ただでさえ生きるのが厳しい呪術世界なのにクズ一族に生まれて死相しか見えないんですが   作:楓/雪那

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お待たせしました

学生編でレギュ入りさせたいオリキャラがいるが中々構成が練れない


#11 性癖は人柄を表すと言うらしい

「初めまして、禪院袴ちゃん。どんな男がタイプかな?」

 

「北欧系やアメリカ系の渋い顔立ちでガタイのいいコートの似合う紳士的なおじ様、具体的に言えばイーサン・ホーク」

 

「イイネ!年上好きなのかな?」

 

「同年代に碌な性格なのがいないから、年上に憧れを抱いちゃうんですよ」

 

 

呪術高専東京港に存在する以前までは使われていなかった地下の一室。

去年の夏頃から袴が自分専用の実験室として占領したこの部屋に招かれざる客が来訪していた。

 

 

「あとは自分の役割を放り出さずに責任を果たしてくれる人、ですね」

 

「それ、もしかして私に対する当てつけ?」

 

「自覚してるんだったら仕事してくれませんか?九十九由基さん」

 

 

現在の呪術界において、まだ二人しか存在しない特級術師の片割れ、九十九由基。

その肩書に偽りのない強さを誇り性格ももう片方の白髪とは比べ物にならないほど良い彼女だが、とある理由により呪術総監部といった上層部と非常に仲が悪い。

そのため高専からの任務を請け負わず、海外で自身の研究を行っており、そのしわ寄せが五条や袴たちに来ているのだ。

 

 

「それで何の用です?五条さんなら今は任務で県外ですけど。それとも夏油さんの方ですか?」

 

「いやぁ、今の私が気になってるのは袴ちゃんだよ。同じ女の子の術師として話が聞きたくてね」

 

「クソ雑魚な私に聞きたいこととかあるんですか?」

 

「君が弱いわけないでしょ~……え、まさか本気で言ってる?」

 

 

自己肯定感皆無な袴だが、自分自身の実力について「術式は複雑で負担もシャレにならないし、戦い方のほとんどが基本的な技術の応用だから私にできることはだいたい誰にでもできるでしょ*1」って思っているため致し方無いのである。

「何を言ってるんだこの子は」と口にしかけた九十九だったが、そのことについて話し始めると目的から逸れてしまうと思い、袴の強さは一旦無視して本題に入る。

 

 

「まあその話は置いておいて……私にはね、やりたいことがあるんだよ」

 

「知ってます。呪霊のいない世界でしょう?」

 

「う~ん…やっぱりその眼と術式にはお見通しかな?六眼とは別ベクトルでやりづらいね」

 

使い手()にとってもそんないいものじゃないですよ。負担がかかりすぎるから常時脳に反転術式回さないとやっていけませんし」

 

「しれっとオートで反転をかけ続けるなんてできないはずなんだけどね?」

 

 

軽々しく高等技術を使う袴に思わずツッコミを入れる九十九だが、先ほど自身で言ったように「会話がしづらい」と強く感じていた。

大半の術師ならば驚くこと間違いなしのトークテーマに微塵の興味も抱いておらず、逆に彼女のペースに飲まれていく。

それもただ興味を持っていないのではなく、一度知っているからこそ同じ内容を聞くということが面倒だからというのが袴が興味を持とうとしない最大の理由なのだ。

そのため長ったらしい説明を省いて簡潔にまとめようとする袴との会話は、研究者である九十九にはやりづらさ、あるいは不完全燃焼というべき感覚を与えていた。

例えるなら自力でゲームをプレイしているときに偶然隠しルートを発見したと思ったら、友達がそのルートが攻略本に載っていたということを教えてもらった時のような、あるいはレポートの提出をしようとしたら一瞥もされずによくある質問をされているような、盛り下がらざるを得ないコミュニケーションが楽しいわけがない。

 

 

 

「それで呪霊がいない世界、でしたか。私の結論から言えば『ありえない』です」

 

「これは手厳しいね…理由を聞いても?」

 

「……九十九さんの目的までのプランとして考えられるのは『全非術師に呪力を持たせ、制御できるようにする』か、『全人類から呪力を剝奪し、非術師にする』かのどちらかですよね」

 

「うん。君も知ってるだろうけど術師からは呪霊は生まれない。自分の中で呪力を制御できるから外に放出する呪力が非術師より少ないからね。死後、呪霊に転じる場合は別だけど」

 

「前者の場合は非術者を皆術師に変えてしまえば、外にまき散らす呪力がなくなって呪霊が生まれず、後者ならばそもそも呪力がないから呪霊の存在も消える……随分スケールが大きな話ですね、ほんと」

 

「でしょ~?でも後者の方が実現性は高いんだよね。君もよく知る伏黒甚爾ってモデルケースがいるからね」

 

「天与呪縛のフィジカルギフテッド…呪力0という呪いの世界から完全に隔絶された存在…が、『縛り』である以上、実のところ呪術に縛られ続けているって矛盾を孕んだ存在が、ですか」

 

「ああ、天与呪縛は足し引きだ。超人的な肉体を手に入れるには何かを犠牲にしなければならなかった。その犠牲になったのが彼に宿っていた呪力だ」

 

 

そこまで話を終えたところで、袴は徐に一本の刀を取り出した。

刀身は普通のものに見えるが、柄は人骨でできており、鞘には紐のような何かが括り付けられている。

 

 

「ところで九十九さん、これは友人に造ってもらった呪具なのですが、どういうものだと思います?」

 

「ん…?人骨ってことは呪詛師…いや、袴ちゃんが態々聞くってことはそんなものじゃないか…?鞘の方が本体、とか?」

 

「正解は三つ子の水子の遺骨で造った鞘とその母親の遺骨を柄に加工した刀です。面白いことにまだ成長余地があるんですよ。フフフッ、鞣造にとっても会心の出来とのことですが私もこれを見たときは心が躍りましたよ。何せ偶然手に入ったとはいえ良質な素材をふんだんに使ったのですから。元々初期のプランでは水子の集合体で呪具或いは式神を作ろうとしたのですが母親の執念が非常に強くてですね、これは使わざるを得ないだろうと考えを改めたのですが、ここまでのものができるとは思ってなかったですね。九十九さん知ってますか?水子の呪力システムは赤子、というより一般的な呪力の廻り方とは全然違うんですよ。ご存じの通り人間は胎児期はへその緒を介して母親から栄養をもらい、赤子として生まれると母乳を主な栄養として成長します。ですが水子の場合はこの関係が逆転するんですよ。つまりは水子が発する呪力が母親を縛り付けて呪殺するんです。現代では望まない妊娠が増えたことで一方的な呪縛関係が増えているのですが、元来水子の呪縛関係は生者である母親や家族の悲しみ、後悔と結びついて互いに縛りあってる状態なんですよ。生命の誕生に関する一連の流れが呪力という負のエネルギーで丸ごと逆転し、最終的には1つの個として完成し、呪いをまき散らす…この呪具はその特徴を利用して子と親を完全に混じり合わず、かつ隔離しないことで半永久的に成長し続けることに成功したんですよ。あぁ、銘をつけたいところですが、あえて銘をつけないことで個として完成させないようにするのも捨てがたいですね。ふふっどうしたものでしょう」

 

「ちょっちょっちょスト――ップ!袴ちゃんだいぶ目イっちゃってるよ!?」

 

 

刀をうっとり眺めながら早口で語る袴に久方ぶりの危機感、または恐怖を感じた九十九が思わずストップをかける。

そこでやっと正気に戻った袴はコホンと軽く咳ばらいをすると、再び真顔に戻り九十九の目的について話を戻す。

 

 

「だいぶ脱線してしまいましたね、失礼しました。」

 

「いや…うん…なんかだいぶ意外だったよ、そういう一面もあるとはね。それで、つまるところ袴ちゃんはその呪具で何が言いたかったのかな?」

 

「呪力の制御というプランは不可能に近い、ということです。術師の家系に生まれた術師でもどんなに早く呪力の制御をできても4,5歳ほど…正確には発露の仕方を理解したうえで呪力を自己補完できるようになるのがそのくらいの年齢で、呪力操作が不可能、あるいは未熟であるとそれは非術師とは変わらないはずです。というか九十九さん自身がさっき言ったじゃないですか、死後呪いに転じる場合のこと」

 

「そうだよね~、全人類が呪術師になったとしても何らかの要因で――呪具でも術式でも、一番簡単なのは毒や病で――一時的にでも呪力操作が不可能にさせられて、その時に殺されたら結局呪霊が生まれちゃうんだよね」

 

「呪霊を無くす、ということは呪霊操術のような呪霊に関する術式も排斥されますし、現在の術師が訓練によく使う蠅頭も絶滅させなければならない。そうなると基本の呪力操作の訓練すら困難になりかねませんからね」

 

「改めて第三者の意見を聞くとこっちのプランは穴だらけだね。やっぱり呪力からの脱却のほうが現実的かな」

 

「どっちのほうが達成しやすいか、でいえばそうでしょうね……でもそのプランは上層部や御三家を始めとした名家が認めないでしょう?」

 

「ほーんとそこだよ、上層部のジジイどもは頭が固いんだから」

 

 

めんどくさそうに天井を見上げながら大きなため息を吐く九十九。

そんな彼女を見た袴は目を細めてさらに切り出す。

 

「ですが、私が『ありえない』と断言する理由はその先にあります」

 

「…聞かせてほしいな」

 

「呪霊が完全に滅びたら、人間同士の争いが激化するだけだからですよ」

 

 

()()は袴が第2の生を受ける前から出していた結論である。

 

全人類に呪力を持たせたとて、全人類が正しく呪力を扱えるはずがない。

少なくとも100万単位で呪詛師に堕ちるものはいる。

況してや腐りきった上層部と時代錯誤な旧家が幅を効かせてる今の呪術界ですら、蹴落とし合いなんて生ぬるい、誅殺、謀殺、排斥、姦淫、身内切りと醜悪な内情だというのに、そこに非術師の感性を持った術師が大量に入ってくれば新派と旧派の長い長い呪い合いになる。

 

逆に全人類が呪力から脱却したらどうなるか。

分かりやすく近代兵器での戦争になるのが目に見える。

彼女がかつて生きた世界と今生きている世界、呪術の有無に関係なく発生した事象だからこそ断言できる。

むしろ内憂外患、国内ではかつての呪術師の家系と政府が、そしてそこに諸外国が乱入してより混沌と化しかねない

 

それならば、

呪霊という共通の敵を作っておく方が平和とまでは行かなくとも、まだマシなのかもしれない。

 

 

「人間対呪霊が人間対人間に変わるだけ、か…なるほど、手厳しいな」

 

「最初の発言、少し訂正します。私も呪いが無くなって平和になるのは大賛成ですし、呪いがなくなって世界を変えることに意味はあると思います。でも、九十九さんの今のプランじゃ牧歌的な世界になることは『ありえない』、これが私の意見です」

 

「うーん…まあ計画に反対なだけで目標には賛成って捉えておくよ。貴重な意見をありがとう、袴ちゃん」

 

「…目標にはほんとに賛成してますよ。惨い死に方とかしたくないですし」

 

「ハハッ、よく分からない子だね、君は!」

 

 

呪いについて研究をして実験をして呪具を作る。

その様はまるでイカれた科学者、あるいは狂気に取り憑かれた芸術家のようだというのに、

 

本心は嘘偽ることなく己の安寧を願っている。

 

そのチグハグすぎるありさまが九十九には非常に面白く映っていた。

 

 

「いやぁ、でも本当に面白い話ができてよかったよ。また会おうね、袴ちゃん」

 

「ええーーー近いうちにまた」

 

 

連絡先のメモを置いていき、部屋を去った九十九。

その後ろ姿を一瞬だけ見つめたが、既にどうでもよくなったのか袴は自分の研究に戻った。

 

 

 

*1
それができる術師は一級術師でも数人しかいない。領域展開まで含めたらこいつと九十九だけなので全術師から「出来るわけねーだろ」と思われてる。

植物トリオ以外で救済が欲しいのは?

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