ることで離れてしまう。それは許せない。
「嫌いだけど……麻雀できるよ……」
「い、いやー? 嫌いならやらなくていいじゃない! 嫌いなことは身が入らないって昔から言われてるし!!」
「京ちゃんが離れていくのは……もっと嫌……」ハイライトオフ
「あ、その顔好き……もっと……」
「はぁ……これだから京ちゃんは……」ハイライトオン
「ちぇ……」
京太郎は頭を掻きながら提案する。今は二年生の先輩が実家の手伝い、三年生の部長が疲労で仮眠中。
三人しかいないから三麻を打っている。咲が打てるなら全自動卓で打てるからと同卓を願い出た。
少し嫌そうな顔を見せるが、この顔も京太郎の好物であるので瞬時に控える。
「おーい、みんなー! こいつ宮永咲っていうんだけど、中学時代からの腐れ縁! 麻雀打てるから卓に入っていいらしいぜー」
「あの、えっと……よろしくお願いします……」
「お! 四麻が打てるじぇ!」
「あの、えっと……こちらこそよろしくお願いします……」
清澄高校麻雀部、一年生組が揃う。
卓は手積みから全自動卓へ、咲はフレンドリーな優希の質問攻めに苦笑いを見せながら、下の名前で呼ぶことを了承。自分も下の名前で呼ぶことを許される。
京太郎というと、初日の勝ちたいという気持ちは少なく、和が自分を引き止めに来ることを狙って普通に打っている。
それでもトップ率二割一分程度の連対率五割フラットをキープしているので中堅クラスの打ち手と言えるだろう。
――だが、魔王は
最初は変な打ち方をしているな、七対子を狙っているのかな、そんな感情で考えを巡らせる京太郎。
部の中では和とまこと同じくらい放銃率が低い、無理ラスを引かない限りは基本的には優れたデジタル派、ネット麻雀、それも負けたら全員から煽られるという蠱毒で鍛えた牌効率。
誰もが納得できる無理ラス以外では負けることはない。
「京ちゃん……それ、カン」
「大明槓? ドラが欲しいのか」
京太郎が河に落とした牌、それを大明槓。
京太郎はドラが無い手、四暗刻に向かうより対々和に向かった方が素早く確実なのだろうと考えた。
――間違い。
咲が嶺上牌を握った瞬間にはもう一度カンの声が響く、今度は暗槓。
優希の東場力でオカルトの存在を理解している彼ならわかる――あ、これは飛ばされた……。
「もう一個カン!」
三個目のカン、また嶺上牌が咲の元へ吸い寄せられる。
わざとらしくドラ表示牌を捲らないことでその意味が尚更に強くなる。
そして、死刑宣告と言わんばかりにその声が響く。
「カンッ! ――ツモ、嶺上開花……四槓子、京ちゃんの責任払いで32000点だよ」ニッコリ
「……いや、この部って責任払い採用してたかなぁー」
「はい、しています。全国大会を意識していますので」
「……きょうちゃん……おそとのくうきすうのぉー……」涙目
須賀京太郎は思った。
ポンコツだと思っていた宮永咲は――四角い世界では自分以上の
サディストは打たれ弱い。